Canon EFレンズ 写真家インタビュー
「ズームの利便性に文句のない描写力が加わった」
航空機撮影のプロ、ルーク・オザワさんの場合
キヤノン EOS 7D Mark II + EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの魅力を探る
2015年10月20日 14:14
「動きモノ」を撮るうえで至高の組み合わせといわれるのが、「EOS 7D Mark II」と「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」の2製品だ。画質、AF、連写、操作性、サイズ感など、期待を裏切らない実力が評判を呼んでいる。
この2製品を手にした「動きモノ」のプロたちは、どういう感想を持ち、どう使いこなしているのか。
今回は、航空機撮影で知られるルーク・オザワさんに話を聞いた。
聞き手:笠井里香
望遠撮影のメイン機材はEOS 7D Mark IIに
--写真を始めたきっかけ、また飛行機の撮影を始めたきっかけを教えて下さい。
中学生のときに、北海道へ行くため飛行機に初めて乗りました。そのときに、離陸時のGや機窓からの景色にとても感動したんです。それ以来、カメラを持って羽田空港に通いつめる日々が始まりました。
飛行機を撮影される方には“スポッター”と呼ばれる、青空バックの横向きで機体写真を撮り集める方も多いのですが、僕は当時から周囲の風景と飛行機とを絡めた、どちらかというと情景的な飛行機写真が好きで、そういった撮影をしていましたね。
僕は31歳までサラリーマンをしながら写真を撮っていて、プロの写真家の方との出会いもあり、プロになりたいなという気持ちが芽生え、会社を辞めました。いつかは飛行機の写真だけで食べていきたいと思いながら、旅雑誌などでさまざまな撮影をしていましたね。
--写真を始めたときはフィルムだったと思いますが、デジタルへの移行はいつごろだったのですか?
僕はずっとフィルムで行きますと宣言するほどだったので、実はデジタルへの移行は遅い方でした。2006年ですね。2014年まで離着陸時はデジタル機器の使用が禁止だったので、その間はフィルムカメラを使って撮影をしていました。
フィルム現像を待つ間のドキドキ感や、フィルムによって色の再現が違うので表現によって変えるなど、フィルムにはフィルムの楽しさがありました。
ただ、デジタルに移行してみると、撮ればすぐに確認できますし、枚数も気にせず撮影できて素晴らしいと思いましたね。
機材はEOS-1D Xをよく使っていましたが、いまの望遠撮影のメインは、EOS 7D Mark IIとEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの組み合わせです。もちろん単焦点レンズも持っていますし、使用することもありますが、月や夕陽を絡めた撮影など、シチュエーションは限定的ですね。
--撮影はJPEGで行っているとのことですが。
フィルムのときはもちろんですが、そのときにしか撮れないものを一発で撮るというのはデジタルでも同じです。撮れなかったことに言い訳もできないですからね。
カレンダーなど印刷物で大きく出力する必要がある場合にはRAWで撮影することもありますが、基本的にはJPEGのみです。ですから、デュアルスロットには2枚のカードを入れて、1枚は完全にバックアップ用として利用しています。
取り回しの良いコンパクトな組み合わせ
--現在、メインの機材となっているというEOS 7D Mark IIですが、飛行機の撮影に際してのメリットはどんなところでしょうか。
まずは軽いということですね。羽田空港には1日約1,000便を超える飛行機が往来します。ピーク時には3分に1機が着陸し、別の滑走路には離陸機が、さらに目の前を横切る期待もあるといった状況です。それらを取り続けるため、このサイズ、重量だと疲労度がかなり軽減されます。また、防塵防滴性能がありますから、雨でも撮影できますよね。
--EOS 7D Mark IIの性能面ではどんなところが飛行機撮影に有利と感じられましたか?
連写7コマに設定して撮影しているのですが、高速連続撮影の10コマに切り替えることもあります。連写はコマ数が多ければ多いほど、たくさん撮ったなかからベストの写真を選ぶことができます。着陸した飛行機のタイヤが摩擦によって煙を上げる瞬間など、一瞬のシーンでも何コマも撮ることができれば、必ず写っているという安心感もありますよね。
AFは通常AIサーボAFを利用しています。AF/ONのボタンを押している間はワンショットAF、離すとAIサーボAFとなるよう設定を割り当てていますね。AFカスタムをCase3「急に現れた被写体に素早くピントを合わせたいとき」に設定し、測距は撮りたい画によって切り替えますが、主にゾーンAFを使っています。
EOS 7D Mark IIはファインダーの隅々まで測距点があるので、確実にピント合わせができます。ファインダー内に表示されるインテリジェントビューファインダーも便利です。情報をファインダーを覗いたまま確認することができるので、ファインダーから目を離さずに設定を変更できます。
また、僕は機窓からの景色も撮影するので、静音モードはとても重宝しています。静音モードだと機内での撮影時には自分でもシャッター音が聞こえないくらいなんですよ。周囲の方々に迷惑をかけることなく撮影できるので助かっています。
「ミスター100-400」にとってII型の評価は?
--「ミスター100-400」と呼ばれるほど、前モデルを含め、100-400を使っていらっしゃいますが、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの描写や操作感などはいかがでしょうか。また、飛行機撮影にこのレンズが有利な点はどんなところですか?
「プロなのにズームレンズなのか」と言われることもありましたが、Ⅱ型になる以前のモデルから使用しています。基本的に遠くにあって寄ることのできない飛行機の撮影では、望遠端は長ければ長いほど有利です。その点100-400mmであればAPS-C機なら160-640mmという焦点距離域で、500mm、600mmという焦点距離もカバーできます。引き気味で風景を合わせた飛行機のシーンから、飛行機のアップまでこれ一本でさまざまな絵作りができるんです。
基本的にJPEGのみで撮影しますので、後からトリミングなどをしたくないんですね。飛行機はそれぞれで大きさも違いますから、ファインダーを覗いてノーズアップを撮り、引きも撮る。ズームレンズならこういったことに対応できるんです。刻一刻と変化していく空の色や雲の動きも、レンズを交換していたら撮り逃してしまいます。空港によっては、1日に1便しか来ない機体などもありますし、ワンチャンスを確実にモノにするためのEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMというレンズチョイスなんです。
Ⅱ型になって驚いたのは、フレアやゴーストがまったく気にならないこと。飛行機は飛んでいる最中でもピカピカと光るライトがありますし、夜間に正面から撮影すれば前照灯が点灯している。こういった場面ではフレアが盛大に出てしまってもおかしくないのですが、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMにはそれがまったく出ません。しかも、解像力が高いので、飛行機の機体にある小さな文字やドア、窓などのパーツまでしっかりと解像してくれるんです。
レンズも防塵防滴構造が採用されたので、これまでなら雨が降り出したときにはタオルをかけるなどして雨を避けていたところを、そのまま撮影できるというのも嬉しいです。雨に気を使っていた部分を撮影の時間にできるわけですからね。シャッターチャンスをより逃さずに撮影に集中できますし、雨が降れば、雨でしか撮れない作品ができますから。
僕は飛行機をよりクリアに見せるために、PLフィルターをよく使用するのですが、今回のEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMにはフィルター操作窓があるのも重宝しています。実は、以前はフードに自分で穴を空けていたんですよ(笑)
--EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの手ブレ補正の効果はいかがでしたか?
非常によく効くと思いますね。流し撮りに適した「手ブレ補正モード2」に設定しています。飛行機の離発着時というのは、実は横の動きだけでなく、上下の動きもあるんですね。その部分は、EOS 7D Mark IIのAIサーボをはじめ、AFの性能も併せ、確実にピント合わせができます。
絞り優先をメインに撮影しているのですが、望遠側では絞りはF5.6になります。手ブレ補正の効果で夜間でも手持ちで撮影でき、EOS 7D Mark IIの高感度性能と併せ、これまでとは違った世界を作り出せるようになったと思いますね。
--飛行機の撮影を楽しんでいる方、これから始めてみようと思っている方に、飛行機撮影のポイントや心得などを教えて下さい。
セオリーと呼ばれるものはたくさんありますが、僕はあまりそういったことは気にしていません。季節、天気や風など、思ったように撮れないというのが当たり前なのが飛行機の撮影なんですよね。それが面白いところでもあります。撮影に行くときには、天気だけは必ず確認して行くのですが、それでも思う通りにはならない。ここかな?と思いながら構えて待っていても、その位置に飛行機が入ってきてくれるとは限らないんです。そういった意味でも、その場に応じて、季節の花や、その時期特有の空、雲など自分が撮りたいと思うものをそのまま素直に撮影するのがいちばんだと思います。
EOS 7D Mark IIにはたくさんの機能があり、カメラに任せることのできる部分は安心してカメラに任せることができます。こんな風にしたいなと思うことも、たくさんの機能を扱うことによってカメラが応えてくれるんです。
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMとの組み合わせなら、何より軽いですし、手ブレ補正も強力ですから三脚を持っていかなくても十分に撮影できます。連写も速いので、とにかくたくさんシャッターを切って、そのなかからいい写真を選ぶことも可能です。
僕は朝から撮影を始めて気が付いたらもう夕方、夜。ご飯を食べそびれてしまったなんてことは日常茶飯事。空港で1日中飛行機を追い続け撮影してもEOS 7D Mark IIの軽さなら本当にラクですし、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの描写力があればさまざまなシーンで撮影できます。
僕の撮影セミナーに来てくれる方々も、この組み合わせが一気に増えました。ぜひ皆さんにもEOS 7D Mark IIとEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMで飛行機撮影を楽しんでもらえたらと思いますね。
ルーク・オザワさんの主なEOS 7D Mark II設定例
設定項目 | 設定内容 |
---|---|
画質(圧縮率) | JPEG(ラージ) ※一部RAWでの撮影も |
ドライブモード | 低速連続撮影 ※7コマに設定 |
AFモード | AIサーボAF、ワンショットAF |
測距エリア選択モード | 被写体により変化 |
AFカスタム設定ガイド機能 | Case3 |
被写体追従特性 | ノーマル |
速度変化に対する追従性 | ノーマル |
測距点乗り移り特性 | ノーマル |
ピクチャースタイル | 風景 |
高感度時のノイズ低減 | ISO1600以上で強 |
高輝度側・階調優先 | 標準 |
オートライティングオプティマイザ | しない |
周辺光量補正 | する |
色収差補正 | する |
歪曲収差補正 | しない |
月刊誌「デジタルカメラマガジン」でも連携企画「Canon EF LENS 写真家7人のSEVEN SENSES」が連載中です。EFレンズを知り尽くした写真家によるレンズテクニックが収録されています。