デジカメアイテム丼
手袋だってニコンクオリティー!
スマホにも対応 NDフォトグラファーズグローブ
Reported by 秋山薫(2014/12/16 12:18)
いよいよ本格的な冬の訪れだ。冬には、特に自然撮影などでは魅力的な状況や被写体がたくさんある。とはいえ、しっかりとした防寒対策がないと撮影に集中しづらい。筆者が特に気になるのは、指先の冷えに対してだ。
みなさんはどういう対策をされているだろう。首都圏在住であまり遠出をしない筆者自身は、寒冷地や豪雪地帯で撮影する機会はそうないが、それでも真冬の屋外で朝から晩まで撮影することが好きだ。
たいていは撮影用ではないニットの手袋を着用して撮影に望んでいるが、ときに、指先の操作がうまくできずに焦ることや、風が強い日には手ぶれをすることが増える。そういうときには撮影用手袋があるといいのかな、と考える。
インナーグローブつきの本格派
そこで、本誌でも既報のとおりさる11月26日にニコンイメージングジャパンより発売された「NDフォトグラファーズグローブNPG001」(以下、NPG001)を、編集部に頼んで試用することにした。
NPG001は、薄手のインナーグローブと厚手のアウターグローブからなる二重構造の本格的な撮影用手袋だ。ニコンロゴのある撮影用手袋は、ニコンオリジナルグッズ(NOG)製品では1995年頃にシューティンググローブという名称で発売していたが、市場には久しく存在していなかった。
NPG001の企画は、ニコンイメージングジャパンによれば、市場には本格的な撮影用手袋が数少ないのではないかというところから始まったのだという。
たとえば、2014年に行われたソチオリンピックの現場を確認したところ、撮影用に特化されていないスキー用手袋を利用しているカメラマンが多く、撮影時には手袋を外しているカメラマンも見受けられたというのだ。そこで、装着したまま撮影ができる本格的な撮影用手袋の需要はじゅうぶんに見込めるとの判断がなされたとのこと。
そこで、スキー用手袋を手がける専門メーカーの協力のもとで、そのノウハウを活かして作られたのがNPG001というわけだ。素材の耐寒性試験も行われているほか、スキー用手袋同等の撥水性(指が出る部分の切り込みがあるため、防水仕様ではない)を持つという。
価格は税込1万1,880円。サイズはLとMの2種が用意されている。色はブラックのみ。寸法・重さは以下のとおり。
寸法(片手) | ||
---|---|---|
Mサイズ | ||
インナー | 約24.5×8cm | 約23.5g |
アウター | 約34.5×15.7cm | 約92.5g |
Lサイズ | ||
インナー | 約25.5×8.5cm | 約24g |
アウター | 約35.5×16.2 | 約102g |
NPG001はオンラインショップのニコンダイレクトとニコンダイレクトストア(土岐、神戸三田、御殿場、木更津)、ニコンプラザ新宿・銀座・大阪と各地のサービスセンターでのみ発売されている。記事執筆現在(12月12日)、すでにニコンダイレクトには「2015年1月中旬頃のお届けを予定しています」とあり、またたくまに人気商品となったようだ。
指出し対応で使いやすい
スキー用手袋とは異なる撮影に特化された特徴がNPG001にはある。インナーとアウターの二重構造であることは前述のとおりだが、アウターは人差し指と親指の部分の指を出すことができるようになっているのだ。
撮影時に行う動作はズーミングやピントリングの操作といった、動きの大きい動作ばかりではない。
シャッターボタンを押す以外にも、露出の調整で前後のコマンドダイヤルを操作すること、マルチセレクターでのAF測距点の変更、ライブビューボタンや動画撮影ボタンを押すこと、露出モードやレリーズモードの変更、あるいはインフォボタンや再生ボタンを押すこと、三脚へのカメラ・レンズの着脱と、VRスイッチの操作、さらにはレンズ交換などの指先を使う細かい動作が数多くある。
そのさい、アウターを外してインナーだけを着用して行うことももちろんできるが、そのつどアウターを着脱するのは、操作頻度が高いと意外とおっくうだ。NPG001ならばインナーを着用した指先だけを出すことができるのが便利だ。
アウターの素材はナイロン、山羊革、合成皮革。インナーが発熱素材、パワーストレッチ、導電素材、合成皮革、シリコン。
それぞれの部位別に組み合わされている。具体的には、アウターの手の甲は軽量で撥水性に優れるナイロン、指先部分と手のひらの可動部分は、やわらかく動かしやすい山羊革、そして指のつけ根部分は滑りにくく冷気の遮断性に優れる合成皮革が用いられている。
インナーはタッチパネル対応
また、インナーには人差し指と親指部分には導電素材が用いられているので、タッチパネル操作が可能だ。カメラの操作だけではなく、撮影にスマートフォンやタブレットを使用するユーザーには便利だろう。
なお、そのほかにもインナーの素材には、手の甲の部分に湿気(水分)に反応し保温・防寒性に優れる発熱素材。手のひらとすそ部分には伸縮・柔軟性に富むパワーストレッチに滑り止めのシリコンと滑りにくい合成皮革が用いられている。
寒冷地でなくても“待ち”のある撮影に
撮影に出かけた際に、実際に筆者自身と撮影仲間とで試用してみた。場所は埼玉県西北部の寄居町から長瀞町を経て秩父市にかけて。
通常は4月~12月にかけての週末に蒸気機関車(SL)の牽引する「SLパレオエクスプレス」の運転が行われる秩父鉄道の沿線各所で、SL列車をはじめとする列車の撮影時に試用した(今年度は1月まで冬期特別運行が行われる)。
12月上旬の同地の平均気温は4度程度。夜半や日の出前には氷点下になっても、日中の気温はそれほど低くはない。当日は穏やかに晴れたこともあり、NPG001では日中は少々大げさで、インナーだけでも十分だった。インナーだけ入手できればなおいいのに、とも思う。
ところが、鉄道撮影でも列車の運転本数の少ない路線での撮影や、吹きさらしの滑走路そばでの航空機撮影、あるいは相手がいつ現れるかわからない野鳥撮影などでは、撮影のあいだの待ち時間があるはずだ。そのあいだ風が吹くと体感温度は下がる。
また、日の出前や日没前後の気温が低い時間帯は被写体がたいへん魅力的に見えることは、自然風景撮影を行う方ならよくご存知だろう。撮影条件が悪いときこそ、フォトジェニックなシーンが数多くあるのだ。そういうときこそ、NPG001が真価を発揮するだろう。
しっかり作り込まれた手袋
実際、この日もNPG001をありがたく思ったのは、日没後の河原で列車を待っているときだった。まず、指先まで暖かい。そして、カメラの操作やタッチパネル操作がしやすいからだ。
そして撮影に便利なだけではない。待ち時間にスマホで調べ物やメールチェックをする、あるいは時間つぶしをする際にも便利だ。つまり日没後の風景にうっとりしつつ、「撮影中なう」などとSNSへの投稿をすることもできるというわけ。
冗談はさておき、NPG001はかなりしっかり作られた撮影用手袋だ。冬場の撮影でかなり本格的に用いることができそうだ。毎度のことながら、撮影用品にまで真面目な作り込みがなされているあたりに、ニコンクオリティーをかいま見る気がする。