デジカメ Watch

【新製品レビュー】日本HP Photosmart Pro B9180

~安定した発色のキャリブレーション機能搭載A3ノビプリンタ
Reported by 本田 雅一

Photosmart Pro B9180
 日本ヒューレット・パッカードがプロフェッショナル及びハイアマチュア向けに発売したA3ノビ対応顔料フォトプリンタ「Photosmart Pro B9180」が、当初予定の6月から5カ月遅れで市場に投入された。

 しかし、「より完成度を高めるため、第2世代と言えるほどに異なる製品になった」とHP自身が話していたように、こうしたプリンタに求められる色の正確性や階調特性について、コンシューマ向けプリンタとは一線を画する性能を持っているようだ。

 今回のテストでは写真印刷時の高速性、階調の滑らかさ、各純正用紙における良好なカラーマッチング結果などが確認できた。また、大容量インクタンクの採用により、低いランニングコストも期待できる。大柄なボディはやや置き場所を選ぶ印象だが、横幅はライバルのエプソン「PX-5500」などとさほど変わらない。

 正確な発色を保つため、自動キャリブレーションを行なうハードウェア機能も備えており、経年変化や個体差による微妙な発色のブレも自己補正する。これまでコンシューマ向け顔料系フォトプリンタと言えば、エプソンがほぼ独占していたが、その強力なライバルとしての力を備えている。

 フォトプリンタに対し、どのような性能を求めるのか。おそらく本機の評価は、製品を評価する者によって大きく異なるだろう。しかし、意図したカラーを出しやすい、調整しやすいといった“コントローラブルな色再現”を求めるならば、高い満足度を得られるはずだ。


簡単なカラーマッチングと顔料系インクによる高速印刷を実現

インクタンク
 B9180は、コンシューマ向けフォトインクジェットプリンタのブランド“Photosmart”の名を冠しているが、しかしその対象ユーザーや製品の性格は大きく異なる。Photosmartが簡単・シンプルにキレイな写真を出力するホームDPEマシンを目指しているのに対して、Photosmart Proは同じ簡単・シンプルでもユーザーの意図した通りの色再現で出力することを重視している。

 このためB9180は、印刷メディアごとに最適化したICCプロファイルを用い、カラーマッチングシステムを通じて印刷した際の、色の正確性や階調の滑らかさを重視した開発が行なわれているのだ。これは古くはエプソンの「PM-4000PX」、今ならば「PX-5500」と同様の位置付けと言える。

 ただし、ICCプロファイルを用いてカラーマッチングシステムを正しく設定して印刷するのは、思いの外面倒な設定も多い上、手順の多さによるミスも多い。そこでB9180ではアドビシステムズのPhotoshop CS以降に対応したプラグインを添付。ひとつのダイアログ内で印刷に関連する設定を1度に行ない、簡単にカラーマッチングシステムを用いた出力を行なえるようになっている。

 プロフェッショナルおよびハイアマチュア向けというと、とかく複雑で面倒くさい印象を感じるだろうが、思い通りの色味で印刷するための手順はむしろ簡単だ。

 こうしたコンセプトのもと、ハードウェアはインクタンクをヘッドと分離し、大容量のインクタンクを利用可能にしている。2インクごと1つのヘッドにインクを充填しながら動作する仕組みになっており、インク交換時の再充填で他インクを大量に捨てることがなく、また1カートリッジのライフが長いため、インクタンクの交換頻度も低い。

 その代わり、1本あたりのインクは高価になるが、大量にフォトプリントを行なうのであれば、1枚あたりの印刷単価ではむしろ有利だ。A3ノビなど大きな用紙に印刷する機会が多いならば、A4プリンターとインクカートリッジを共有するA3ノビプリンターよりもお得になるケースが多いだろう。

 ヘッドのノズル数は1インクあたり1,056ノズルで、ブラック、マットブラック、フォトグレーのモノクロ3インクに加え、シアン、マゼンタ、イエローの三原色。それに薄いシアン、マゼンタを合わせた8インクを採用する。インク滴はフォトブラック、ライトグレー、ライトマゼンタ、ライトシアンが4pl、マットブラック、シアン、マゼンタ、イエローが6plである。

 A4にフチありで出力した際の印刷速度は2分34秒と高速。これは“高画質”モードで印刷したもので、“最大DPI”モードでは速度は低下するが、画質はほとんど変化しないため、通常は“高画質”モードを使う方がいいだろう。

 両者の違いは高画質モード時は色情報をプリンタに送り、プリンタが色の組み合わせパターンを展開して印刷。最大DPIモードでは完全にパソコン内部でドット配置をすべて決める違いがあるだけだ。


グレーを基礎に安定した発色

グレースケール印刷では、カラーインクも使用するコンポジットグレーも利用できる
 B9180で印刷した写真を見て感じるのは、なんといっても安定した発色である。派手過ぎず、地味過ぎず、実にナチュラルな表現だ。

 デフォルトのカラー設定はカラーマッチングよりも、DPE的な見栄えと再現性の両立を狙ったコンシューマ製品向けのセッティングだが、自動補正はすべてデフォルトでOFFとなっており、カラーマップそのものもProが付かないPhotosmartよりもおとなしい。もちろん、自動補正機能をオプション設定で効かせることも可能だ。

 とはいえ、本機がもっともその実力を発揮するのはICCプロファイルを活用したモード。WindowsではPhotoshopなどのカラーマッチングシステムを活用したアプリケーションからの印刷時、MacOS XではColorSync対応アプリケーションからの印刷時に、純正用紙ごとに用意されたカラープロファイルを割り合てることで、より正確な発色を期待できる。

 日本HPでは、サードパーティ製のアートペーパーなどのプロファイルもインターネットを通じて配布する予定。ピクトリコ、PCM竹尾、富士フイルムなどを含み、国内8種類、国外25種類に対応するという。

 日本HPは近年、グレーインクをカラー印刷で活用することに積極的だ。一部コンシューマ製品では、カートリッジの組み合わせによっては薄いシアンとマゼンタをあえて使わず、グレー階調のインクとCMYの組み合わせだけで写真印刷を行なうモードも用意している。

 グレーを基調に濃淡を付け、その上にカラー情報を乗せていくという絵作りは、明暗の階調の中で色相が不安定に転ぶ現象を抑えることができる。その効果は肌のハイライトからシャドウへと落ちていく描写部分で特に効果的なほか、ボケた背景の中でいくつもの色が混ざり合う部分での階調性やボケ方の描写などで活きてくる。

 本機では4plと6pl、2種類のインク滴サイズが使い分けられているが、階調の切り替わり部分では小さいインク滴が多用されるようプログラムされているようで、見た目には粒状性が気になるところはない。特定の色域で階調性が粗くなるなどの不均一な描写も目立たなかった。

 こうした特徴はICCプロファイルを用いた際に、特に良い結果をもたらしている。ICCプロファイルは色特性を記した情報ファイルで、この情報を元にカラーマッチングシステムの色変換エンジンが、データソースの色を各機器ごとの色へと変換する。このため、あらゆる色域で素直な色再現が行えていないと、絵全体では色の印象は合わせ込めても、細かなところで破綻が発生しやすい。B9180にはそうしたリニアに色が反応しない領域がほとんど見られない。

 ICCプロファイルそのもののデキも良いが、元々の色再現特性の素直さが、優秀なICCプロファイルとセルフキャリブレーション機能と相まって、良い結果をもたらしているのだろう。

 唯一、気になったのはハイキーな写真において白トビする間際の階調が、やや唐突に白へと飛ぶところだ。どのプリンタも白への飛び際を自然に表現するのは難しいものだが、B9180は比較的見通しよく階調、ディテールが出ているところから、急に白へと飛んでしまう傾向が若干強めに見られた。また肌色や赤、緑の再現の正確さに比べると、青側は若干おとなしくなる。


モノクロではグレー階調が良好も光源による発色のクセはやや残る

 さて一方、光源の違いによる色味の変化に対しても見ていきたい。顔料インクの色材は色純度が高い(反射する光の波長がピーキー)反面、光源のスペクトラムにも敏感。つまり光源によって全く異なる色に見えてしまう傾向が強い。特に肌色の変化は大きく、D65光源に合わせて作られた写真を通常の蛍光灯下で見ると肌が赤く見えてしまう(PM-4000PXなどで強く見られる傾向)。

 この問題は本機だけでなく、近年の傾向としてグレーを多用した絵作りとすることで、変化の度合いを抑え込んでいる。B9180のの場合も、一般的な蛍光灯では確かに赤みが強くなるが、比較的軽微な変化に留まっている。色味の変化に敏感な肌色だけに、完璧ではないが許容範囲だろう。もちろん、D65光源の元では、期待される色味に仕上がる。

 こうした光源による色味の変化特性をメタメリズムという。そのメタメリズムがカラー印刷よりも重要になってくるのが、モノクロ印刷である。グレーに整えられたインクも、光源のスペクトラムによってはわずかに色が乗って見える。これは原理上、致し方ない。問題はどこまでそれを押さえ込めるかだ。

 B9180でのモノクロ印刷は、プリンタドライバに「グレースケール」というカラーモードが用意されているが、このモードは完全にニュートラルなグレーにするのではなく、モノクロ写真として見栄えのする程度に色を乗せているという。温黒調あるいは冷黒調に調整する機能もないため、基本的にはカラー印刷のモードでアプリケーションの側で色を暖色、寒色、ニュートラルにと調整して印刷する。

 今回は、彩度を全く付けない無彩色のデータを用いて印刷してみた。ファインアート紙などマット系用紙との相性は良く、満足できる印刷結果が得られた。マットブラックはたいへんに濃度が高く、またドライバのデキが良いのか、黒の中の階調表現がいい。黒いピアノ、黒い革ジャン、黒いドレスなど、黒い被写体の質感の描き分けがきちんを行なわれている。

 しかし、光沢系のアドバンスフォトペーパーでは、若干グレースケールの中に色が乗った部分を見つけることができる。ただし、これは通常の蛍光灯下での話で、D65光源下ではニュートラルになる(おそらくマット系の用紙でもメタメリズムの問題は出ていると思われるが、用紙の質感の違いからか、あまり目立たないのだろう。またマットブラックとフォトブラックというインクの違いもある)。

 B9180はニュートラルなモノクロ写真を印刷する際、グレーとフォトブラック(もしくはマットブラック)を中心に使い、カラーインクはほとんど乗せない。同様の使い方でキヤノンは全くカラーインクを使わず、エプソンはカラーインクをより多く用いてグレートーンを作るという違いがある。

 こうした違いがある理由は、グレーとブラックだけのノズルで印刷するとバンディングノイズが出やすいためだ。カラーインクを適度に混ぜながらグレー階調を作る方がノズルの細かいバラツキが目立たない。バンディングを回避するには、ノズルを間引いて印刷するなどの工夫が必要となり、印刷速度が低下してしまう。


 またカラーインクを多く使いすぎると、ピーキーな反射特性の色材が混じることになり、メタメリズムのコントロールがしにくい。では全く使わない方が良いかと言えば、前述したようにグレーインクにもメタメリズムの問題はあるため、多少はカラーインクを混ぜた方がコントロールしやすい面もある。

 このように、モノクロ写真を美しく出力するためには、カラー印刷と同等あるいはそれ以上にノウハウや工夫が必要だ。モノクロフィルムと印画紙を超えるのは、現状ではかなり難しい。

 しかしデジタル出力には別の魅力もある。デジタルのカラー情報からRGBの混合比を自由に調整してモノクロ写真の絵作りを行い、トーンカーブも自在に操ることができる。そうした意味では、弱点と長所がキヤノンやエプソンとは異なる本機のモノクロ印刷性能は現時点で“使える”レベルに達している。


添付ソフトウェアとドライバの初期設定に関しては若干の注文も

 まず添付ソフトウェアだが、はがき印刷ソフトを添付するのは良いが、できればエプソンのように色味や明るさを少しずつずらしながらマトリックス状に印刷し、好みの絵を指定して印刷するようなツールも欲しい。

 本機にはX-Liteのモニタキャリブレータを50%OFFで購入できるクーポンが添付されているが、誰もがこのような装置を揃えられるわけではなかろう。大まかなモニタキャリブレーションは、付属ソフトで行なえるようになっているが、“大まか”な調整では本機の良さを引き出せない。

 また、ひじょうに便利なPhotoshop用プラグインも、Photoshopの自動処理マクロを利用したものであり、Photoshop ElementsやPhotoshopプラグイン互換のレタッチソフトでは利用できない。

 そしてドライバだが、Windowsのドライバに関しては大きな問題はないが、Mac OS X用ドライバの場合は、使いこなしに若干の注意が必要となる。ドライバのカラーモードはデフォルトで「ColorSmart/sRGB」になっている。

 このカラーモードではICCプロファイルが埋め込まれたデータの印刷時は、自動的にプロファイルを用いた変換出力が行なわれ、プロファイルがない場合はsRGBの色域で処理をする。Windowsではこれで問題はないが、Mac OS X用ドライバではMac OSのデフォルトディスプレイガンマである1.8で印刷されてしまう。

 ご存知のようにsRGBのガンマは2.2であり、デジタルカメラの画像をそのまま印刷しようとすると、思ったよりも明るい写真になってしまう。またPhotoshopなどいくつかのソフトは、Exif画像を(AdobeRGBが指定されていない限り)sRGBと見なして表示する。このとき、ディスプレイガンマの違いも考慮して表示されるため、画面表示と印刷結果が異なってしまう。

 HPにこの問題を報告したところ、調査するとの報が入ったため、問題として認識されれば速やかに解決されるだろうが、購入を検討している読者はこの点に注意して欲しい。現時点での解決策は、ColorSyncを用いてカラーマッチングをかけることだ。

 さて、ここからは実機を使用して印刷速度と画質を確かめてみたい。


印刷速度と画質をチェック

 さて、ここからは実機を使用して印刷速度と画質を確かめてみたい。

 フチあり、なしの速度差は比較的少ない。高画質モードと最大DPIモードは、見た目には画質差がほとんどないため、ここでは高画質モードのみを掲載している。なお、テストでは全てアドバンストフォトペーパーを使用した。画質の高さや顔料インクである事を考えると、速度はかなり高速な方と言える。コストさえ気にしないなら、A4サイズのプリントをバンバン出せる。

用紙サイズ プリント時間
A4フチあり(周囲0.5インチ) 2分34秒
A4フチなし 3分8秒
A3ノビフチあり(周囲0.5インチ) 5分38秒
A3ノビフチなし 6分30秒


 プリントの画質評価には、2005年のプリンター特集と同じサンプルを中心に行なった。サンプルについては「インクジェットプリンター 2005年冬モデルレビュー」(http://dc.watch.impress.co.jp/static/printer/methou.htm)を参照されたい。

 今回もスキャンした画像を掲載しようと考えたが、顔料インクは光の反射周波数がピーキーなためか、スキャナで読み込んでも、きちんとした色にならない部分が多い。そこで今回は、原画に対してどのように違うかをコメントするだけに留める。また、印刷はPhotoshop用プラグインからColorSyncを用いて行っている。

 ●女性ポートレイト

 背景の暗幕と女性のトップス、ボトム。すべて黒だが、同じ黒でも異なる質感であることが、ハッキリと描き分けられる点に感心する。黒側の階調表現は、相当得意と見ていいだろう。肌色はやや赤みが抜けて黄緑成分が多いように感じられた。ただし、他の例ではほぼニュートラルな表現となる場合もあり、明るめの肌色だけに出るクセかもしれない。なお本文中にも述べたように、一般的な蛍光灯下では赤みが強く見える場合があるので注意したい。

 ●ペンギン

 濡れた表面の描写もいいが、背景になっている池の緑や岩、それにペンギンの黄色いワンポイントなどの色相がバッチリ印刷結果と合っているので驚いた。特に明暗のトーンは正確で過不足なく忠実に描き分けた。

 ●チャイニーズシアター

 特徴的な朱色の柱、やや極端に深い青をした空、白人特有の赤みの強い肌色など、モニタ上で確認した通りの色味。明るいところが良好に印刷されるのは当然として、日陰になっている部分の壁やレリーフの質感が不満なく描かれているのが良い。

 ●めがね橋

 チャイニーズシアターとは異なるタイプの青空だが、こちらも色相や階調の表現で不満は持たない。逆光の橋本体の立体感もきちんと描けている。やや不満を感じたのは、白飛び直前の粘り。暗部階調は粘る本機だが、ハイライト側は意外にアッサリと階調がなくなってしまう。

 ●モノクロ写真

 高演色蛍光灯下ならば、ほぼ文句なしに仕上がっているが、通常の蛍光灯下では階調ごとに若干、色が変化して見える。ただ、ニュートラルなグレートーンを印刷した時だけではなく、やや色づけしたモノトーンのデータを入れた際にも、色相が比較的安定しているのはさすが。モノクロ写真を印刷して遊ぶ程度ならば、何の文句もない。マット系の用紙においてマットブラックを使っての印刷時の方が印象が良い。


インク残量とインクコストについて

 追記として本機のインク残量の減り方や、インクコストに関しての予備知識を記しておきたい。

 本機はA3ノビのプリントで、80~100枚分に相当するという大容量インクタンクを採用している。このため1本あたりのインクカートリッジは高価(HP Directplusで3,980円)だが、1枚あたりのコストは安くなると言われている。

 今回はコスト計測を行なっていないが、過去に何度もインク残量の重量検査などで計算をおこなってきた経緯からすると、メーカーが公表する1枚あたりのおよそのインクコストは、おおむね公表値通りで各社比較しても問題ないと考えられる。何年かにわたってインクコストを計測してきたが、メーカー公表値が著しく計測結果と異なったことはなかった。

 ただし、各社が公表している1枚あたりの印刷コストは、用紙代を含むものと含まないものがある点に注意する必要がある。また、インクコストの面で有利な用紙で計測しているケースもある。一般的に、より高画質な写真用紙ほどインクコストは高くなる。これは、用紙のインク受容量が多くなるためだ。(ただしサードパーティ製用紙の場合はプリンタードライバの設定による)。

 さらに全カートリッジを新品に交換し、連続印刷時のコストはカタログ値に近いものになるが、それ以外の条件ではインクが無駄になっていることもある。たとえばインクポンプがインクの数だけない場合、あるインクタンクを交換するために、全インクを捨てている場合がある。

 別の機種ではカラーを2つのグループに分けて2つのインクポンプを使っているものもある。よく言われるように、インククリーニングで、すべてのインクが消費されてしまうのもその通りで、定期的な自動メンテナンスによって印刷しなくてもインクが減っていくケースもある(ただし、これは性能を維持するために必要)。

 インク交換時やインククリーニング時にインクが無駄にならないのは、吐出したインクをリサイクルする仕組みを持つHP製のコンシューマ向けカラーインクジェットプリンターのみだ。しかし、本機に関してはインクのリサイクル機能は組み込まれていない。

 リサイクルは行なわれないが、その代わりに8個の独立したインクポンプが内蔵されており、インク交換時に全インクを消費するといった無駄はない。インクカートリッジを1本交換すると、連鎖反応的に次々に交換となり、最初に交換したカートリッジがあっという間に半分ぐらいになるといった経験をした事がある読者もいるだろうが、この機種にはそうした心配はないと言っていい。


 なお、本機はインクカートリッジからのインクを、一端ヘッドユニット内のインク室に移し替えて印刷する。パソコン上のユーティリティで表示される残量は、インクカートリッジ内の値になっており、最初にインクカートリッジを取り付けてから残量をチェックすると、一気に数10%のインクが減っているのが見えるはずだ。

 これはインク室への初期ローディングによって減っているためで、インクがどこかに消えてなくなっているわけではない。このため、もし自身でインクコストの計測を行なうならば、初期ローディングを終えたあとに、すべてのインクを交換してから計測を始めないと、正しい計測ができないので注意したい。


まとめ

コントロールパネル。モノクロ液晶を備える 背面にはUSBと、Ethernetの各端子を装備

 本機の良さは素直な発色と階調、それにカラーキャリブレーションをプリンタ自身で行えることによる色の安定性、大容量のインクカートリッジ、それに高速なフォト印刷パフォーマンスにある。大容量のカートリッジやカラーキャリブレーション、印刷速度などはPX-5500に対してのアドバンテージだ。

 フォトプリンタに作品を出力するための、安定した発色、コントローラブルな色の変化などを望むのであれば、7万円を切る価格設定も安いと感じられるだろう。

 一般コンシューマ向けプリンタとは趣が異なる本機だが、その特徴がユーザーのニーズと合致するのであれば、自信を持って勧められる機種に仕上がっている。



URL
  日本ヒューレット・パッカード
  http://www.hp.com/jp/
  ニュースリリース
  http://h50146.www5.hp.com/info/newsroom/pr/fy2006/fy06-073.html
  製品情報
  http://h50146.www5.hp.com/products/printers/inkjet/ps_pro_b9180/

関連記事
日本HP、顔料A3ノビプリンタ「Photosmart Pro B9180」を10月3日に発売(2006/09/21)
HPが中国で新製品を一斉に発表(2006/08/31)
日本HP、インクジェットプリンタ「Photosmart Pro B9180」発売を再度延期(2006/05/22)
日本HP、インクジェットプリンタ「Photosmart Pro B9180」の発売を延期(2006/04/25)
【PIE2006】日本HP、A3ノビプリンタ「Photosmart Pro B9180」などを展示(2006/03/25)
日本HP、顔料インクのA3ノビプリンタ「Photosmart Pro B9180」(2006/03/22)
【PMA 2006】米HP、プロ/ハイアマ向けA3プリンタ「Photosmart Pro B9180」(2006/02/28)



本田 雅一

2006/11/13 00:03
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.