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カシオ EXILIM Hi-ZOOM EX-V7【第4回】
あえて望遠マクロに挑戦

Reported by 本誌:折本 幸治


 本格的に使い始めてほぼ1カ月。「EXILIM Hi-ZOOM EX-V7」(以下EX-V7)にも慣れてきた。特に焦点距離38~266mm相当(35mm判換算)の画角変化の大きさに、ようやく感覚が追いついたところだ。気軽に携行するのが主目的のコンパクトデジタルカメラに、高倍率ズームは良く似合う。もちろん、そのために本体が大きくなっては元も子もない。EX-V7の魅力は、コンパクトなボディに7倍ズームレンズを搭載したことにあると改めて思う。

 今回は花の季節ということで、千葉市花の美術館に出かけた。前庭、温室棟、展示棟などに分かれた施設で、入館料は大人200円。さらに1,000円の年間パスポートを購入すれば、1年間入館し放題になる。館内のレストランも暇つぶしするには良い雰囲気だ。また、砂浜を園内に持つ稲毛海浜公園の中に立地するため、花に飽きたら海を眺めることも可能。帰る頃、きれいな夕日に巡り会えることもある。

 撮影当日は今年一番の風が吹いた日らしい。そのため、前庭の花壇の花は揺れまくり。そこで素直に屋内の展示棟に入る。天候が悪くても、とりあえず何か撮れるのが温室付き植物園のいいところだ。展示棟ではすでにアジサイが咲いており、いつもながらここに来ると、都市生活でだらけた季節感が矯正される気分になる。

 さて、近年のEXILIM ZOOM系の例に漏れず、EX-V7の接写能力に特筆すべきことはない。マクロモードでの最短撮影距離は、広角端が10cm、望遠端が1m。望遠端における近接距離は、一眼レフカメラ用交換レンズの70-200mm F2.8クラスや、70-300mm F4-5.6クラスを思い出す数字だ。もちろんそれらよりボケは期待できないし、最大撮影倍率も1:5程度だろう。等倍が当たり前の望遠マクロレンズには遠く及ばない。

 望遠マクロの弱さはEXILIMに限ったことではなく、最近のコンパクトデジタルカメラ全般の悩みだろう。それでも望遠端の焦点距離を活かすことを考え、積極的に望遠側を使った撮影に挑戦してみた。アジサイの装飾花を全体で捉えるなら、それほど撮影倍率も必要ないだろうし。

 さっそくアジサイにかぶりついて撮る。いや、ワーキングディスタンスは1m以上なので、かぶりつくというほどは近づけない。その代わり、遠くの被写体を引き寄せて撮るのが意外に面白い。この施設でコンパクトデジタルカメラを使う場合、なるべく通路側の花を被写体として選んでいたが、今日は花壇の奥の花が主役。ずいぶんいつもと違って新鮮だ。

 ボケを得るため、撮影モードを絞り優先AEにセットする。操作はシャッター速度優先AEと良く似ていて、左右ボタンで絞り値を選ぶだけ。SETボタンを押すたびに、左右ボタンの役割は絞り値設定と露出補正値の設定に切り替わる仕組みだ。


モードダイヤルでA(絞り優先AE)を選ぶ。ダイヤルの操作性は良い 左右ボタンで絞り操作が可能。露出補正も行なえる。ISO感度もこの画面で変えられれば……
  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


F4.1(開放)
3,072×2,304 / 絞り優先AE / 1/8秒 / 0.67EV / ISO64 / WB:昼光 / 89mm
F5.6
3,072×2,304 / 絞り優先AE / 1/5秒 / 0.67EV / ISO64 / WB:昼光 / 89mm
F11.2
3,072×2,304 / 絞り優先AE / 0.8秒 / 0.67EV / ISO64 / WB:昼光 / 89mm

F5.3(開放)
3,072×2,304 / 絞り優先AE / 1/13秒 / 1.33EV / ISO200 / WB:オート / 266mm
F6.5
3,072×2,304 / 絞り優先AE / 1/8秒 / 1.33EV / ISO200 / WB:オート / 266mm
F13
3,072×2,304 / 絞り優先AE / 1/2秒 / F13 / 1.33EV / ISO200 / WB:オート / 266mm

 絞り値を選ぶといっても、EX-V7の絞りは3段階しかない。広角側だとF3.6→F4.2→F9.2、望遠端はF5.3→F6.5→F13へと切り替わるだけだ。しかも3段階目は内蔵NDフィルターによる減光なので、2段階目と3段階目の描写はまったく同じ。この辺はいかにもコンパクトデジタルカメラっぽい。そして予想通り、開放→2段階目の絞りによるボケの変化は、あまり顕著ではない。それでも思ったよりボケて満足。

 なお、ISOオートしか選べないシャッター速度優先AEや、ISO64に固定されるマニュアル露出と異なり、ISO感度に関しては自由度が高い。具体的には、ISOオート(ISO80~ISO250)に加え、ISO固定設定(ISO80 / 100 / 200 / 400 / 800)を選択可能。もちろん手ブレ補正も併用でき、「ブレ軽減」を「オート」、または「被写体ブレ軽減」に設定すると、ISO400まで自動で増感するようになる。

 マクロ撮影の場合、中央以外の場所にピントを求めることが多い。しかもフォーカスロックでは、ピント合わせをした距離が、被写界深度から外れる可能性がある。これまでコンパクトデジタルカメラで接写する場合、被写界深度の深さを信じてフォーカスロックしていた。しかし今回はかなりの望遠域とあって、フォーカスロックでは少々心配だ。EX-V7には9点のマルチAFスポット機能はあるものの、任意で測距点を選ぶことはできない。その代わりマニュアルフォーカス(MF)があるので、これを試してみた。


MFにすると、中央に枠が現れる 左右ボタンでフォーカスを調整すると、枠内が画面いっぱいに拡大される

 MF操作も左右ボタンで行なう。このとき画面中央が自動的に拡大され、よりピントを合わせやすくなる。ただし、拡大位置は画面中央に限られるので、今回のように中央以外にピント位置を求める場合、ほとんど用をなさない。むしろ拡大せずに、輪郭の輝度差のピークだけを強調表示してくれた方がありがたい。拡大表示の品質もあまり良くない。MF時は電池の消耗を覚悟の上で、液晶モニターの輝度設定を最大の「+2」にした方が良いだろう。とにかく「E-330のBモードライブビュー並に」とはいわないものの、せめてAF枠を9点から選べる機能は欲しかった。結局、合焦位置を画面中央以外にしたいときは、フォーカスロックでまかなうことにする。

 望遠マクロにこだわったため、ワーキングディスタンスは大口径望遠ズーム並み、ボケ量はダブルズームキットの望遠ズームレンズ以下という変わった撮影になったが、それなりにボケを活かした写真が撮れたと思う。フォーカスロックの問題も、ボケ量が少ないためあまり気にならない。3倍ズームのコンパクトデジタルカメラだと、ここまで望遠マクロに徹底して撮らなかったと思うので、これもEX-V7ならではの楽しみ方だとこじつけたい。特に前ボケはぜったいに狙わなかったはずだ。

 近接時(といっても1m近辺)の画質は結構良い印象。思ったよりボケはガサガサではないし、輪郭は予想以上にシャープ。画面端にうっすらと色にじみが認められるが、最近の水準から見て軽微といってよいだろう。また、ほのかに色が乗り始めたアジサイの色再現も良く、白から赤紫に至るグラデーションが美しい。なによりも望遠側とあって、コンパクトデジタルカメラのマクロとしては、パースが目立たないのがありがたい。

 もちろん今回の撮影中、「もっと近づければ」、「もっとボケれば」、「もっとピントがわかりやすければ」と、常に何かを念じていたのは確か。いずれはコンパクトデジカメの王道、ワイドマクロ撮影も堪能してみたい。


3,072×2,304 / 絞り優先AE / 1/5秒 / F5.3 / 1EV / ISO64 / WB:昼光 / 266mm 3,072×2,304 / プログラムAE / 1/13秒 / F4.1 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 89mm

3,072×2,304 / 絞り優先AE / 1/6秒 / F3.7 / 1EV / ISO64 / WB:蛍光灯(昼光色) / 50mm
3,072×2,304 / プログラムAE / 1/10秒 / F4.7 / 0.67EV / ISO64 / WB:オート / 210mm

3,072×2,304 / プログラムAE / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 76mm
3,072×2,304 / プログラムAE / 1/500秒 / F5.1 / 0.33EV / ISO200 / WB:昼光 / 255mm

3,072×2,304 / 絞り優先AE / 1/6秒 / F5.3 / 0.33EV / ISO64 / WB:昼光 / 266mm 3,072×2,304 / マニュアル露出 / 8秒 / F6.2 / 0EV / ISO64 / WB:日陰 / 181mm


URL
  カシオ
  http://www.casio.co.jp/
  製品情報
  http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_v7/
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( 本誌:折本 幸治 )
2007/05/07 00:01
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