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カシオ EXILIM CARD EX-S500【第3回】
パンフォーカスを堪能する

Reported by 本誌:折本 幸治


PF(パンフォーカス)は「撮影設定」-「フォーカス方式」から選ぶ
 EX-S500は、通常の「AF(オートフォーカス)」に加え、「マクロ」、「PF(パンフォーカス)」、「∞(無限遠)」、「MF(マニュアルフォーカス」をフォーカス方式として選択できる。私の場合、さほど意味なくフォーカス方式を「AF」、AFエリアを「スポット」(センター1点)、測光方式を「中央部重点」にしている。

 AFそのものに不満はなく、AF補助光に加え、アンチシェイクDSPの増感機能のおかげか、EX-S500のピントは暗いところでも比較的よく合う。速度もコンパクト機と考えると、決して遅くはない印象だ。しかし、「カカカ……」という駆動音が少々耳障りで安っぽい上、なまじ起動時間が高速なためか、合焦までの時間がじれったく感じる。

 そこでAFではなく「PFをメインに使ってみよう」というのが今回のチャレンジ。PFにするとAF合焦動作がなくなるため、EX-SS500本来の軽快感とあいまって、シャッターチャンスに強くなるかもしれない。このカメラでボケ表現はハナからあきらめていることもあり、EX-S500を日常スナップ的に使おうともくろむ私にとっては、PFこそ利用価値の高いフォーカス方式に思えたのだ。

 また、今までのコンパクト機なら絞りが開いて被写界深度が狭まるような暗いシーンでも、アンチシェイクDSPが自動増感することで、深い被写界深度を維持できるのでは、との素人考えもあった。

 さて真夏の屋外、JR谷中駅付近でフォーカスをPFに設定。シャッターボタンを半押しすると、液晶モニター左上に被写界深度を示す緑色の文字が現れる。これがけっこうすごい。というのも、さすが1/2.5型の小型CCD。ピーカンで順光、広角端だとほぼすべて「1m~∞」と出るからだ。日中屋外だとほぼこの表示のまま。撮像面積が異なるので意味のない換算になるが、1mを過焦点距離とすると、35mm判フィルム(許容ボケ0.0333mm時)で24mmレンズでF16まで絞ったときにほぼ相当する。ちなみにEX-S500の焦点距離は、35mm判換算で38~114mm。

 実際使ってみると、フォーカス動作がいらないため、とても軽快に撮影できた。測距位置を意識しなくてもよいだけでずいぶん気が楽になり、構図全体に目がいく。36度の日差しの中で集中力の回らない当日の状況では、PFの気軽さで何とか熱中症を免れた気がする。

 また、シャッターボタン半押しで作動する、いわゆるAEロックを気軽に行なえるようになったのも利点だ。この製品に限らず最近のコンパクトデジカメは明る目に写るので、輝度差があるシーンだとマイナス補正がしたくなる。EX-S500は十時ボタン左右にEVシフト(露出補正)を割り振れるので、露出補正に関しては恵まれている。しかし、空や壁に向けてのAEロックのほうが、だんぜん操作が速くなるのも事実。コンパクトカメラの場合、たいていはAEロックとAFロックを分離できないため、「あそこに露出をあわせたい」と考えた通りにカメラを振って露出を変える感覚は、なかなか新鮮だった。逆に、AF時でも被写界深度内だと信じれば同じことが可能なわけで、いまさらながら使えるテクニックを発見できた。

※作例のリンク先は撮影画像をコピー後、リネームしたものです。
※フォーカス方式(被写界深度) / 記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞りF値/露出補正値/ISO感度/コントラスト/35mm判換算での焦点距離(mm)


PF(1m~無限遠) / 2,560×1,920 / プログラムオート / 1/800秒 / 4.3 / 0 / 50 / +2 / 38 PF(1m~無限遠) / 2,560×1,920 / プログラムオート / 1/400秒 / 4.3 / 0 / 50 / +2 / 38

PF(1.7m~無限遠) / 2,560×1,920 / プログラムオート / 1/125秒 / 2.7 / -2 / 50 / 0 / 38 PF(1m~無限遠) / 2,560×1,920 / プログラムオート / 1/640秒 / 4.3 / -0.33 / 50 / 0 / 38

PF(1m~無限遠) / 2,560×1,920 / プログラムオート / 1/1,000秒 / 3.3 / 0 / 50 / +1 / 38mm PF(1m~無限遠) / 2,560×1,920 / プログラムオート / 1/400秒 / 4.3 / 0 / 50 / +2 / 38mm

 ISO感度50の場合、絞り開放のF2.7や開放付近のF3.3だと1.7m~無限遠、F4.3以上で1m~無限遠という被写界深度が多い。0.7mの差は結構大きく、絞りを自分で決められないのがもどかしいが、AFに戻せば17cmからピントが合うので問題ないだろう。メニューで設定し直すのは面倒だが、十字ボタン左右への機能割り付けをEVシフトではなくフォーカス方式にできる。露出補正をAEロックで補えば、十字ボタン左右でフォーカスを切り替える手もアリだろう。

 日中はかなり気に入ったPFだが、日が翳るに従い難しいことになった。絞りも開き気味になり、被写界深度表示が「2.5~4.6m」などの後方が無限遠に満たない状態になったからだ。それまでは手前の被写体の距離だけを意識していればよかったが、こうなると後方深度も考えなければいけない。「AFに戻すか」と思い始めたとき、はたと思いついた。「アンチシェイクDSPでISO感度を上げれば、絞りが変わって被写界深度も変化するのでは?」と。

 そこでプログラムオートのブレ軽減「入」、ベストショットセレクタの「ブレ軽減」、同「高感度」に切り替え、それぞれPFに設定してみた。ベストショットセレクタを切り替えると自動的にフォーカスモードが変わるが(ブレ軽減と高感度はAFに変化)、PFへはメニューで設定できる。

 結果は……シャッター速度が上がるだけで、絞りに変化はなかった。すなわち被写界深度も変化なし。アンチシェイクDSPという名前だけに、もっともな話だ。「PFにすると絞り気味になる」といった味付けはない。

 さて、家に戻って撮影画像をPCで確認すると、撮った写真の多くがブレていたり構図が適当だったりと、いつもにまして内容の低さが目立った。どうやらAF動作がないことで気が楽になり、無意識にラフな撮り方をしていたようだ。これにはいたく反省。いくら速く写真が撮れてもこれでは意味がない。PFを使いこなせるよう精進したい。


PF(2.5~4.6m) / 2,560×1,920 / プログラムオート / 1/100秒 / 4.6 / 0 / 200 / +2 / 94 PF(2.5~4.6m) / 2,560×1,920 / ブレ軽減モード / 1/100秒 / 4.6 / 0 / 200 / 0 / 94 PF(2.5~4.6m) / 2,560×1,920 / 高感度モード / 1/100秒 / 4.6 / 0 / 200 / 0 / 94


URL
  カシオ
  http://www.casio.co.jp/
  製品情報
  http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_s500/
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( 本誌:折本 幸治 )
2005/08/22 01:09
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