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もうひとつの道、EVF時代到来の予感
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LUMIX DMC-G1(コンフォートレッド)
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9月にドイツ・ケルンで開催されたフォトキナ2008をきっかけに、ずっと気になっていたカメラがある。パナソニックのLUMIX DMC-G1(DMC-G1)だ。まだチューニングが終わっていない段階と言いながらも、電子式ビューファインダー(EVF)の持つ光学ファインダーとはまた違った良さに加え、動作レスポンス、絵作りや高感度時のS/N感など、いずれも期待値を超えた結果を予感させたからだ。
“期待値を超えていた“という意味では、実はキヤノンEOS 5D Mark IIも、その試作機を触れ、前モデルでどうしても気になっていたレスポンスの悪さや操作性が改善されたことに少々驚いた。意外にもファインダーの見え味も向上しているし、画質も確実に進歩しているのだから。スペックだけを見ても、カメラの良さは全く判らないことを痛感した。
しかし、さらに今後の進歩も含めて、将来のデジタル一眼の可能性を見せてくれたという意味において、DMC-G1の存在は大きい。やや大げさにいうならば、DMC-G1はデジタル一眼が向かう、新しい分かれ道を投影している。
ひとつは王道。銀塩時代から続く一眼レフの道。もうひとつはDMC-G1とマイクロフォーサーズが切り開こうとしている新しい道。当然、幹となるは前者と考えていたが、もしかすると後者の方こそ、今後の基幹となる道なのかもしれない。
■ 製品版では各部がブラッシュアップ
さて、あくまで個人的にではあるが、DMC-G1は今年、コレこそは! と気に入った製品のうちの1台だ。もう1台は前述したEOS 5D Mark II。DMC-G1については、来年発売の動画モデルを入手することも考えた。なにしろマイクロフォーサーズの初物である。試作機でよい感触は持っていたものの、熟成が進み動画機能も加わるモデルが出るなら、そっちの方がイイやと思うのは消費者なら当然だと思う。
しかし、パナソニック関係者から「来年まで待たれたら、たまりません」との言葉と、日に日に募る物欲にたまりかね、DMC-G1を入手することにした(もちろん、動画モデルの入手も計画している)。
すでにさまざまなレビューが出ているので、本連載でその感想を書く必要もないだろうが、フォトキナ、CEATECと展示された製品の完成度は、製品版でさらにブラッシュアップされていた。
- ホワイトバランスをEVFである程度確認しながら選べること
- 露出のシミュレーションをEVFでできること
- 多彩なAF機能
- コントラストAFの驚きの速さとAF精度
- おまかせiA(家族に使わせる際には特に便利)
- 付属レンズの意外な描写の良さと最短撮影距離の短さ
- フォーサーズにしては良好な高ISO時のS/N
細かな操作性や蛍光灯下のオートホワイトバランス、連射時のファインダー表示など、全く不満がないわけではないが、速写性や連写性能を求めないなら、あらゆる場面で使いやすいカメラに仕上がっていると実感した。
ところが、このような話を、フォトキナ後のIT系カンファレンスイベントでパソコン系のジャーナリストに話してみると、たいていは「EVFが光学ファインダーのカメラより良いはずがない。それに軽量・コンパクトならE-420の方がいいよ」と、つれない言葉しか返ってこない。
Web上でのレビューも「一眼レフの下、コンパクト機の上」といった位置付けで「レンズ交換式のコンパクトカメラだね」という結論で書かれていることがほとんどだ。しかし、EVF採用機の本当の良さは一眼レフカメラをよく知っている人の方が感じられる。
一眼レフのファインダーは、どんなに改善しても、レンズを通して撮像面に投影する像を確認する以上の機能を持たせることはできない。その限界があることを理解している人の方が、一眼レフカメラに漠然と憧れを抱いている人よりも、EVFの良さを引き出した撮影ができるだろう。
■ 意外に専門家筋にウケのよいDMC-G1
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フォトキナ2008で展示されたHD動画対応のマイクロフォーサーズ機
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といったことを考えているのは筆者だけかと思っていたら、実は違うということに先日気付いた。カメラ誌やフォトグラファーも集まるイベントで、インプレスジャパンのデジタルカメラマガジン編集長や、カメラ評論で知られる某フォトグラファー氏に「G1、結構イイと思うんだけど、どう思う?」と水を向けると、二人揃ってDMC-G1を絶賛し始めた。
また、以前にもレポートしたことがあるが、フォトキナの会場でライバルメーカーにも話を訊いてみたが「現時点でG1くらいの機能と品質を出せるなら、うちも今から手を打たないと」といった意見も出てくるほど。おそらく期待値そのものが低かったために、余計に良く見ているという面はあるだろうが、光学機器メーカーも一様にDMC-G1に対してはポジティブな見方をしていたという印象である。
今回のDMC-G1、パナソニックは一般層へのデジタル一眼の浸透を狙い「女流一眼」のスローガンの下に、カメラマニアに対する訴求を怠っているように見える。しかし、実はとてもマニアックな機種というのが、実際に使っての感想だ。無論、コンパクト機のような使い方もできるよう簡単に作ってはいるが、その本質は“光学ファインダーではできないこと“に挑戦したカメラ好きのためのカメラだ。カメラを操り、どんな写真を撮影しようか?と考え、判断するためのインフォメーションをEVFや背面液晶から撮影者に伝えようとしている。
無論、初代機だけに、いくつかのエクスキューズはある。たとえば連写時に途絶えるファインダー像といった問題もそのひとつだが、1カ月以上、DMC-G1を使い続けてみて感じたのは、小ささ・軽さといった面以上に、操る楽しさだった。こればかりは、体験してみないと理解しづらいかもしれない。
と思っていたのだが、意外と言っては失礼だが、DMC-G1の販売はかなり好調のようだ。もちろん、従来機が大ヒットとは行かなかっただけに比較の問題とも言えるが、発売直後のスタートダッシュが良かっただけでなく、その後も全く新規のレンズマウントであること、ダブルズームキットで他社エントリークラスよりも3~4万円も高い値付けながら、かなり健闘している。売上集計はボディカラーごとに行なわれているので、全カラーを合計すれば、さらに上位に食い込むかもしれない。
EVFに特化したレンズ交換式カメラに対して色眼鏡で見ていたのは一部だけで、実際の消費者はもっと賢かったということだろうか。
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DMC-G1のEVF(パナソニックはLVFと呼称)は、民生用として最高レベルの144万ドット。アイセンサーによる液晶モニターとの切り換え動作も便利
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DMC-G1のファインダー内。ホワイトバランスや露出の変更も瞬時に反映される。撮影後の構図確認もEVF内で可能
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■ EVFの進化は止まらない
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オリンパスがフォトキナ2008で参考出品したマイクロフォーサーズ機のモックアップ
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もっとも、この連載は製品レビューでもなければ、お勧めの製品を紹介する記事でもない。個人的には大変に気に入ったDMC-G1だが、誰かに押しつけようなどとは思わない。EVF搭載レンズ交換式カメラの歴史は、今、始まったばかりだ。
パーツレイアウトに制限がほとんどないマイクロフォーサーズの手法は、今後、どのようにも進化できる柔軟性がある。一眼レフカメラとは似たデザインにはならないと見られる(EVFは未搭載のようだが)オリンパス機も来年になれば登場するだろう。あるいはほかにもボディ開発に追従するメーカーが現れるかもしれない。
DMC-G1の最大の功績は、“一眼レフ”とは別の手法によるレンズ交換式カメラの市場が勃興してくる可能性を、具体的な形として我々に見せてくれたことだ。EVF/ライブビューが前提のカメラは、今後の半導体技術の進歩とともに驚くほどの進化を遂げていくだろう。
半導体技術が進歩すれば、センサーからライブで取り込む映像の質やフレームレートも上がる。それと共に映像処理のスループットも向上する。より複雑なリアルタイムの映像処理が可能になれば、EVFや背面液晶からユーザーに伝えられる情報の質、量ともに高めていくことが可能だ。
見方を変えれば、熟成され尽くした光学技術から、今後も大きな進化が期待できる半導体技術へと勝負の場所を移したとも言える。EVFの進化は、これからさらに加速するだろう。
■ URL
パナソニック
http://panasonic.co.jp/
パナソニックLUMIX DMC-G1関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/10/02/9224.html
本田雅一の業界トレンド予報(バックナンバー)
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/trend_backnumber/
本田雅一 PC、IT、AV、カメラ、プリンタに関連した取材記事、コラム、評論をWebニュースサイト、専門誌、新聞、ビジネス誌に執筆中。カメラとのファーストコンタクトは10歳の時に親からお下がりでもらったコニカEE Matic。デジタルカメラとはリコーDC-1を仕事に導入して以来の付き合い。 |
2008/12/08 12:25
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