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キヤノン IXY DIGITAL 900 IS【第5回】
一度使うと手放せない光学式手ブレ補正

Reported by 奥川 浩彦


 筆者はこのクラスのデジカメには手ブレ補正は必須だと思っている。できれば高感度撮影時にノイズが少ないCCDを搭載し、さらに手ブレ補正も採用していれば理想的だが、現状、筆者の希望にかなう製品は出ていない。

 IXY DIGITAL 900 ISの新機能としては広角28mmやフェイスキャッチテクノロジーがあるが、IXY DIGITAL 800 ISから搭載された光学手ブレ補正もまだまだ目新しい機能の一つであろう。今回は光学手ブレ補正について書いてみたい。

 シャッター速度と焦点距離と手ブレには相関関係がある。一般的な目安は焦点距離分の1秒より速いシャッター速度で撮影すると手ブレは少なくなるといわれている。実際には撮る人の腕にもよるし、撮影環境によって肘をついたり、壁にもたれたりするとブレは少なくなる。何枚も撮影するとブレていたりブレていなかったりするものなので、あくまで目安の一つだろう。

 900 ISは光学手ブレ補正により、およそ2~3段分の手ブレをカメラ側で補正してくれる。具体的には広角端が28mm(35mm判換算、以下同)なので、1/30秒までは手ブレ補正がなくてもそこそこブレないことになる。それが手ブレ補正の効果により1/8秒から1/4秒でも手ブレしない可能性が出てくる。900 ISはステップズームなので、1ステップずつズームすると37mm、46mm、55mm、66mm、77mm、89mm、105mmとなる。仮に3段の手ブレ補正が効くなら、それぞれおよそ1/5秒、1/6秒、1/7秒、1/8秒、1/10秒、1/11秒、1/13秒(設定されないシャッター速度もある)まで手ブレしないことになる。

 実際の効き具合を比較してみた。屋内に設置されたパイプオルガンを焦点距離66mmで撮影してみた。ISO感度は200、手ブレ補正を「切」、「入」、「流し撮り」に設定してある。手持ちの撮影なのでそれぞれフレームがずれているし、ピンク色のクリスマスツリーはゆっくりと回転しているのでこまかな位置ずれは了承いただきたい。シャッター速度は全て1/10秒、焦点距離が66mm。手ブレ補正が2段効けば1/16秒、3段なら1/8秒までブレない計算なのでそこそこ厳しい条件だ。隅の方はレンズ自体の流れがあるため、比較には中央付近の画像を参照してほしい。

  • 作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


手ブレ補正「切」。かなりブレている
3,072×2,304 / 1/10秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 10.83mm
手ブレ補正「入」。手ブレ補正の効果は絶大
3,072×2,304 / 1/10秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 10.83mm
手ブレ補正「流し撮り」。一方向にブレているのが分かる
3,072×2,304 / 1/10秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 10.83mm

 ツリーの上部を見ると手ブレ補正オフでは明らかにブレている。手ブレ補正をオンにするとかなり補正されているのがわかる。手持ちでここまで撮れれば充分であろう。手ブレ補正を流し撮りにすると1方向のみ補正されるので、画面の横方向(ツリーの縦方向)にブレが多い。パイプの裏にある木を見ても流し撮りは縦方向と横方向のブレ方に差があるのが分かる。王冠状のこちらに付き出しているパイプ部分は、明らかに手ブレ補正の効果がわかる。

 次は屋内に置かれた飾り付け前のクリスマスツリーを比較してみよう。焦点距離28mm、シャッター速度1/8秒で撮影しているが、これも一目瞭然で手ブレ補正の効果がわかる。手ブレ補正オンの画像で歩いている人が大きくブレているのを見ると、スローシャッターを切っていることがハッキリわかる。


手ブレ補正を「切」に設定。これもブレている
3,072×2,304 / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm
手ブレ補正を「入」に設定。静物はブレていないが歩く人はブレている
3,072×2,304 / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm

 次は屋外で撮影した画像の比較だ。ライトアップされたテレビ塔をシャッター速度1/6秒で撮ってみた。焦点距離はこちらも28mm、かなり厳しい条件だ。手ブレ補正オフの撮影は30枚ほど撮って平均的な画像を選んでいる。30枚撮った中に1枚だけ手ブレ補正オンと同じくらいの画像があった。銀塩の時代なら36枚撮りフィルムで1枚だけ撮れたことになる確率だ。逆に手ブレ補正オンでも10枚に1枚くらいはブレている画像はあった。ふと思うと手ブレ補正オンで30枚撮れば1枚くらいはシャッター速度1秒でも撮れるのかもしれない。あくまで確率論だがデジカメなら試すことは容易なので機会があったらチャレンジしてみたい。

 最後の比較は少し撮影場所を移動して同じくテレビ塔を撮ってみた。こちらは焦点距離28mm、シャッター速度1/8秒。やはり圧倒的に手ブレ補正の効果は出ている。ISO200で撮っているが手ブレ補正がなければノイズを覚悟してISO感度を上げなければ手持ちでは撮れないであろう。


手ブレ補正「切」。焦点距離28mm、シャッター速度1/6秒
3,072×2,304 / 1/6秒 / F2.8 / -1.33EV / ISO200 / WB:オート / 4.6mm
手ブレ補正「入」。左と同じ条件で撮影
3,072×2,304 / 1/6秒 / F2.8 / -1.33EV / ISO200 / WB:オート / 4.6mm

手ブレ補正「切」。焦点距離28mm、シャッター速度1/8秒
3,072×2,304 / 1/8秒 / F2.8 / -1.33EV / ISO200 / WB:オート / 4.6mm
手ブレ補正を「入」。クリスマスシーズンに手ブレ補正が必需品かも
3,072×2,304 / 1/8秒 / F2.8 / -1.33EV / ISO200 / WB:オート / 4.6mm

 この連載の原稿は深夜にガストで書いていることが多い。毎度同じメニューでシーフードサラダとドリンクバーを注文している。筆者お気に入りのシーフードサラダをおよそ限界となるシャッター速度1/4秒で撮ってみた。肘をついて連写するとブレている画像もあるがそこそこ撮影できた。800 ISの時も食の撮影には最適と書いたが、900 ISもこの手の撮影にはお薦めのデジカメであろう。

 筆者は900 ISの光学手ブレ補正はかなり優秀だと思っている。全てのメーカーを評価したわけではないが、機種によっては思ったほど効果の期待できないこともある。その点では800 ISから搭載されたキヤノンの光学手ブレ補正の実力は、期待通りの効果を発揮している。

 ただし手ブレ補正が有効なのはあくまで静物に限られる。室内やイルミネーションの撮影も被写体が動く場合はまったく効果はない。飲み会で人物を撮影する場合は相手に「動かないで」とお願いをするか、ストロボを使って撮影しないと背景はブレていなくても、肝心の人物がブレてしまうので注意が必要だ。

 テレビのリモコンや車のETCなど、一度体験したらあって当たり前と感じるものは多い。筆者はコンパクトデジカメの手ブレ補正もその一つだと思っている。三脚を使えばいいという考えもあるが、毎日カバンにデジカメを入れている人は珍しくないが、三脚まで持っている人は滅多にいない。まだ未体験の方は、是非とも光学手ブレ補正の効果を体験していただきたいと思う。


日没直後。三脚がなくても簡単に撮れるので手ブレ補正は手放せない
3,072×2,304 / 1/13秒 / F3.5 / -0.67EV / ISO100 / WB:オート / 7.56mm
ISO200で撮影。手ブレ補正がなければISO1600でないと撮れなかっただろう
3,072×2,304 / 1/8秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 7.56mm

西麻布、ホウトクArtiforショールームにて撮影。室内での撮影にも手ブレ補正が有効
3,072×2,304 / 1/20秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 7.56mm
同じ場所での撮影。かなり厳しい条件だが椅子の縫い目まで認識できる
3,072×2,304 / 1/6秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm

広角端でシャッター速度1/20秒。照明が明るければ楽に撮れる
3,072×2,304 / 1/20秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm
焦点距離37mm、シャッター速度1/10秒
3,072×2,304 / 1/10秒 / F3.2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.14mm

名古屋の人気スポット。携帯で撮影している人も多いが「撮れない」の声も聞く。手ブレ補正の効果大
3,072×2,304 / 1/6秒 / F3.2 / -1EV / ISO100 / WB:オート / 6.14mm
満月を入れて雰囲気を出したかったが月が明るすぎて難しい
3,072×2,304 / 1/8秒 / F3.2 / -1.33EV / ISO200 / WB:オート / 6.14mm

本文中で触れたガストのシーフードサラダ。900 ISは食を撮るのにお薦め
3,072×2,304 / 1/4秒 / F3.2 / 0EV / ISO100 / WB:電球 / 6.14mm
かなり暗かったのでISO400に設定。イマイチなのは酔ってたせいか?
3,072×2,304 / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.6mm

28mm、1/5秒。この辺りが限界だろう。これからクリスマスイルミネーションの時期になるが、手ブレ補正があればかなり撮れるはず
3,072×2,304 / 1/5秒 / F2.8 / -1.33EV / ISO200 / WB:オート / 4.6mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/900is/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm

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( 奥川 浩彦 )
2006/11/15 00:34
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