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キヤノンEOS 40D【第5回】
デジイチ持って水族館と動物園に

Reported by 奥川浩彦


 EOS 40Dの新製品発表会で、想定ユーザーとされたのは「団塊の世代」だった。正確には「プロ写真家のサブ機」、「アマチュア写真愛好家の本命機」に加え、写真に目覚めた一眼レフ初心者として「団塊の世代」という表現が使われていた。

 マーケティング的には、これから退職する世代を新たにとり込もうということであろう。筆者は団塊世代より一回り下の世代になるが、子供の頃欲しくても買えなかったモノとして印象に残っているのが、ラジコンとカメラだった。小学生の頃、数万円のラジコンは高嶺の花だった。中学時代には、一眼レフカメラの雑誌広告を羨望の眼差しで見た記憶もある。ラジコンは低価格化が進み、今では子供でも買える価格となったが、一眼レフカメラは今の子供にもそれなりに高い買い物だろう。

 幸い学生時代にラジコンも一眼レフも手に入れることができた。ラジコンはすぐに挫折したものの、カメラ趣味は20数年の長い付き合いになっている。一眼レフには男の子の物欲を刺激する要素が感じられ、道具としての魅力がある気がする。その点では団塊の世代に対する一つの提案として、一眼レフは正解だろう。写真を楽しむ人が増えてくれるのは喜ばしいことだ。

 団塊世代が撮る被写体の代表格は孫だろうか。今回は小さな子どもが喜びそうな水族館と動物園に撮影に出掛けてみた。秋の行楽シーズンでもあり、お孫さんを連れて出掛けるにはいい時期だろう。

 以前「IXY DIGITAL 800 IS」の時、水族館には玉砕覚悟で行ったことがある。結果は「コンパクトデジタルカメラでの撮影は難しく、どちらかといえば動画で撮るのがお薦め」、「撮るなら一眼レフだろう」と書いた。と言いつつ、実は水族館でデジタル一眼レフカメラを使ったことはない。はたしてどれくらい撮れるのか試してみることにした。

 撮影ポイントとしては、イルカショーなどの屋外と屋内での水槽が想定される。ジャンプするイルカを撮るにはAF性能が重要だろう。水槽の撮影では、明るいレンズに高感度ノイズの性能も要求される。デジタル一眼レフカメラでも難しい被写体であることに変わりはない。

 まずは屋外でイルカの撮影。この日は祝日で会場は満席状態。客席の中段からEF 200mm F2.8 L USMを使用して撮ることにした。筆者は動きモノの撮影が好きでサーキットへはよく出掛けている。知人から「F1って速くて難しいんじゃないの?」と言われるが、動きが予測できる分、簡単とは言わないが撮りやすい被写体だと思っている。同じスポーツ系ならサッカーの方が予測が難しく、撮りにくい被写体だろう。今回のイルカも最初は予測がつかず、大苦戦することとなった。

 レンズ選択としては200mmは間違っていないと思うが、水中からいきなり飛び出すイルカをフレームに入れることが極めて難しい。肉眼で飛んだことを確認してからカメラを構えても間に合わない。かと言ってファインダーを覗いていると、周りの歓声で飛んでいることがわかってもフレームにはイルカの姿はない。もとよりショーの進行自体がわからないので、撮影ポジションの選択で左右される。リングをくぐる芸は予測ができたが、それ以外は納得した写真が撮れないうちにショーが終わってしまった。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


リングをくぐる芸は予測ができた。顔の部分のピントが甘いのでもう少し絞った方がよかったかも
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F3.2 / +1.33EV / ISO200 / WB:オート / 200mm
ジャンプしている写真ではなく、落ちてくるイルカの写真
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F2.8 / +1.33EV / ISO200 / WB:オート / 200mm

200mmのレンズでは、被写体をフレームに収めることが難しかった
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F2.8 / +1.33EV / ISO200 / WB:オート / 200mm

 続いて行なわれたシャチのショーは、被写体が大きいこともあり、レンズをEF 17-85mm F4-5.6 ISに変更して撮ることにした。短めのズームにしたことに加え、シャチのクーが何度もジャンプを失敗。撮影機会が増えたことで、今度はジャンプするシーンを撮ることができた。レンズとしては中望遠のズームが一番使いやすそうな印象だ。

 そのまま会場に居座り、前の方の席に移って再度イルカショーを撮ることにした。2度目も午前のショーと同じ進行かと思ったら微妙に違う。投げたフリスビーをキャッチする芸も、フリスビーを投げる方向が毎回違う。そのため、2度目のショーもイマイチ納得できない撮影に終わってしまった。孫ができるまで後10数年?、もっと訓練が必要そうだ。


ギリギリでボールに届かないシャチのジャンプ。撮影はズームレンズに切り替えて楽になった
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F5.6 / +1.33EV / ISO400 / WB:オート / 59mm
4回目のジャンプでやっと成功。シャチの向きがイマイチ
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F5.6 / +1.33EV / ISO400 / WB:オート / 78mm

2度目のイルカショー。フリスビーは取れなかったがこちら向きにジャンプしてくれた貴重な1枚
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F7.1 / +1EV / ISO800 / WB:オート / 85mm
揃ってジャンプする瞬間をMFで撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F7.1 / +1EV / ISO800 / WB:オート / 85mm

2回目のショーなので、ラストに並んで飛ぶことが予想できた
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F5.6 / +1.67EV / ISO800 / WB:オート / 56mm

 休日とあって、水槽の周りも人が溢れている。水槽に近付くのも困難だが、そこで長時間撮影するのも気がとがめる状況だ。比較的人の少ない場所を選んでの撮影となった。イワシの水槽はIXY DIGITAL 810 ISの撮影の際、動画はそこそこ見られる絵が撮れたが、静止画は1枚もまともに撮れなかった記憶がある。

 水槽は円筒形で、内部は渦巻き状の水流になっているようだ。イワシは水流に向かって泳いでいる。被写体としてはゆっくり左から右へ移動している状態だ。ISO1600、またはISO3200に上げ、レンズは24mm F1.8 EX DG Aspherical Macroを使用した。AFポイントは右端1点とし、イワシの顔にピントが来るように撮ってみた。コンパクトデジカメよりは比較にならないほど有利だが、やはり暗い水槽の撮影は難しい。被写体が動くこともあり、もう少しシャッター速度も上げたかったし、もっと絞り込んで撮影したかった。

 最後に、外光が入る比較的明るい水槽で撮影してみた。多少明るくなったので、ISO400からISO800にしてノイズを抑えてみた。イワシは常に右向きで泳いでいたが、この水槽の魚は不規則に向きを変えるし、動きもそれなりに速い。被写体までの距離もやや遠目だったのでEF 50mm F1.8を主に使用した。

 撮影をしていると意外なことに気付いた。撮った画像が液晶モニターに映ると、それを覗き込む幼児が多いのだ。3型の液晶モニターにカラフルな熱帯魚が映るのが気になるようで、何人かの幼児が撮る度にジッと見ていた。やはり水族館は難しいとの結論だが、妙なところで孫にはウケそうな気がした。孫ができる頃には、ISO6400でノイズが気にならない時代が来てくれることを期待しよう。


イワシの水槽は暗く、ISO1600でも絞りを開放付近にしなければ撮れない
24mm F1.8 EX DG / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F2.2 / -1EV / ISO1600 / WB:オート / 24mm
かといってISO3200に上げると、ノイズが増える
24mm F1.8 EX DG / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F2.8 / -1EV / ISO3200 / WB:オート / 24mm

上から自然光を取り込んだ比較的明るい水槽
24mm F1.8 EX DG / 3,888×2,592 / 1/100秒 / F3.5 / -0.33EV / ISO400 / WB:オート / 24mm
イワシより距離があったので、50mm F1.8に変更して撮影
EF 50mm F1.8 II / 3,888×2,592 / 1/400秒 / F2.5 / -0.33EV / ISO800 / WB:オート / 50mm

もっと絞って撮影したいが、ISO800ではこのあたりが限界か
EF 50mm F1.8 II / 3,888×2,592 / 1/250秒 / F2.2 / -0.33EV / ISO800 / WB:オート / 50mm
ISO1600からノイズが目立ち始める。それでも撮影条件は厳しい
EF 50mm F1.8 II / 3,888×2,592 / 1/125秒 / F2.5 / -0.33EV / ISO1600 / WB:オート / 50mm

イワシと違って泳ぐ向きが一定でないので、とっさにAFポイントを顔に移動するのが難しい
EF 50mm F1.8 II / 3,888×2,592 / 1/125秒 / F4 / -0.33EV / ISO800 / WB:オート / 50mm
レンズをガラスにピッタリ付けられればいいのだが、角度によってガラスの反射の影響も大きい
EF 50mm F1.8 II / 3,888×2,592 / 1/80秒 / F2.2 / -0.33EV / ISO400 / WB:オート / 50mm

 日をあらためて動物園に出掛けてみた。子供が小さかった頃は動物園に行く機会があったが、中学、高校に進んだ現在は無縁となっている。今年、数年振りにLUMIX DMC-TZ3の連載の際に訪れてみると、意外に一眼レフを持った人が多かったのが印象的だった。10倍ズームのコンパクトデジカメでもそこそこ撮れたが、苦戦したのは屋内にるコアラや、動きの速いアシカなどだ。前回は午前中から撮影に出かけることができたが、今回は仕事の合間の撮影。さらに光線の状態や動物の展示にも差があり、撮影条件は前回ほどよくない。

 東山動物園は現在、70周年事業として種々なイベントを行なっている。ライオンがガラス越しに間近で見られる「ワーオチューブ」は常設展示になった。「キリンの展望デッキ」は期間限定、曜日限定となり、この日は閉鎖されていた。11月4日までは秋まつりイベントも開催されているので、出掛ける方はホームページで確認された方がいいだろう。

 コアラ舎は外光を取り入れているがやや暗め、ストロボ撮影は禁止となっている。距離的にはEF 200mm F2.8 L USMが丁度よかった。EF 300mm F4 ISの方が手ブレ補正を搭載しているので有利かもしれないができるだけガラス面に近付いて撮りたかったので200mmを選択した。

 ISO1600に上げてもシャッター速度は1/200秒程度。35mmフィルム換算320mmなので、手ブレする可能性は高い。こんな時は「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」方式で撮るしかないと思いつつ、他社のボディ内手ブレ補正機構を採用したデジタル一眼レフが羨ましいと感じるシーンだ。

 1匹目のコアラは微動だにしない。手ブレ率は高かったが、何枚か許せる画像があった中で、薄目を開いた画像があったので採用した。2匹目は葉を食べていたのでさらに被写体ブレも加わった。こちらはわずか数枚しか撮れなかった中の1枚だ。コンパクトデジカメよりははるかにましだが、難しい撮影となった。

 次に、横向きに立ちすくむペンギンを撮ってみた。一眼レフらしく、背景をボカしての撮影だ。この辺りはやはり10倍ズームのコンパクトデジカメとは比較にならない。こちらをジッと見つめるペンギンは等倍にして見ると顔が怖い。カメラの性能とは関係ないが、可愛く見えるペンギンもアップで見ると視線が鋭く、孫が見たら驚いて泣き出すんじゃないかと思ってしまった。


200mm F2.8で1/200秒。できればボディ内手ブレ補正が欲しい
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 200mm
動くコアラは被写体ブレも加わるのでさらに難しい
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/160秒 / F2.8 / -0.67EV / ISO1600 / WB:オート / 200mm

立ちすくむペンギン。一眼レフらしく背景をボカして撮影
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F3.2 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 200mm
手前のペンギンを左側に配置して撮影。アップで見ると目が怖い
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 200mm

羽を広げた瞬間を撮影。もう少し望遠で撮りたかった
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/320秒 / F6.3 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 85mm
泳ぐペンギンを追いながら撮影すると、一眼レフとコンパクトの差が大きく感じられる
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/200秒 / F5.6 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 85mm

 この日は平日なので液晶モニターを覗き込む幼児はいなかったが、一緒に行ったお孫さんに、撮ったばかりの画像を見せれば喜ぶだろう。小学生くらいなら、カメラを渡して撮らせてみることも可能だ。帰ってプリントすればまた喜んでくれるだろう。大人が喜ぶアートな作品は撮るには、ある程度場所を選ばなければならないが、水族館や動物園なら手軽に行けそうだ。デジタル一眼レフカメラは運動会などの成長イベントでも活躍するので、小さなお子さんやお孫さんがいる方にはお薦めできる買い物だと思う。


ワーオチューブではライオンをアップで撮影できる。ライオンの目は意外に怖くない
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/500秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 200mm
気持ちよさそうだったのでアップで撮影。動かない動物は簡単に撮れる
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/640秒 / F9 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 200mm

ラクダがこちらを向いたので慌てて撮影。もう少し絞りたかった
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/200秒 / F4 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 200mm
アザラシは頭しか水面から出ていないので泳いでる写真はイマイチか
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/400秒 / F7.1 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 79mm

アシカは動きも速く撮影は難しい。コンパクトデジカメではまともに撮れなかった
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/500秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / WB:オート / 85mm
夕方になり光量も少なくなった。壁を越える瞬間を待って撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 85mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/40d/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS 40D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#eos_40d
  パナソニック LUMIX DMC-TZ3【第6回】10倍ズームは動物園に最適
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/longterm/2007/05/09/6204.html
  キヤノン IXY DIGITAL 800 IS【第4回】水族館で玉砕?
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/longterm/2006/06/01/3904.html



奥川浩彦
(おくがわひろひこ)1961年、名古屋生まれ。パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報担当、2001年イーレッツの設立に参加。2006年、iPR(http://i-pr.jp)を設立し広報代理業とライター業で独立。写真を始めたのは学生時代にモータースポーツを撮りたかったから。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選経験あり。鈴鹿で開催されたF1日本グランプリは87年から20年皆勤賞。http://okugawa.jp/menu/

2007/10/24 00:20
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