薄さ以外のEX-S500の特徴といえば、何をおいても「Anti-Shake DSP」だろう。ただし、その品質はまだ発展途上といったところで、ノイズ、階調の面でデジタル一眼レフカメラなどに及ばないのが実際のところだ。まあ、私の場合は「インターネット掲載用にリサイズするのが前提」と割り切っているので、ISO800までならそれほど気にしていない。最近はISO1600でも目が慣れてきた。
それよりも、日陰や屋内で躊躇することなくカメラを取り出して撮影できるのはやはり便利。ピーカンで順光だとISO50だが、少しでも暗いと感度が上昇し、非現実的なスローシャッター速度を強いられることがない。この感覚はISO800のカラーネガフィルムを入れたレンズの明るい高級銀塩コンパクトカメラに近く、「気になったものを後先考えず何でも撮ってやろう」という人にはうってつけだろう。
さて今回は「暗いシーンの撮影を試す」ということで、水族館に行った。水族館といえば、館内は暗い上にストロボは発光禁止、人ごみで三脚も立てられず、さらに被写体は勝手に動く……と、コンパクトデジタルカメラにとって鬼門といえる場所。個人的にはデジタル一眼レフカメラでの経験から、「ISO800やISO1600に増感して、なおかつF2の中望遠レンズがほしい」というイメージが強い。魚の動きが読めればまた別なのだろうが、私の経験と技量では正直難しい。
というわけで、これまでのコンパクトデジカメと同様、なるべく動かない魚を狙ってみた。この手の魚は「北の海の生き物たち」など、人があまり寄り付かない寂しげな水槽で暮らしている。怪しげな面相の輩も多く、なぜ熱心に撮るのか? と訊かれると困るほど。しかし、動かずモデルになってくれるだけで今日はありがたい。
現場では基本的に手持ちで、プログラムオート時にISO800相当まで増感する「ブレ軽減」設定をONにして臨んだ。レンズ先端をガラスに押し付けたりもしたが、カメラと水槽の両方に傷が付かないかと心配になりすぐやめた。一眼レフ用レンズのように、コンパクトカメラにもゴムフードが付けば面白いかもしれない。一脚も試したが来場者が多くて使いづらく、これもあまり使っていない。
ブレ軽減をオートにして撮影していると、感度はほぼISO800相当になったまま。明るめの水槽ならおよそ1/20~1/80秒の範囲で収まるので、手持ちでも何とかいける。Anti-Shake DSPのありがたさを実感した。もっとも、ISO800だと輪郭がゆるくなるので、ブレてるのかブレてないのか判りづらくなる。結果的に良いような悪いような……。また、ISO1600でもきつい水槽もあるにはあった。特に望遠側ではまだコンパクトデジカメにとって鬼門なのは変わりない印象だ。
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2,560×1,920 / プログラムオート / 1/50 / F3 / -0.67 / 400
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2,560×1,920 / プログラムオート / 1/20 / F3 / 0 / 800
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2,560×1,920 / 高感度 / 1/15 / F2.7 / 0 / 1600
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2,560×1,920 / プログラムオート / 1/15 / F3 / 0 / 800
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2,560×1,920 / 高感度 / 1/13 / F2.7 / 0 / 1600
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2,560×1,920 / プログラムオート / 1/40 / F2.7 / -0.67 / 800
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もちろん、ISO800で撮った写真にはしっかりとノイズが乗っている。一緒に持ち出したIXY DIGITAL 55のISO400と比べると、はっきりした差が出ていて興味深い。もちろんISO800とISO400を単純に比べることはできないが、IXY DIGITAL 55はISO 400までなので、手持ちはほぼ失敗。EX-S500よりも一脚に頼ることが多かった。
そういえば、同じブレ軽減でも、プログラムオートで働く「ブレ軽減」と、ベストショットセレクタの「ブレ軽減」モードでは最高ISO感度が異なる。前者はISO800、後者はISO1600だ。また、同様の明るさで撮ると、ベストショットセレクタの方が感度が高くなる。さらにベストショットセレクタには「高感度」というモードもあり、こちらの最高感度はISO1600。なぜ紛らわしくも3つのモードを設けたのか疑問だ。同じISO1600でも、ベストショットセレクタの「ブレ軽減」よりは「高感度」のほうがSNが悪い。なお「撮影設定」の「ブレ軽減」を「入」にしないと、プログラムオートではISO100までしか上がらない。
使い分けとしては、通常はISO1600を嫌ってプログラムオートでの「ブレ軽減」、より暗いときはベストショットセレクタの「ブレ軽減」といったところだろうか。いやそれは面倒なので、どうせなら電源ONの時点でベストショットセレクタの「ブレ軽減」で起動すればと、「撮影設定」→「モードメモリー」中の「ベストショットセレクタ」を「入」にしてみた。こうしておくと、電源OFF時のベストショットセレクタを再現できるので、常時ISO1600対応のブレ軽減モードが使用できる。
ついでに、よく設定する「測光方式」と「AFエリア」も「入」にしておく。それぞれプログラムオートでは「中央重点」、「スポット」にしているので、ベストショットセレクタでも再現したかったから。これで「プログラムオートと同じ使い勝手でISO1600まで自動増感だ」と喜んでいたら、意外な事実が判明した。測光方式、AFエリアともに、電源を切るとデフォルト(マルチ測光、マルチAF)に戻ってしまうのだ。
どうやらモードメモリーは、プログラムオートでの設定のみを保持するためにあるらしく、ベストショットセレクタは適用外らしい。考えてみれば、ベストショットセレクタとはあらゆる設定項目をカシオの人が考えた内容に制御するもの。これらを一時的に変更することは可能だが、基本的には「カシオの人に従え」ということだろう。悔しいので何か方法はないかと考えたところ、EXILIMシリーズにはオリジナルのベストショットセレクタを作る機能があることを思い出した。最強のスナップモードをそのうち作ってみたい。
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明るい水槽だとISO800で1/50秒が切れる
2,560×1,920 / プログラムオート / 1/50 / F3.3 / 0 / 800
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同じ魚をISO400で
2,560×1,920 / プログラムオート / 1/15 / F3.6 / 0 / 400
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こちらはIXY DIGITAL 55のISO400
2,560×1,920 / プログラムオート / 1/20 / F3.5 / 0 / 400
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夜景での高感度3モードの違い。これはプログラムオート
2,560×1,920 / プログラムオート / 1/50 / F2.7 / 0 / 800
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ベストショットセレクタ「ブレ軽減」
2,560×1,920 / ブレ軽減 / 1/60 / F2.7 / 0 / 800
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ベストショットセレクタ「高感度」
2,560×1,920 / ブレ軽減 / 1/60 / F2.7 / 0 / 800
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■ URL
カシオ
http://www.casio.co.jp/
製品情報
http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_s500/
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( 本誌:折本 幸治 )
2005/08/08 00:05
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