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【新製品レビュー】ソニー サイバーショットDSC-T10

~完成度が増した手ブレ補正付き薄型モデル
Reported by 北村 智史

 屈曲光学系を採用したスリム&スタイリッシュコンパクトで、2005年11月に発売された「サイバーショットDSC-T9」(以下T9)の後継モデル。撮像素子を1/2.5型の有効600万画素CCDから、有効720万画素に変更。感度の上限がISO640相当からISO1000相当に高感度化しているなど、若干の改良が加えられた、いわばバージョンアップモデルだ。実売価格は約4万円。カラーバリエーションは、シルバーとブラックに、ホワイト、ピンクが追加された。

 外観はT9とほぼ同じで、スリムな金属外装ボディに屈曲光学系のレンズ、上下にスライドするレンズバリア、2.5型液晶モニターという組み合わせは、初代の「サイバーショットDSC-T1」(我が家ではいまだに現役)から変わっていない。

 上から見るとわかるが、T9では平らだったレンズバリアの右手側に少し段差が設けられている。ホールディング時の指掛かりをよくするためだろう、ちょっとした違いだが、持ったときの安定感はぐっとあがっている。

 レンズは38~114mm相当でF3.5~4.3。一般的な光学3倍ズームに比べると(F2.8-4.9というのがけっこう多い)、広角端は半段ほど暗めだが、望遠端は1/3段ほど明るめ。筆者個人は手ブレが気になりやすい望遠側で少しでも明るいのはいいことだと思う。が、薄暗い条件などでは、広角端の暗さがマイナスにもなるので一長一短。また、ワイド端があまり広くないので、広角重視のユーザーにはイマイチおもしろみに欠ける。





 ちなみに、T1も38~114mm相当でF3.5~4.4とほぼ同じスペック(CCDサイズが1/2.4型なので、焦点距離は微妙に違う)。通常時の最短撮影距離はズーム全域50cm、マクロ時には広角端で8cm、望遠端で25cmまで。また、拡大鏡モード(要は「スーパーマクロ」)にすると、ズームは広角端に固定されるものの、1cmまで寄れるようになる。このあたりのスペックは実はT10も同じ。T1がよくできていたので、あまり変える必要がなかったのかもしれない。もっとも、光学式手ブレ補正機構が内蔵されているかどうかの違いはものすごく大きいが。

 拡大鏡モードがメニューの「撮影モード」の中に入っているのが不便だったのが、マクロボタン(十字ボダンの右)だけで「通常撮影→マクロ→拡大鏡モード」の順に切り替えられるようになったのは改良点。とはいえ、ようやく一般的な操作法になっただけで、しかもシーンモードの一種という扱いは変わっておらず、感度がオートに固定されてしまうなど、改善してもらいたいところも残っているものの、近接撮影を多く行なうユーザーには便利になった点だ。

 電源は容量680mAhのリチウムイオン充電池(これもT1と同じ)。CIPA準拠で250コマ撮れる。240コマのT9に比べて10コマしか増えていないが、普通は画素数が増えれば消費電力も増えるので、減っていないだけでも立派である。

 記録メディアはメモリースティックデュオ、PROデュオを採用。また、56MBのフラッシュメモリを内蔵しており、7メガのファイン画質で16コマ(公称値)ほどの撮影が可能。内蔵メモリというと、たいていは申し訳程度の容量しかなくて役に立ちそうにないものが少なくないが、56MBあればそれなりに頼りがいもあるだろう。


レンズは38~114mm相当、F3.5~4.3のバリオ・テッサー。屈曲光学系だと制約がきびしいらしいが、使い手としてはもっと広角が欲しいところ 背面の操作部。十字ボタンの右だけで、マクロと拡大鏡モードの切り替えができるようになったのは進歩

上面右手側端にある手ブレ補正ボタン。これを押して、手ブレ補正機能のオンとオフを切り替える 手ブレ補正のモードを切り替えるのはセットアップメニュー内。LUMIXみたいにボタンだけで切り替えられるほうが便利だと思うぞ

電池はCIPA準拠で約250コマ撮れるリチウムイオン充電池。記録メディアはメモリースティックデュオ/PROデュオに内蔵56MB

最高感度がISO1000相当に

 T10の目玉は、感度の上限がISO640相当からISO1000相当にアップしたことと、シーンモードに「高感度」が追加されたこと。感度をオートにセットしていると、ISO320相当までは自動的にアップするが、「高感度」モードではISO1000相当までとなる。

 最近ではISO1600相当、3200相当まで使える機種がある中、上限がISO1000相当止まりというのは物足りない気もするが、光学式手ブレ補正との組み合わせで考えれば、まずまず以上の結果は期待できるだろう。

 感度を変えて撮り比べてみると、ピクセル等倍でも高画質と言えそうなのはISO200相当までで、ISO400相当になると細かい部分がアマくなって、暗部にザラツキが出はじめる。感度オートのISO320相当の画と比べてそれほど大きな違いはないと思うが、意図的に(切りのいいISO400相当ではなしに)ISO320相当で止めているのは、たぶんノイズの量を数値的に見て上限を設定しているからではないかと思う。

 さらに感度を上げてISO800相当になると、暗部から中間調にかけてカラーノイズが出はじめ、50%表示でもザラツキが気になってくる。ISO1000相当では、わずか1/3段違うだけのISO800相当に比べて、暗部のノイズの量や布目の再現などに明確な違いがある。が、ディテールはわりと残っているほうで、A4プリントにするとちょっとアラが目立ちそうだが、まあまあ使えなくはない。

 使い勝手としては、もっと画質が落ちてもいいからISO1600相当まで欲しかったところだが、あえてISO1000相当で止めているのはソニーの良識かもしれない。


シーンモードに新しく追加された「高感度」。ISO1000相当までアップする 感度の範囲はISO80~1000相当。オートではISO320相当まで。どれも切りがよくない数字ばかりだ

使いやすくなった露出補正

 「カラーモード」もT10からの新しい機能。「標準」のほか、彩度とコントラストが上がる「ビビッド」(同時に発表されたW50はなぜか「あざやか」だったりする)、彩度を抑えてポートレートなどに適した「ナチュラル」や「セピア」、「モノトーン」が選択できる。T1では彩度、コントラスト、シャープネスが3段階に調節できるだけだったが、それよりも一歩踏み込んだ画づくりが楽しめる。

 個人的には、露出補正がボタン操作に変わったのがいちばんうれしいポイント。今まではメニューからたどらなくてはならなかったのが、ボタン+上下キーで操作できるようになった。これもまあ、ようやく世間並みになっただけの改良だが、使用頻度の高い機能だけに使い勝手がよくなったのは歓迎できる。

 また、「機能ガイド」を新しく装備。記録画素数の設定時に、目安となるプリントサイズや撮影可能コマ数が表示されるほか、内蔵ストロボの発光モードの切り替え時などには、液晶モニターに大きな文字で選択した機能が表示されるようになった。

 そのほか、細かいところでは、動画撮影中に光学ズームが使えるようになったこと、従来の10秒に加えて2秒セルフタイマーが追加されたことなど、細かな改良点も見られる。


個人的に一番の改良点にあげたいのが、露出補正がボタン操作でできるようになったこと。右下隅という、かなり操作性のよろしくない場所だが、今までのようにメニューからたどらなくてすむのはありがたい 露出補正時のスケール表示もかなり控えめ。被写体が見づらくならないのはいい点

これも新設の「機能ガイド」 ストロボの発光モードを切り替えたときなどに、液晶モニターに大きな表示が出る。誤操作時に注意してくれるわけだ

まとめ

 T9をベースに画素数アップと小改良を加えたというのがT10の実際のところだが、不満だった部分が少なくなっていて完成度はかなり高い。まあ、T9と比べて圧倒的な差はないものの、新機種らしいアドバンテージは感じられる、といったところ。

 という、微妙な書き方をしているのは、T9がずいぶんお安くなってきているからで、ポイント還元を加味すると実質25,000円前後で買えてしまう(T10とは約1万円の差である)。だったらT9でもいいかという気になってしまう。

 ただ、ホールディング性や感度の上限の向上、露出補正操作がしやすくなったなど、使い勝手がよくなっているところは無視できない。我が家のT1のように使い潰すつもりで買うなら、プラス約1万円は惜しくないはずだ。


作例

※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
※一部の作例については、作例データの一部項目を別の行で強調表示しています。


◆ISO感度

 画質最優先ならISO200相当までが限界。実用的には400相当でもそれなりに見える。さすがに800相当以上はザラツキが目立ち、質感再現も悪くなる。


ISO80相当
3,072×2,304 / 1/6秒 / F4.3 / 0.7EV / WB:オート / 114mm
ISO100相当
3,072×2,304 / 1/8秒 / F4.3 / 0.7EV / WB:オート / 114mm

ISO200相当
3,072×2,304 / 1/15秒 / F4.3 / 0.7EV / WB:オート / 114mm
ISO320相当(感度オート)
3,072×2,304 / 1/25秒 / F4.3 / 0.7EV / WB:オート / 114mm

ISO400相当
3,072×2,304 / 1/30秒 / F4.3 / 0.7EV / WB:オート / 114mm
ISO800相当
3,072×2,304 / 1/60秒 / F4.3 / 0.7EV / WB:オート / 114mm

ISO1000相当
3,072×2,304 / 1/80秒 / F4.3 / 0.7EV / WB:オート / 114mm

◆カラーモード

 新設の「カラーモード」。以前からあった「セピア」、「モノトーン」に加えて鮮やかな「ビビッド」、控えめな「ナチュラル」が選べる。


カラーモード:標準
3,072×2,304 / 1/40秒 / F3.5 / 0.7EV / ISO320 / WB:オート / 38mm
カラーモード:ビビッド
3,072×2,304 / 1/40秒 / F3.5 / 0.7EV / ISO320 / WB:オート / 38mm

カラーモード:ナチュラル
3,072×2,304 / 1/40秒 / F3.5 / 0.7EV / ISO320 / WB:オート / 38mm

カラーモード:セピア
3,072×2,304 / 1/40秒 / F3.5 / 0.7EV / ISO320 / WB:オート / 38mm
カラーモード:モノトーン
3,072×2,304 / 1/40秒 / F3.5 / 0.7EV / ISO320 / WB:オート / 38mm

◆そのほか


青空のノイズはかなり少ないほうで、発色もクリアできれい
3,072×2,304 / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:太陽光 / 38mm
ワラビーとムスメ。帽子がちょっと白トビ気味
3,072×2,304 / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / WB:太陽光 / 38mm

赤~黄系の色が濃いめに発色する傾向のようで、赤い屋根がきつい色になった
3,072×2,304 / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:太陽光 / 38mm
天気がいいとハデすぎに感じられるところもあるが、天気が悪くてもそれなりに色が乗るのはいい
3,072×2,304 / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:太陽光 / 38mm

羊の家。黄色系の発色がちょっと不自然
3,072×2,304 / 1/250秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO80 / WB:太陽光 / 38mm
梅雨晴れの高原の空。マイナス1段補正で青を深めた。ノイズが多いカメラだと汚くなりがちだけど
3,072×2,304 / 1/1,000秒 / F8 / -1EV / ISO80 / WB:太陽光 / 38mm

感度を上げると顔がノイズだらけになりそうなので、動かない瞬間を狙って何コマか撮った中の1コマ
3,072×2,304 / 1/15秒 / F4.3 / -0.7EV / ISO80 / WB:太陽光 / 114mm
木でつくられた馬なんだけど、こんなアングルからだと犬にしか見えない。やっぱり黄色系は濃い
3,072×2,304 / 1/320秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO80 / WB:太陽光 / 55.2mm

ブレードの金属部分は、普通ならもっと白トビしていてもおかしくないが、かなり頑張っている
3,072×2,304 / 1/400秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO80 / WB:太陽光 / 93.6mm
こういう雨のときって、アンダー気味になる機種が多い気がするが、T10は不思議に明るめ
3,072×2,304 / F3.5 / 1/100秒 / -1EV / ISO80 / WB:太陽光 / 38mm

木製の車輪をモチーフにした古いベンチ。50%ぐらいの倍率で見ると質感がなかなかいい
3,072×2,304 / 1/100秒 / F4 / -0.3EV / ISO80 / WB:太陽光 / 64.8mm
ちょっとプラスチックっぽいけれど、葉っぱの艶感がよく出た。マクロ機能で撮ったカット
3,072×2,304 / 1/80秒 / F4 / -1.3EV / ISO80 / WB:太陽光 / 87mm

拡大鏡モード。かなりのクローズアップが楽しめる。ただし、ピンボケとブレには要注意だが
3,072×2,304 / 1/100秒 / F3.5 / 0EV / ISO125 / WB:太陽光 / 38mm
同じく拡大鏡モードで撮ったカット。撮影距離はレンズ前数cmだし、風もある。10コマぐらい撮った中の、いちばんピントがよかった1コマ
3,072×2,304 / 1/80秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO125 / WB:太陽光 / 38mm

屋内の遊技施設で感度オートでの撮影。少し後ピンなのは、フォーカスロックのタイミングが早すぎたから
3,072×2,304 / 1/25秒 / F3.5 / 0EV / ISO320s / WB:太陽光 / 42.6mm


URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/DSC/DSC-T10/

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ソニー、手ブレ補正付き薄型モデル「サイバーショットDSC-T10」(2006/08/02)



北村 智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2006/08/21 00:00
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