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【新製品レビュー】ペンタックス Optio S6

~新設計レンズの採用で20mmを切る薄型ボディを実現
Reported by 奥川 浩彦

 ペンタックスから「Optio Sシリーズ」の新製品、「Optio S6(エスロク)」が発売になった。独自の「スライディング・レンズ・システム」を新設計し、レンズユニット単体を従来比2mmに薄型化。ボディの奥行きが19mmと、20mmを切る薄型ボディを実現している。

 CCDは1/2.5型600万画素に、液晶モニターは2.5型、23.2万画素とより精細化。さらに微反射タイプにすることで屋外での視認性に優れるという。動画の記録形式にデジタルカメラとしては世界初となる「DivX」を採用、最高圧縮率の場合1GBのSDメモリーカードに55分46秒の記録が行なえる。より小型化されたことで携帯性を向上させた「Optio S6」の実力を検証してみたい。


軽量、薄型化されたボディ

 まずは外観から見ていこう。第一印象はその軽さだ。奥行き19mmのボディは、他社の同クラス機と比べて劇的に薄いと感じない。しかし、軽さはワンランク違う製品と感じた。バッテリー、SDメモリーカードを内蔵した状態で120gと携帯電話並みに軽いボディは、ポケットに入れて気楽に持ち運べる魅力を持っている。

 コンパクトなボディながら、液晶モニターは2.5型と充分な大きさを確保。画素数も23.2万画素と高精細で見やすい。残念ながら微反射タイプで屋外でも視認性に優れるとの謳い文句は筆者には期待外れで、太陽光下では自分の顔が反射して、撮影の邪魔だと感じるケースは多かった。

 ボディ右側のカバーを開けるとバッテリー、SDメモリーカードの挿入口があり、USB 2.0/AV出力もこのカバー内に集約されている。バッテリーは特別に小さくはないが、撮影枚数は約130枚(CIPA規格)と少なめだ。実際に撮影してみると、昼間の撮影では110~160枚であったが、気温0度近くまで冷え込んだ紅葉のライトアップの撮影では100枚を切った。連写を多用する方や泊まりの旅行で使用する場合は充電器の携帯や予備バッテリーを準備した方がいいだろう。充電器はACプラグ一体型ではなく、ACケーブルをつなぐタイプだ。

 記録メディアはSDメモリーカード、本体内に約23MBと比較的大容量のメモリーを内蔵している。付属品として16MBなどのメモリーカードを添付するより、内蔵メモリーを搭載した仕様は好ましい。23MBあれば解像度や画質を少し落とすことで数十枚は撮影できるので緊急時にも心強い。

 電源を入れるとシャッターボタンが緑色に点灯する。かなり鮮やかな演出で印象的だ。起動時間は遅いというほどではないが、俊敏とは感じなかった。AFも同様で、実用上問題はないが俊敏とは感じられない。AFは5点マルチ、スポット、自動追尾切替から選択できる。このうち自動追尾切替は、フォーカスが合った被写体が移動すると、被写体に追従してフォーカスポイントも移動する。モニターの縁の方まで追従していくので、フォーカス範囲は広い。






 主な操作は、液晶モニターの右側のズームボタン、再生ボタン、十字キー、OK/ディスプレイボタン、MENUボタン、グリーンボタンで行なう。従来機種と同じく、モードメモリやグリーンボタンを使ったカスタマイズ機能が豊富で、操作性には好感が持てる。十字キーは上下左右がドライブ、プログラム、ストロボ、AFの選択。中央のOKボタンを押すと、液晶モニターの表示方式がヒストグラム表示/表示なし/グリッド表示などに切り替わる。

 MENUボタンからは、撮影メニューや設定メニューに入ることができる。それぞれ3ページ用意されている。電源を切った時の状態を記憶し、再起動した時に同じ設定にする「モードメモリ」も装備。例えば、ストロボは常時OFF、ディスプレイはヒストグラム表示に設定、ISO感度、露出補正はリセットされるようにと、自分好みにカスタマイズできる。そのほか、ズーム位置や連写の設定など、ほとんどの機能を選択できる。

 背面のグリーンボタンは動画モードへの切り替えや、ファンクション(Fn)設定のボタンとして利用できる。筆者はFn設定として使用した。これを利用すると、十字キーを別のショートカットキーとして利用できる。4つの十字キーに割り当てる機能は任意に選択でき、筆者の場合はISO感度、解像度、画質、露出補正を割り当てた。これによりISO感度を64から100に変えるボタン操作はMENUを使用した場合の10回から、4回と激減する。


AF方式の選択画面 自動追尾AF、画面周辺まで追従可能

ドライブモードの変更 フォーカスモードの変更 プログラム選択

撮影時の液晶モニター表示:通常表示 撮影時の液晶モニター表示:情報表示なし

撮影時の液晶モニター表示:グリッド表示 撮影時の液晶モニター表示:ヒストグラム表示

メニュー画面、撮影1ページ 撮影2ページ メニュー画面、設定

モードメモリ モードメモリ、1ページ モードメモリ、2ページ

グリーンボタンの設定 グリーンボタン、設定でカスタマイズ可能 グリーンボタンを押すと各設定がボタン操作で変更できる

キャンドルモードではISO800が選択可能 キャンドルモードではISO800が選択可能 シャッターを半押しすると左下にシャッター速度と絞り値が表示される。ズーム値に連動して手ぶれ警告も表示される

再生時の液晶モニター表示:通常表示 再生時の液晶モニター表示:詳細(ヒストグラム)表示 再生時の液晶モニター表示:情報表示なし

再生時の液晶モニター表示:拡大1.3倍 再生時の液晶モニター表示:拡大2.0倍 再生時の液晶モニター表示:拡大2.6倍

再生時の液晶モニター表示:拡大4.0倍 再生時の液晶モニター表示:拡大5.3倍

再生時の液晶モニター表示:拡大8.0倍 再生時の液晶モニター表示:9分割表示

ISO800での撮影も可能

 Optio S6の特徴のひとつは、従来のSシリーズと異なり、ISO800の撮影が可能になったことだ。「キャンドルライトモード」を選択した時しか設定できないが、室内での撮影やストロボ光が届かない被写体の撮影、被写体ブレが予想される際にも有効であろう。ただし、画素混合技術で実現しているため、解像度は3M(2,048×1,536ピクセル)に固定される。

 通常の撮影モードでは、ISO感度はAUTO、ISO64/100/200/400に設定可能。AUTOの増感範囲はISO64~200。ISO400はユーザーが設定したときだけ選択できる。ディスプレイに等倍表示するとISO400ではノイズが目立つが、このサイズのCCDとしては標準的だ。このカメラのポジションを考えると大伸ばしで印刷することは少ないと思われる。L判程度の印刷なら気にするほどのノイズではない。


マクロ機能はやや物足りない

マクロの撮影。スーパーマクロがあれば500円硬貨が画面いっぱいに撮れる。2台目の評価機にて撮影しているが左上がやや流れている
 ズームは光学3倍、デジタル4倍、光学ズームの焦点距離は6.2mm(35mmフィルム換算38mm)から18.6mm(同114mm)で、38/47/55/66/79/94/114mm(35mmフィルム換算)の7ステップとなっている。レンズは全体的には解像度等このクラスとしては問題ないレベルだが、広角側はタル型の歪曲収差が目立つ。また最初の貸出機は広角側の絞り解放付近で片ボケが発生した。メーカーから代替品を支給いただき再確認したところ問題なかったので個体差だと思われる。代替品も広角開放では周辺(特に左上)に流れが見られるので、光量が不足するシーンではISO感度を上げるなど注意したい。

 通常撮影時の最短撮影距離は40cm。マクロは広角端で15cm、約148×111mmを画面一杯に撮影可能となっている。実際に撮影してみるともう少し寄ることはできたがマクロとしてはかなり物足りない。前機種「Optio S5z」はスーパーマクロを搭載し6cmまで寄ることができ、約38.6mm×28.9mmを画面一杯撮影できた。およそ葉書と500円硬貨ほどの差があり、小さなものを撮影する方はあらかじめ注意が必要だ。

 画像再生は23.2万画素の液晶モニターの効果で美しい。クイック拡大機能を使うと再生時に最大サイズ(8倍)に一発で拡大できる。ピントチェックに利用する場合は便利な機能だ。カメラ内部での編集機能もトリミング、カラーフィルタ、赤目補正など豊富で、PCを経由せずにプリンタで印刷する方には重宝しそうだ。


世界で初めてDivXによる動画撮影をサポート

 さて、デジタルカメラとして世界で初めて、コーデックに「DivX」を採用した動画を見てみよう。動画の解像度は640×480ピクセルと320×240ピクセルが選択でき、画質は静止画と同様に、S.ファイン、ファイン、エコノミーの3段階が選択できる。

 動画撮影時は光学式ではないが電子式手ブレ補正機能を利用できる。撮影中に光学ズームを使えないが、手ブレ補正をOFFにすればデジタルズームは利用可能だ。

 メーカーの謳い文句は「DivXの採用により高画質を実現」となっているが、撮影した映像を見ると素直に高画質とはいいがたい。やはりDivXのメリットは画像のファイルサイズである。実際に他機種のMotion JPEGで撮った映像(640×480ピクセル、30fps)は10秒程度でファイルサイズが10MBだが、Optio S6では3MBと大幅に小さくなる。ファイルサイズに関してはDivX効果の発揮されているといえる。

 ただし、同クラスの他機種のファイルに比べてブロックノイズが多く、細かな文字なども読めなくなるなど、クオリティの劣化は大きい。静かなシーンではカメラ本体から発生していると思われる高周波ノイズがキーンと録音されてしまい、やや不快な感じだ。また、「Optio S6」で撮影した動画はWindows環境でのみ再生できる。Macintoshでは再生できないので注意が必要だ。

 圧倒的なファイルサイズの小ささと、元々カメラ本体が120gと軽量なことによる携帯性のメリットは大きいので、手軽に動画を撮りたい方には魅力的かもしれない。

【サンプル動画1】 【サンプル動画2】


まとめ

 Optio S6を使った印象を一言で表現するなら「手軽」。軽量なボディで手軽に持ち運びができ、DivXの採用によりファイルサイズが極めて小さな動画を手軽に撮影できる。このクラスのデジカメは大伸ばしでプリントすることは少ないと思われ、個体差による片ボケの問題を別とすれば画質面も充分なクオリティだ。

 豊富なカスタマイズ機能で操作性も優れている。バッテリー寿命にはやや不安があるが、ポケットやカバンに入れて持ち運び、気楽に撮影したい方にはお薦めできる。


作例

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。

※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算時の焦点距離を表します。


 ●ISO感度


2,816×2,112 / プログラムAE / 1/125秒 / F4.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / プログラムAE / 1/200秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 38mm

2,816×2,112 / プログラムAE / 1/400秒 / F4.3 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / プログラムAE / 1/1,000秒 / F4.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 38mm

2,048×1,536 / キャンドルライト / 1/2,000秒 / F4.3 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 38mm

 ●画角


2,816×2,112 / 風景 / 1/125秒 / F4.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / 風景 / 1/160秒 / F5.2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 114mm

 ●そのほか


2,816×2,112 / プログラムAE / 1/50秒 / F2.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / プログラムAE / 1/250秒 / F2.7 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 47mm

2,816×2,112 / プログラムAE / 1/250秒 / F4.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / プログラムAE / 1/80秒 / F2.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 38mm

2,816×2,112 / プログラムAE / 1/500秒 / F4.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / プログラムAE / 1/125秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 47mm

2,816×2,112 / プログラムAE / 1/500秒 / F8.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 114mm 2,816×2,112 / キャンドルライト / 1/80秒 / F3 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 47mm

2,816×2,112 / プログラムAE / 4秒 / F3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 47mm 2,816×2,112 / プログラムAE / 1.3秒 / F2.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 38mm

2,048×1,536 / キヤンドルライト / 1/60秒 / F2.7 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 38mm 2,816×2,112 / プログラムAE / 1/6秒 / F2.7 / -1.3EV / ISO64 / WB:オート / 38mm

「なばなの里」のライトアップ。左側に片ボケが残念
2,816×2,112 / プログラムAE / 2秒 / F3.6 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 66mm
同じく「なばなの里」12月は各地でライトアップが行われ撮影のチャンス
2,816×2,112 / プログラムAE / 1/2.5秒 / F3.3 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 55mm

名古屋港のスターライトレビュー。2台目の評価機は周辺に流れはあるが片ボケは見られない
2,816×2,112 / プログラムAE / 1/3.3秒 / F3.3 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 55mm
名古屋港イタリア村のライトアップ。2台目の評価機で撮影
2,816×2,112 / プログラムAE / 1/3.3秒 / F2.7 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 38mm

シャッター速度を落として水の動きを表現したかったが設定できず。これも2台目の評価機
2,816×2,112 / プログラムAE / 1/160秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 66mm
順光での撮影。空の青さも綺麗に表現している
2,816×2,112 / プログラムAE / 1/500秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 66mm

やや逆光で撮影
2,816×2,112 / プログラムAE / 1/125秒 / F4.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 38mm
かなり強い逆光で撮影。フレアもなく良好な描写
2,816×2,112 / プログラムAE / 1/1,250秒 / F4.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 38mm


URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/compact/optio-s6/

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奥川 浩彦

2005/12/19 00:00
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