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【新製品レビュー】富士写真フイルム FinePix S9000
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~ISO1600対応の高倍率ズームレンズ一体型モデル
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Reported by
小山 伸也
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富士写真フイルム「FinePix S9000」(以下、S9000)」は、最高感度ISO1600の「スーパーCCDハニカムV HR」と画像処理用の「リアルフォトエンジン」を組み合わせ、さらに35mm判で焦点距離28mm~300mm相当の高倍率フジノン10.7倍ズームレンズを採用した製品。同社ではレンズ一体型の高倍率ズーム機を「ネオ一眼デジタルカメラ」と呼称しており、S9000はその最上位機種となる。
ポイントはやはり高感度と高倍率ズームレンズだろう。今回はこのあたりを中心に紹介したい。(試用した製品はβ版です。製品版とは異なる可能性があります)
■ 高感度撮影のメリットを享受できる
ISO感度が高いと「シャッター速度を速くでき、ブレを少なくできる」、「絞り込めるので、被写界深度の深い撮影が可能になる」、「ストロボ撮影では、より遠くにある主要被写体を明るく撮影できる」などのメリットがある。これはフィルムもデジタルも理屈は同じだ。
しかしデジタルカメラでは、撮像素子のサイズが異なる一眼レフカメラとコンパクト機とでは、感度を上げた時のノイズの出方が異なる。もちろん、比較的小さな撮像素子を搭載した小型のデジタルカメラの方がノイズは多い。
そのため、スナップ撮影や手持ち撮影が多いコンパクトタイプあるいはレンズ一体型の場合、これまでは感度を高くしたいのに、それが許されなかった現実がある。
ところが、このS9000は感度を高く設定して撮影しても、ノイズが非常に少ない。すでに先行して発売された「FinePix F10」でも実現していた高感度撮影だが、常用感度としてISO400が使え、最高のISO1600に設定しても、ノイズは比較的少ない。極端ないい方をすると、感度の設定を間違えたかなと思うほどである。これは富士フイルム独自の画素レイアウトによるスーパーCCDハニカムV HRと、リアルフォトエンジンの組み合わせで実現できたもので、高く評価できる。
撮像素子や画像処理エンジンの違いによって異なるが、他のコンパクトデジタルカメラと比べて格段の差があり、一眼レフタイプと比べても機種や撮影シーンによっては少ないと感じることもある。
設定できるISO感度は80/100/200/400/800/1600とAUTO。ISO80ではまったくノイズは感じられず、400でも気が付かない。1600でようやくノイズに気が付く感じだ。
■ 常用焦点域の28~300mmズームレンズ
レンズは35mm判換算で焦点距離28~300mm相当の画角となる高倍率ズームをボディに一体化している。通常の撮影では十分満足できる焦点域であり、レンズ交換式に対し、ホコリやゴミの心配もないというメリットがある。
また、広角側でレンズ面から約0.l~3m、望遠側でレンズ面から約0.9~3mのマクロと、約0.01~1mのスーパーマクロ機構も付いており、ボディ、28~300mmレンズ、マクロレンズを10万円を切る価格で購入できるのは、ユーザーにとって朗報だろう。
搭載されているCCDは1/1.6インチで、35mm判用レンズを使うデジタル一眼レフカメラのCCD、あるいはCMOSセンサーと比べると面積比で小さい。そのためS9000に搭載されているレンズは、実際には焦点距離6.2~66.7mmと短い。これくらい短いと、設計から製造まで高いレベルが必要だ。広角側から望遠側まで撮影したところ、特に違和感はない。広角側で多少の歪みが存在するのは、やむを得ないところだと感じる。
手動のズームリングを装備しているのも特徴。ズーミングが電動だと、思った焦点距離の位置に合わせることが難しいので、扱いやすさの面で手動方式は大歓迎だ。
しかし、絞り優先AEで使うことが多い筆者にとって、電子ダイヤルで行なう絞り調節がやや扱いにくく感じられた。絞り操作は本体上部右手前のダイヤルで行なうタイプで、近年の一般的な一眼レフカメラと似通っている。それでも個人的な意向としては、昔ながらに絞りリングをレンズ鏡胴につけてほしいところだ。せめて左手側にもダイヤルなどがあるとよかった。
重さは本体のみが645g、電池や記録メディアなどを入れた場合が755g。デジタル一眼レフカメラも1kgを切っているので、特別軽いわけではない。また大きさも同じく、特に小さいと感じることはない。
しかし他の交換レンズやガイドナンバーの大きいストロボを持つ必要がないなど、実際の撮影においてはデジタル一眼レフカメラより軽快に感じる。
AF、AE、といったカメラの基本性能は満足できるものであり、約0.8秒の起動時間もいい。しかし最短撮影間隔は1.5秒なので、連写を多用する場合に不満を感じる。
最近のデジタルカメラは、本体を小型化するために電池も小型化しており、多くが専用のリチウムイオンバッテリーなどを採用している。そのかわり、充電作業や予備バッテリーの購入などで負担も増えている。
S9000は単三型のニッケル水素電池とアルカリ電池を使用できるので、電池がなくなったら、撮影地近くのコンビニでアルカリ電池を購入すればいい。今回はアルカリ電池を使ったが、120コマ程度の撮影ができた。
■ 高精細な23.5万画素のEVF
28~300mmレンズに対応できる光学式ファインダーは一眼レフ方式しかないが、コスト、大きさ、重さの面で不利な点もあり、S9000ではEVFが搭載されている。0.44型で従来の倍近い23.5万画素あり、またリフレッシュレートも高いため見やすいが、AFロックの半押しやシャッターを押し込むと、リフレッシュされなくなり画面が静止する。シャッターを切った瞬間が見えないのはミラーを持つ一眼レフカメラでも同じだが、半押し時でリフレッシュされないのは、少々困りものだ。もっとも、静物を撮影するにはほとんど支障がなかった。半押し後、ファインダー内の画像が一瞬静止するが、その後は正常にリフレッシュが行なわれ、フォーカスロックによる構図の整え作業などが可能になる。
【9月2日追加】半押し後の動作について、完全にフレーム内画像が静止したままと受け取られかねないことを考慮し、筆者からの追加説明を加えました。
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ファインダー接眼
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CFとxDピクチャーカードのダブルスロットを装備
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上下可動式の液晶モニター
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ポップアップ式のストロボ
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記録メディアは、CFとxDピクチャーカードが使えるダブルスロットになっている。903万画素あるCCDの画像を記録し、なおかつRAWモードも備えているので、大容量のCFカードが使えるのは、大きなメリットだ。
液晶モニターは約11.8万画素の1.8型。上方あるいは下方からも見やすいように上下方向に回転できる。便利な機構だが、できれば左右方向にも回転できるとさらによかった。
また、仕様表にはストロボのガイドナンバー表記がなく、ISO感度が可変の時に広角で0.3m~5.6mと記載されているだけ。推測だが、ISO100相当時のGn(ガイドナンバー)は10以下であろう。ISO100では効果は少ないが、ISO1600にするとさすがに撮影可能範囲が広がる。
また同じ条件でISO1600でのストロボ非発光撮影を行なうと、発光時とほぼ同じように撮影できたことも付け加えておく。
■ まとめ
S9000のようなレンズ一体型のデジタルカメラは、レンズ交換のできる一眼レフタイプとコンパクトタイプの中間に位置づけられることが多い。しかし、本機の実力はレンズ交換のできる一眼レフタイプと並ぶものといっていいだろう。もちろん、一眼レフと比較すればファインダーや操作面、撮影間隔などまだ劣る点もあるが、これ1台ですべてが済むと思えば満足できる製品コンセプトだ。
■ 作例
※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。
※キャプション内の撮影データは画像解像度(ピクセル)/露出モード/ISO感度/露出時間/絞り/露出補正値/ホワイトバランス/焦点距離です。
●画角
左下は広角端で、18時ごろの撮影。太陽がビルの窓に反射してやや白飛びを起こしているが、ゴーストやフレアはよく抑えられている。また手前の木の葉は黒つぶれを起こしていない。レンズもいいが、AEも画像処理も問題ない。
右下は同じ位置から、300mm側で撮影したもの。太陽の反射とシルエットで占められているが、輝度差は上手く調整できている。窓の格子もまっすぐで歪みを感じない。
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3,488×2,616 / Av / 100 / 1/58秒 / 8 / 0 / オート / 6.4mm
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3,488×2,616 / Av / 100 / 1/120秒 / 8 / 0 / オート / 64.4mm
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●感度
実際にはすべての感度設定で撮影したが、その代表としてISO80、400、1600を掲載する。400でも常用できそうで、1600でようやくノイズに気が付く程度だ。
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【ISO80】
3,488×2,616 / Av / 80 / 1/3.5秒 / 4.9 / 0 / オート / 64.4mm
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【ISO400】
3,488×2,616 / Av / 400 / 1/20秒 / 4.9 / 0 / オート / 64.4mm
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【ISO1600】
3,488×2,616 / Av / 1600 / 1/80秒 / 4.9 / 0 / オート / 64.4mm
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●歪曲収差
マンションのベランダの壁を撮影。広角側にも望遠側にもタル形の歪みがみられる。広角側の歪みはやや大きいが、レンズそのものの焦点距離やズーム倍率を考えれば、やむを得ないものといえる。
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【広角端】
3,488×2,616 / Av / 400 / 1/16秒 / 8 / 0 / オート / 6.4mm
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【望遠端】
3,488×2,616 / Av / 400 / 1/40秒 / 8 / -1.0 / オート / 64.4mm
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●マクロ
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【広角端】
水出しコーヒの管から水滴が落ちる直前を撮影したもの。スーパーマクロを使った。ISO800に設定し絞りをF2.8としてシャッター速度を速くした
3,488×2,616 / Av / 800 / 1/75秒 / F2.8 / 0 / オート / 6.4mm
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【望遠端】
マクロ撮影なのでストロボは使いたくなかった。室内でもISO400を常用感度としていれば、この程度は難なく撮影できる
3,488×2,616 / Av / 400 / 1/7秒 / 7.1 / 0 / オート / 64.4mm
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●内蔵ストロボ
ISO1600にすると、撮影可能範囲がかなり広がるのがわかる。またISO1600はストロボ非発光でも発光時ど同様の効果が得られた。
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【ISO100】
3,488×2,616 / Av / 100 / 1/45秒 / 8 / 0 / オート / 6.4mm
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【ISO400】
3,488×2,616 / Av / 400 / 1/45秒 / 8 / 0 / オート / 6.4mm
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【ISO1600 / ストロボ発光】
3,488×2,616 / Av / 1600 / 1/45秒 / 8 / 0 / オート / 6.4mm
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【ISO1600 / ストロボ非発光】
3,488×2,616 / Av / 1600 / 1/13秒 / 8 / 0 / オート / 6.4mm
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■ URL
富士写真フイルム
http://www.fujifilm.co.jp/
製品情報
http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixs9000/
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小山 伸也 中央大学理工学部卒業後、オーディオメーカー、カメラメーカーを経て2002年春にフリーになる。カメラ雑誌で写真やカメラの解説、鉄道や航空雑誌で車両や航空機の解説など幅広く活躍している。カメラメーカー勤務時には日本カメラショーなどの講師を務めていた。1955年生まれ東京都出身。 |
2005/09/01 00:02
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