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キヤノン IXY DIGITAL 900 IS【最終回】
魅力的な仕様を堪能、完成度はもう一息か

Reported by 奥川 浩彦


 まだ暖かい10月から撮影を始めた本連載も、気付けば寒さに凍えながら撮る季節になった。街にはクリスマスイルミネーションが増えている。最終回は名古屋近郊のクリスマスイルミネーションと、2カ月間使用してきた感想などを書いてみたい。

 名古屋近辺で筆者が一番お薦めするイルミネーションスポットは、三重県長島町にある「なばなの里」だ。バランスよく飾られたイルミネーションは秀逸だと思う。期間も11月から2月まで長期間あり、家族連れからカップルまで幅広く人気のある場所だ。今年は2色の光の回廊が新たに設置された。光の回廊は光量も多く、手持ちで普通に撮れる明るさになっている。

 前回、名古屋港に飾られたスターライトレビューの画像を掲載したが、そこから数百mの位置にあるのがイタリア村だ。水路でゴンドラに乗れたりと、カップルで訪れるにはお薦めのポイントとなっている。ここではノイズを抑えるためにISO80に設定し、マイカラーのカスタムをコントラスト+2に変更している。

 名古屋中心部では名古屋駅JR高島屋のタワーズライツが有名だ。数年前までのステンドグラス風に飾られた頃と比べると見劣りするが、今年はスクリーンに世界の景色を映し出す新しい試みも始まっている。離れたところから撮影する方がバランスよく撮れるが、焦点距離が77mm(35mm判換算)となるので三脚があったほうがいいだろう。タクシー乗り場の向かいまで近付くと、28mmであれば充分フレームに入る。光量もそこそこあるので、少し感度を上げれば手持ちでも撮影できそうだ。ただし見上げるフレーミングになるので、被写体は台形になってしまう。

 これからは街のイルミネーションが一番綺麗な時期。ぜひ暖かい格好でお出掛けいただきたい。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


なばなの里のウィンターイルミネーション。2月末まで飾られる
3,072×2,304 / 1秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 9.11mm
イルミネーションの色は刻々と変化する
3,072×2,304 / 0.8秒 / F4 / -2EV / ISO80 / WB:太陽光 / 9.11mm

なばなの里に新しく設置された光の回廊。手ブレ補正がなくても手持ちで撮れる明るさだ
3,072×2,304 / 1/60秒 / F2.8 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm
もうひとつの光の回廊は青色LEDを採用。ホワイトバランスオートでほぼ見た感じと同様に撮れる
3,072×2,304 / 1/40秒 / F2.8 / -2EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm

これもなばなの里。コスモス畑がLEDに変わっていた
3,072×2,304 / 1/8秒 / F2.8 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 4.6mm
名古屋港イタリア村。暗部のノイズを目立たなくするため、マイカラーのカスタムカラーでコントラストを+2に設定
3,072×2,304 / 0.3秒 / F3.2 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 6.14mm

名古屋駅JR高島屋のタワーズライツ。通りの反対側から撮った方が自然な感じに撮れる
3,072×2,304 / 0.6秒 / F5 / -0.67EV / ISO100 / WB:オート / 12.67mm
同じくタワーズライツ。今年はスクリーンが設置され刻々と変化する
3,072×2,304 / 1秒 / F5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 12.67mm

すぐそばまで近付くと広角端で手持ちでも撮れそうだ
3,072×2,304 / 1/5秒 / F2.8 / -0.67EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm

 さてIXY DIGITAL 900 ISを2カ月ほど使ってきたので、最終回は筆者が感じたよい点と悪い点をまとめてみたい。よい印象を持っているのは、次の点だ。

 まず、広角28mmの採用。やはり28mmは撮っていて楽しいと感じる。28mmに慣れてしまうと35mmや38mmから始まるズームレンズを採用したデジカメでは満足できなくなる。フレームに入りきらない被写体が収まるのに加え、28mmによる広角レンズらしい表現力は魅力だと思う。レンズ設計の難しさはあると思うが、他社も含めて28mmの採用が今後増えていくことを望みたい。

 フェイスキャッチテクノロジーはあまり期待していなかったが、使ってみるとよくできた機能だと思う。カメラに不慣れな人、例えば子どもなどに渡した時、確実に失敗が減ると思う。フォーカスだけでなく露出も顔に合うので、安心感は高い。それ以上にこの機能を見せると、ほとんどの人にウケルのも楽しみのひとつだ。人の顔ではないものを顔と認識して笑わせてくれることもあるが、「背後霊だよ」とかいえる範疇だと思う。誤認識はまだ多いが、今後のさらなる進化を期待したい。

 IXY DIGITALらしい従来からの魅力は変わっていない。800 ISから採用された手ブレ補正は効きもよく手放せないほど満足度は高い。手ブレと被写体ブレの違いが分かりにくいらしく、「室内で子供を撮れる」と勘違いする向きもあるが、やはりあれば便利な機能だ。もっと下のクラスまで普及することを望んでいる。

 AF速度は、このクラスの製品としてはキビキビとして気持ちよく撮れる。ホワイトバランスの安定性も高く、ほとんどの撮影はオートで問題ない色を再現してくれる。また、セルフタイマーカスタムは以前から筆者のお気に入りだ。三脚を使用しての撮影ではまとめて10枚撮れるのは重宝している。


背面右上のモードセレクターの動作が少し固い
 残念ながら気になる点もある。過去に何台かIXY DIGITALシリーズを使用してきたが、画質面ではそれなりに満足していた。900 ISの最大の不満点はレンズだろう。28mmという広角域からの3.8倍ズームによる弊害なのか、画質面では正直いって裏切られた印象だ。

 最初に画質チェックをしたときは初期不良かと思ってしまった。メーカーに画像を送って確認したところ問題なしとの回答だったので、個体による差はあれど、画質的には後退した感がある。L判にプリントする程度なら気にならないのかもしれないが、等倍で見てしまうとガッカリすることが多く、それだけで撮る意欲が減少したりした。ぜひ来春のモデルではもう一頑張りして欲しいと思っている。

 使っていて少し気になったのは、電源オンでデフォルト28mmから撮影が始まる点だ。28mmは魅力的だが、使いやすさでは35mmくらいの方が無難な感じがする。誰でも使えるコンパクトデジカメとしては一考の価値はあると思う。

 最初に半押ししたときの情報で、セルフタイマーのAFと露出が固定されてしまうのも気になっている。記念撮影の場合、複数の人がいれば誰かにピントが合ったまま撮影ができるが、1人旅で景色をバックに撮影しようとすると、景色にピントがあったまま撮影されるので、後から自分がフレームに入ってもピンボケとなってしまう。

 これはフェイスキャッチテクノロジーを使用しても同様で、セルフタイマーのシャッターを押した後で自分がフレームに入ってもせっかくの機能が無効となる。10枚連続で撮る機能もセルフタイマーにあるのだから、毎回顔認識してくれてもいいのではなかろうか。もちろん事前にピント位置と露出を合わせてからセルフタイマーを使用する場合は2枚目以降がリセットされて不都合な場合もあると思うが、1枚ずつピント合わせする方が失敗は少なくなるような気がする。

 そのほか細かな点を列挙すると、手ブレ警告が出たときしかシャッター速度が表示されない。バッテリー残量表示が出たときは、すでにほとんど電池が残っていないので、もう少し早い段階で警告を出して欲しい。ISO1600はまだ実用的とは言い難く、さらなる改善を望みたい。モードセレクターの動作が固く、両端以外に設定する感触はイマイチ。マクロ広角端でズームを動かすと、途端に最短距離が伸びてしまう。液晶モニターが極端に逆光に弱いことも気になる。どのデジカメでも少なからず現れる現象だが、表示内容が崩壊するほど弱いのも問題だと思う。


 さらに希望をいえば、シャッター速度をマニュアルで設定したいシーンが何度かあった。手ブレ補正でかなりスローシャッターを切れるのだから、昼間でも1/30秒くらいで撮りたいと思うことはあるだろう。同様な視点でいえば、ISO80とISO100は近接してるので、ISO50の設定ができて欲しい。せっかくなので、少しでも遅いシャッターが切れる方が筆者としては望ましいのだ。

 操作面では露出補正をメニューに入らないでボタンで直接操作できるようにして欲しい。いつも気になるが、16MBのSDメモリーカードは非実用的だ。他社と同様に数十MB程度の内蔵メモリーを搭載してもらえばと思う。

 900 ISはヒット商品になっているらしい。筆者も発売と同時に購入した1人だが、光学手ブレ補正と28mm、フェイスキャッチテクノロジーも搭載するなど、スペック的な魅力は充分だ。しかし画質面の不満は最後まで残った。800 ISの時には秋の新機種に期待と書いたが、今回もまた春の新機種に期待することになる。画素数はこれ以上望まないので、新設計のレンズでの新機種投入を望みたい。


900 ISのデビューは鈴鹿F1GPだった。あれから2カ月が経った
3,072×2,304 / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 14.69mm
今年の紅葉は玉砕かと諦めていたが、なばなの里には紅葉もあった。大混雑で手持ちで撮影
3,072×2,304 / 1/8秒 / F2.8 / -1.33EV / ISO200 / WB:オート / 4.6mm

いつでも持ち歩けるのがコンパクトデジカメのメリット。東京に向かう新幹線の車窓から。富士川から見る富士山はお薦め
3,072×2,304 / 1/640秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 10.83mm
名古屋港に沈む夕日。連載期間は比較的秋晴れに恵まれた撮影だった
3,072×2,304 / 1/800秒 / F3.5 / -0.67EV / ISO100 / WB:オート / 7.56mm

仕事の途中、西麻布付近で六本木ヒルズを撮影。
3,072×2,304 / 1/640秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 10.83mm
こちらも仕事の途中、大江戸線のエスカレーターは長い。
3,072×2,304 / 1/13秒 / F2.8 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 4.6mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/900is/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm

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( 奥川 浩彦 )
2006/12/06 13:16
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