交換レンズレビュー

ULTRON 35mm F1.7

現代的な描写も楽しめるビンテージライン第2弾

今回はソニーα7で試用した。発売は8月。実勢価格はシルバーが税込13万5,000円前後、ブラックが11万5,000円前後

※ライカMで撮影した作例を1点追加しました(10月8日)

コシナのフォクトレンダーブランドからビンテージライン第2弾として、ULTRON 35mm F1.7が発売になった。シリーズ第1弾は2013年に発売したNOKTON 50mm F1.5 Aspherical VMで、ビンテージテイストを前面に押し出した標準レンズだった。

第2弾のULTRON 35mm F1.7も、負けず劣らずビンテージテイストに満ちた仕上がりだ。外観と描写の両面で、オールドレンズファンの琴線に触れるにちがいない。

デザインと操作性

ULTRON 35mm F1.7はVMマウントを採用した広角レンズだ。M型ライカで距離計連動する一方、マウントアダプターを使ってミラーレス機でも使用できる。

シルバーは真鍮製のクロームメッキ仕上げ。ブラックはアルミ製のブラックアルマイト仕上げだ

鏡胴はLマウントのNOKTON 50mm F1.5をデザインモチーフにしており、くびれのある鏡胴、ピントリングの大きなローレットが特徴だ。カラーはブラックとシルバーの2色展開で、クラシックテイストを重視するならシルバーがお薦めだ。

オールドレンズをそのまま復刻したようなクラシカルな佇まいが特徴だ
前玉に凹レンズを採用した7群9枚構成。前玉の様子は“凹みウルトロン”を彷彿とさせる

丸型のレンズフードとメタル製フードキャップが付属する一方、オプションでメタル製スリットフードを用意する。このスリットフードもブラックとシルバーの2色展開だ。シルバーのウルトロンにシルバーのスリットフードを付けた姿は、実に新鮮な見え方だ。シルバークロームのスリットフードはサードパーティー製でもあまり見かけない。ドレスアップ的な側面では貴重な選択肢となるだろう。

丸型レンズフードと、フードの上から装着するメタル製キャップが付属している
オプションのスリットフードもシルバーとブラックの2色展開。好みに合わせて選択しよう
スリットフードを装着したところ。ねじ込んだ後、側面のスクリューで位置調整できる

本レンズは7群9枚構成で、後玉に非球面レンズを採用している。また、前玉は凹レンズになっており、オールドレンズファンであれば“凹みウルトロン”(イカレックス用のULTRON 50mm F1.8)を思い浮かべることだろう。

VMマウントを採用し、M型ライカで距離計連動する。マウントアダプターでミラーレス機に付けてもよい

遠景の描写は?

実写してみると、クラシカルな外観に見合った懐古調の描写を実感できる。

絞り開放近辺は周辺光量落ちが顕著で、懐かしさをまとった絵作りだ。F2.8あたりまで絞ると周辺まで明るくなるものの、シャープネスは硬くなりすぎず、自然な解像感を保っている。最新の現行レンズでありながら、どこかオールドレンズ的なテイストを宿している。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:α7 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
F1.7
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:α7 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
F1.7
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

ボケ味は前ボケ後ボケともに滑らかで、現行レンズらしい安定感が感じられる。10枚羽根虹彩絞りのアドバンテージを実感する部分だ。本レンズは距離計連動に対応しているが、最短撮影距離は50cmでレンジファインダー機用レンズとしては短い。

これはマウントアダプター経由でミラーレス機に装着することも想定してのことだろう。開放で寄って大きなボケを稼ぐのも一興だ。

最短撮影距離(約50cm)で撮影。F2.8まで絞り、ボケ具合を整えている。自然で嫌みのないボケ方だ。α7 / 1/640秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
絞り開放中距離で撮影。上段の石垣にピントを合わせる。手前の石垣がうっすらとボケて心地良い。絞り開放でも滲みはほぼ感じられない。α7 / 1/5,000秒 / F1.7 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
絞り開放で遠方の眼鏡橋にピントを合わせた。35mmレンズなので、この距離だとそれなりに被写界深度が深い。α7 / 1/3,200秒 / F1.7 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

逆光耐性は?

逆光性能については、光源の有無を問わずフレアとゴーストをよく抑えている。

オプションのスリットフードを付けて撮影したところ、逆光条件でもコントラストの付き方が良く、シャドウの締まりも申し分ない。光の条件を問わず、様々なシーンで使いやすいレンズだ。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。α7 / 1/1,250秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。α7 / 1/500秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

作品

F5.6まで絞り、隅々までシャープに眼鏡橋を捉える。開放近辺は若干緩さがあるものの、現行レンズだけあって絞ったときの描き方は隙がない。コントラストの強さも良い。

α7 / 1/800秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

開放で中央の電柱にピントを合わせた。広角レンズなので開放でも被写界深度は深く、前後のボケ量はそれほどでもない。一方、周辺光量落ちは実にドラマチックで、これは特筆に値するだろう。

α7 / 1/4,000秒 / F1.7 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

近接で開放撮影してみた。これくらいの距離だとボケ量もかなり豊かだ。一気にボケるというよりも、ディテールを保ちながらなだらかにボケていく。合焦部は滲みがなく、開放を積極的に使っていける。

α7 / 1/2,500秒 / F1.7 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

雨後の石畳をアンダーで撮影した。コントラストの付き方が良いレンズなので、暗がりからハイライト部がキリッと立ち上がって見える。

α7 / 1/60秒 / F1.7 / -2.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 35mm

開放時の周辺減光を利用し、水辺を薄暗く捉える。ピントは遠景に合わせているが、滲まずシャープな描き方だ。絞り値を問わず、安定感のある描写のレンズだ。

α7 / 1/2,000秒 / F1.7 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

F2.8という開放寄りの撮影だが、四隅までしっかりと解像している。歪曲や色収差もほとんど感じられず、常用レンズとして安心感のある製品だ。

α7 / 1/250秒 / F2.8 / -1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

まとめ

クラシカルな外観のレンズが、オールドレンズ的な描写をする。それは予想の範疇と言えるだろう。ULTRON 35mm F1.7の良いところは、絵作りのさじ加減が絶妙な点だ。周辺光量落ちとナチュラルなシャープネスで懐かしさを演出する一方、コントラストや逆光性能はあくまでも現代的だ。

常用レンズとしての安定した描写力を備えつつ、古き良き時代の絵心が垣間見える。外観と描写の両面からのレトロテイスト。ビンテージラインの名は伊達ではない。

[2015年10月8日追記]

M型ライカとの相性はどうだろう。本レンズは距離計と連動するので、ライカM(Typ 240)に付けてレンジファインダーで撮影した。

絞り開放からシャープでα7より四隅も明るく、抜けの良い絵を楽しめる。コントラストが良好で、多くのシーンで印象深い写真に仕上がってくれた。

板の木目、剥げた塗装、金属板の錆など、細部にわたって緻密に描かれている。抜けの良さもこのレンズのアドバンテージと言えるだろう。四隅までクリアでシャープネスも申し分ない。
ライカM(Typ 240) / 1/350秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / AWB / 絞り優先AE / 35mm

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp