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【新製品レビュー】ペンタックス Optio A10

~小型ボディにシリーズ初のCCD手ブレ補正を搭載
Reported by 中村 文夫

 Optio A10はペンタックスのコンパクトデジカメとして初めて手ブレ補正機能を搭載したカメラだ。これまでペンタックスには、動画記録時に手ブレ補正が利用できる機種はあったが、スチル画像に対して手ブレ補正がはたらく製品はこれが初めてである。

 A10に採用された手ブレ補正機能(ペンタックスはShake Reductionを略してSRと呼ぶ)は、CCDシフト方式だ。カメラ本体に内蔵した2つのジャイロセンサーが手ブレの状態を検知。これをCPUで処理し、2つのステッピングモーターがCCDを上下左右に動かし手ブレを打ち消す。

 公式データによると、テレ側で1/4秒~1/15秒。ワイド側で1/2秒~1/8秒程度まで効果があるとされているが、実際にはシャッタースピードがもっと遅くても機能は作動し、カメラの構え方に注意すれば、かなり遅いシャッターでも手持ち撮影ができる。またカメラ上部にある手ブレ補正プレビューボタンを押すと手ブレ補正された画像がモニターに表示されるので、不安なときはこれを見れば手ブレ補正効果の確認ができる。ただしこの機能は電力を余計に消費するので頻繁に使うとバッテリーの消耗が速くなる。

 このほかストロボ発光をキャンセルするキャンドルライトモード時に、暗い状況では感度がISO800まで自動的にアップ。CCDシフト方式との合わせ技で手ブレを防ぐダブル補正方式になっている。なおA10は、動画モード時にも手ブレ補正機能が利用できるが、この場合はCCDをシフトさせるのではなく、大画面から小画面を切り出す方式を採用。記録サイズは640×480ピクセルになる。





上面左端にあるのが、手ブレ補正プレビューボタン。押すとモニター画面で効果が確認できる

初代Optio Sとの比較 液晶モニターの大きさがはっきりと違う

大きくなったCCDと液晶モニター

 A10に搭載されているレンズは7.9~23.7mmで、35mm判に換算すると38~114mmに相当。ズーム比は3倍で、望遠側の焦点距離はそれほど長くない。そのため手ブレ補正機構は劇的に利くという感じはなく、どちらかというと、いつの間にか手ブレを防いでくれているといういう印象を受けた。

 レンズの鏡胴はペンタックスのお家芸ともいえるスライディング・レンズ・システムを採用。スイッチをOFFにすると内部のレンズブロックが上に逃げ、レンズが完全にフラットになる。初代のOptio Sとくらべ、収納時のボディ厚が約3ミリ増えているが、これはCCDのサイズが大きくなったためにレンズの焦点距離が長くなったからだ。CCDのサイズは1/1.8型で画素数は800万。従来のOptio S6に比べ面積が約1.6倍になり、画質アップが図られている。

 液晶モニターは23.2万画素の2.5型。大きくて見やすいが、光学ファインダーは省かれている。ただこのカメラに限ったことではないが、モニターの占める面積が大きいため、ホールディング感が犠牲になっていることは否定できない。


独自のスライディング・レンズ・システムを採用 電源OFF時はレンズが完全にフラットに収納される

モニターが大きいので、右手で持つ部分の面積が狭い 右手親指を置く場所に滑り止め用の凹凸があるが、筆者の場合ここに指を置くとつりそうになる

電源はリチウムイオン。記録メディアはSDメモリーカード ボディ側面にUSBとACアダプター用ソケットを装備

電池入れたままバッテリー充電スタンドにボディを乗せれば充電ができる バッテリー充電スタンドは、電池だけを単独で充電する機能も備えている

実用性の高い自動追尾AFとグリーンボタン

 このカメラに搭載されている自動追尾AFは、非常に実用的だ。このモードを選んだ場合、シャッターボタンを半押しして任意の位置にフォーカスロックをすると、被写体が動いたりフレーミングがずれたりしても、フォーカスエリアが自動的に移動。その位置にピントを合わせ続ける。このモードを選び実際にカメラを操作してみると、カメラが一生懸命ピントを合わせようとしてしている様子がモニター上でよく分かり、なかなか健気だ。

 さらに使ってみて便利に感じたのが、グリーンボタンと十字キーのコンビネーションだ。本来、グリーンボタンは撮影機能をデフォルトに戻すためのクリアボタンだが、このボタンには手ブレ補正、動画、Fn(ファンクション)のいずれかの機能を設定することが可能。さらに十字キーには、手ブレ補正、露出補正、記録サイズ、ホワイトバランス、ISO感度など、全部で15ある項目から4項目を選んで設定できる。例えばグリーンボタンにFnを設定しておけば、グリーンボタンを押すだけで十字キーに割り付けた機能がすぐ表示され、各機能がダイレクトに利用できる。

 コンパクトタイプのデジカメといえども、多機能化にともない操作の複雑化が問題になっているが、この方式は非常によいアイデアだ。とにかく使用頻度の高い項目を予め十字キーに設定しておけば、ストレスを感じることなく撮影できる。特に中級以上のユーザーにとって、とても便利な機能である。


自動追尾AFを選び任意の部分にフォーカスロックすると、フレーミングを変えても同じ所にピントを合わせ続ける 通常は5点測距だが、追尾AFのときは画面の端までAFエリアが移動する

十字キーには機能を4つまで登録することができる。グリーンボタンにFnを設定をしておけば、ワンタッチで十字キーの項目が呼び出せる グリーンボタンを押したときの画面

スイッチをOFFしたときにメモリーしておく機能を選ぶこともできる フレーム合成機能を使えば、カメラに内蔵されたフレームと撮影画像を合成できる。新しいフレームはペンタックスのホームページからダウンロードすることも可能

多彩な撮影モードを搭載

 撮影モードは全部で15種類。中でもキャンドルライトモード時は、すでに説明したように、ストロボを発光させないで手持ち撮影することを考慮して、低輝度時はISO感度が自動的に800まで上がるようになっている。またペット、スポーツモードを選ぶと、フォーカスモードが自動追尾AFに切り替わり、狙った被写体にピントにピントを合わせ続ける。このほかモードを選ぶのが面倒なら、オートピクチャーモードにセットしておけば、カメラが撮影モードを自動的に選んでくれる。


知らぬ間に効果を発揮する手ブレ補正機能

 いずれにしてもこのカメラの最大のセールスポイントは、ペンタックスでは初めて手ブレ補正機能を搭載したことだろう。望遠側の焦点距離がそれほど長くないので、撮影時に、それほど高い効果があるように思えないこともあるが、撮影後に画像をモニターで拡大してみると、手ブレ補正機能はキッチリ仕事をしていることがよくわかる。

 「手ブレを防ぐにはカメラをきちんと構えること」という私の持論は変わらないが、しっかりカメラを構えたうえで手ブレ補正機能を使えば、手ブレの危険性は確実に下がる。そんな意味で手ブレ補正機構は、コンパクトデジカメにとって、不可欠な機能といえるだろう。


作例

※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


◆画角


3,264×2,448 / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 38mm 3,264×2,448 / 1/250秒 / F3.8 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 65mm

3,264×2,448 / 1/160秒 / F5.4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 114mm

手ブレ補正

 屋内でストロボを発光禁止にして撮影。手ブレ補正機構の真価が発揮される条件だ。


3,264×2,448 / 1/4秒 / F4.8 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 92mm 3,264×2,448 / 1/8秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO50 / WB:オート / 38mm

3,264×2,448 / 1/5秒 / F3.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 65mm 3,264×2,448 / 1/10秒 / F3.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 46mm

◆ホワイトバランス

 西日が当たる条件で撮影。ホワイトバランスはオートより太陽光のほうが赤みが強調され肉眼に近くに見える。


3,264×2,448 / 1/80秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 38mm 3,264×2,448 / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 38mm

3,264×2,448 / 1/80秒 / F4.3 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 78mm 3,264×2,448 / 1/80秒 / F4.3 / -0.7EV / ISO200 / WB:太陽光 / 78mm

3,264×2,448 / 1/100秒 / F4.3 / -0.7EV / ISO200 / WB:日陰 / 78mm

◆一般作例


画像は非常にシャープで、東京タワーの鉄骨の1本1本が鮮明に写っている
3,264×2,448 / 1/125秒 / F9.6 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 92mm
コンパクトカメラにしてはタイムラグも短く、スナップ撮影にも使うことができる
3,264×2,448 / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 38mm

ISO400で撮影。ISO200まではそれほどでもないが、400になるとノイズが目立つ
3,264×2,448 / 1/5秒 / F3.4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 55mm
スーパーマクロモードにするとワイド端で最短6cmまで寄ることができる
3,264×2,448 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 38mm

シャッタースピード1/13秒で撮影。暗い条件だが、あまり
ブレずに写った
3,264×2,448 / 1/13秒 / F4.8 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 92mm


URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/compact/optio-a10/

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ペンタックス、CCDシフト手ブレ補正を搭載したコンパクト「Optio A10」国内発表(2006/01/26)



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2006/04/19 01:27
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