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国内未発売の「サイバーショットDSC-T500」を買ってみた

~薄型ボディにH.264の720p記録機能を搭載
Reported by BB Watch:甲斐祐樹

サイバーショットDSC-T500
 デジタルカメラの中には、日本と同じブランドで展開されていながらも海外のみで販売されるモデルがいくつか存在する。今回レビューする「DSC-T500」も、そうした製品の1つだ。

 DSC-T500の最大の特徴は、1280×720ピクセル、30fpsでMPEG-4 AVC/H.264形式のHD動画を撮影できること。H.264形式の動画が撮影できるデジタルカメラ自体はカシオのEXILIMやキヤノンのPowerShotなどにも存在するが、HD記録に対応したデジタルカメラは珍しい。薄型モデルともなるとなおさらだろう。

 米国では2008年9月に発売されているが、残念ながら日本では現在のところ発売されておらず、今回は米国に住む知人にお願いして入手した。ただし、日本で手に入れる方法がないわけではなく、家電量販店などのオーバーシーズモデルであれば米国価格よりは多少高くなるものの購入できる。米国での購入は346.95ドル(購入時のレートで3万2,807円)だったが、国内のオーバーシーズモデル取り扱い店舗では4万1,000円程度で販売されているようだ。


スペックはDSC-T700/T77を踏襲

 本体スペックは、国内でも発売されている「DSC-T700」や「DSC-T77」に近く、撮像素子は有効1,010万画素CCD。電源を兼ねるスライド式のレンズバリアやタッチパネル液晶モニターなどもDSC-T700と同じだが、光学ズームはDSC-T700の4倍に対してDSC-T500は5倍になっている。焦点距離は33~165mm相当(35mm判換算)、開放F値は3.5~4.4。DSC-T700が35~140mm相当なので、望遠側を中心にズーム比が拡張された格好だ。


レンズカバーを閉じた状態 突き出たグリップは、DSC-T700/T77にはない意匠

上面もすっきりしている。再生ボタンの位置がDSC-T700/T77と違う 記録メディアはメモリースティックデュオ系

 タッチパネルのメニュー構成もほぼDSC-T700と同様だが、海外製品だけにメニューはすべて英語で、日本語の言語設定もない。ただ、ホワイトバランスやマクロなど機能はアイコンで表示され、画素数設定なども数字で確認できるので、ある程度デジタルカメラを使った経験があればそれほど困ることはないだろう。

 操作はタッチパネルが中心。ハードウェアスイッチの数は少なく、電源ボタン、再生ボタン、静止画と動画の切り替えスイッチ、ズーム、シャッターボタン程度に限られている。撮影時の機能設定は画面左下の「MENU」から、本体全体の設定は左上の「HOME」ボタンから行なう。

 外部接続インターフェイスは専用のマルチコネクタのみで、付属のクレードルを利用してUSBやHDMIで接続できる。クレードル経由でUSB接続すればメモリースティックPROデュオ内をマスストレージとして利用でき、HDMIでテレビと接続すれば写真や動画をテレビで再生可能だ。ただし、クレードルに装着した状態で充電は行なえず、本体から電池を取り出し、付属の充電器を利用する必要がある。

 レンズ部に違いはあるものの、基本的な操作感などはDSC-T700とほぼ同等。そのため今回はDSC-T500の一番の特徴である動画機能を中心に見ていく。


HD動画を手軽に撮影。画質にも満足

 撮影できる動画の形式は、1,280×720ピクセルのFineまたはStandard、640×480ピクセルのFineの3種類。いずれもファイルの保存形式はMPEG-4/AVC H.264になる。撮影中のズームや3枚までの静止画撮影も可能だ。

 8GBのメモリースティックPROデュオでは、1,280×720のFineで1時間37分、Standardで2時間23分、640×480ピクセルで4時間32分まで記録可能。ただし、1動画あたりの撮影時間が約10分程度に制限されるため、長時間の動画撮影には利用できない。

 レンズバリアをスライドし、シャッターボタンを押すだけで動画が撮影できるため、動画の撮影が非常に手軽。撮影時の光学ズームや静止画撮影も可能。ただし、静止画は1回の動画で最大3枚しか撮影できない。

 動画の保存フォルダは静止画とは別に「MP_ROOT」、「101ANV01」というフォルダに保存される。フォルダ構造はPSPと似ており、動画ごとに「.THM」形式のサムネイルが作成される点も共通だ。PSPでは1,280×720ピクセルの動画は再生できないが、640×480ピクセルの動画であれば、DSC-T500のメモリースティックPROデュオをPSPに装着するだけで、サムネイルの表示や動画の再生が可能だった。

 1,280×720ピクセル・Fineでのビットレートは約9.6Mbps程度。動きの速い小動物も十分に撮影でき、コンパクトデジタルカメラで撮影した動画としては非常にレベルが高いと感じた。マイクもステレオのため、音質面でも音の悪さは感じない。光学で5倍までズームできるので、少し離れた被写体を撮影するのにも便利。何よりビデオカメラと違い、レンズバリアをスライドして片手ですぐに撮影できるという手軽さが魅力に感じた。

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H.264 / 約21.2MB / 1,280×720ピクセル / 30fps

H.264 / 約22.9MB / 1,280×720ピクセル / 30fps

H.264 / 約12.0MB / 1,280×720ピクセル / 30fps


静止画機能はDSC-T700と同等

 前述の通り、静止画についてはほぼDSC-T700と同様のため、DSC-T700のレビュー記事を参考にして欲しい。光学式の手ブレ補正や最高ISO3200での高感度撮影、最大8名の顔検出機能など、静止画の機能も充実している。

 使っていて気になる点はレビューにもある通り、撮影中の画面が実際よりも荒く表示される点や、タッチパネルでの操作メニュー階層が深く、ホワイトバランスの設定などにやや手間がかかるあたりだろうか。本機のオートホワイトバランスは室内など赤みが残ることが多い。こまめに設定を変えたいだけに不便に感じるが、慣れてしまえば問題はないかもしれない。

 サイバーショットならではの拡大鏡モードも便利で、1~20cmの近距離で文字を撮影できる。外出時だけでなく、自分で購入した製品のレビュー用途など、ブログにも便利そうだ。ただ、マクロはこまめな設定が必要なようで、料理などを取るときはマクロをオフにしているとややぼやけてしまうため、マクロの撮影距離を体で覚えておく必要はありそうだ。


まとめ

 サイバーショットとしての静止画撮影機能に加えて、手軽にHD動画が撮影できるという点で非常に機能が充実した1台。HDで動画撮影できるビデオカメラはいくつもあるが、コンパクトデジタルカメラの手軽さで高画質の動画が撮影できるというのはほかにはない魅力だ。最近ではYouTubeが高画質動画のアップロードに対応しており、HD動画をアップロードできるeyeVioといった動画サービスもあるため、高画質のままインターネットで友達に動画を見せる、ということも可能だ。

 日本では未発売であり、メニューがすべて英語表記になるといったネックもあるが、「高画質の動画が撮影できるコンパクトデジタルカメラ」としてはコストパフォーマンスの高い機種と言える。オーバーシーモデルは海外価格よりもやや高くはなるものの、円高の影響を受けて従来よりは安い価格で購入できるため、動画に興味があるユーザーなら手に取ってみて欲しい1台だ。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/

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BB Watch:甲斐祐樹

2009/01/26 00:06
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