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キヤノン IXY DIGITAL 900 IS【第6回】
オークションの物撮りに手ブレ補正は有効か?

Reported by 奥川 浩彦


 筆者は昨年からコンパクトデジカメの話題になると「手ブレ補正はいいよ」と言い続けてきた。あわせて、知人からオークションに出品するときの写真や、仕事で製品を撮るときに手ブレ補正の有効性を問われることも多いので、今回はオークション写真と手ブレ補正の関係について書いてみたい。

 オークションで使う画像は、それほど解像度を必要としない。その点では高画素CCDを採用したデジカメは必要ないだろう。640×480ピクセルとか800×800ピクセル程度の解像度であれば、現在発売されているデジカメはもちろん、多くの携帯電話のカメラでも充分だ。だが実際のオークション画像を見ると携帯で撮られたものは見劣りすることが多く、少しでも見栄えのする画像をアップしたいなら、やはりデジカメの方がいい。今回も作例のリンク先は等倍表示となるが、実際にネットで使うならリサイズするので解像度、ノイズもそれほど気にする必要はない。

 知人の話を聞くと、オークションや製品の撮影は室内で撮ることが多いという。その作業の中で、次のような意見が多い。


  • 室内の照明が暗く手ブレする
  • とはいえ三脚を立てるのは面倒
  • ストロボを使用して撮影すると上手く撮れない


 筆者自身が物撮りをするときは、三脚に一眼レフと外部ストロボで撮る。これだと確かに面倒と感じることは多く、この手の記事を執筆するときも物撮りはおっくうに感じることは多い。IXY DIGITAL 900 ISにせっかく手ブレ補正があるのだから、ササッと手持ちで撮影できれば効率がいいのは間違いない。

 実際に撮影をしてみよう。IXY DIGITAL 55をオークションに出品するつもりで撮ってみた。すべての撮影は三脚なしの手持ちで撮っている。まず最初は何も考えずテーブルに置いて撮影した。焦点距離はデフォルトの28mm(35mm判換算)、ストロボオン、IXY DIGITAL 55は清掃していない状態だ。比較的オークションでよく見る画像であろう。

  • 作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


何も考えずテーブルに置いて焦点距離28mm、ストロボオンで撮影。結果は当然見栄えがしない
3,072×2,304 / 1/6秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm
望遠端にすると形状の不自然さは解消される
3,072×2,304 / 1/60秒 / F14 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 17.3mm

 気になる点をあげてみると、「広角で撮ったので形状が逆台形になっている」、「マクロの撮影でストロボを使っているので白トビしている」、「ストロボの影や反射がわずらわしい」、「背景のテーブルがイマイチ」といったところだろうか。

 連載第3回で広角について書いたが、広角側で撮影する場合、見上げると台形に、見下ろすと逆台形に被写体が変形する。物撮りで四角いモノを撮影するときは、できるだけ望遠にした方が不自然な形状になるのを防げる。望遠端を使うとレンズのF値が暗くなったり、ブレやすくなるなどの弊害はあるが、形状の歪みを嫌うならなるべく望遠側で撮った方がいいだろう。

 2枚目はその点を修正して焦点距離105mm相当にしてみた。だいぶ形状の違和感はなくなったと思う。次はテーブルに白い4切の画用紙を置いて撮ってみた。そこそこ見栄えがしてきたと思う。この画用紙は100円ショップで5枚100円で売っていたものなので、コストパフォーマンスは高いと思う。


100円ショップで買った画用紙は役に立つ 画用紙1枚でかなり雰囲気は改善された
3,072×2,304 / 1/60秒 / F14 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 17.3mm

 筆者は物撮りの時、エツミの「ドームスタジオL」をよく使用する。これにより、それほど大袈裟な設備がなくても、テーブルの上が自分専用のスタジオに変えられる。価格も5,000円程度でリーズナブルだ。折り畳むと1m程度の棒状になるので、家庭内の収納にもそれほど困らない。

 標準で背景は青と緑のリバーシブルとなっている。この手の撮影グッズの多くが青を採用しているが、この点は筆者は疑問に思っている。実際に撮影してみるとメタル部分はハッキリと青が写り込むし、カメラ全体も青く染まってしまう。デジカメの様にメタル部分が多いモノは反射を考えると白かグレーの方が使いやすいと思うのだが。

 そこで布を買ってきて、青い部分を覆うようにして撮影している。布だと生地が目立つのでさらに画用紙も用意して、自分なりにカスタマイズして使っている。ちなみに筆者はこれを自分専用のスタジオなので「スタジオ・ジブン」と呼んでいる。

 このセッティングでストロボなしで撮影してみた。ノイズを気にしてISO200、焦点距離は105mm、露出補正は+0.67EV。シャッター速度は1/6秒とかなり厳しい。しかし、テーブルに肘をついて安定した姿勢で撮れたので、手ブレは問題ない程度だろう。

 さらに撮影前にブロアーで清掃もしている。絞りが開放なので被写界深度が浅いのは気になるが、最初の28mm、テーブルそのままの画像と比較すると、かなりいい出品物に見えるのではなかろうか。上手くすると1~2割くらいは高く売れるかもしれない。「スタジオ・ジブン」のお陰で変な写り込みもなくなっている。等倍で見ると気になるところはあるが、800×800ピクセル程度にリサイズすればまずまず見栄えのする画像になったと思う。


エツミの「ドームスタジオL」をダイニングのテーブルに置いて撮影。標準ではバックは青か緑になる メタル部分は青が写り込むし、全体の色も青くなってしまう。
3,072×2,304 / 1/60秒 / F14 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 17.3mm

青バックを白い布で覆って、さらに画用紙を置いて使用している。名称は「スタジオ・ジブン」 もう少し光量があると絞り込めていいが、最初の画像と比べればかなり雰囲気はよくなった
3,072×2,304 / 1/6秒 / F5.8 / 0.67EV / ISO200 / WB:オート / 17.3mm

 ここまでセッティングするなら三脚を立てるくらいは面倒とはいえないが、手ブレ補正の恩恵を活かしたケースであるのは間違いないだろう。頻繁に出品される方で、もし2割高く落札されるようになれば、900 ISへの投資が回収できる可能性はある。

 四角いモノは望遠で撮った方がいいと思うが、モノによっては積極的に広角側で撮ると面白い。筆者と息子のお気に入り、今年の鈴鹿で買ってきたセイウチノーズのウィリアムズ1/18モデルを撮ってみた。望遠側で撮った画像の方は歪みが少ないものの、面白味も少ない感じがする。これを28mmでグッと寄って撮ると、雰囲気はだいぶ変わってくる。ネット通販サイトなら、28mmで撮った方が格好良く見えるのではないだろう。絞り込みができないのでピントの合う範囲は限られているが、全体の雰囲気は悪くないであろう。


望遠側で撮ると形は自然だがやや物足りない。ISO400はノイズが気になるがリサイズすれば問題ないだろう
3,072×2,304 / 1/20秒 / F5.6 / 0.33EV / ISO400 / WB:オート / 14.69mm
ピントが浅いのは気になるが広角で撮ると雰囲気が出る被写体もある
3,072×2,304 / 1/13秒 / F2.8 / 0.33EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm

 ちなみに筆者が仕事で物撮りするときは、このセッティングと一眼レフ+外部ストロボで撮影している。この連載の第1回の外観写真もこの環境で撮ったものだ。ストロボを2台使うときは1台は三脚に固定して、もう1台は手に持って発光位置や光量を変えながら何枚か撮るようにしている。プロの方は撮る前にビシっとセッティングが決まるのだろうが、筆者の場合は撮りながら模索しているレベルだ。

 このときライティングの違う3枚を比較して、連載用にはやや地味目な最後の1枚を選択したが、用途によってはほかの2枚の方が少し派手っぽくていいかもしれない。面倒ではあるが、撮ってみると楽しいのが写真だと思う。結果がすぐに確認できるデジカメなので、是非楽しみながら見栄えのする写真にチャレンジしていただきたい。


筆者が物撮りするときはこんな感じ。2台目のストロボは手抜きして置いてあるだけ。使うときは三脚を使用 外部ストロボを手持ちして、発光位置を変えながら撮影すると雰囲気が変わる(EOS 20D撮影、リンク先はリサイズ済み)

筆者が気にするのは影の出方とCanonやIXYのロゴをキッチリ撮ること(EOS 20Dで撮影、リンク先はリサイズ済み) やや地味目なこの画像をこの連載の写真に採用した(EOS 20Dで撮影。リンク先は800×600にリサイズ済み)


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報(IXY DIGITAL 900 IS)
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/900is/
  エツミ
  http://www.etsumi.co.jp/
  製品情報(ドームスタジオ)
  http://www.etsumi.co.jp/catalogue/catalogue.cgi?id1=3&id2=34&id3=341
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm

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( 奥川 浩彦 )
2006/11/22 02:53
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