デジカメ Watch

“フルサイズデジタル一眼"を比較する(画質編)

Reported by 大浦タケシ


 1月4日掲載の機能編に続き、今回は画質編をお送りする。フルサイズのイメージセンサーはAPS-Cサイズの2倍以上の面積を有する。それゆえ、画素そのものの大きさや画素数など圧倒的に有利で、レンズ本来の画角が掛け値なしにそのまま活かせることとともにフルサイズのメリットとなっている。

 ちなみに3機種それぞれのイメージセンサーは、キヤノンEOS 5D Mark IIが36.0×24.0mm/有効2,110万画素CMOS、ソニーα900が35.9×24.0mm/有効2,460万画素CMOS、ニコンD700が36.0×23.9mm/有効1,210万画素CMOSとなっている。


α900 D700 EOS 5D Mark II

ダイナミックレンジ拡大機能

 3機種とも、いわゆる「ダイナミックレンジ拡大機能」が搭載されている。具体的には、α900が「Dレンジオプティマイザー」、D700が「アクティブD-ライティング」、EOS 5D Mark IIは「オートライティングオプティマイザ」と「高輝度側・階調優先」。いずれの機能もカメラに搭載されるようになったのは比較的新しい。

 α900のDレンジオプティマイザーは白トビを抑え黒ツブレてしまうようなところを明るく補正する。効果の程度は細かく選択することが可能で、「スタンダード」、「アドンバンスオート」のほか、5段階から任意で効果の度合いの選べる「アドバンスレベル設定」がある。

 D700のアクティブD-ライティングはα900のDレンジオプティマイザーと同じで、黒ツブレや白トビの発生するようなコントラストの強い撮影状況下でも見た目に近いイメージに再現する。効果は「オート」、「強め」、「標準」、「弱め」となる。

 EOS 5D Mark IIのオートライティングオプティマイザは暗く写った被写体を適切な明るさとコントラストになるよう調整し、高輝度側・階調優先はハイライトで発生する白トビを露出にして約1段分抑えるものである。オートライティングオプティマイザのみ効果を「標準」、「弱め」、「強め」から選択できる。


α900(Dレンジオプティマイザー) D700(ピクチャーコントロール)

EOS 5D Mark II(高輝度側・階調優先) EOS 5D Mark II(オートライティングオプティマイザ)

 一番効果の高いのがα900のDレンジオプティマイザーだろう。同機能をオフにしたコントラストのある画像と見くらべると、最大の補正量となる「レベル補正5」ではフラットな感じで不自然なほどである。

 今回撮影したシーンでナチュラルな仕上りに感じたのは「スタンダード」。無理して補正を行なっていない分、違和感がなく常用できるといってよい。見た目も自然で、このような機能を他社に先駆けて搭載したメーカーのものだけある。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 使用レンズは、α900=Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM、D700=AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED、EOS 5D Mark II=EF 24-70mm F2.8 L USMです。


    ●α900(Dレンジオプティマイザー)


    オフ スタンダード アドバンスオート

    アドバンスレベル1 アドバンスレベル2 アドバンスレベル3

    アドバンスレベル4 アドバンスレベル5


 D700のアクティブD-ライティングの効果は、ほかの2機種のものに比べはるかに穏やか。強い効果を期待するユーザーもいるかとは思うが、オフで撮影した画像と印象が大きく異なることがないので、むしろ安心して使えるといってよいものである。


    ●D700(アクティブD-ライティング)


    オフ オート 弱め

    標準 強め


 オートライティングオプティマイザと高輝度側・階調優先の2つを持つEOS 5D Mark IIは、高輝度側・階調優先をオフにした場合とオンにした場合とで撮りくらべてみた。オンにした場合では、α900のDレンジオプティマイザーやD700のアクティブD-ライティングと同様、白トビも黒ツブレも抑えることができると思ったからだ。

 高輝度側・階調優先をオフにしたものでは、オートライティングオプティマイザの「標準」、「弱め」、「強め」とも相当の結果が得られ効果も上々。しかしながら、高輝度側・階調優先をオンにしたものは、予想を大きく裏切るもので、オートライティングオプティマイザの効果がほとんど反映されないものであった。撮影したシーンがよくなかったのかも知れないが、期待していただけにちょっと残念。同時にどちらの効果も得られることができれば、使い勝手がよいと思うのは私ばかりではないはずだ。


    ●EOS 5D Mark II(オートライティングオプティマイザ)―高輝度側・階調優先オフ


    オフ 弱め 標準

    強め
    ●EOS 5D Mark II(オートライティングオプティマイザ)―高輝度側・階調優先オン


    オフ 弱め 標準

    強め


仕上がり設定

 仕上がりをコントロールする機能、いわゆる仕上がり設定は、3機種とも各社それぞれの設定に準じたものを搭載する。


α900(クリエイティブスタイル) D700(ピクチャーコントロール) EOS 5D Mark II(ピクチャースタイル)

 α900は「クリエイティブスタイル」。選択できるのは「スタンダード」、「ビビッド」、「ニュートラル」、「クリア」、「ディープ」、「ライト」、「ポートレート」、「風景」、「夕景」、「夜景」、「紅葉」、「モノクロ」、「セピア」と13種類も搭載する。シーンによってはどれを選択したらよいか悩んでしまいそうだ。それぞれコントラスト、彩度、シャープネスなどの微調整が可能で、より自分好みの仕上りに設定することができる。カスタムファンクションボタンを使い、クリエイティブスタイルの変更を行なうことも可能としている。

 D700は「ピクチャーコントロール」。各セットの内容は「スタンダード」、「ニュートラル」、「ビビッド」、「モノクローム」となる。ほかの2機種と同様、輪郭強調、コントラスト、明るさ、色の濃さ、色あいの5つのパラメータが微調整できるほか(モノクロームは輪郭強調、フィルター効果、調色となる)、クイック調整では+側に設定するとピクチャーコントロールの特徴が強調され、−側では特徴を抑えた仕上りが得られる。13種類も備えるα900とは反対に仕上りは4つとたいへんシンプルだが、その分割り切って選択できるので、これはこれで不足を感じるものはないといえる。

 EOS 5D Mark IIは「ピクチャースタイル」。スタイルとして「スタンダード」、「ポートレート」、「風景」、「ニュートラル」、「忠実設定」、「モノクロ」の6つを搭載する。それぞれは、さらにシャープネス、コントラスト、色の濃さ(「モノクロ」ではフィルター効果)、色あい(「モノクロ」では調色)の各パラメータを好みに応じて調整することもできる。また、別途備わる「ユーザー設定」から調整を行なえば、あらかじめ用意されたスタイルとは別に保存しておくことも可能である。カメラ背面にはピクチャースタイル選択ボタンを備えており、メニューから入ることなく素早い設定を可能にしており、便利である。


    数で述べるなら13種類もあるα900の「クリエイティブスタイル」が群を抜く。ほかの2機種をはるかに凌ぎ、ユーザーによっては迷うこともありそうだ。

    3機種それぞれの「スタンダード」での比較では、D700はより鮮やかでコクのある色調となる。特に緑系と赤系の色にその傾向が強く、いわゆるパッと見を重視した絵づくりである。EOS 5D Mark IIは緑色を中心にやや色褪せた感じ。風景など色調のメリハリを必要とするような撮影では物足りなく感じそうだ。α900はその中間といったところで、色にコクがあり特に青系の色が強めに表現される絵づくりとなる。万人受けがよいように感じるのはD700の仕上りといえるだろう。

    ●α900(クリエイティブスタイル)


    スタンダード ビビッド ニュートラル

    クリア ディープ ライト

    ポートレート 風景 夕景

    夜景 紅葉 白黒

    セピア
    ●D700(ピクチャーコントロール)


    スタンダード ニュートラル ビビッド

    モノクローム
    ●EOS 5D Mark II(ピクチャースタイル)


    スタンダード ポートレート 風景

    ニュートラル 忠実設定 モノクロ


高感度

 ノイズの発生は簡単に見極めることができるので、描写のなかでも気になる現象のひとつだ。特に高ISO感度でのノイズの発生は避けることのできないものだが、これら3機種ではどうだろう。

 まず、それぞれの最高感度は、α900がISO3200(拡張機能によりISO6400相当まで)、D700がISO6400(拡張機能によりISO25600相当まで)、EOS 5D Mark IIがISO6400となる。ちょっと前までデジタル一眼レフの一般的な最高感度がISO1600だったのが、現在ではISO6400があたり前となっているのは今さらながら驚きだ。参考までにベース感度はEOS 5D Mark IIがISO100、α900とD700がISO200(どちらも拡張機能によりISO100に設定可能)となる。

 3機種とも高感度時におけるノイズリダクションを搭載しており、それぞれノイズ低減効果の強さをできる。いずれもメニューでの並び方こそ異なるが、使用するISO感度や好みなどから「標準」、「強め(強)」、「弱め(弱)」の3つから設定可能。ノイズリダクションを使用するとディテールが損なわれることも多いので、効果の度合いが選べるのは具合がよい。ISO比較の作例では3機種ともノイズリダクションは「標準」で撮影を行なっている。

 ノイズレベルは、ISO3200までならD700とEOS 5D Mark IIはよい勝負だ。ただし、ディテールの描写はD700のほうが一歩上手。立体感もよく出ている。ISO6400となるとD700のノイズレベルは依然低いものだが、EOS 5D Mark IIはISO3200のノイズレスが嘘のように思えるくらいノイジーだ。

 一方α900はノイズでは苦しい。ISO800の場合、ほかの2機種のISO1600と同程度。ISO1600ではEOS 5D Mark IIのISO3200よりもノイズが浮き立っているほど。当初ノイズリダクションの設定間違いかと思ってしまったほどである。残念ではあるが、ほかの2機種と比較した場合α900にはノイズの点でもう少し頑張って欲しく感じた。


    ISOレンジの広さおよびノイズの少なさではD700が圧倒的。ノイズレベルではISO6400までなら充分実用レベルといって差し支えないものである。ベース感度であるISO200と拡張機能のL1.0(ISO100)と比較した場合、L1.0はダイナミックレンジが狭く、特にハイライト部のディテールが飛び気味だ。

    EOS 5D Mark IIはノイズレベルでならISO3200までD700とよい勝負。ノイズリダクションが効いているとは思われるが、ディテールも損なわれている様子はない。ISO6400となるとさすがに厳しくノイズの浮きが顕著となる。

    高感度域におけるα900のノイズレベルは、ほかの2機種と比較してしまうとちょっと厳しい。しかしながら、これまでのデジタル一眼レフとの比較では充分に対抗できるものである。ベース感度ISO200と拡張機能ISO100との比較では、D700の場合と異なり、ISO100でもハイライトが飛んでしまうようなことが無い。むしろISO200よりもダイナミックレンジが広く階調も豊か。ISO100がベース感度でないのが不思議なくらいである。

    ●α900(ISO感度)


    ISO100(拡張設定) ISO200 ISO400

    ISO800 ISO1600 ISO3200

    ISO6400(拡張設定)
    ●D700(ISO感度)


    ISO100(拡張設定) ISO200 ISO400

    ISO800 ISO1600 ISO3200

    ISO6400 ISO12800(拡張設定) ISO25600(拡張設定)
    ●EOS 5D Mark II(ISO感度)


    ISO50(拡張設定) ISO100 ISO200

    ISO400 ISO800 ISO1600

    ISO3200 ISO6400 ISO12800(拡張設定)

    ISO25600(拡張設定)


遠景

 描写ついてはカメラ本来の性能以外にパラメータの設定やレンズなど様々なファクターが加わってくるので一概に言い切れないところも多いが、カメラの設定を基本的に同一条件として撮影してみた。

 精細感が高いのはいうまでもなくα900。さすが有効2,460万画素だけある。山の写真では遠くの森の木々を、渓谷や滝の写真では岩の細かなディテールをしっかり描写する。絵づくりにメリハリもあって立体感のある画像となっている。

 EOS 5D Mark IIもα900に負けず劣らずの描写である。こちらもディテールの再現性は文句ないもの。絵づくりは他の2機種にくらべてやや緑系の色の再現性が地味に感じるが、概ね良好だ。

 α900もEOS 5D Mark IIもその画素数からブレが描写に大きく影響する。作例の撮影ではジッツオ製の重量級のものを用意したが、なるべく三脚を活用するのがオーバー2,000万画素の使い方のキモといえるだろう。

 画素数が他の2機種の約半分近いD700は、精細感では苦しいものの、画素数を考慮すれば文句のないもの。倍率色収差軽減機能の効果も高く、周辺部の画像もしまった描写である。A2ノビサイズまでのプリントであれば、この画素数でもまったく問題はないといえる。むしろ、オーバー2,000万画素が本当に必要なのかという疑問すらも湧いてしまうほど。決して痩せ我慢でなく、1,210万画素で充分と胸の張れる描写といえる。


    画素数の違いはあるものの3機種とも精細感のある描写だ。山や滝の画像では水蒸気の影響を受けながらも木々の1本1本を、渓流の画像では岩の質感など緻密に描写している。

    仕上り設定に関してはいずれもデフォルトの「スタンダード」に設定しているが、仕上りの比較作例のキャプションで述べているように、よりパッと見を重視したD700が緑の鮮やかさなど群を抜き、それに迫るのがα900、やや大人しめの絵づくりとなっているのがEOS 5D Mark IIとなる。

    ●α900



    ●D700



    ●EOS 5D Mark II




そのほか

 D700には「倍率色収差低減機能」と周辺光量の低下を補う「ヴィネットコントロール機能」を搭載する。倍率色収差低減機能の効果は高く、しかもどのレンズにも対応する。オン/オフ切り換えスイッチなどは搭載されていないものの、その必要性を感じないほど実用的な機能である。ヴィネットコントロールは穏やかな効きではあるが、その分自然な感じに仕上がる。レンズの特性に応じ「強め」、「標準」、「弱め」から選択が可能だ。マウント径が小さい上にAi以降の古いレンズが使えるD700にとって倍率色収差低減機能とヴィネットコントロール機能の搭載は必然といえるものである。


D700のヴィネットコントロール

EOS 5D Mark IIの周辺光量補正

 EOS 5D Mark IIにも周辺光量の低下をカバーする「周辺光量補正」が搭載されている。こちらは装着した個々のレンズの特性に合わせた補正を行なう。効果の程度はD700のヴィネットコントロールよりも数段強め。補正データは25本分が搭載されているが、付属するソフトEOS Utilityで自由に変更することが可能なのは便利だ。


まとめ

 機能編と同様、3機種の性能は拮抗している。それぞれの特徴を総まとめしてみよう。

 α900は充実のDレンジオプティマイザーと多彩なクリエイティブスタイルでユーザーは、まさに自分好みの画像を得ることができる。高感度域のノイズレベルはほかの2機種と比較するとわずかに高いものの、これまでのデジタル一眼レフと同等といえるものなので安心してよいだろう。高性能な光学ファインダーの搭載とともに、カールツァイスのレンズが用意されているのもこのカメラの魅力といえる。

 D700は画素数こそほかの2機種よりも少ないが、実用として考えるなら充分以上。倍率色収差低減機能とヴィネットコントロール機能を備え、ちょっと古いニッコールレンズを使いたいユーザーは重宝するはずだ。ノイズレベルは兄弟機であるD3 と同様圧倒的な低さを誇るほか、ピクチャーコントロールはシンプルだがその分単純明快で分かりやすい。3機種のなかで最も重く大柄なボディであるが、そのうえ質なつくりは往年のニコンファンなら納得できるものである。

 EOS 5D Mark IIのノイズレベルはオーバー2,000万画素ながらISO3200までならD700に迫るものがあり、画像の精細感も高い。ピクチャースタイルも比較的シンプルで選択しやすいものだ。総合的にはメカ的な面白さやマニアックな部分は少ないが、得られる画像やシンプルで直感的な部分の多い操作性から安心して使えるカメラだといえる。

 昨年後半にリリースされたミドルレンジフルサイズ機3機種を機能編と画質編、2回に分けて比べてみた。基本的には3機種ともそれぞれのメーカーの威信とプライドをかけたカメラだけあって、非常に完成度の高い仕上りである。実際に使用していても、多少の性能や機能の違いはあるものの、どのカメラでも価格やクラスに見合った実力を備えており、不足を感じるようなことはいずれもほとんどなかった。何度も記するようだが、実に甲乙付けがたい3機種といってよいだろう。



URL
  “フルサイズデジタル一眼”を比較する(機能編)
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/review/2009/01/05/9921.html
  キヤノンEOS 5D Mark II関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/10/07/9241.html
  ソニーα900関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/09/18/9194.html
  ニコンD700関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/07/03/8783.html



大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2009/01/19 00:04
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