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ニコンD700【第1回】
ワタシ史上初の“フルサイズライフ”に突入

Reported by 北村智史


 正直なところ、わりと最近になるまで、フルサイズなんていらないと思っていた。もちろん、フルサイズがいいのは知っている。いいところがたくさんあるのは知っていても、そうそう簡単には手を出せないのがフルサイズである。その理由のひとつがレンズである。

 オリンパスのZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWDとか、ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDとかで撮った画像を見ると、きちんとデジタルフレンドリーでやると、こぉんなサイズのレンズになっちゃうのもしょうがねーか、って思ってしまう。で、フルサイズってフォーサーズの2倍のスケールなんだよね、って考えてしまう。

 スケールが2倍なら面積は4倍になって、体積は8倍になるわけで、想像するだけでも怖ろしい事態になってしまう。フルサイズって素敵ですよねぇ、なんて陽気なことは言っていられない。

 そんなものすごいレンズを買える予算が立てられるとも思えないし、もし買えたにしても重くて持ち歩きたくなくなりそう。だから、フルサイズはいらない。というのが、ワタシ的なフルサイズに対するスタンスだったわけだ。最近まではね。

 そんなところに登場したのがニコンのD700である。Webサイトのサンプル画像がけっこうきれいだったりして、はからずも、おおっ、と思ってしまった。D3やD300のサンプル画像にはちっともそそられなかったのに、D700のにはぐっときちゃったんである。

 でも、レンズが大変だからねぇ、と見ないふりを決め込もうとしているところに、「レビューやってくれませんか」などという編集部がいたりして、画に描いたような火に油。鎮火しかけてたのにさ。まったくもう、って感じである。

 触れば欲しくなるのが人情である。撮った画像がよかったりなんかしたら、もう終わり。フルサイズなんていらないもんねとかさんざんほざいてたのが、物欲まっしぐら。結局、寝ても覚めてもD700である。


 レンズはどうしよう。AF-S 14-24mm F2.8 G EDとかAF-S 24-70mm F2.8 G EDは写りはいいけど、値段がすごすぎだ。大きさや重さにもげんなりだし。腕力が足りないんだからやっぱ単焦点レンズで組むのがよさげ。でも、単焦点のニッコールってば、設計が古いのが多いよねぇ。うーん、どうしよう。

 とか。

 縦位置グリップどうしようかなぁ。あったほうがホールディングはよくなるだろうけど、ボディが重いから着けないほうが身のためのような気もするし。でも、着けるとしたらバッテリーはどうしよう。EN-EL3eなら1本予備があるけど、それだと5コマ/秒のままだし。でも、EN-EL4aにすると、1万5,120円(バッテリー)+1万8,900円(チャージャー)+2,940円(バッテリー室カバー)で3万6,960円(大手量販店のWebサイト価格での計算)。MB-D10が3万7,800円だから、ボディと合計で40万円超えちゃうぞ。価格.comの価格情報で見るとD3の最安値が41万円とかだぞ。大して変わらねーじゃん。やっぱりエネループか、8コマ/秒が欲しいときだけアルカリ乾電池使うか……。

 予算の目処も立ってないくせに、あれやこれやと妄想しはじめる始末。

 まあ、こういう状況というのがいちばん楽しいって説もあるけれど、カメラが夢に出てくるようになったらかなりいけない。しかも、色つきの夢だったりするのは、神経がかなりくたびれている証拠である。


 こういう場合、やるべきことはひとつしかないように思われがちだが、大人の世界はそれほどシンプルではない。

 買うものを買って家に着いたワタシを待っていたのは、もちろんカミサンの冷たい目線である。帰りの電車の中では某量販店の紙袋かかえて天国気分だったのが、一気に地獄行き。数え切れないほどのため息と、完璧なまでの針のむしろ感。独身時代はよかったなぁ。収入から生活費引いた残り全部が小遣いだったもん……。

 で、小言とイヤミがどっさり。それとけっこうな額が貯まっていたポイントカード(8コマ/秒セットがただでもらえるくらいは軽くあったのにさ)没収である。

 おかげでレンズが寒いまま。なにせ、手もとにあるレンズのうちでFXフォーマットに対応しているのは、AF Micro 60mm F2.8 DとトキナーのAT-X 100mm F2.8 PRO D Macroの2本だけ。DXフォーマットのレンズも使えなくはないが、せっかく買ったFXボディなのに、って思うと着けられない。

 とは言え、使えるレンズが2本きりという状況がさびしくないはずもない。なので、こっそり拡充していたりする。もちろん、おカネもないし、でかくて目立つAF-S 14-24mm F2.8 G EDとかは隠しきれない(つくづく小心者である)から却下。やはり小振りな単焦点レンズがよろしかろう。


 結果、トキナーのAT-X 17mm F3.5 PROと純正のAi AF Nikkor 35mm F2 Dの2本を選んだ。

 AT-X 17mm F3.5 PROは1999年発売というちょっと古めのレンズだが、その前身のAT-X 17mmをフィルム時代にけっこう気に入って使っていたこともあって選んでみた。

 周辺部の画質はかなり絞らないとちと苦しいが(F11でまあなんとか及第点といったところ)、超広角だしまあOKかなぁと。歪曲収差がわりときっちり補正されているので、純正のAF 18mm F2.8 Dよりはずっと好みである。

 もう一方のAi AF Nikkor 35mm F2 Dは、Dタイプになったのが1995年という、これもまた設計の新しくないレンズなうえに、WebサイトのMTF曲線を見たかぎりはもうひとつと言わざるをえないレンズだが、評判はそんなに悪くないし、絞ればなんとかなるだろうという予想のもとに選んだ。

 やはり絞り開放では球面収差っぽいアマさがあって、絞るにつれてシマリが出てくるという、わりと設計の古い単焦点レンズによくあるタイプ。実写での感じで言えば、F8くらいがいちばんおいしそうに思えた。

 マイクロとマクロの2本は、以前からブツ撮り用にも使っていたレンズなので、性能についてはそれほど心配はしていないが、絞りを開けて撮ったことがほとんどないので、そのあたりも含めて一度チェックしてみないといけないと思っている。

 さて、買ったはいいが、なかなか時間がとれなくてあまり撮っていなくて、いろいろ考えなくてはならないことがある。

 レンズの問題は引きつづき考えなきゃならないし、ピクチャーコントロールの設定をどうするのがいいかとか、高感度時のノイズ処理をどんなふうに設定するかとか、絞り込んで撮ることが増えるとゴミが目立ちやすくなって困るとか、久々の手ブレ補正0EVカメラなので油断してるとすぐブレるとか、とにかく課題は山積みなのだ。

 ともあれ、ワタシ史上初のフルサイズデジタル一眼レフである。夢のフルサイズライフ(もしかしたら悪夢チックかもしれないけど)の行く末がどうなるかはワタシ自身にもわからないままのスタートである。一応、乞うご期待とだけ言っておこう。うん。




  • サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 画質モードはファインのサイズ優先、ピクチャーコントロールはニュートラルをベースにコントラストだけ1ステップ上げたもの。そのほか、アクティブD-ライティングとヴィネットコントロールと長秒時ノイズ低減はオフ、高感度ノイズ低減は標準に設定しています。


D700 / AT-X 100mm F2.8 PRO D Macro / 4,256×2,832 / 1/100秒 / F8 / -1EV / ISO200 / 100mm D700 / AT-X 100mm F2.8 PRO D Macro / 4,256×2,832 / 1/250秒 / F8 / -1EV / ISO200 / 100mm

D700 / AT-X 100mm F2.8 PRO D Macro / 4,256×2,832 / 1/250秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO200 / 100mm Ai AF Nikkor 35mm F2 D / 4,256×2,832 / 1/60秒 / F8 / +0.3EV / ISO800 / 35mm

D700 / AT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/200秒 / F11 / 0EV / ISO200 / 17mm D700 / AT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/250秒 / F11 / 0EV / ISO200 / 17mm

Ai AF Micro Nikkor 60mm F2.8 D / 4,256×2,832 / 1/80秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO200 / 60mm D700 / AT-X 100mm F2.8 PRO D Macro / 4,256×2,832 / 1/250秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO200 / 100mm

D700 / AT-X 100mm F2.8 PRO D Macro / 4,256×2,832 / 1/1250秒 / F4 / -0.3EV / ISO200 / 100mm Ai AF Nikkor 35mm F2 D / 4,256×2,832 / 1/30秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 35mm

D700 / AT-X 100mm F2.8 PRO D Macro / 4,256×2,832 / 1/30秒 / F8 / -1EV / ISO200 / 100mm D700 / AT-X 100mm F2.8 PRO D Macro / 4,256×2,832 / 1/40秒 / F4 / -1.7EV / ISO200 / 100mm

D700 / AT-X 100mm F2.8 PRO D Macro / 4,256×2,832 / 1/160秒 / F4 / -2.3EV / ISO200 / 100mm Ai AF Micro Nikkor 60mm F2.8 D / 4,256×2,832 / 1/100秒 / F11 / 0EV / ISO200 / 60mm

D700 / AT-X 100mm F2.8 PRO D Macro / 4,256×2,832 / 1/100秒 / F8 / -2.3EV / ISO200 / 100mm D700 / AT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/250秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / 17mm

Ai AF Nikkor 35mm F2 D / 4,256×2,832 / 1/20秒 / F11 / -0.7EV / ISO200 / 35mm

(カウパレード東京丸の内2008で撮影)



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  ニコンD700関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/07/03/8783.html



北村智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2008/09/29 00:38
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