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【新製品レビュー】ニコン「D3X」

〜ついに姿を現した“高画素版D3”
Reported by 大浦タケシ

 ニコンD3の発表当時から噂が絶えなかったその高画素版が、2008年12月にリリースされた。名称はそれまでのニコンデジタル一眼レフの伝統に倣い「D3X」。フォーマットはいうまでもなくフルサイズ(FXフォーマット)で、有効画素数はD3の有効1,210万画素を倍以上となる有効2,450万画素となる。大手量販店における店頭価格は税込み89万8000円である。

 まずD3XとD3のボディフォルムはまったく同じだ。フォーマットサイズの異なるキヤノンEOS-1Ds Mark IIIとEOS-1D Mark IIIの場合、ペンタプリズムを被うトップカバーの形状がわずかに異なるが、D3XとD3は同じフォーマットサイズなのでそのようなこともない。ロゴを隠してしまうとD3XとD3を見極めることはまず不可能である。

 唯一重量に関してD3:1,240g→D3X:1,220gと20g軽くなっている。基板に設置していたA/D変換用のコンバータをイメージセンサー内部に収めてしまったためと、イメージセンサーの固定用部材を変更した結果からだという。ただし、この重量の差も元々の重さを考えれば、大きな違いというほどでもないだろう。余談だが、付属する幅広のストラップには「D3X」と誇らしげに記されている。

 機能面での違いも少なく、イメージセンサーのみといえる。もっともこれがD3Xで一番のキモであり、注目すべき点であることは述べるまでもない。


オーバー2,000万画素がもたらす圧倒的な解像度

 イメージセンサーのサイズは35.9×24mm、ソニー製のCMOSセンサーである。D3では自社製のCMOSセンサーであったが、既存のイメージセンサーを調達することでコストを抑え、ライバル(=EOS-1Ds Mark III)との価格的な競争力を維持したかったのだろう。画素数やA/D変換コンバータを内蔵することなどからソニーα900のものと同一のもののように思われるが、実際、ニコン用としてカスタマイズされたものである。

 ところで、D3XとD3との価格差はD700本体の価格以上の開きとなる。この価格差はイメージセンサーによるものが大きいことは火を見るよりも明らか。個人的にはEOS 5D Mark IIに対抗すべくD700クラスのカメラにもこのD3Xのイメージセンサーを搭載して欲しいところだが、現状のままでは難しいかもしれない。





 画素ピッチは5.9μm。D3の8.45μmよりも大幅にダウンサイジングしたものとなる。気になるのはダイナミックレンジと高ISO感度でのノイズレベルである。ピッチの大きいD3のようには期待できそうにないからだ。

 しかし、撮影した画像を確認した感じでは階調の再現性に不足を感じるようなことや、白トビや黒ツブレの発生が顕著であるようなことは皆無だ。ハイライトの階調は粘り強く、シャドーもディテールをしっかりと保持し続ける。デジタル一眼レフカメラとしては広いダイナミックレンジを誇り、滑らかな階調再現性はD3と何ら変わらないものといってよい。ノイズレベルにも影響することだが、これは集光率を高めることで画素がとり込める光の量を充分に確保したことと、画像処理コンセプトEXPEEDが上手く機能しているためと思われる。


ISOレンジは100〜1600まで、拡張機能によりLo1(ISO50)〜Hi2(ISO6400相当)まで選択が可能となる。高画素機ながら高感度域におけるノイズレベルは低く、D3に迫るものがある
 ISOレンジに関しては100〜1600まで、拡張機能によりISO50〜6400相当を可能としている。ちなみにD3はISO200〜6400、拡張機能によりISO100〜25600相当とさらに広いレンジを持つ。

 高ISO感度域におけるノイズレベルは、オーバー2,000万画素としては秀逸で、ISO1600までなら充分実用に値する。ノイズリダクションを「標準」に設定した場合、D3XのISO1600はD3のISO3200と同等。画素ピッチの違いの割にはノイズの差は少ないといってよい。

 また、同一に近いセンサーを積むα900とくらべた場合、D3XのISO1600がα900のISO800と同じノイズレベルで、D3Xが1段分秀でている。なお、ベース感度を見るとα900はISO200となる。D3XはISO100なので、ちょっと不思議に感じられるところだ。

 描写、特に精細感についてはあらためて述べるまでもないだろう。1,000万画素クラスでは見えていなかったものが、D3Xではくっきり見えてくる。作例中、山頂にカメラを向けたものがあるが、山頂にある国旗掲揚用のポールまで認識できたのは驚きであった。オーバー2,000万画素の中判デジタル一眼レフを初めて使ったときもそうであったように、パソコンのモニターで等倍表示するのが楽しい。A3ノビサイズ程度のプリントならオーバースペックというべき画素数であるが、データ量の増大にまつわる諸問題を考えなければ、いくつ画素数があってもいいと思えてしまうほどである。

 しかし、これほどまでの解像度となると、注意しなければならないのはブレとレンズの選択だ。しっかり構えて撮影したつもりでも、わずかなブレがシビアに描写に影響する。この画素数を活かすには、風景撮影や場合によってはポートレート撮影などでも、億劫がらずに堅牢な三脚にセットして撮影するのが基本的な作法といえる。ユーザーによってはライブビューを多用する機会も増えそうだ。

 レンズの光学解像度もしかりで、あえて古いレンズの描写を楽しむのでなければ、なるべく最新のしかもグレードの高いレンズを使用すべきである。本誌1月19日掲載の「“フルサイズデジタル一眼"を比較する(画質編)」には、D3Xと同一地点、ほぼ同一時間で撮影したα900、D700、EOS 5D Mark IIの画像を掲載している。ISO感度別作例とともに比較してみるとよいだろう。


ライブビューを機能させるには、まずレリーズモードダイヤルで選択。その後、シャッターボタンを押すとライブビューを開始する ライブビューのモードには従来どおり、位相差方式によるAFの手持ち撮影モードとコントラスト方式によるAFの三脚撮影モードを備える

手持ち撮影モード 三脚撮影モード

定評あるD3の機能と操作性を継承

 操作性は何らD3と変わるところがない。カメラ機能が主体となる設定はカメラ上部に、デジタルおよび再生が主体となる設定はカメラ背面部に集約され、分かりやすくかつ使いやすい。マルチセレクターの動きはD300などのものとは異なり節度あるもので、こちらも使い勝手はよい。

 ファインダーにしても同様で、ピントの山が把握しやすく適度な明るさを確保している。視野率は100%、倍率は0.7倍。ただし、ファインダーに格子を表示させるには、D3も同様だが、専用のスクリーンに交換するタイプとなる。D700やD300などのようにスクリーンを交換せずに済む液晶表示タイプでないのは残念なところである。AFはクロスセンサー15点を含む51点測距のマルチCAM3500FX。こちらもD3と共通している。

 D3との数少ない相違点のひとつとして、連写性能が挙げられる。D3XはFXフォーマット時で最高5コマ/秒と、D3の9コマ/秒よりもダウンする。しかし画素数を考えれば、よく頑張った数字といえるだろう。連続撮影ではD3には及ばないものの、比較的キレのよい撮影が可能だ。また、CIPA基準準拠による撮影可能コマ数は、D3の4,300コマから4,400コマに向上している。


ファインダー視野率はいうまでもなく100%。倍率も0.7倍を確保している。アイピースは開口部が大きく見やすい。高級機の証、アイピースシャッターを備える バッテリーにはD3と同じくリチウムイオン充電池EN-EL4aを使用。CIPA準拠でD3よりも100コマ多い4,400コマの撮影を可能にしている

メモリーカードスロットはCF用がダブルで備わる。JPEGとRAWの振り分け記録や2枚同時記録が可能。CFとSDメモリーカードのダブルスロットより使いやすいことが多い ファンクション(Fn)ボタンには、AEロックや測光モードなど使用頻度の高い機能をカスタムメニューで割り当ることができる。上にあるボタンはプレビュー用

 D3になかった機能としては、アクティブD-ライティングに従来の「強め」、「標準」、「弱め」に加え、「オート」と「より強め」が備わり選択肢が広がった。どちらかといえば穏やかな効きの同機能だが、使用頻度の高いユーザーにはうれしい配慮である。

 D3にも搭載されているが、倍率色収差軽減機能とヴィネットコントロール機能にも注目したい。どちらの機能も古いニッコールレンズ(Ai、Ai改、シリーズE以降)の装着を可能とし、しかもオーバー2,000万画素のフルサイズであるD3Xにこそ必要な機能といえる。特に倍率色収差軽減機能の効果は高い。一方のヴィネットコントロールは、強い補正効果が得にくいものの、アクティブD-ライティングとともに自然な感じの描写が得られる。


アクティブD-ライティングには新たに「オート」と「より強め」が備わり選択肢が広がった。デフォルトは「オート」で被写体の状況により最適な効果をえることができる 周辺光量不足を解消するヴィネットコントロールはD3Xのようなマウント口径の小さいフルサイズ機には必須ともいえる機能だ。「強め」、「標準」、「弱め」からチョイスできる

ピクチャーコントロールに用意された仕上り設定はD3と同じく4種類となる。それぞれは輪郭強調(シャープネス)やコントラストなど好みに応じて微調整を行なうことが可能だ


情報表示ボタンを押すと、液晶モニターに露出や撮影可能コマ数など撮影に関する情報が表示される。周囲の明るさに応じて、明るい場所で見やすい黒文字表示と、明るさを抑え暗い場所で見やすい白文字表示に自動的に切り換わる


D3に搭載されていた水準器はD3Xにも継承される。ライブビュー時にも機能するので風景撮影などでは重宝する

まとめ

 完璧に思われるD3Xだが、唯一不満なのがイメージセンサーに対するゴミ除去機能を搭載していないこと。D3にも搭載されていないが、その後リリースされた同じフルサイズ機であるD700にはしっかり採用されているからだ。同機能が画質に何らかの影響があるのであればD700にも搭載されないはずだし、キヤノンやソニーのフルサイズ機にはとっくに搭載されている。高画素機といえども環境の整ったスタジオのような場所だけでなく、埃の舞うような場所で撮影やレンズ交換をしなければならないこともあるわけだから、考えて欲しかったところである。

 D3の登場以来、いつかは出るとまことしやかに言われ続けてきたフルサイズ高画素機。ついに我々の前に姿を現したD3Xは、D3の優れたスペックを継承する堅牢なボディに有効2,450万画素CMOSセンサーを搭載し、完成度の高いカメラに仕上がっている。これまでプロユースに耐えるオーバー2,000万画素といえばEOS-1Ds Mark IIIか中判デジタルで、ニコンは指をくわえて見ていなければならなかったが、D3Xの登場で同じ土俵に上がれるようになった。同時にニコンデジタル一眼レフのラインアップは、強力で隙のないものとなったといってよいだろう。高価であるがゆえに、その頂点に立つこのカメラを手にできるユーザーを羨ましく思う。


 

●作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 一部の作例はα900、D700、EOS 5D Mark IIを比較した「“フルサイズデジタル一眼"を比較する(画質編)」と同一ポジションからのカットになります。あわせてご参照ください。


ISO感度

※共通データ:D3X / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約8.5〜16.1MB / 4,032×6,048 / 2〜1/60秒 / F8 / -0.3EV / WB:オート / 24mm

・ノイズリダクション:「しない」


ISO50(拡張設定) ISO100 ISO200

ISO400 ISO800 ISO1600

ISO3200(拡張設定) ISO6400(拡張設定)


・ノイズリダクション:「弱め」


ISO50(拡張設定) ISO100 ISO200

ISO400 ISO800 ISO1600

ISO3200(拡張設定) ISO6400(拡張設定)


・ノイズリダクション:「標準」


ISO50(拡張設定) ISO100 ISO200

ISO400 ISO800 ISO1600

ISO3200(拡張設定) ISO6400(拡張設定)


・ノイズリダクション:「強め」


ISO50(拡張設定) ISO100 ISO200

ISO400 ISO800 ISO1600

ISO3200(拡張設定) ISO6400(拡張設定)

ピクチャーコントロール

※共通データ:D3X / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約11.2〜16.6MB / 6,048×4,032 / 1/500秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 34mm


スタンダード ニュートラル

ビビッド モノクローム

アクティブD-ライティング

※共通データ:D3X / AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8 G ED / 約12.8〜14.4MB / 6,048×4,032 / 1/200〜1/400秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 24mm


しない オート 弱め

標準 強め より強め

ヴィネットコントロール

※共通データ:D3X / AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8 G ED / 約9.5〜10.2MB / 6,048×4,032 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 14mm


しない 弱め

標準 強め

自由作例

D3X / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約13.5MB / 6,048×4,032 / 1/20秒 / F8 / -1.3EV / ISO100 / WB:オート / 70mm D3X / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約16.4MB / 4,032×6,048 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 70mm

D3X / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約19.7MB / 4,032×6,048 / 1/6秒 / F11 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 34mm D3X / AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8 G ED / 約14.3MB / 4,032×6,048 / 1/60秒 / F4 / -0.7EV / ISO1600 / WB:オート / 19mm

D3X / AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8 G ED / 約13.0MB / 6,048×4,032 / 1/200秒 / F7.1 / +0.7EV / ISO1600 / WB:オート / 24mm D3X / AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8 G ED / 約9.9MB / 4,032×6,048 / 1/50秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO / WB:オート / 15mm

D3X / AF-S NIKKOR 50mm F1.4 G / 約7.4MB / 4,032×6,048 / 1/125秒 / F2 / -0.3EV / ISO1600 / WB:オート / 50mm D3X / AF-S NIKKOR 50mm F1.4 G / 約9.4MB / 4,032×6,048 / 1/60秒 / F2 / -0.7EV / ISO1600 / WB:オート / 50mm

D3X / AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8 G ED / 約9.1MB / 6,048×4,032 / 1/320秒 / F9 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm D3X / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約19.5MB / 6,048×4,032 / 1/400秒 / F5.6 / -1.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 70mm

D3X / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約14.6MB / 4,032×6,048 / 1/1,600秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 42mm D3X / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約14.5MB / 4,032×6,048 / 1/640秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 26mm

D3X / AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8 G ED / 約13.0MB / 4,032×6,048 / 1/60秒 / F4 / +1EV / ISO400 / WB:オート / 22mm D3X / AF-S NIKKOR 50mm F1.4 G / 約19.7MB / 4,032×6,048 / 1/200秒 / F4 / -1EV / ISO100 / WB:オート / 50mm

D3X / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約11.6MB / 6,048×4,032 / 1/320秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 70mm

※作例撮影協力:ss:宮里陽太、b:稲元一嗣、p:HARUMI



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/slr/digital/d3x/
  ニコンD3X関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/12/06/9744.html



大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2009/01/22 00:09
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