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【新製品レビュー】富士フイルム FinePix F40fd

~SDメモリーカード以外にもいろいろ改良された最新F
Reported by 本誌:田中 真一郎

 光学手ブレ補正には見向きもせず(?)、ひたすら高感度路線を突っ走る富士フイルム。その嚆矢となったFinePix Fシリーズの最新機種が、FinePix F40fdだ。

 まずはこれまでの最新機種、FinePix F31fdとの主なスペック上の違いを確かめておこう。

 F40fdF31fd
撮像素子1/1.6型スーパーCCDハニカムHR1/1.7型スーパーCCDハニカムHR
有効画素数830万画素630万画素
記録画素数3,296×2,472ピクセル2,848×2,136ピクセル
最高感度ISO2000ISO3200
焦点距離(35mm換算)36~108mm36~108mm
開放F値F2.8~5.1F2.8~5
最短撮影距離約45cm約60cm
マクロモード約7~80cm(広角)
約30~80cm(望遠)
約5~80cm(広角)
約30~80cm(望遠)
測光方式TTL256分割TTL256分割
連写最短約0.8秒間隔、2枚まで最短約0.45秒間隔、3枚まで
液晶モニター2.5型TFT(約23万画素)2.5型TFT(約23万画素)
記録メディア内蔵メモリ(約25MB)
xDピクチャーカード
SDメモリーカード
内蔵メモリ(約26MB)
xDピクチャーカード
電源NP-70リチウムイオン充電池NP-95リチウムイオン充電池
撮影可能枚数(CIPA準拠)約300枚約580枚
本体サイズ(幅×奥行×高さ)95.7×23.3×59mm92.7×27.8×56.7mm
重量
(本体のみ)
約155g約155g
重量
(バッテリーとxDピクチャーカードを含む)
約180g約195g


 こうしてみると、F40fdになって画素数が増え、SDメモリーカードが使えるようになったが、感度、測光方式、連写性能、撮影可能枚数などはスペックダウンしているのがわかる。

 また、F31fdには絞り優先AEとシャッタースピード優先AEが搭載されているが、F40fdには搭載されていない。

 どうやらF40fdはFinePix Fシリーズの「最新」機種ではあるもの、「最高」の機種ではないようで、F31fdの後継機種と言い切るわけにもいかないようだ。実際、F31fdはF40fd発売後も併売されている。


スマートになったボディ、ズームレバーを採用

F31fd(左)とF40fd
 外観上では、モードダイヤル位置の変更と、ズームレバーの変更がもっとも大きなポイントだ。

 F31fdのモードダイヤルがボディ上面、シャッターボタンの横にあったのに対し、F40fdでは、ボディ背面の右上部、右手だけで構えるときにちょうど親指が当たる位置に移された。実際、ダイヤルはすこしへこんでいて、親指の置き場として考慮されているようだ。

 背面に移ったことでダイヤルが大きくなり、視認性はよくなったのだが、右手だけでのダイヤル操作がしにくくなったように感じた。また、モードダイヤルに指を押し付けた状態で持ち歩いたり、構えなおしたりするうちに、ダイヤルが回ってしまうことがあった。

 一方、ズーム操作は背面上部のシーソーボタンから、シャッターボタン周囲に設けられたレバーに変更された。こちらはF31fdよりも自然に操作でき、微調整もやりやすくなったように思われた。


F31fd(手前)から、モードダイヤルとズームレバーが変更された
F40fdでは、モードダイヤルを回すと、3秒ほどモードのガイダンスが表示されるようになった

 外観デザインはF31fdよりもやや薄く、より丸みを帯びている。本体色がF31fdよりも明るくなり、より軽快な印象になった。ただし、すこし質感が落ちた印象は拭えない。とくに、ボディが金属なのに対し、右手側のグリップ部だけが明らかにプラスチックとわかる素材になっていて、なおかつ、ボディの金属と色を揃えようとしているところに安っぽさを感じる。


F31fd(左)とF40fd F31fd(左)とF40fd

F31fd(左)とF40fd
F40fdのグリップ部はほかの部分と表面処理が異なる

どっちを選ぶ?

xDピクチャーカードとSDメモリーカードの両方を1スロットでサポートする
 さてF40fdの最大の話題は、ついにSDメモリーカードがサポートされたことだ。記録メディアを理由にFinePixをあきらめなくてもよくなった人も、大勢おられるだろう。もはやデファクトスタンダードになりつつあるSDメモリーカードは、端子の露出が少なく取り扱いが容易だ。また、価格対性能比、容量対性能比などの点で、xDピクチャーカードよりも選択肢が広い。

 残念ながらSDより大容量のSDHCメモリーカードには対応していない。しかし、夏頃には対応ファームウェアが公開される予定だ。

 なお、F40fdのカードスロットを「デュアルスロット」と表記する例が散見されるが、これはまちがいで、カードスロットは1つだけ、シングルスロットである。1つのスロットをxDピクチャーカードとSDメモリカードで共用している。挿入する向きも一緒で、xD用端子の奥にSD用端子があるようだ。

 ここで、xDピクチャーカードとSDメモリーカードでデータの書き込み速度に違いがあるのかどうかを調べてみた。

 そこで、F40fdを連写モードに設定し、レリーズ半押し(合焦後)から2枚連写後に「保存中」の表示が消えるまでの時間をストップウォッチで測ってみた。3回計測して、その平均を掲載している。メモリカードは手元にあったものを使っただけだし、あくまで手動の簡易計測で、厳密なテストではないことをお断りしておく。結果は次のとおりになった。

内蔵メモリ7.85秒
SDメモリーカードpqi Hi-Speed 150 2GB6.62秒
ATP Pro Max 1GB6.48秒
ノーブランド 2GB6.95秒
xdピクチャーカード富士フイルム Type M 2GB7.36秒
オリンパス Type H 1GB6.80秒


 いかがだろうか。pqiとATPのSDメモリーカードはどちらも150倍速(22.5MB/sec)、ノーブランド品のデータ転送速度は不明である。0.1秒単位ではあるが、筆者は意外に差がつくものだという印象を受けた。さらに意外なのは内蔵メモリの遅さで、高速なメモリーカードとは1秒以上の差がついている。

 こうしてみると速度の点でもSDメモリーカード有利という感じがするが、連写枚数が2枚までのF40fdでは、どのカードを選んでも実用上は問題ないだろう。


小さくなった電池、省電力モードを新設

F31fd(左)とF40fdのバッテリー
 F31fdとの大きな違いのひとつに電池がある。どちらもリチウムイオン充電池だが、F31fdは1,800mAhのNP-95、F40fdは1,150mAhのNP-70を採用している。大きさも容量も違うので、CIPA準拠の撮影可能枚数もF40fdが約300枚、F31fdが約580枚と、倍近い開きがある。こうして比較してしまうと少なく思えるが、いまどきのスリムなコンパクトデジタルカメラとしては、300枚は標準的な持ちと言えるだろう。それに、電池の小型化がボディを薄くすることにも貢献しているのだから、これはこれで改良点と言えるでのはないか。

 少なくなった撮影可能枚数を補うためか、F40fdには「節電」というモードが新たに搭載された。

 「F」の文字が書かれたF-モードボタンを押すと「F-モードメニュー」が表示されるが、ここに「パフォーマンス」という項目が新設され、ここから「節電」、「AFスピードアップ」、「モニターパワーアップ」が選べるのだ。


F-モードメニューに「パフォーマンス」が追加された
「パフォーマンス」から「節電」、「AFスピードアップ」、「モニターパワーアップ」が選べる

 「AFスピードアップ」はF31fdまであった「クイックショット」と同じくAFの動作速度を上げるもの。その代わり、このモードでは、通常は約45cm(広角端)/約60cm(望遠端)~無限遠のAFの合焦範囲が、約1m~無限遠になる。

 F40fdの「AFスピードアップ」モードはAF速度が速くなるだけでなく、顔検出機能がONになり、液晶モニター表示のフレームレートが上がり、自動液晶モニターOFFが30秒になり、オートパワーOFFが5分になる。

 一方「節電」では、AF速度が遅くなるほかに、顔検出がOFFになり、液晶モニター表示のフレームレートを下げ、液晶モニターは10秒間でOFFになる。なおこのモードで顔検出をONにすると、節電モードが解除される。

 もうひとつの「モニターパワーアップ」は液晶モニターが明るくなり、フレームレートが上がるモード。つまり、AFスピードアップとモニターパワーアップは、節電よりも操作の快適性を重視したモード、節電は省電力モードということになる。

 試したところ、AFスピードアップでは電池の減りが速い印象を受けた。レスポンスは確かに節電モードよりもよくなる。

 この設定は、F40fdの初期設定で好みのモードを選ばされるのだが、初めてのときはどのモードを選ぶべきか迷うかもしれない。「節電」をデフォルトとするのが筆者のお勧めだ。

 節電モードではAFが遅くなるとはいえ、通常はイライラするほどのスピードになるわけではない。顔検出もOFFになるが、F40fdには独立した顔検出ボタン(顔キレイナビボタン)があって、必要なときにはすぐONにできるから、そんなに不自由はしないだろう。むしろ、節電モードで撮影可能枚数が増えるメリットを買いたい。AFが遅くても、電池切れで何も撮影できなくなるよりはマシだからだ。


相変わらず豊富な撮影モード

 最近のFinePixシリーズらしく、F40fdにも豊富な撮影モードが用意されている。ほぼユーザーが設定する項目がない「オート」のほかに、露出補正や測光方式、ホワイトバランスなどを選べる「マニュアル」、シャッタースピードを速くする「ブレ軽減」、ブレ軽減に加えてストロボを発光禁止とする「ナチュラルフォト」、ストロボ発光と非発光の2枚の写真を自動的に撮影する「高感度2枚撮り」と、最近のFinePixシリーズではおなじみになったモードが用意されている。また、「人物」、「風景」、「スポーツ」などの多彩なシーンポジションも用意されている。


F31fdのモードダイヤル
F40fdのモードダイヤル

 F31fdのモードダイヤルでは「ナチュラルフォト」、「高感度2枚撮り」はシーンポジションと同じ項目に入っており、メニューボタンから選択する必要があったが、F40fdでは両方とも独立したモードとしてモードダイヤルにポジションが設けられている。またダイヤルには「SP1」、「SP2」が新たに設けられ、ここには任意のシーンポジションを割り当てられるようになった。よく使うシーンポジションがあれば、ここで2つまでダイレクトに選択できるようになっているわけだ。

 ここまでいろいろなモードがあると、ちょっと煩雑な印象を受ける。とくにオート、ブレ軽減、ナチュラルフォトの使い分けがよくわからない、というユーザーも出てきそうだ。筆者としてはブレ軽減はまあいいとして、ナチュラルフォトは「ストロボ発光禁止」にでもしたほうがわかりやすいと思うのだが、どうだろうか。

 さらに、F-モードボタンから表示するF-モードメニューで、「スタンダード」、「クローム」、「B&W」の「FinePixカラー」を設定できるのも、ほかのFinePixシリーズと同じだ。

※作例のリンク先のファイルは撮影した画像です。クリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで開きます。


FinePixカラー スタンダード FinePixカラー クローム

FinePixカラー B&W

高感度はF31fdに軍配も、実用上は問題なし

F40fdでは、ユーザーが任意に設定できる感度はISO1600まで
 さまざまなデジカメが高感度撮影機能を装備する中、この分野のパイオニアであるFinePixシリーズの画質は、いまだにトップクラスを維持している。F40fdは最高感度こそF31fdのISO3200から落ちるISO2000となったものの、日常の範囲内では十分以上に実用になる感度と画質を提供してくれる。

 F31fdをはじめ、これまでのFinePixシリーズと同様に、感度をユーザーが自由に選べるのはマニュアルモードだけで、そのほかのモードでは感度の自動制御しか選べない仕様も、高感度画質への自信の表れだろう。

 ただし、F40fdとF31fdの大きな違いがひとつあって、F31fdではマニュアルモードでISO3200までユーザーが選択できるのに対し、F40fdではマニュアルモードでもISO1600までしか選択できず、最高感度ISO2000は感度自動制御時にのみ、設定されるようになっている。

 F31fdの1/1.7型 有効630万画素CCDが、F40fdで1/1.6型 有効830万画素になったことでノイズなどへの影響が心配されるところだが、実際、F31fdと等倍画像で比較すると、ISO400あたりからF40fdのほうのディテールの甘さやノイズの多さがわかるようになり、ISO1600では歴然とした差がついている。一方で、F40fdはノイズ除去で失われるディテールを、増えた解像度で補っているようでもある。

 しかし、これも厳密に比較したらの話で、F40fd単体で見るならばISO400でも等倍鑑賞やA4やA3への大伸ばしに耐えられる画像を生成してくれるし、Lサイズへのプリントや、800×600ピクセル程度に縮小するのであれば、ISO800やISO1600でも十分常用となる。高感度画質が若干下がったことよりも、高画素化によってトリミングの自由度などが広がったメリットのほうが大きいと考えるべきだろう。

※作例のリンク先のファイルは撮影した画像です。クリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで開きます。



ISO100
ISO100

ISO200
ISO200

ISO400
ISO400

ISO800
ISO800

ISO1600
ISO1600

ISO3200 ISO2000

最新機種ならではの改良点が魅力

 F40fdは、F31fdよりもスペック的に若干劣るところを見ると、F30やF31fdの廉価版として海外で発売されているF20の後継と考えるのが自然なようだ。しかし、富士フイルムからはそのような正式な説明はない。F31fdよりも機能や操作が簡略化され、モードダイヤルなどの設定時にF31fdよりも親切なガイダンスが表示されるようになったところを見ると、F31fdよりもエントリー寄りのユーザーを想定しているようである。

 しかし、エントリー向けにスペックダウンされたとはいえ、筆者はF31fdよりも使いにくいと感じたことはなかった。絞り/シャッタースピード優先AEやISO3200を使いたければF31fdを選ぶしかないが、サイズや操作性の点で取り扱いやすさが向上し、コンパクト機としての総合力はF40fdのほうが高いように思う。効果的で設定しやすい節電モードの新設も好感が持てる。

 それにSDメモリーカードが使えて有効830万画素のFシリーズは、今のところF40fdだけだ。Fシリーズの高感度性能をSDメモリーカードで使いたいという向きだけでなく、最新のFを使いたいという人も、F40fdを試す価値はあるだろう。


作例

※作例のリンク先のファイルは撮影した画像です。クリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで開きます。
※すべて画像サイズは3,296×2,472ピクセル、露出補正なし、オートホワイトバランスで撮影しています。
※作例下の撮影データは、露出時間/絞り/感度/実焦点距離を表します。


「fd」の名があらわすとおり、「顔キレイナビ」こと顔検出AF&AEを装備。逆光で顔に露出を合わせ、自動的にストロボを炊いてくれた
1/850秒 / F6.4 / ISO100 / 8mm / ストロボ使用
どの角度から検出されなくなるのかを試してみたら、このあたりまで顔を検出してくれた
1/950秒 / F4.4 / ISO100 / 18.2mm / ストロボ使用

1/60秒 / F2.8 / ISO800 / 8mm / ストロボ使用
1/750秒 / F6.4 / ISO100 / 8mm

1/500秒 / F5 / ISO100 / 8mm
1/300秒 / F2.8 / ISO100 / 8mm

1/250秒 / F3.5 / ISO200 / 12.5mm
1/280秒 / F5.1 / ISO100 / 16.3mm

1/90秒 / F2.8 / ISO800 / 8mm
1/120秒 / F2.8 / ISO800 / 8mm

1/160秒 / F2.8 / ISO200 / 8mm
1/280秒 / F2.8 / ISO200 / 8mm

1/350秒 / F4.5 / ISO100 / 8mm
1/500秒 / F5.6 / ISO100 / 8mm

1/350秒 / F5.6 / ISO100 / 12.5mm
1/340秒 / F4.5 / ISO100 / 10.7mm

1/250秒 / F4 / ISO100 / 8mm / マクロモード
1/320秒 / F4 / ISO100 / 8mm / マクロモード

1/300秒 / F7.1 / ISO100 / 24mm


URL
  富士フイルム
  http://fujifilm.co.jp/
  製品情報
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixf40fd/

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本誌:田中 真一郎

2007/04/10 01:51
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