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【新製品レビュー】カシオ「EXILIM Hi-ZOOM EX-V8」

~ポケットに収まる光学7倍ズーム機
Reported by 本誌:折本 幸治

 ポケットに入るコンパクトなボディに、屈曲光学系の7倍ズームレンズを搭載したスタイリッシュモデル。前モデル「EXILIM Hi-ZOOM EX-V7」(以下EX-V7)のCCDを710万から810万に多画素化、さらに顔認識や「YouTube撮影モード」を新たに採用した。

 それら以外の基本装備はEX-V7を踏襲。焦点距離266mm相当(35mm判換算)にCCDシフト式の手ブレ補正を組み合わせることで、望遠寄りの撮影を得意とする。シャッター速度優先AE、絞り優先AE、マニュアル露出といった露出プログラムも搭載し、「テクニカルコンパクト」としての面も継承している。実勢価格は4万5,000円前後だ。


ウォータープルーフケースに対応

 見た目はほとんどEX-V7と変わらない。目立つのは、「EXILIM」のロゴがレンズカバー上から前面左下に移動したのと、ストロボの位置が右上から中央上側に替わったこと。また、レンズカバーのフチにクローム調の指掛かりを追加したことで、開閉がしやすくなっている。EX-V7でもとりたてて開閉が難しかったわけではなかったが、そういえば、若干手前に力を入れていたことを思い出す。

 レンズカバーは電源ON/OFFと連動するタイプ。ボタン長押しで起動する機種に比べて、スムーズな電源ONが可能だ。ただしEX-V7は開閉動作に対して電源スイッチが敏感すぎたため、困ることがしばしばあった。というのも、背面のMENUボタンや再生ボタンを右手親指で押そうとすると、どうしても右手がわずかに動く。それにつれて右手が触れているレンズカバーが動き、予期せず電源がOFFになるのだ。本機では電源OFFまでの余幅がEX-V7より多めにとってあるようで、意図しない電源断に見舞われることがなくなった。






 レンズは焦点距離38~266mm相当(35mm判換算)、F3.4~5.3の光学7倍ズーム。シャツの胸ポケットに入るコンパクトさで、7倍ズームはありがたい。レンズの高倍率化には弊害も考えられるが、日常的にいつも持ち歩くカメラこそ、多彩なシーンに対応したいもの。その願いに応えてくれる仕様だ。ただし、広角側を望む向きには物足りないだろう。また、望遠端のF5.3はともかく、広角端の開放F値も暗い。加えて、望遠端、広角端とも歪曲収差が大きい。

 液晶モニターは23万画素2.5型で変化なし。EXILIMらしく明るさは充分で、オートにしておけば日中でも視認性は悪くない。記録メディアはSDHC/SDメモリーカード、MMC、MMCplus。ガム型のリチウムイオン充電池「NP-50」もEX-V7と共通で、USB接続と充電を兼ねるクレードルが同様に付属する。出先でクレードルがかさばると感じるなら、別売の充電器「BC-40L」(6,300円)を買い揃える手もある。CIPA規格準拠の撮影可能枚数は約240枚。これもEX-V7から変わりはない。

 なおEX-V8専用のオプションとしては、ウォータープルーフケースの「EWC-110」(2万3,100円)がある。EX-V7では使用できないのは、ストロボの位置関係からだろう。いわゆるシーンモードにあたる「ベストショット」に、EX-V7にはない「水中」が存在するも本機の特徴だ。最近、各メーカーともコンパクトデジタルカメラのラインナップのほとんどで、水中対応が進んでいる。その流れに沿った変更といえよう。


専用のウォータープルーフケース「EWC-110」。価格は2万3,100円
EX-V8専用。EX-V7では利用できない

シンプルなYouTubeへのアップロード

 操作ボタン類の配置もEX-V7とほぼ共通。縦方向に操作する2段式のズームレバーも健在だ。操作速度に連動してズームの速さが変わる仕掛けで、心なしか、EX-V7より低速ズームの操作がやりやすくなっている。現行EXILIMでは珍しく、モードダイヤルを備えるのも特色。シャッターボタンは軽くて押し心地が良く、半押しのタイミングもつかみやすい。位置も適当に感じる。

 メニュー構成も新機能の顔認識以外はほとんど同じ。ブレ補正については、手ブレ補正だけを行なう「手ブレ補正」、ISO400まで増感する「被写体ブレ」、両方を同時に行なう「オート」が選べる。「被写体ブレ」および「オート」は、被写体の動きを見て増感するタイプ。別に、ISO感度設定にも「ISOオート」があり、こちらはISO250まで増感する。

 さり気なくうれしいのは、マニュアル露出でISO感度が変えられるようになった点。EX-V7のマニュアル露出は最低感度のISO64固定だったので、多くのシーンで、三脚を要するストイックな撮影を強いられていた。ただし多画素化の弊害なのか、EX-V8の最低感度はISO50に下がっている。なお、EX-V7と同じく絞りは3段階で、3段階目はNDフィルターを利用したもの。被写界深度は2段目と変わらない。


操作系はEX-V7と同じ。再生モードへは、ダイヤルではなく専用ボタンで切り替える。再生→撮影モードへの移行は、シャッターボタン半押しでも可能
バッテリーはEX-V7と共通。CIPA規格による撮影可能枚数も240枚で変わりはない

 新搭載の顔認識は、6月発売の1,200万画素機「EXILIM ZOOM EX-Z1200」(以下EX-Z1200)と機能的に同等。顔を発見するまでの「スピード優先」か、認識数を重視する「人数優先」の2タイプを設定できる。また、登録した顔を優先して認識する「ファミリー認識モード」も利用可能。詳しくは、「【新製品レビュー】EX-Z1200」でとり上げているので、参照いただきたい。

 同じく新機能の「YouTube撮影モード」は、ムービーベストショットのひとつとして選択できる。動画共有サイトとして人気のYouTubeにあわせた動画を記録するモードという触れ込みで、さらに添付ソフトの「YouTube Uploader for CASIO」を使えば、同モードで記録した動画をクレードル経由、またはカードリーダー経由で自動認識し、そのままYouTubeにアップロードできる。

 YouTubeで配信中の動画は、200kbps前後の粗いものが一般的だ。しかし、本機のYouTube撮影モードで記録した動画は、H.264の640×480ピクセル/30fpsと十分な画質となっている。アップロードする際、タイトル、概要、タグなどをローカルで付加することも可能だ。

 ただし同モードで記録すると、通常の動画圧縮モードであるUHQやHQ設定よりも大幅に圧縮ノイズが増える。YouTubeにおいては公開・共有することが最大の目的かもしれないが、そもそも動画の撮影チャンスは1回だけのことが多く、マスターデータとして、なるべく高画質な動画を手元に置いておきたいニーズも考えられる。手軽さは捨て難いものの、個人的にはなるべく高画質で記録し、自分で再圧縮や再編集を行なう方法を選びたいのが本音だ。いずれにしても、YouTubeのヘビーユーザーなら見逃せない機能といえる。

 僚誌BroadBand Watchの「清水理史のイニシャルB」で、EX-V8のYouTube対応について詳しく紹介している。ご参照いただきたい。


付属ソフトのYouTube Uploader for CASIO。デフォルトでは、SDカード内にEX-V7が作成するYouTubeモード専用のフォルダを見ている。ほかのフォルダを指定してアップロードすることも可能
YouTube Uploader for CASIOの設定ダイアログ。事前に登録したユーザー名とパスワードを入力しておけば、次からはボタン1つで指定ファイルをアップロードできる

コンセプトは健在、変化に乏しいのが残念

 ISO800までののカラーノイズは少なめで、大伸ばしを意識しないならISO400まで使える印象。ISO400以降はディテールが喪失するものの、むりやり塗りつぶしたような気持ち悪さはあまり感じない。ISO1600は高感度モードで利用できる。こちらはカラーノイズ、輝度ノイズとも目立つ。とはいえ、EXILIMエンジン2.0以前のモデルに比べるとかなり軽減されている。このあたりはEX-V7とほぼ同じ印象を受けた。

 絞りの形状がひし形なのもEX-V7と同じ。ひし形の光点ボケが生じたり、F値によっては点光源がX字状に大きな光条をひく。また、マクロモード広角端で10cm、同望遠端で1mという接写能力もEX-V7と同等。接写用途を見込んでの購入は、あまりお薦めできない。

 また、シャープネスやコントラストの処理に、最新モデルのEX-Z1200に近いクセを感じるようになった。画素数だけでなく、絵作りの面でも何か変更があったのかもしれない。


撮影時の液晶モニター。EX-V7とほとんど変わらない 再生時。こちらもEX-V7と共通のデザイン

 今秋は春モデルのパナソニックDMC-TZ3に加えて、キヤノンPowerShot SX100、ソニーDSC-H3といった比較的小さなボディの高倍率ズーム機が発売されている。それらに比べてEX-V8はズーム倍率が7倍と抑えめなので、高倍率とはいえ若干地味な印象を受けるかもしれない。ただし、ボディがより小さいことから、「高倍率をポケットに入れて持ち歩きたい」というニーズに対応できるのが強みだ。高倍率機にしては、起動やAFが速いのもうれしい。

 また、マニュアル露出をはじめとした多彩な機能も利用でき、慣れれば多彩なシーンに対応できる。顔認識も加わり、従来からの自動追尾AFもハマると強力。音声がステレオ記録だったり、記録中の光学ズームができたり、ワイドアスペクトでの記録が可能だったりと、動画関連も強力だ。オリジナルベストショットを作れば、少ないボタン操作数で異なる設定の組み合わせを呼び出せるなど、カスタマイズ性にも優れる。

 残念なのは、引き続き望遠側の歪曲収差が目立つ点と、マクロ機能の弱さ。マイナーチェンジと考えると仕方がないところだが、望遠側は画角が狭くなっても構わないので、次期モデルではカメラ内での補正を期待している。とはいえ、高倍率と多機能をポケットに忍ばせる愉悦は、本機ならではのものだろう。


作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算での焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


●画角


広角端
3,264×2,448 / 1/500秒 / F3.4 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 38mm
望遠端
3,264×2,448 / 1/250秒 / F5.3 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 266mm

HDズーム(6M)
2,816×2,112 / 1/250秒 / F5.3 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / ―
HDズーム(4M)
2,304×1,728 / 1/250秒 / F5.3 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / ―

HDズーム(2M)
1,600×1,200 / 1/125秒 / F5.3 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / ―
HDズーム(VGA)
640×480 / 1/200秒 / F5.3 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / ―

●歪曲収差


広角端
3,264×2,448 / 1/250秒 / F9.2 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 38mm
望遠端
3,264×2,448 / 1/400秒 / F6.5 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 266mm

●ISO感度


ISO50
3,264×2,448 / 0.8秒 / F4.6 / +0.33EV / WB:昼光 / 181mm
ISO100
3,264×2,448 / 0.4秒 / F4.6 / +0.33EV / WB:昼光 / 181mm

ISO200
3,264×2,448 / 1/5秒 / F4.6 / +0.33EV / WB:昼光 / 181mm
ISO400
3,264×2,448 / 1/10秒 / F4.6 / +0.33EV / WB:昼光 / 181mm

ISO800
3,264×2,448 / 1/20秒 / F4.6 / +0.33EV / WB:昼光 / 181mm
ISO1600(ベストショット高感度)
3,264×2,448 / 1/50秒 / F4.6 / 0EV / WB:オート / 181mm

●そのほか


3,264×2,448 / 1/250秒 / F5.5 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 83mm
3,264×2,448 / 1/125秒 / F4 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 76mm

3,264×2,448 / 1/320秒 / F5.2 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 61mm
3,264×2,448 / 1/500秒 / F4.6 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 38mm

3,264×2,448 / 1/200秒 / F4.4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 152mm
3,264×2,448 / 1/320秒 / F4.2 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 104mm

3,264×2,448 / 1/250秒 / F3.7 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 50mm
3,264×2,448 / 1/100秒 / F3.9 / 0EV / ISO100 / WB:昼光 / 66mm

3,264×2,448 / 1/125秒 / F4.7 / 0EV / ISO400 / WB:昼光 / 210mm
3,264×2,448 / 1/40秒 / F3.4 / -0.67EV / ISO50 / WB:昼光 / 38mm

3,264×2,448 / 1/320秒 / F5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 249mm
3,264×2,448 / 1/20秒 / F4.4 / 0EV / ISO100 / WB:昼光 / 143mm

3,264×2,448 / 1/100秒 / F4.1 / EV-1.67 / ISO50 / WB:曇り / 89mm
3,264×2,448 / 1秒 / F3.4 / -2EV / ISO50 / WB:オート / 38mm

動画(通常モード)

クリックすると動画をダウンロードします。

H.264 / MOV / 8MB H.264 / MOV / 7.8MB

H.264 / MOV / 15MB H.264 / MOV / 7.5MB


動画(YouTubeモード)

クリックすると動画をダウンロードします。
H.264 / MOV形式 / 1.6MB H.264 / MOV / 1.6MB

H.264 / MOV形式 / 1.9MB H.264 / MOV / 1.6MB


YouTubeにアップロードした動画



URL
  カシオ
  http://www.casio.co.jp/
  製品情報
  http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_v8/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EXILIM Hi-ZOOM EX-V7)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#ex_v7
  清水理史のイニシャルB(YouTube対応デジタルカメラ「EXILIM EX-V8」)
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/shimizu/19389.html

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本誌:折本 幸治

2007/10/05 00:02
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