デジカメ Watch

【河田一規のデジカメナビ】カシオ EXILIM EX-S500

~最高ISO1600相当で撮影可能なスリムコンパクト機
Reported by 河田 一規

 カシオのEXILIMは「PRO」と「ZOOM」、そして「CARD」の3シリーズあるが、今回試用したEX-S500は「CARD」シリーズの新製品で、1/2.5型500万画素CCDを搭載する超薄型機。カタログ的には世界初の高屈折率透光性セラミックをレンズに使用して大いに話題となったEX-S100(2004年9月発売、1/3.2型320万画素CCD)の高画素バージョンという位置づけだが、EX-S500のレンズには透光性セラミックは使われてはいない。

 EXILIMといえば、薄型+大型液晶+長電池寿命といった、現代コンパクトデジカメのキートレンドを作り上げてきたカメラとしても知られているが、最近ではそういったトレンドにプラスして「ブレ対策」が強く求められつつあることに応えるべく「Anti Shake DSP」を搭載。さらに、高画質なMPEG-4によるムービー撮影が可能なことが特徴である。


さらに磨きのかかった薄さ

 まずはいつものようにデザインから見ていこう。

 こうして見ると、とにかく薄い。薄すぎる!

 最近は薄型デジカメなんて珍しくもないが、それでもEX-S500を見ると軽いショックを感じるほど。実は筆者は1年ほど前に同社のEX-Z40を購入、愛用しているのだが、EX-S500を見てしまうと、あれだけ薄いと思っていたEX-Z40がひどく分厚く見えてしまう。しかも、高屈折率透光性セラミックレンズを使用するなど、薄型化にこだわった兄弟機EX-S100の厚さが16.7mm(突起部除く)なのに対し、EX-S500はそれよりも薄い16.1mm(同)しかないのだ。

 EX-S100よりもCCDが大きく、なおかつズーム倍率も若干高めつつ薄型化されていることは本当にスゴイとしか言いようがない。しかも(繰り返しになるが)、EX-S500の3倍ズームには高屈折率透光性セラミックという飛び道具は使われていないのだ。





ちなみにレンズを出した状態を上から見るとこんな感じ。これだけボリュームのあるレンズユニットが薄いボディのどこに入っているのか不思議に思えるほど

 EX-S500の凄いところはこれだけ薄くても比較的良好なグリップ感を得られるところ。ボディ上面に右手側へ行くほど高くなるようテーパーが付いていることや、ボディ前面の棒状の突起の効果により、決して「ホールドしにくい」とは思えないのだ。もちろん、ホールド感は主観的な部分も大きいので、誰もがそう感じるかどうかは分からないけれど、レンズと液晶モニタが目一杯左手側へ寄せられていることもあり、右手の握りしろが思いの外大きく、ボディサイズの割にゆったりとグリップできるのは確かだ。

 また、シャッターボタンを上面のプレスラインの一部に揃えたり、ストラップ取り付け金具をズームボタンの延長上に設けるなど、細かな造形処理がとても上手くいっていると思う。全体的に装飾的なムダはほとんどなく、数ある薄型機の中でも非常に優れたデザインだと感じた。この点は薄型機のパイオニア的存在であるカシオのノウハウが遺憾なく活かされているのだろう。


上面のプレスラインに合わせられたシャッターボタンは面積が広く、押しやすさも文句なし。隣の小さな横長ボタンは電源スイッチ ズームボタンと一体感を持たせたストラップ取り付け部。シンプルだし、デザイン的にも面白い試みだと思う

超便利なダイレクト起動ボタン

操作ボタンは少なくないが、現状ではどれも意味があり必要最小限。撮影モードでムービーボタン(赤い丸のボタン)を押すと、すぐに収録がスタートするため、スチルとムービーの実質的な切り替え操作は不要
 EXILIMシリーズは以前から「撮影」と「再生」専用ボタンがあり、それを押すことでそれぞれのモードでワンプッシュかつダイレクトに起動できるのが特徴。一般的な電源ボタンを押してから撮影/再生を切り換える機種に比べ、より少ないアクションで操作できる優れたロジックだ。この方式だと、再生したいだけなのにレンズが繰り出されてムダに電池が消耗することもないし、とにかく直感的に操作できるので操作ミスしにくいというメリットもある。

 今回のEX-S500では従来からあった「撮影」と「再生」に加え、「ムービー」ボタンを装備したことで、スチルモードからダイレクトにムービー撮影が行なえるようになり、さらに便利になった。今まではスチル撮影からムービーへ移行するには一旦メニューを呼び出して切り替える必要があったが、これは正直面倒で、ついついムービーを撮らない要因にもなっていたと思う。どれだけ動画性能が高くても、簡単に呼び出せなくてはカジュアルに使うことはできないが、その点でEX-S500の操作系は理に適っていると言えよう。

 というわけで、基本的に不満の少ない、優れた操作性のEX-S500だが、まったく不満がないわけでもない。例えば、撮影時の十字キーの左右ボタンには、フォーカス/EVシフト(露出補正)/ホワイトバランス/ISO感度/セルフタイマーといった5つの機能からどれかひとつだけ自由に割り当てる「キーカスタマイズ」が可能なのだが、どれを選ぶか悩ましいのだ。今回は筆者的にもっとも使用頻度の高いEVシフトを選んだが、これだとホワイトバランスを変えたい時や、マクロモードを使いたい時はその都度メニューを呼び出す必要があり少し面倒。

 まあ、今回は試用ということもあり、基本的にほとんどのカットはAWBで撮影したのでホワイトバランスの問題は少ないし、実際こういったコンパクトデジカメでどれだけホワイトバランスを切り替えるのか? という問題もあるが、それでもEVシフトとマクロモードくらいはメニューに入らなくても切り替えられるとありがたい。

 ただし、現状では撮影時に空いているのは十字キーの左右だけであり、複数の機能をキーカスタマイズするには、ボタンを増やすしかない。となると現状の仕様は、これはこれでいいのかもしれない。なぜなら、こういった超コンパクト機ではボタンは少ない程「吉」だと思うからだ。もちろん、もっと高機能機なら話は別だが、イージーに使うことを主眼としたコンパクト機に対し、あまりにマニアックな操作性を求めるのは少し違うだろう。

 話が堂々巡り的になって恐縮だが、操作性とミニマルなデザインのどちらを取るか? ということであり、個人的にはカメラの性格を考えると、現状の操作性はベターな選択だと思う。なお、起動速度やレリーズ時のタイムラグはいずれも非常に少なく、この点でストレスを感じることはない。


2.2型の液晶モニタを搭載

 EX-S500の液晶モニタは2.2型で、ボディサイズを考えるとかなり大きい。実はEX-S500を使い始めてからしばらくの間2.5型だと思いこんでいたのだが、原稿を書く時に確認したら「あ、2.2だったのね」という感じで間違いに気づいた。相対的にボディが小さいので、つい錯覚してしまうのだ。視野角も広めで、発色なども特に大きな不満はないが、約8万5,000画素ということで、解像感はごく普通のレベル。

 表示関係はなかなか充実していて、ヒストグラムはマスターと同時にRGB各チャンネルも表示可能。EXILIMシリーズは昔からそうだが、再生時だけでなく、ライブビューでのヒストグラム表示も可能と、凝っている。

 拡大再生は最大8倍まで。拡大時のスクロールは滑らかで速く、このあたりの使い勝手は良好だ。


参考までにEX-Z40の2型液晶と大きさ比べをしてみた。あたりまえだがひとまわり大きい ついでに視野角も比較してみたが、これはEX-Z40とほとんど変わらなかった。このくらい角度を付けても視認性は悪くない。しかし、こうして見ると今まで薄いと思っていたEX-Z40が厚ぼったく見える

拡大再生時の最大倍率は8倍まで。ブレやピンボケは十分確認できる これは再生時だが、撮影時のライブビューでもヒストグラムは表示可能。マスターに加えてRGB各チャンネルが確認できるという凝りようだ

電池サイズ相応のスタミナ

電池室とSDカードスロット。本体内にも画像記録エリアとして8.3MBの内蔵メモリーを持っている
 EX-S500の電池はかなり薄型の専用リチウムイオン充電池NP-20で、容量は700mAh。これだけ薄い電池だと駆動スタミナが気になるが、カタログを見るとCIPA基準で約200枚とある。この点だけは同じEXILIMでもボディサイズに余裕のあるEX-Z50などの方が有利で、こちらは同基準で約390枚と、EX-S500に比べて倍近い撮影枚数だ。

 というわけで、スタミナ的にはやや不安を感じなくもないが、一般的なスナップ用途であれば1日は何とか持つのでは? というのが実際に使ってみた感触だ。どのくらい頻繁に再生するかといった使い方で大きく変わってくる電池の持ちだが、ある程度ヘビーに使うなら予備電池は欠かせないだろう。電池単体はメーカー希望価格でも3,000円と、この手のリチウムイオンとしては比較的安いのは助かるところ。

 なお、旅行などではクレードルを持って行かなければ充電できず、せっかくカメラが小型でも荷物が増えて魅力が半減してしまうが、その場合はオプションの小型充電器BC-10Lが便利。ただし、BC-10Lを使う場合でもACアダプターは必要になる。

 あと、電池関係では電池の形状的に裏表が逆でもセットできてしまうため、電池をボディに入れる時には正しい向きがどうかよく確認する必要がある。


EX-Z50などに使われているNP-40と比べると、EX-S500用のNP-20はこんなに薄い。容量はNP-40が1230mAhに対して、NP-20は700mAh 付属のクレードルはこんな感じ。ボディ本体の質感の高さを考えると、クレードルが黒一色というのは少々味気ないかも。便利なクレードルだが、旅行の時はかさばるので、別売の小型充電器を用意した方がいいだろう

満足できる低感度時の画質

 期待の描写性能だが、基本的にはかなり良好で、撮影感度がISO50~100という低い領域ではかなり食い込みのいい、シャープな描写を見せてくれる。

 今回はカメラの性格を考慮して、ほとんどのカットをAWBで撮影したが、晴天屋外ではやや青味が強めになるものの、特別気になるほどではなく、AWBの精度に大きな不満は感じなかった。


※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※キャプション内の撮影データは画像解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値(F)/ISO感度/露出補正値(EV)/レンズの焦点距離(35mm判換算、mm)です。


【ISO50】
やや遠景にある被写体だが、シャープネスは十分で500万画素機として精細感に不満はない
2,560×1,920 / 1/250(秒) / 7.4 / 50 / 0 / 94
【ISO50】
2,560×1,920 / 1/1,000(秒) / 4.3 / 50 / 0 / 38

【ISO100】
ISO100ではそれほどノイズは増えた感じはしない。十分シャープでレンズの素性もよさそう
2,560×1,920 / 1/100(秒) / 2.7 / 100 / 0 / 38
【ISO100】
2,560×1,920 / 1/125(秒) / 4.6 / 100 / 0 / 94

【ISO50】
共にISO50で撮影。曇天でそれほど輝度差のある場面ではない割にトビ気味な部分がある。ダイナミックレンジはそれほど広くない印象だ
2,560×1,920 / 1/200(秒) / 2.7 / 50 / 0 / 38
【ISO50】
2,560×1,920 / 1/200(秒) / 2.7 / 50 / 0.6 / 38

【ISO50】
コンパクトデジカメとしては晴天や曇天時にやや青味が残るAWB
2,560×1,920 / 1/125(秒) / 2.7 / 50 / 1 / 38
【ISO50】
画面内の画質均一度はコンパクトとしてはかなり優秀な方。レンズ性能と組み付け精度が優れているのだろう
2,560×1,920 / 1/250(秒) / 3 / 50 / 0 / 47

【ISO100】
マクロモード時の最短撮影距離は17cmと、やや遠い。もう少し近づけるといいのだが
2,560×1,920 / 1/250(秒) / 2.7 / 100 / 0 / 38

Anti Shake DSPの効果は!

 というわけで、あくまでもISO感度が低い状態ではかなり良好な画質だが、多くの人がこのカメラに期待するのは高感度時の画質だろう。というのも、EX-S500ではブレ対策として「Anti Shake DSP」を搭載しているからだ。このAnti Shake DSPというのは一般的な手ぶれ防止機能のようにレンズやCCDを実際にシフトするアクティブな方式ではなく、低光量時は撮影感度を上げてシャッター速度を速くし、手ブレと被写体ブレを軽減しようというもの。感度を上げてブレを防ごうという考え方は富士写真フイルムのFinePix F10などとよく似ている。

 ブレ軽減をオンにするには「メニュー」→「撮影設定」→「ブレ軽減」→「入」にするか、BEST SHOT機能で「ブレ軽減」のシーンを選ぶ2種類の方法がある。両者の大きな違いは最高感度で、撮影設定からブレ軽減を「入」にした場合は最高ISO800まで、BEST SHOTでブレ軽減を選んだ場合は最高ISO1600まで、条件に合わせて感度が自動的に上がるという仕組みだ。ちなみに、ブレ軽減を入れない通常状態では、どんなに暗くても感度はISO100までしか上がらない。

 このように低光量下では積極的に感度を上げてブレを軽減させようという機能を成立させるためには、高感度時のノイズが少ないことが絶対条件となるわけだが、はたしてEX-S500の高感度時のノイズはどうか?


【ISO200】
ISO200ではノイズの「気になり感」はぎりぎりOKといったところか。撮影条件にもよるが、こういう感じではそれほどノイジーな感じはしない。ピントの合ったところのシャープ感は1/2.5型500万画素としては悪くない印象。フォーカスアウトしていく部分がチリチリした感じになるのはやや独特だが、これはメーカーのサンプルフォトでも同様なので異常ではない
2,560×1,920 / 1/80(秒) / 5.2 / 200 / 0.6 / 114
【ISO800】
ブレ軽減を入れると、簡単にISO800まで上がる。ノイズレベルは1/2.5型500万画素のISO800としては確かに少なめだが、絶対的には決してノイズは少ないわけではなく、この感度で撮影するにはそれなりの覚悟が必要だ
2,560×1,920 / 1/25(秒) / 2.7 / 800 / 0 / 38

【ISO800】
ノイズがすごいというのもあるが、高感度では輪郭がなくなってシャープ感が著しく下がるのも気になるところ
2,560×1,920 / 1/60(秒) / 5.2 / 800 / 0 / 114
【ISO800】
2,560×1,920 / 1/50(秒) / 5.2 / 800 / 0 / 114
【ISO800】
2,560×1,920 / 1/40(秒) / 2.7 / 800 / 0 / 38

過度な期待は禁物なブレ軽減

 結果的にEX-S500の高感度域は、一般的な1/2.5型500万画素機よりは低ノイズ化されているものの、絶対的なノイズ量はそれなりに多く、常用するのは注意が必要だ。ブレ軽減が入っていると、かなり簡単に高感度へシフトしてしまうことを十分理解して使うべきである。被写体がそれほど動かない状況で、なおかつある程度ホールディングに自信があるなら、それほどノイズが目立たないISO200で、がっちりホールドして撮影する方が良好な結果を得られるだろう。もちろん、片手撮りなど、イージーな使い方では絶対的にブレる確率が高く、たとえノイズが増えてもブレ軽減は有効だろう。


【ISO50】
2,560×1,920 / 1/10(秒) / 4.6 / 50 / 0 / 94
【ISO100】
2,560×1,920 / 1/20(秒) / 4.6 / 100 / 0 / 94

【ISO200】
2,560×1,920 / 1/40(秒) / 4.6 / 200 / 0 / 94
【ISO400】
2,560×1,920 / 1/80(秒) / 4.6 / 400 / 0 / 94

【ISO800】
2,560×1,920 / 1/100(秒) / 4.6 / 800 / 0 / 94


●スローシンクロと高感度の比較


BEST SHOTの夜景&人物で撮影。設定された感度はISO100でノイズは少ない。背景との調光バランスは良好だ
2,560×1,920 / 1/15(秒) / 2.7 / 100 / 0 / 38
ブレ軽減入りで撮影。設定された感度はISO800。ノイズはともかくとして、WBはスローシンクロより自然な感じになる。どちらがいいか悩むところだ
2,560×1,920 / 1/50(秒) / 2.7 / 800 / 0 / 38


URL
  カシオ
  http://www.casio.co.jp/
  製品情報
  http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_s500/



河田 一規
(かわだ かずのり)1961年、神奈川県横浜市生まれ。結婚式場のスタッフカメラマン、写真家助手を経て1997年よりフリー。雑誌等での人物撮影の他、写真雑誌にハウツー記事、カメラ・レンズのレビュー記事を執筆中。クラカメからデジタルまでカメラなら何でも好き。最初に買ったデジカメはソニーのDSC-F1。

2005/07/06 00:59
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.