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サイバーショト DSC-G1の測位機能を試す

Reported by 本誌:田中 真一郎

サイバーショット DSC-G1
 2007年2月に発売されたソニーのサイバーショット DSC-G1は、2GBもの内蔵メモリと豊富な検索機能、さらに無線LANを備え、「大量の画像を持ち運んで楽しむ」コンセプトを実現したコンパクトデジカメだ。

 10月28日にソニーは、G1に機能を追加するファームウェアを公開した。このファームウェアでは、動画再生時に変速早送り、スキップ、途中再生などができるようになるほか、G1の無線LAN機能でG1の現在位置情報を得て、撮影した画像に位置情報も記録するようになる。

 この新しいファームウェアをインストールしたG1を借りることができたので、測位機能についてレポートしよう。


G1には無線LANが搭載される。無線LANが機能しているときは写真のWLANインジケータが点灯する
 G1の詳細なスペックは関連記事を参照していただきたいが、ざっとおさらいしておくと、撮像素子に1/2.5型有効600万画素CCD、レンズに光学手ブレ補正機能付の3倍ズーム、液晶モニターに3.5型VGAを搭載するほか、前述のように2GBのメモリを内蔵している。このほかメモリースティックデュオスロットも備えている。画像処理エンジンや撮像素子などはDSC-T9世代のもので、ハイビジョン出力や顔検出などの機能はないが、2007年モデルと同様にHOMEとMENUの2つのボタンによるユーザーインターフェイスを備えている。

 G1にはIEEE 802.11b/g準拠の無線LAN機能が搭載されている。PCやほかのG1と画像のやりとりをするためのもので、あくまでローカル・エリアでの接続に使われ、G1単体ではインターネットには接続できない。

 新しいファームウェアでは、この無線LAN機能が測位に使われる。


測位はとっても簡単

 無線LANによる測位機能は「Place Engine」という仕組みを使う。Place Engineは、周囲にある無線LANのアクセスポイントの電界情報(電波の方向や強度)をもとに、現在位置を割り出すものだ。現在位置はGPSと同様に緯度経度で表示される。

 この仕組みの説明はすこし面倒なので後回しにして、まずはG1を持って街に出て、何が起こるか見てみよう。


「Place Engine」を「入」にしておく
 Place EngineをG1で使うための設定はまったく簡単だ。対応ファームウェアがインストールされていれば、「HOMEボタン」→「設定」→「ネットワーク設定」の「Place Engine」を「入」にしておくだけである。

 すると、液晶モニター下部に歯車のようなグレーのアイコンが表示される。これがアクセスポイントの電波を感知しているかどうかのインジケータとなっている。電波を感知して現在位置がわかると、アイコンが緑色に変わり、アイコンの上に割り出された緯度経度が表示される。


アイコンがグレーのときは電波を感知していない 電波を感知するとアイコンが緑になり、緯度経度が表示される

Picture Motion BrowserでExifの内容を表示したところ。位置情報は「GPS情報」の項目内に入る
 この状態で撮影すれば、位置情報がExifタグ内に記録される。拍子抜けするほど簡単で、測位や位置記録のための操作は必要ない。測位にかかる時間はまちまちで、電源ONですぐにアイコンが緑になることもあれば、数秒待たされることもある。

 この画像をG1付属のソフト「Album Editor」でPCに取り込み、さらに「Picture Motion Browser」で表示してみよう。位置情報がExifタグに書き込まれた画像のサムネールには、方位磁石のアイコンが表示される。この画像を選択して「活用」メニューの「マップビュー」を実行すると、Googleマップの撮影地点の上に、画像が表示される。

 というわけで、位置情報を埋め込んだ写真を撮影して、地図に表示するまで、特に難しいことはしなくていいのがおわかりいただけたと思う。


Picture Motion Browserに位置情報付き画像を読み込むと、サムネールに方位磁石のアイコンが表示される
位置情報付き画像をマップビューで表示したところ。赤いピンをクリックすると、その場所で撮影した写真が表示される

Place Engineの仕組みとメリット

電波は感知しているが、場所がわからないときはアイコンが黄色になる
 G1の液晶モニターの測位状態を表すアイコンは、グレーと緑以外にも、黄色になることがある。黄色のときは位置情報が表示されない。これは、アクセスポイントの電波を感知したけど、位置情報が割り出せないときの表示だ。

 つまり、Place Engineではアクセスポイントさえあれば測位できるわけではないのだ。なぜこんなことになるかを理解するには、Place Engineの仕組みを知る必要がある。

 前述のとおり、Place Engineは、G1のような無線LAN機能を搭載した機器(ここではPEクライアントと呼ぶ)がアクセスポイントの電波を感知し、その電界情報をもとに、PEクライアントのある位置を割り出す。

 Place Engineサーバー(PEサーバーと呼んでおく)には多数のアクセスポイントの位置が蓄積されていて、G1のようなクライアントから「○○というアクセスポイントの電波を、××の方角に、△△程度の強度で感じた」という報告を受けると、クライアントの位置を推定して教えてくれるというものだ。ちなみにアクセスポイントはMACアドレスという、無線LAN機器に必ず割り振られているユニークなIDナンバーで判別される。

 測位システムには有名な「GPS」というものもあるが、GPSは衛星からの電波を受け取る必要がある。だから、屋内とか地下、障害物の多いビル街などでは使えない。一方Place Engineは、1つ以上の無線LANのアクセスポイントさえあれば、地下だろうか屋内だろうが測位できるのが大きなメリットだ。

 また、機器に無線LANさえ搭載されていれば、Place Engine用のソフトウェアを追加するだけで、測位機能を実現できる。GPSが標準で搭載されている機器はカーナビ以外にはそうそうないが、無線LANならノートPCやPDAにも付いている。実際、Place Engineのサイトからは、Windows用やMac用、Windows Mobile用のPlace Engineクライアントソフトウェアを無償でダウンロードすることができる。これを無線LAN付きのノートPCにでもインストールすれば、すぐにPlace Engineを体験できるので、興味があれば試していただきたい。


G1のPlace Engineには制限も

 ただしPlace Engineは、固定されていてかつインターネットにつながっている無線LANアクセスポイントがあるところでないと利用できない。たとえば無人の荒野の真ん中、山の中、海上などではほぼ使えないと見ていいだろう。

 もっと重要なのは、無線LANアクセスポイントのIDと、設置されている場所の情報がPEサーバーの自住所録になければ、やはり位置情報が得られないということ。G1では、電波は感知しているのに、その電波を発しているアクセスポイントを判別できないときは、前述のようにアイコンが黄色で表示されるわけだ。

 Place Engineでは、PEサーバーに登録されていないアクセスポイントの位置情報を、クライアントからサーバーに教えてあげることもできるようになっている。たくさんのPEクライアントが位置情報を集めれば、測位の精度も向上するわけだ。

 しかし、G1にはアクセスポイントから向こうのインターネットと通信する能力がないので、PEサーバーに位置情報を教えてあげることも、PEサーバーから位置情報を受け取ることもできない。じゃあどうやってアクセスポイントの位置を知るのかというと、PEサーバーが持っているのと同じ住所録を、G1の中にも置いておいて、それを参照しているのだ。この住所録を「ローカルデータベース」という。

 なので、G1にPlace Engine対応ファームウェアをインストールするとき、ファームウェアのインストール後に、このローカルデータベースをG1にコピーするという作業が必要になる。ローカルデータベースはPlace Engineに対応した地図コミュニティサイト「Peta Map」からダウンロードできる。なぜかソニーやPlace Engineのサイトからはダウンロードできず、Peta Mapに会員登録する必要もあるので、ちょっと面倒である。

 また、Peta Mapで提供されているローカルデータベースは週に1回更新されている。アクセスポイント情報が増えても、G1に反映されるまでにはタイムラグがあるし、最新のアクセスポイントの位置情報を利用したいなら、週に1度はユーザーがローカルデータベースをダウンロードして、G1にコピーしてやる必要がある。G1をPCにつなぐと、自動的に最新のローカルデータベースがダウンロードされて更新されたりすると便利だが、現状では手動で行なう必要がある。


もっとも手軽な測位機能

マップビューの位置情報埋め込み機能。黄色いピンを撮影した場所に移動させて保存すれば、画像にその位置の情報が記録される
 というわけで、Place EngineとG1の測位機能は、アクセスポイントがたくさんある市街地では有効で、実に簡単に使える。

 ただし、市街地なら必ず測位できるというものでもない。筆者が新宿西口で試してみたところ、アイコンが黄色になったりグレーになったりする地点も少なからずあった。アイコンが緑色なのを確認して10mほど歩くと、もう黄色やグレーになっていたこともあったし、撮影時にアングルをちょっと変えただけで測位できなくなったこともあった。

 だから、撮影した画像に百発百中で位置情報を埋め込めるとは思わないほうがいい。Picture Motion Browserのマップビューには、位置情報のない画像に位置情報を埋め込む機能がある。これを使えば、測位できた画像を参考に、位置情報を埋め込むことができる。

 ソニーには「GPS-CS1K」という、デジカメと組み合わせて使うGPSレシーバーがあるが、これはGPS-CS1Kで得た位置情報をPC上でデジカメ画像に埋め込んでやる作業が必要だ。また気をつけていないと、GPS-CS1Kで測位できなかった場所で撮影した画像にも、直前に測位された位置情報が埋め込まれて、実際の撮影地点とは違う情報が埋め込まれてしまうことがあった。この点、G1では測位できなかった地点で撮影した画像にも、ユーザーが指定した位置情報を埋め込めるようになっている。

 改善の余地はまだある機能とはいえ、現状では、位置情報とデジタルカメラの組み合わせをもっとも手軽に楽しめるのがG1といえるだろう。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  DSC-G1アップグレードのお知らせ
  http://www.sony.jp/products/di-world/cyber-shot/enjoy/contents/G1-verup/
  Place Engine
  http://www.placeengine.com/
  Peta Map
  http://petamap.jp/

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ソニー、サイバーショット DSC-G1に位置情報を記録する機能を追加(2007/10/23)
【新製品レビュー】ソニー サイバーショット DSC-G1(2007/04/19)



本誌:田中 真一郎

2007/11/13 00:00
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