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ニコン D2X【第4回】
2本のDXワイド系ズームレンズを比較する(下)

Reported by 三浦 健司


18-55mm F3.5-5.6Gを装着したD2X
 前回は2本のレンズの主に色作りや階調について取り上げた。今回は、色収差について考えていく。色収差の補正はシャープな画像を得るための必須条件だ。

 色収差は、光の波長の違いによって起こる。光の屈折率は、長波長が弱く、短波長が強い。この波長の違いにより焦点の位置が変化する。レンズに平行入射する光は、波長の違いで焦点の位置が変わってしまう。これが「軸上色収差」だ。

 また、波長を調整して焦点の位置を合わせても、レンズからの光射出位置の部分で波長が一致していなければ、波長によって像の大きさがことなる「倍率色収差」が起こる。

 これを防ぐには、アスフェリカル(非球面)レンズや異常分散ガラスなどで、焦点の位置とレンズからの光射出位置で、光の波長を正確に一致させる必要がある。

 デジタルカメラは、モニター画面で100%以上の拡大表示ができるので、昔のようなプリントなら気にならなかった色収差が、体感的にかなり気になるようになってきている。そのため最近のデジタル対応レンズは、色収差の補正にかなり気を遣ったレンズが多い。

 さて、実際の画像を見比べてみることにしよう。


左が18-55mm、右が17-55mm
 このふたつのレンズで撮影した画像の400%拡大の結果は筆者も意外だった。

 具体的には、高級レンズである17-55mm F2.8で赤とシアンのハッキリした色収差が現れること。一方の安価なレンズである18-55mm F3.5-5.6Gではブルーの色収差のみで、それもわずかであることだ。

 また、解像感の比較でも、屋根上部の横に積まれた瓦1枚1枚の描写は、17-55mm F2.8Gよりも、18-55mm F3.5-5.6Gが優れている。

 これは18-55mm F3.5-5.6Gの前玉が赤外線硬化タイプのプラスティック成形による複合型非球面レンズになったことが、画質の向上に大きく寄与しているのだろう。この新設計の非球面レンズの採用に加えて、筆者の推測の域を出ないがもしかすると2005年1月に発売された「AF-S VR Nikkor ED 300mm F2.8G(IF)」で使われているナノクリスタルコートが密かに施されているのかもしれない。


左が18-55mm、右が17-55mm
 さらにモニター上で画像を確認するのに最適な倍率といわれる200%でも比較する。

 こちらでも色収差を確認できる。17-55mm F2.8Gは瓦が赤く感じられるが、18-55mm F3.5-5.6Gは色収差をほとんど感じないレベルになる。

 しかし、筆者はこの状況をそれほど危惧していない。

 なぜなら、すでに皆さんもご存じだろうが、ニコン純正のRAW現像ソフト「Nikon Capture Ver.4.3」で“色収差補正”の機能が搭載されたからだ。

 この色補正機能は、倍率色収差を自動的に検出して低減させられる。オプションメニューの「パフォーマンスパネル」で「色収差補正を有効にする」にチェックを入れると常時オンの状態になる。こうするとRAW画像(NEFデータ)を開くと、色補正機能がされた状態で画像の補正作業に入ることができる。また、ユーザー側で補正効果をオフにしたい場合は、メニューの「画像」から「色補正機能」のチェックを外せばよい。

 その色補正の結果は、色補正機能をオンとオフにした画像を見比べてほしい。驚くことにいずれの画像も色収差がよく補正されている。この結果には脱帽である。


※作例のリンク先は撮影画像をコピー後リネームしたものです。
※作例データのキャプションは、使用レンズ/画像解像度(ピクセル)/露出時間(秒)/レンズF値/ISO感度/露出補正値(EV)/焦点距離です。


【色収差補正 / オン】
17-55mm F2.8G / 2,848×4,288 / 1/40(秒) / 11 / 100 / 17
【色収差補正 / オフ】
17-55mm F2.8G / 2,848×4,288 / 1/40(秒) / 11 / 100 / 17

【色収差補正 / オン】
18-55mm F3.5-5.6G / 2,848×4,288 / 1/40(秒) / 11 / 100 / 18
【色収差補正 / オフ】
18-55mm F3.5-5.6G / 2,848×4,288 / 1/40(秒) / 11 / 100 / 18

【お詫びと訂正】記事初出時、18-55mm F3.5-5.6Gの色収差補正比較画像が抜けておりました。お詫びして訂正いたします。


 この点で見れば、汎用性を重視したAdobe PhotoshopのRAW Plug-inの「色収差」補正は、まことに頼りない。それは、Nikon Captureならば、画像を開くだけで自動的に色収差が補正されるが、PhotoshopのRAW Plug-inの「色収差」補正は手動で補正するからだ。

 RAW Plug-inの画面内にある「収差補正」タブで、レッド/シアンフリンジ(R/C)や、ブルー/イエローフリンジの調整スライダを左右に動かしてプレビュー画像を確認しながら調整するので、両者の操作性と作業効率には格段の差が生じてしまう。

 またすでにNikon Captureは、レンズの周辺減光を補正する「ヴィネットコントロール」機能や、新機能の倍率色収差を補正する「色収差補正」機能が搭載されている。この考え方を発展させていけば、いずれレンズ固有のタル型や糸巻き型の歪みなどのレンズの諸収差さえもRAW現像の時点で自動補正ができるだろう。ただし、この場合は、あらかじめレンズの光学的な諸性能を知っていることが前提になる。つまり、ニコンにとって氏素性の分かる“ニコン純正レンズ”を使うことが重要なのだ。

 ということは、いまからD2Xでニコン純正レンズを使い、RAW撮影しておけば、この先もNikon CaptureのRAW現像によってさらなる“画質向上”という恩恵を受けられるはずだ、と思い至る。

 これは筆者の勝手な希望だが、Nikon Captureの次期メジャーバージョンアップでレンズの諸収差を補正する機能の搭載を実現してほしい、と切望している。

 いずれにしても、このように他社にない画質向上のアドバンテージと優れた画像の生産性は、カメラ、レンズ、Nikon Captureの組み合わせによる3つの複合的な画像処理技術によってもたらされる。この“3本の矢”こそがニコンの素晴らしさなのである。


 最後にレンズの総評をして、この項を終えることにする。

 18-55mm F3.5-5.6Gは、D50というエントリーレベルを想定して作られた安価なレンズだ。そのため前回にも述べた、操作性や部材に関するパフォーマンスは劣る。しかし、高級レンズと比較しても遜色のない、色収差の少なさや、解像感の高さは、画像に対して抜群のコストパフォーマンスを誇っている。

 実際にD2Xに18-55mm F3.5-5.6Gを装着してみると“チープすぎるか?”と心配もしていたが意外に収まりはいい。

 カメラを含めた総重量も18-55mm F3.5-5.6GはD2X本体1,070g+レンズ210g=1,280g。17-55mm F2.8GはD2X本体1,070g+755g=1,825gと、その差は545gにもなる。

 筆者は、18-55mm F3.5-5.6Gについて、“かんたんに撮影を楽しめる”お気楽スタイルでピッタリのレンズだと思う。

 いわく、撮影の面では、重量が軽減されるので手持ちによるフレキシブルな撮影がしやすいこと。描写の面では、一発で“撮影からプリントまで一気通貫”のきれいな画像が撮れるからだ。

 18-55mm F3.5-5.6Gは、安価だが抜群のコストパフォーマンスを誇る銘玉だ。単体で発売されるのは10月だが、筆者からニコンユーザーのみなさんにぜひともおすすめしたいレンズのひとつである。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報(D2X)
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/slr/d2x/
  製品情報(18-55mm F3.5-5.6G)
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/lens/dx/zoom/af-s_dx_ed_18-55mmf35-56g.htm

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( 三浦 健司 )
2005/06/22 00:44
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