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デジカメで「HDR動画」を作ろう

〜インターバル撮影で絵画のような画像を動かす
Reported by 近藤勇一

最近、HDR技術を用いて作成した印象的な画像をよく見かけるようになってきた。このような白飛びも黒潰れもほとんど無く、普段は見落とすようなディテールが強調された、まるで絵画のような画像だ。今回はそれを静止画として楽しむだけでなく、いっそ動画にして楽しんでみようという企画だ

HDR画像の基本

 まずは、どのように上記のような絵が作られるのかを簡単に説明したいと思う。素材となっているのが実際に撮影された下の3枚の画像だ。Bが標準的な露出、Aが-3EVアンダー、Cが+3EVオーバーめのブラケティング撮影だ。

A:-3EVアンダー B:標準的な露出 C:+3EVオーバー

 よく見るとアンダー画像はほかでは白トビしている太陽周りのディテールが生きており、オーバー画像はほかでは黒潰れしている日陰のディテールが生きている。この3枚の撮影画像ファイルを合成し1枚のHDR画像ファイルを生成する。それは3枚のダイナミックレンジを合成した、その名のとおりハイダイナミックレンジ(HDR)を持つことになり、ハイライトもアンダーも潰れのないディテールを保持したものとなる。

 そしてこのHDR画像ファイルをトーンマッピングで調整し通常のダイナミックレンジ(対照的に呼ぶならローダイナミックレンジでLDR)内に収めることで冒頭にある画像のような白飛びも黒つぶれもない画像が作成される。また、このトーンマッピングのかけ方しだいで、普段は見落とすようなディテールを強調してみたり、個性的な明暗バランスを出すことが可能になるのだ。

 なので技術的に正確に言うのなら、最近世間的にHDR画像と言われている印象的な画像は、その生成にHDRを使用しているものの実はすでにHDRではなく、通常のダイナミックレンジの画像ファイルだ。そして、あの印象的な感じはHDRというよりトーンマッピングによって作り出されていると言える。とはいえ、ここでは混乱をさけるため、最近の一般的な認識に合わせてトーンマッピングしたものまでを含めてHDRとして解説を進める。

 この「HDR画像ファイルの生成」と「HDRのトーンマッピング」だが、専用のソフトを用いるのが一般的だ。ソフトは有償無償含めて何種類かあるのだが、今回は仏HDRsoftの「Photomatix Pro」を用いた。これは「HDR画像ファイルの生成」と「HDRのトーンマッピング」両方に対応しており、有償ではあるが比較的安価であり、操作も直感的に行なえるので初心者でも使いやすいと思う。国内代理店であるジャングルのWebサイトから無料体験版もダウンロードできるので、この機会に是非試してみて欲しい。

Photomatix Pro(最新版は3.2)。ダウンロード版は1万5,540円だが、写真共有サイト「Zorg」に登録(無料)すると9,800円で購入できる

 なおこの執筆現在、アップデータの項目から探した方が、速やかに最新版にたどりつけるようだ。古いバージョンだとトーンマッピングのプリセットのデータが無かったりするのでご注意を。これが無くても操作は可能だが、初心者にとってプリセットはかなり強い味方だ。

 さて、トーンマッピングした静止画だけでも十分楽しめるのだが、筆者は本来、動画(ビデオとCG)を仕事にしているので、おのずとこの印象的な絵を動かしてみたくなってくる。しかも都合が良いことにPhotomatix Proは前述の「HDR画像ファイルの生成」および「HDRのトーンマッピング」がバッチ処理可能なのだ。ということは、素材のブラケティング撮影を例えば5秒おきで連続して行なえば、トーンマッピングされた連続静止画をPhotomatix Proで得ることができるということだ。そして、それらを一括してタイムラプス撮影(インターバル撮影)した動画として扱うことで動かすことが可能なはずだ。

 そんな発想から今回、いろいろ試行錯誤の後にできあがったHDR動画の完成版が完成動画だ。それではここからは、実際の過程を説明しながらHDR動画制作について検証していきたいと思う。

完成動画(720pでアップロード)

【メイキング動画】(720pでアップロード)

※いずれの動画も、記事末のリンクからダウンロードすることもできます。


素材の撮影

 まずは素材の撮影にあたって以下のものを準備する。

  • デジタルカメラ
  • 三脚
  • インターバルタイマー付きのレリーズ

 それぞれについて以下に説明したい。

デジタルカメラ

 今回使用したカメラは、キヤノン「EOS 7D」だ。先述したが自分は本来、動画を仕事にしていて、スチルカメラには距離を感じていたのだが、昨年デジカメWatchの企画でEOS 7Dでムービー撮影を行って以来、デジカメの可能性に強く惹かれてしまい、ついには自分でEOS 7Dを購入してしまった。それで手近なEOS 7Dを使用したまでなので、別にほかの機種でも構わない、ただし以下の条件を満たしている必要がある。

  • オートエクスポージャーブラケティング(以下AEB)撮影が可能なこと
  • ホワイトバランスが固定可能なこと
  • シャッタースピード、フォーカス、絞り、感度がマニュアルで決められ、固定できること
今回はEOS 7Dを使用したが、動画撮影機能を使うわけではないので上記を満たしているカメラであれば別のカメラでも問題ない。レンズは「EF-S 15-85mm F3.5-5.6 IS USM」を使用した

 もちろん、カメラ本体に加えて十分な容量の記録メディアも必要だ。HDRでしかも動画にするので、かなりの枚数を撮る事になるからだ。あと、JPEGで撮る場合にはシャープネスや見栄えするルック(画調)を変えてくれる「ピクチャースタイル」のようなものは、できるのなら自然なもの(EOSで言えば“忠実設定”や“ニュートラル”)にして撮影したほうが無難だ。HDR画像ファイルに合成する際に、それらの人工的な要素が、新たなノイズを発生させる原因になりやすいからだ。RAWで撮影できるのであれば、できればRAWで撮影したい。

 それと、不必要に大きな画像サイズで撮影する必要はない。ただでさえHDR生成とトーンマッピング処理には時間がかかる。その上、今回は動画にするためにかなりの枚数を処理しなければいけないのだ。仮に一般にフルハイビジョンと言われるHDムービーとして仕上げるとしても横1,920ピクセル、縦1,080ピクセルあれば十分だ。今回EOS 7Dでは、すべてで一番小さなSサイズ(2,592×1,728ピクセル)のRAWで撮影した。

 HDRのためのAEBの設定は、通常の状況では±2EV(-2EV、0EV、+2EV)が適していると思う。ただ冒頭の画像を撮影したときは、太陽を直接入れ込んでしまったために、±2EVだとカバーしきれなかったので±3で行なっている。要はアンダー露出の画像でハイライト部に白トビのないデータを手に入れ、オーバー露出の画像で暗部に黒ツブレれのないデータを手に入れれば良いのだ。初め±2EVで試し撮りし、それぞれのヒストグラムを見て問題があれば幅を調整すれば良いだろう。

今回のカメラ設定

 またブラケティングの枚数だが、今回使用したEOS 7Dでは3枚しか選択できないのだが、機種によっては5〜9枚を選択できるカメラもある。この場合、枚数が増えれば増えるほど、できあがるHDRファイルのベースノイズが小さくなり綺麗な画像を得ることが可能。なので静物が被写体であればブラケティングする枚数を上げたほうが良いのだが、今回は動画制作なので、ある程度時間変化するものを被写体にすることになると思う。すると、ブラケティングの数が増えると最初のショットと最後のショットの間で時間差が大きくなり、その間に被写体が大きく動いてしまう。その絵の違いがHDRファイルにするときにゴーストやノイズの発生原因となってしまうのだ。そうした理由から、今回は3枚のブラケティングで撮影を行なった。

 なおPhotomatix Proのマニュアルは、カメラや撮影方法に関しても詳細に解説している。ぜひ、一読することをおすすめする。このマニュアルは体験版でも読むことが可能だ。

三脚

 基本的には三脚でしっかり固定して撮影したほうが良いだろう。撮影時間はそれなりの長さになるので、撮影中に動いてしまわないように、重くてしっかりしたタイプのものを安定した場所に設置するのが理想だ。

丈夫な三脚を使うのもポイントだ

インターバルタイマー付きのレリーズ

 「撮影間隔の時間」と「バルブ撮影のための露光時間」を指定できるものが良い。前者は理解できると思うが、後者に疑問を感じる人もいるかも知れない。今回はバルブ撮影ではないのに何故か? それはAEBの3連写をする上で、3枚目が撮影されるまでシャッターを押しっぱなしの状態にする必要があるからだ。すなわち、露光時間としてではなく、シャッターを押しっぱなしにしておく時間としてこれを使用するのだ。

 今回ちょうど、エツミの「タイマーリモートスイッチ(E-6314)」(1万4,700円)が発売されたので使用してみた。撮影間隔の時間、露光時間のほかに撮影開始までの時間も指定でき、撮影枚数も無限(すなわちオフにするまで)を指定できる。なお、この製品はEOS 7D以外の他機種用のものも出ている。なお、キヤノン純正の「タイマーリモートコントローラーTC-80N3」(1万6,800円)でも撮影枚数無限の設定が可能だ。

【2010年12月13日】記事初出時、キヤノンの「タイマーリモートコントローラーTC-80N3」では撮影枚数無限の設定ができないと記載しておりましたが、実際には撮影枚数を無限に設定することが可能です。

タイマーリモートスイッチ カメラのリモコン端子に接続して使用する

 ここから実際の撮影について説明する。EOS 7Dを前提に進めるが、他の機種でも置き換えて考えられると思う。

 まずは被写体だが、対象の動きが速いと先述のようにHDR化の段階でゴーストやノイズになりやすい。なので、最初は動きの遅い雲や穏やかな風景などで始めてみると良いだろう。被写体が決まったら、通常の三脚でのスチル撮影同様にアングル等を決め、しっかり固定する。

 この時、EOS 7Dの設定は以下の通り行なった。

  • 撮影モード:マニュアル
  • フォーカス:マニュアル(オートは避ける)
  • シャッタースピード:状況に合わせて任意に固定(ゴースト、ノイズ対策として極力速い方が良い)
  • 感度:状況に合わせて任意に固定(ISOオートは避ける。極力低い方が良い。あまり高くしてしまうとHDR化時にノイズの原因となり、トーンマッピング時には目も当てられないことになる)
  • 絞り:状況に合わせて任意に固定
  • ホワイトバランス:状況に合わせて任意に固定(オートは避ける)
  • ドライブモード:高速連続撮影
  • AEB:±2EV(状況によっては変える)
  • 記録画質:S-RAW

 ざっと設定したら、とりあえずシャッターボタンを押してAEB撮影をしてみる。ヒストグラムを表示させながらプレビューして、オーバーの画像に暗部のディテールが収められているか、アンダーの画像にハイライトのディテールが収められているかをチェックし、外れているようなら収まるように各種調整を行ない再度試し撮りする。

 カメラの設定が決まったら、レリーズのインターバル撮影設定を状況に合わせたものにする。日なたの撮影ならば、とりあえずは撮影間隔3秒、露光時間1秒(カメラのシャッタースピードとは別)あたりに設定して様子をみると良い。夜景ならば、両方とももっと長くする必要があるだろう。撮影枚数は無限に設定する。

 レリーズの設定もできたらスイッチをオン。インターバル撮影を開始し、一定時間おきにきちんと3連写されているかしばらく確認する。3連写のはずが2連写や単写になってしまったりするようであれば、レリーズの露光時間と撮影間隔の設定を長くする必要がある。問題なければそのまま続行し、のんびり枚数を稼ぐことにする。

 ここでどれぐらい撮影を続ければいいのかだが、3秒間隔ならば、まずは6分ほど続けてみよう。120組(360枚)程度のブラケティング撮影が行なわれるはずだ。これは国内のビデオ方式の29.97fpsのムービーにした場合、4秒程度(24fpsなら5秒程度)に相当する素材となる。

Photomatix Proによる素材のHDR化

バッチ処理に先だってHDR化のパラメーターを決めてプリセットしておく

 撮影が終了したら、撮影したRAWデータをPCに取り込む。図1のようにかなりの枚数になると思う。その中から1組(今回の例だと3枚)のブラケティング素材を選んで、HDR化処理をしてみよう。

 それにはまず、Photomatix Proでその一組の素材をドラッグ&ドロップで開く、あるいは「HDRイメージを生成」をクリックして、そこから一組の素材を選ぶ(図2)。

図1 図2

 すると、図3のような画面が開くので、HDR化における各種設定を指定する。「イメージのズレを調整」等のチェック項目があるが、まずはすべてのチェックは外して進めてみよう。そのほうが処理も早い。「ホワイトバランス」はデフォルトの「撮影時設定値」のままで良いだろう。「HDRイメージのカラープライマリ」は今回はsRGBを指定するのが良いと思う。というのは一般の動画ソフトはsRGB以外のものを扱えなかったり、扱えたとしても設定が初心者には分かりづらいためだ。ここまで設定したら、「OK」をクリックする。

図3

 図4のような画面が現れたと思う。これがAEB素材を合成してでき上がったHDR画像だ。さぞかし綺麗な画像だと想像していたのに、白トビ&黒ツブレの激しい画像なのでがっかりした方もいるかもしれない。これは通常のディスプレイがHDRの膨大な情報をカバーできないためにそう表示されているだけなので気にする事はない。マウスを画像の上で動かしてみよう。その場所の詳細な情報が左上の「HDRビューア」に表示される。一見、白トビしているように見える場所や、黒潰れしているように見える場所をビューアで確認してみて欲しい。そこには豊かな情報が隠れている事がわかる。

図4

 さて続いては、このHDR画像を通常のディスプレイで表示できる範囲に情報を収めてみよう。それには「トーンマップ」を用いる。このトーンマップのかけ方によって、HDRの作品としてよく見かける絵画的な質感を作り出す事も可能だ。では、ビューア内の「トーンマップ」ボタンをクリックしてみよう。図5のようなトーンマップの作業画面が表示される。これでプレビュー画面を見ながら各パラメーターを調節し、自分の好みのトーンマップを追求していく。最初のうちは各パラメータの意味がよくわからないと思うので、その場合はツールボックスの下段のプリセットからお好みの設定を選ぶと良い。

図5

 そして、プリセットを出発点に自分なりにカスタマイズするうちに各パラメータの意味も次第に分かってくると思う。納得いくトーンマップができ上がったら、その設定ファイルを保存する。それには先のプリセットのプルダウンメニューから「設定を保存」を選択し(図6)、任意の場所に適切な名前を付けて保存する。設定を保存できたら、いったんトーンマップの作業画面は閉じ、さらにそのHDR画像の画面も閉じてしまってよい。その時、保存するかどうかも聞かれると思うが、保存しなくてよい。どのみち、この後のバッチ処理で再度処理が行われるからだ。

図6

 でもせっかくなので、このトーンマッピングを適用した静止画も保存したいということであれば(それが本来のPhotomatix Proの使い方なのだが)メニュー設定パネルの一番下の「処理を実行」をクリックする。というのは、ここまで表示されていたのはプレビューであって、実はまだ処理されてないのだ。そして、処理を実行後にでき上がった画像を保存する(図7)。

図7

プリセットしたパラメーターに基づいてバッチ処理を行なう

1.フォルダ内の素材を整理する

 前述したように、Photomatix ProではHDR化と続くトーンマッピングの作業をバッチ処理で行なえる。まずは素材のRAW画像をひとつのフォルダにまとめておこう。後の作業の混乱を避けるために、テスト撮影のものや失敗したもの、数が半端なものなどはこのフォルダから削除しておく。

2.素材フォルダを指定する

 「バッチ処理」をクリックするとバッチ処理の画面が開く(図8)。まずは、バッチ処理するファイルを指定しよう。パネル左下に「ソース」という項目があり、そこに「フォルダ」と「個々のファイル」の選択肢があるので、「フォルダ」を選択状態にする。そしてその右の「フォルダを選択」をクリックして、素材のRAW画像が置いてあるフォルダを選択する。選択すると、そのフォルダ内の素材一覧が下のウィンドウに表示される(図9)。

図8 図9

3.HDRイメージ生成をチェックし設定

 開いたパネル上段の「HDRイメージを生成」にチェックを入れ、その右の「設定」をクリック。するとHDR化処理の設定パネルが開く(図20)。今回の設定は図のとおりで、先ほどと同じく全てオフにしている。

図20

 これらの機能は静止画で仕上げる時には非常に便利で有効な機能ばかりなのだが、動画だとそれほど効果的でなかったり、むしろ逆効果だったりすることもあるのだ。なので、まずは全部オフにして作成してみるのが良いと思う。処理も速くなるので時間の節約にもなる。結果に問題があった場合にオンを試していくのが良いだろう。

 パネル下には、「ホワイトバランス」と色空間を指定する「HDRイメージのカラープライマリ」部分がある。これも先ほどの時と同じく、ホワイトバランスは特に狙いがなければデフォルトの「撮影時設定値」のまま、HDR色空間はsRGBに設定するのが無難。以上を確認したら一番下の「OK」をクリックし、もとのバッチ処理設定の画面に戻る。

 パネル中段の選択肢において「選択」にチェックを入れ、その右のプルダウンメニューから「3」を選ぶ。これは今回3枚ずつのAEB撮影なので3としたまでで、もし5枚ずつのAEB撮影なら「5」を選ぶ。

 そしてその下、「イメージのズレを調整」は今回はオフにしておく。これも本来、非常に有効な機能であり、静止画で仕上げるときはオンにする事の方が多いのではないかと思う。しかし今回はまず、オフで処理することをおすすめする。その理由として、1枚1枚は非常に綺麗に仕上がっても、それぞれの自動処理が微妙に異なることから、動画として再生してみると結果としてガタつきの原因になることがあるからだ。動画では1枚1枚の細部の完成度より、細部が少し劣ってでも画の連続性の安定を図ったほうが綺麗に見える事が多いのだ。

4.細部強調(トーンマップ)をチェックして設定

 上から2行目にある「細部強調で処理」をチェックを入れる。これによって、先に設定したHDRイメージの生成作業「撮影素材→HDRにして出力」の流れに加えて、トーンマッピングとその出力もバッチで行なわれるようになる。結果として「撮影素材→HDRにして出力→トーンマッピングして出力」というバッチ出力の流れになる。

 さて、チェックを入れたら、その右にある「設定」をクリック。するとトーンマップの操作パネル部分だけのような画面が表示される(図21)。そこで、プリセットのプルダウンメンユーから「設定をロード」を選択(図22)。そこから先ほど保存したトーンマッピングの設定ファイルを選択、適用すると各パラメータが保存した設定に変化する。そうしたら右下の「OK」をクリックし、「バッチ処理」パネルに戻る。

図21 図22

5.出力(コピー先)の設定

 パネル下段右側の「コピー先」の部分を設定する。バッチ処理ででき上がったファイルの出力設定部分だ。今回はとりあえず「ソースフォルダの下に作成」を選択して進めてみる。この場合、素材ファイルと同じフォルダに「PhotomatixResults1」というフォルダが自動的に作られ、そこにHDRファイルが出力されていくことになる。

 さらに、最終出力の保存形式をプルダウンメニューから選ぶ(図23)。今回は8bit TIFFが適当だと思う。この後、モーショングラフィックスソフト「Adobe After Effects」などでさらに色調整を考えている人は16bit TIFFを選ぶのも良いかもしれないが、かなり重たいファイルになるし、動画の場合、そういった業務仕様のソフトでないと16bitは対応していない場合が多いのだ。

図23

 そしてさらにその下、「名前付けオプション」をクリックする。これは出力時のファイル名を設定する部分だが(図24)、ここで図のように「セット番号、位置番号で名前付け」を選択、「ファイル名の最後に」を選択、簡略形にチェックを入れる。これによってバッチ処理によって生成されるファイル名は、“set01.tif set02.tif set03.tif……”といった連番になって出力される。

図24

 この末尾が連番化したファイル名として出力する事は、今回非常に重要だ。連番化により、バラバラの静止画ファイル群を動画ソフトに対して1つのムービーとして認識させる事が可能になる。この部分、Mac版の場合は表記が違うようで、「処理されたセットで開始」を選択、「簡略形」と「連番で終了」を共にチェックする(図25)。

図25

 以上「名前付けオプション」の設定が終わったら、左下の「OK」をクリックして「バッチ処理」のパネルに戻る。

 さて最後に「32bit HDRイメージをトーンマッピング後に削除」というチェック項目がある。これは今回の作業において中間ファイルとなっているHDRファイルを最終的に自動削除するかどうかの項目だ。今回の解説の上では、これ以上は使用しないので削除を選択してよい。その場合、結果としてトーンマッピングされた画像(設定どおりなら連番のTIFF画像)のみ出力される。HDRファイルは重いので、これはHDDの容量不足の対策にもなる。しかしHDRを深める上ではこのHDRイメージを保存し、いじっていく事にもいずれ挑戦してみてほしい。

6.バッチ処理の実行

 さて、これですべて設定が終了した。パネル右上の「処理を実行」をクリックして、HDRファイル生成のバッチ処理を実行する。大抵はかなりの時間を要するので、筆者は食事の前とか、ひと風呂浴びる前に開始したりしている。

 さて、バッチ処理が完了すると、素材のフォルダ内に「PhotomatixResults1」フォルダが作成され、その中にTIFFの連番ファイルが出力されたと思う(図26)。

図26。HDRファイルも出力したので、上半分が拡張子「.hdr」のHDRイメージファイル群、下半分が拡張子「.tif」のTIFFの連番ファイル群になっている

 ちなみに、この.hdr拡張子のHDRファイル群をイメージシーケンス(複数の連番ファイルから構成されるひとつのムービー)とみなせば、これこそが文字通りの意味でのHDRムービーだといえる。After Effects等のプロ仕様のエフェクト用ソフトならばこれを実際にシーケンスとして読み込み、本当の意味でのHDRムービーとして扱うことが可能だ。

 と言ってもそれは一見、通常に撮影したムービーにしか見えないので、初めて見たときには拍子抜けするかもしれない。しかし露出値を後から変化させられるというのは、通常のムービーにはない新たな次元を豊かに内在していると言える。実は文字通りの意味のHDRムービーとは(たぶん先のチェックで削除を選択されている)このHDRファイルシーケンスなのだ。ただ、今回はHDRをトーンマッピングした画像で構成されるムービーを(むしろそちらを)HDRムービーとして進めているので、図で下半分に配置されているTIFFの連番をこのあと動画にしていこうと思う。

トーンマッピングした画像を動画にする

 ここからいよいよ連番の静止画ファイルを動画に変換していく。

 もし動画編集ソフト「Adobe Premiere」やAfter Effectsをお持ちであれば、出力したTIFFの連番ファイルをイメージシーケンスとして直接読み込むことができる。読み込んだ後はタイムラインに乗せて編集し、お好みで音楽やタイトルを付けてムービーファイルとして出力すればHDR動画の完成だ。今回掲載したした完成動画は、After Effectsにて連番の動画化と編集を行なっている。

 しかしこのような業務仕様の編集ソフト、エフェクトソフトをお持ちでない方も多いと思う。要は、“連番のファイル名を持った画像ファイルをムービーファイルに変換”できれば良いのだ。そこで以下に、比較的安価であり、WindowsでもMacでも対応可能な手段として、アップルの「QuickTime 7 Pro」を使用した例をご紹介したい。

QuickTime 7 Proは3,400円

 通常の「QuickTime 7」(無料)はほとんどの方がお持ちだと思う。お持ちでない方や旧バージョンの方は、まずはアップルのWebサイトで最新の通常版をダウンロードしてほしい。そして通常版をインストール後、ライセンスキー(3,400円)を購入し、通常版をプロバージョンにアップグレードする形になっている。ちなみに、Mac使用者でアップルの動画編集ソフト「Final Cut Pro」をインストールしてある方は、すでにQuickTimeが自動的にプロバージョンになっているので、ライセンスキーを購入する必要はない。

 QuickTime 7 Proが準備できたら「ファイル」>「シーケンスとして読み込み」(Macだと「イメージシーケンスを開く」)で、先のバッチ出力したトーンマッピング済みファイルの一番最初のものを選択する(図28)。また、フレームレート(1秒間に何枚表示するか)も訊ねられるので、プルダウンメニューから好みのものを選択する(図29)。日本における通常のビデオ(NTSC方式)と同じなら29.97fpsだが、もう少しゆっくりした感じで見せたい方はそれより少ない数値を選ぶのも良いかもしれない。

図28 図29

 フレームレートを決定すると、先の一連の画像が1本のムービーとして開かれる。この時、大型のディスプレイでないと表示がはみ出しているかもしれない。その場合は、「表示」>「画面の大きさにあわせる」あるいは「半分のサイズ」を選択すると良い(図30)。

図30

 画面全体が表示されたら、プレーヤー下部の再生ボタンを押して再生してみよう。しかし、TIFFの連番という非常に重く足回りの悪いムービーなので、マシンの処理が間に合わずカクカクした再生になるかもしれない。その場合は、画面下のつまみをドラッグして動きを確認してみよう。それで絵の順番がズレるような現象が確認されなければ問題なし。さっそく、「ファイル」>「保存」で保存しておこう。

動画共有サイト向けの保存方法

 続いては、これをもう少し軽くてYouTubeなどにもアップロードできるような、一般的な画面比率&サイズのフォーマットで出力しようと思う。

 「ファイル」>「エクスポート」(Macだと「書き出す」)を選択する(図31)。すると図32のような画面が表示されると思うので、出力するムービーのファイル名を入力し、出力先のフォルダを選択。

図31 図32

「エクスポート(書き出し)」のプルダウンメニューから「ムービーからQuickTimeムービー」を選択し、さらに「オプション」をクリック、すると「ムービー設定」のパネルが開く(図33)、そこで書き出すムービーファイルの設定を指定していく。

図33

 まずはパネル上の「設定」をクリック、圧縮を選ぶところがあるので(図34)、ここは軽くて綺麗なH.264が無難ではないかと思う。細かい設定はデフォルトのままでも問題ないので「OK」をクリック。つづいて、「サイズ」をクリックし、「エクスポートサイズの設定」画面を開く(図35)。

図34 図35

 選択肢はいろいろあるのだが(図36)、今回は上記の設定が良いのではないかと思う。この設定だと上下はトリミングされて出力されるのだが、その結果が気に入らないようであれば、ほかの設定も試してみると良い。

図36

 設定が済んだら「OK」をクリック。先の「ムービー設定」画面に戻るので、そこでも「OK」をクリック。図32の画面に戻るので、「保存」をクリックしてエクスポートを実行する。エクスポート処理には少々時間がかかる(図37)。エクスポートが完了したら、出力したファイルを再生してみよう。最初のものより圧倒的に動きが軽いに違いない。もし、YouTubeにアップしたければ、これをアップすれば良い。

図37

 なお、QuickTime 7 PRO以外にリーズナブルな動画化の手段として、WindowsユーザーはK_OKADA氏の「ViX」とペガシスの「TMPGEnc」を組み合わせる手段もある。なんと共にフリーのソフトだ。この方法ではHDサイズでの出力はできないようだが、SDサイズでならMPEG-1(MPEG-2も期間限定で可能)で出力できた。また、適切な形式で出力すればYouTubeにもアップロードできる。

 以上で、HDR動画が完成した。これを読みながら試された方も、おそらく充実感のあるムービーができたのではないだろうか。撮影の時に見ていた景色が、全く違う表情を持つ情景となって動く事に興奮を覚え、きっと何度も再生して観てしまうに違いない。

 なお、完成動画においてはフィックスではなく、カメラアクションを行なっている。ひとつは回転パンニングそして、それ以外のものの2種類だ。

 後者についてはお気づきの方も多いと思うが、フィックス撮影の素材を編集ソフト上で動かしただけの疑似カメラアクションだ。これは編集ソフトやエフェクトソフトを用いれば容易だ。そして前者の回転パンは、撮影時に三脚で少しずつパンさせつつ撮影している。昼のほうのカットでは、それだけではまだ素材が足りずカクカクしたので、さらにアップルのエフェクトソフト「Shake」で補完画像を発生させて素材数を倍にすることで、カクカク感を少なくしている。

応用編―被写体の変化が激しい場合はどうするか?

 変化の激しい被写体を撮影した方の中には、何度も再生しているうちに画面のチラツキが気になりだす方もいるかもしれない。ここでメイキング動画の最後に収録した朝の月を追ったシーケンスを見ていただくと、その原因に気づかれる方もいるかと思う。そう、どうやらPhotomatix Proのトーンマッピングは、ベースとしてPhotoshopで言うところの自動レベルのようなものがかけられ、ノーマライズされているようなのだ。

 これは1枚1枚静止画を作成するときは、非常に有用だと思うが、動画においては絵の微妙な変化ごとに、いちいち全体のトーンを変えられてしまうので、このような事になってしまうのだ。残念ながら今のところこの設定はオフにできないようだ。そこで今回、自分なりに効果的な対策はないかと考えてみたところ、2つ思いついた。

 1つはこの自動レベルのようなものを騙す手法だ。トーンマッピングの前に、すべてのHDR画像の中に統一した“最も明るい白”の基準となるものと“最も暗い黒”の基準となるものをPhotoshopのバッチ処理で描きこむのだ。ただし、HDRの32bitでの処理は通常の8bitの処理とは少し異なり、白と黒の位置づけも異なるので、いつもの8bitの感覚でPhotoshopを操作するとうまくいかないのでご注意のほど。

 もう1つは、すべてのHDR画像の両脇に(あるいは上下に)余白を作り、その前後のHDR画像をそれぞれそこに合成して1枚のセットにしてしまう方法だ。それをトーンマッピングすれば、前後の絵の情報も合わせて換算されるので、連続したファイル間の変化は比較的緩やかなものとなる。そして動画にする際に、余分な前後の絵をトリミングでカットしてしまうという手法。これはPhotoshopでは難しいかもしれないが、After Effectsなら可能だ。

 上記2つとも、割と面倒だったりするので(苦笑)検証のほどは不十分ではあるが、今回の動画の作成においては実は後者を試している。雲間の夕陽のチラつきをかなり抑えられたりしたので、どうやら効果はありそうだ。興味が沸いた方は、自分なりに工夫を重ねてみて欲しい。でも、できれば今後Photomatix Pro自体で、このノーマライズのような機能をオフにもできるようにしてもらいたいと思う。

まとめ

 筆者が最初にHDRに興味を持ったのは4年ほど前だったと思う。当時、3D CGをいじり始めた時期で、3D CGを実写に合成する上でHDRなるものを環境情報として使用すると効果的だと知り、HDRの情報を探し始めたのが最初だ。

 VFXに興味のある方ならきっとメイキングなどで見たことがあるだろう、ロケ先でミラーボールのようなものを撮影する手法の事だ。当時はHDRで検索しても、トーンマッピングの画像はあまり見受けられず、ほとんどがこのミラーボールの事ばかりヒットするので、このミラーボールを使ったパノラマ撮影こそがHDRというのかと勘違いしそうになったものだ。それが今はHDRで検索すると、今度はトーンマッピングの画像ばかりヒットする(笑)。

 ちなみにCGではHDRというより「HDRI」という表記でこの技術を指す事が多いようだ。最後に加わった“I”はイメージングのIだ。音響など、ほかのダイナミックレンジと差別化する上ではIがあったほうがいいかもしれない。

 最近、劇場映画撮影にも使用されているレッドデジタルシネマの「RED ONE」というビデオカメラの新機種が、HDRに迫るレンジでの撮影を可能にしたというニュースがあった。この先、HDRを理解しておくことは非常に有効だと思う。しかし、この原稿を書いている現在、純粋にHDRについて解説した日本語の書籍はまだ出ていない。是非ともどこか出してくれないだろうかと切に願う。HDRには新たな光の次元がある、これは光をめぐる新たな冒険なのだ!

 ともあれ皆さんぜひ、自分でもHDR動画作成を試してみて欲しい。そしてトーンマップのみならず、HDR自体への興味の入り口としていただければ幸いだ。


※以下のサムネイルをクリックすると完成動画(上、165MB)とメイキング動画(下、162MB)をMOVファイルでダウンロードできます。いずれも、YouTubeにアップロードしたものと内容は同じです。

 

 






1969年栃木県生まれ。小学生時代に父の8ミリカメラで撮影を始め、怪獣映画監督を夢見る。しかし何故かアイドル映像制作の日々に(苦笑)。女は最強の怪獣と解釈するに至る。アイドルものを中心としたビデオ撮影・編集に加え、企業VPなどのCGを担当するほか、ショートムービーも制作し「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」の常連監督でもある。Webサイト「GIRAFFiLM」はこちら

2010/12/13 00:00