E-520を手に入れてから約2か月経っての感想はと言えば、「買って良かった」、である。1年ほど前にE-410を買ったときにはそれなりに幸せを感じたものだが、そのすぐあとに発売されたE-510を触ったときに口惜しい思いをして、その分を2代目で取り返したような気持ちである。当時は、せっかくフォーサーズを買うのだから、やはり小型軽量なのがいいに決まってる、と思っていたし、E-510よりE-410のプロポーションのほうが好みだったこともある。
手ブレ補正を内蔵しているかどうかの違いは、思っていた以上に大きかった。それまでは、「手ブレ補正なんてなくたってたいして困らんでしょ派」だったのが、E-510の新製品レビューをやったときから大ハマリである。E-3を手にしたころには、もう「手ブレ補正なしじゃやってけないもんね派」に宗旨替えしていたほどだ。
これはもう、明らかに堕落である。手ブレ補正があることに安心しきっていてホールディングはゆるんでしまっているし、夕方や室内で撮っているにもかかわらず、シャッター速度を確認せずに撮るくせがついてしまってもいる。ひどいときなどは、撮った画像がブレているのを見て、首をかしげながら撮影データをチェックして初めてシャッター速度が遅すぎたことに気づいた、なんてことまであったりする。
もうひとつ。手ブレ補正の有無だけでなく、グリップのあるなしも大きなポイントだった。肩や首にかけているときは軽いほうがいいが、ぶらぶら歩きながら撮るときなどは、手に持ったままというケースも少なくない。右手で持ってぶらさげているときに、グリップのないE-410はしっかり握っていないと落っことしそうで怖い。今年モデルのE-420は、グリップ部の出っ張りのおかげで、ずいぶん指がかりがよくなってはいるが、それでもやはりE-520のグリップの安心感にははるかに遠くおよばない。
夏場の野外での撮影は汗をかくわけで、ストラップを首や肩にかけておくと、その部分に湿気がたまって気持ちが悪いし、ストラップに汗がしみるのもなんだかだなぁ、って感じがしてしまう。で、右手に持ったままぶらぶらしたりするわけだが、そういうときに、軽く曲げた指に引っかかってくれるというのがありがたいのである。
もちろん、ホールディングも安定するので大助かりだ。E-420は軽くて小さいレンズと組み合わせたくなるの対して、E-520は重めのレンズでも持ちにくくならないのでレンズを選ばない。スタンダードのレンズでもいいし、ハイグレードのレンズをおごってやってもいい。ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWDとかだとトータルでちょっと重くはなるが、使い勝手的には悪くない。
ただ、AFの弱さとファインダー像の小ささだけはどうにかしてもらいたい。今どきの一眼レフでピントがAFまかせにできないのは痛すぎる。あのボディサイズのままで、MFがばっちり使えるE-3級のファインダーが搭載できるとも思えないから、その代わりに安心してまかせられるAFを開発してもらいたい。まあ、三度目の正直ともいうくらいだから、来年のE-530(勝手に決めつけてはいけません)に期待したいところである。
■ 期待したい「マイクロフォーサーズシステム」規格
さて、話はE-520から離れるが、8月5日にオリンパスとパナソニックが「マイクロフォーサーズシステム」という規格を発表した。すでにニュースページをごらんになった方も多いだろうから細かいことは書かないが、なかなかに興味深い規格である。
まず一番に、フランジバック(マウント面から像面までの長さ)が従来の約半分の20mmほどになること。マウント径も6mm縮小、ボディとレンズとの情報伝達を受け持つ電子接点は9ピンから11ピンに増やすというのが決定事項で、あとは全面的に不明のままである。
名前は“マイクロ”なのだが、撮像素子が小さくなるとかではない。だったらどのあたりが“マイクロ”なのかと疑問を感じるところだが、どうやらフランジバックを短縮化したことによってカメラボディのスリム化を、さらにマウント径の縮小も合わせてレンズの小型化を達成できるところが“マイクロ”なのであるらしい。
発表の中では動画についても言及され、4:3比率から16:9比率を意識させるようなロゴになっていたりするものだから、画面の縦横比はどうなるのかと聞いたみたところ、フォーサーズ規格で規定されているのは画面の対角線長だけで、縦横比についての決まりはないんだとか。だから、16:9もありうるし、「スクエアフォーマットなんてのもありかもしれません」などとはぐらかされてしまったのだが、たぶん、4:3比率のままになるだろうと、個人的には予想している(動画だけ16:9比率の上下カット方式になるんじゃないかと思う)。
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マイクロフォーサーズシステムのロゴ
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そのあたりはさておくとして、わざわざ“マイクロ”と名乗るくらいだから、相当に小型軽量システムができると踏んでいるのだろう。なにしろ、画面サイズは小さいくせにレンズは大きいんだよね、と評されることも多いフォーサイズである。今度は、名前は“マイクロ”なのにちっとも小さくなってないよね、なんてささやかれるようになったら目も当てられない。E-420よりふたまわりくらい小型軽量なカメラがつくれる自信があるからこそ“マイクロ”と名付けたのだろうと思うし、そうでなければ、一眼レフに興味を持ちつつ大きさと重さに負けてコンパクト機を買った人たちを釣り上げることなどできやしない。
そう考えると、なんだかとても面白くなってくる。ミラーなどのメカや駆動用のモーター、光学ファインダーがいらなくなって、ボディが今より薄型化できるのだから、E-420よりマイナス100gは十分に狙える範囲なのではないかと思う。レンズも軽くできるだろうから、レンズキット状態で400gも夢ではない(E-420のレンズキットは570gである)。
コンパクト機で主流の薄型スタイリッシュ機がだいたい100~150gだから勝負にはならないが、CAMEDIA SP-570UZあたりの高倍率ズーム機だと400~450g程度。同じくらいの重さで“一眼レフ画質”が手に入るとしたら? よろめく人がいっぱい出そうな気がするではないか。
気になるのは、フランジバックを短くすると、広角は設計の自由度が上がって楽になる反面、望遠はかえって大型化しかねないこと。バックフォーカス(光学系最後端から像面までの距離)がもともと長くなりやすい望遠レンズは、フランジバックが短くなった分を鏡胴を伸ばしてカバーしなくてはならない分、レンズ全長が大きくなってしまうわけだ。
それから、フランジバックを短くした結果、レフレックスミラーが入る余地がなくなってしまったこと。一眼レフでなくなるのだからAFはコントラスト検出になるだろう(外部パッシブ併用式の可能性もなくはない。コストとサイズが問題になるけど)。マウントアダプターを併用すれば従来のフォーサーズレンズが装着できると説明されてはいるが、コントラストAFが使えるレンズは限られている。つまり、一眼レフのレンズはMFのみでの対応になる可能性が高いということだ。
ちょっと考えただけで、マイナス要素もいろいろ出てきそうな新規格だが、コンパクト機からのステップアップを狙っている人たちにはかなりアピールしそうだし、レンズが共用できる強みをいかして、さらに一眼レフへとリードしやすいのもおいしいところ。筆者個人としては、フォーサーズ一眼レフのサブシステムとして使いわけるのが楽しそうとか思ってしまう。となると、来年は、E-530にするか、それともペンDigitalにしようかで悩んだりするのかもしれない(って、すでに妄想モードに入ってますが)。
※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
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地下鉄副都心線の渋谷駅構内。吹き抜けになっているのをフェンスの上に手を伸ばしてライブビューで。手ブレ補正があるからとシャッター速度も見ないで撮ったけど、よくブレなかったもんだとあとで思った
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/5秒 / F3.5 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
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カメラ片手にぶらぶら歩いて目についたものにレンズを向けるというパターンが多い。招き猫にしては表情がちょっと変な感じがしたので撮ったのだが、顔よりも手のほうが問題だった
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/40秒 / F4 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
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これだけ大きな住所表示というのは日本中探してもほかにないのではないかと思う。数年前に初めて見たときはもっと面白かった
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F9 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
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アートか落書きかわかりません。けど、けっこう不気味な感じ。夢に出てきて欲しくないタイプ。だったら撮るなって言われそうだけど、インパクトが強かったもので、つい
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/125秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
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ブロック塀に残っていたセミの抜け殻。ライブビューを使って横から狙ってみた。以前なら、塀に張り付くようにしてカメラを構えていたシチュエーション。それにしても、このED 50mm F2 Macroのシャープさはすごい
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
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中華屋さん(エスニック系だったかも)の店先に並べられていたイス。窓枠が木製だったりするあたりが日本っぽくなくて良かった
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
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恵比寿駅近くの交差点。ひらがなで「じてんしゃ」と書いてあるあたりが可愛らしい。そういえば、昔に比べて路上の吸い殻少なくなったねぇ
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F5 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
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青い空に雨をたっぷり含んでそうな雲。蒸し暑さは最高潮だし、逃げ込める屋根を探しておかないとヤバい感じ
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
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昨年モデルよりもシャープネスのかけ方が優しくなった感じがしている。エッジのラインがきつくないのが好き
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/15秒 / F2.8 / -1.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
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同じ場所で30枚くらい撮ったけど、ブレてなくてピントが合っていると言えるのはこれくらいしかない。まあ、1/25秒なんて条件でクローズアップはかなり無茶ですけど
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/25秒 / F2 / ISO100 / WB:オート / 50mm
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最近はテスト撮影代わりに一時的にライブビューに切り替える、なんていう使い方もする。露出に悩んだときとか、撮ってチェックして補正かけて、という作業の繰り返しをやらなくてすむので便利。このシーンは難しくないけど、状況によってはかなり便利だったりする
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F2.8 / ISO400 / WB:晴天 / 50mm
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ライトアップの明かりがともって昼間とは違ったコントラストになる。ISO100だとだんだん手持ちがきつくなってくるが、手ブレ補正が強力だからと、シャッター速度はまたもノーチェック
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/8秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 42mm
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ピクセル等倍で見るとちょっとアマいような気もしないではないが、まあ許容範囲かなぁ、と思う。開放F値がF3.5~5.6だと夕暮れ時の撮影は苦しいが、手ブレ補正付きなら安心できる
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/13秒 / F5 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 29mm
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安いズームでネオンを撮ると、収差がやたら目立ったりすることもあるが、オリンパスのレンズはそういうのが少ない。ありがたいことである
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/10秒 / F6.3 / -1.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 42mm
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美容院の店の前に置かれていたテーブルとイス。混んでるときにはここで客が待つんでしょうかねぇ、とか思ったりしながら撮った
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F4.7 / -1EV / ISO400 / WB:晴天 / 25mm
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これくらい明るい照明があるとISO100でもまだ粘れる。ガス灯ふうなのはしゃれてていいと思うけど、曲がってるのは酔っぱらいにでもやられたんだろうか
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
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窓の内側に並べてあるのは良く見るけれど、外にボトル(もちろん、空っぽだけど)が並べてあるのは珍しい気がした
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/10秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
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いかにもハンドメイドな靴。値札がついていないあたりが恐怖をそそる。いったいいくらくらいするのやら、って感じである。
E-520 / ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
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■ URL
オリンパス
http://www.olympus.co.jp/
製品情報
http://olympus-imaging.jp/product/dslr/e520/
気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(E-520)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#e520
オリンパスE-520関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/05/20/8468.html
■ 関連記事
・ オリンパスとパナソニック、「マイクロフォーサーズシステム」規格を発表(2008/08/05)
北村智史 (きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。
ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/ |
2008/08/06 13:50
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