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【新製品レビュー】アップル「Aperture 2」

~処理速度を改善、使いやすくなったRAW管理ソフト
Reported by 北村 智史

テスト用に借りた新型の17型MacBook Pro(2.5GHzのCore 2Duoと2GBメモリ)。速い上に画面が広くて幸せ。もちろんAperture 2も快適に動作する
 画像の取り込みからプリントなどの出力までの、撮影後の作業全般を1本でカバーできるソフトウェア。Ver.2.0からはインターフェイスの刷新、処理の高速化、新RAWデコード(乱暴に言えば現像エンジンである)の搭載など、100項目を超える改良がほどこされている。

 価格はPhotoshop Lightroom対抗の意味合いもあってか、2万3,800円にダウン。旧バージョンからのアップグレードは1万1,800円。対応OSはMac OS X 10.4.11以降だが、すべての機能を使うには最新の10.5.2が必要だ。


インターフェイスを一新、動作も高速化

 起動して一番に目に付くのは、従来は画面左側に「プロジェクト」、右側に「メタデータ」と「調整」のパネルがあったのが、3つが一体になったところ。名称を「インスペクタ」という。デフォルトでは左側に表示されるが、右側にも移動できる。

 従来は作業スペースを広げるためにフルスクリーン表示にしていると、調整パネルしか表示できなかった。露出を変えて撮った中から「プラス0.3段補正したヤツはどれだっけ?」などというとき、いちいちフルスクリーンモードから抜けなくてはならなかったが、Ver. 2.0ではそういう不便が解消されている。


従来は画面の左右にわかれて表示されていた「プロジェクト」と「調整」、「メタデータ」が一体型の「インスペクタ」に変更された。デフォルトでは左端にあるが、個人的好みで右側に移動
「インスペクタ」の「メタデータ」パネル。「レンズモデル」の欄に使用したレンズの名前が表示されるようになった


「インスペクタ」の「調整」パネル。ヒストグラムの下に撮影データが表示できるようになった

こちらはVer.1.5.6の画面。パネルが左右に分かれていたのがわかる

 また、ビュアー+ブラウザ表示(1枚+サムネイル表示)のときに、新しくフィルムストリップモードが追加された。従来は、グリッド表示またはリスト表示だけで、使い勝手もいまいちな感じがしていたのが、一般的なフィルムストリップ表示なら、ほかのソフトと使いわけるときにも違和感が少なくていいと思う。

 それから、ブラウザ画面から画像をダブルクリックしたときの動作を環境設定で選べるようになったこともある。従来どおりビュアー表示に切り替えることもできるし、フルスクリーン表示に切り替えることも可能。Ver.1.5でもFキーでフルスクリーン表示に切り替えられたので(もちろん、今でもできるけど)、それほど大きな改良とは言えないが、マウス操作が中心のユーザーにはメリットがあるはずだ。


「環境設定」で画像をダブルクリックしたときにビュアーに表示するか、フルスクリーン表示に切り替えるかを選べるようになった フルスクリーン表示でのHUD(ヘッズアップディスプレイ)も3つが一体型。フルスクリーン表示のままで撮影データをチェックしたり、ほかのプロジェクトに切り替えることも可能だ

ビュアー+ブラウザ表示でのブラウザ部分の表示モードに、新しく加わったフィルムストリップモード。わりと一般的な表示方法なので、こちらのほうが馴染みやすいと思う


 処理速度の向上に一役買っているのが新機能のクイックプレビュー。RAW画像に埋め込まれたJPEGプレビューを利用するものだ。通常、ApertureはRAW画像からプレビュー画像を作成して表示するので、読み込んだばかりの画像を表示するのに5~6秒かかる。それがクイックプレビューをオンにすると、待ち時間が半分から1/3くらいになる。読み込んだ画像をざっくり眺めて粗選びしたいときなどには便利だろう。

 ただし、RAW画像の仕様によっては埋め込まれたJPEGプレビューのサイズが小さくて、ジャギジャギの画しか見られないこともあるが、その場合でもいったんAperture 2がプレビューを作成してしまえばちゃんとした画像が見られるようになる。


新機能の「クイックプレビュー」をオンにした状態。RAWに埋め込まれたJPEGプレビューを表示するので高速。パネル上の「クリックプレビュー」の文字はご愛嬌である

こちらは通常モードでの表示。「クイックプレビュー」とは若干色味が違って見える


新しいRAW現像エンジンを採用

 画質面ではRAWデコードエンジンが2.0にスペックアップ。と言っても、1.0から1.1に変わったときのような劇的な違いはないように思う。ただ、Ver.1.5よりも白トビが少なくなっているのは注目のポイントだ。同じ画像をRAWデコードを変えて比べてみると、2.0のほうが明らかに白トビが少なくなる。

 さらに、新機能の「復旧」を使うと、白トビ部分のトーンを回復できる。これはRAW画像の中に残っている、通常は使われていない情報を利用して白トビ部分のトーンを引き出すもの。ほかのメーカーのソフトにも同様の機能は装備されているが、Apertureのは白トビ部分以外への影響がかなり少ない感じ。白トビを直したあとでほかの部分の調整をやらなくてもいいのはラクチンだ。

 ほかにも、部分的にコントラストを上げてシャープ感を高める「精細度」、人肌のトーンに影響を与えずに彩度を上げられる「バイブランス」など、新機能は盛りだくさんすぎて、あげていくとキリがなくなってしまう。

 個人的に便利だなと思ったのは、調整中にスライダーをダブルクリックすると、その項目を初期値に戻してくれる機能。あれこれいじって悩んだあげくに「一度リセットしてやり直そうか」というときに役立ってくれる。

 それから、レタッチ系の機能も強化されている。リペアブラシで「エッジを検出」をオンにしておくと、アバウトになぞるだけで消したい部分だけ消してくれる(完璧ではないけど)。範囲選択をしなくてもいいので、非常に効率よく修正作業ができる。


同じ画像で比較。RAWデコード2.0を適用

こちらは従来と同じRAWデコード1.1

ホワイトバランスだけちょっぴりいじった状態 赤い部分が白トビ、青い部分が黒ツブレの部分

「復旧」スライダーを動かすと、白トビ部分が減っていく
ハイライト部分以外にはほとんど影響がないのがいいところ

レビュー用のブツ撮り画像である。紙媒体だと「キリヌキで」と指示するだけでいいが、Web媒体だとアクリルキューブを消したりしないといけない
リペアブラシで「エッジを検出」をオンにしておいて、ささっとなぞるだけ


消しちゃいけないエッジはきちんと残しつつ、いらない部分を消してくれる こういう作業は普段はPhotoshopで範囲選択し、エッジをぼかしてスタンプツールでちまちま修正していたのだが、Aperture 2ならすごくラクチン

PCからカメラ撮影を操作する「テザー」

 おもしろいのは、キーボードの種類を選べるところ。これによって、一部のショートカットキーがややこしいことになっていたのが解消されている。

 例えばルーペの表示、非表示の切り替えは、Ver.1.5では「@」で、JISキーボードではひとつのキーで操作できるが、英語キーボードでは「Shift+2」になってしまって面倒くさかった。それがVer.2.0ではキーボードを英語に切り替えることで、ショートカットキーを「`」(英語キーボードでは「esc」キーのすぐ下にある)に変えられる。ひとつのキーだけで操作できる上に、キーの場所もわかりやすくて便利である。どうせなら、キーボードの種類を自動で認識して勝手に切り替えてくれればいいのにという気もしないではないが、切り替えられないよりはずっといい。

 もうひとつ、こちらはまだまだこれからの機能だが、テザーというのがある(動物などを縄や鎖でつなぐという意味らしい)。USBなどのケーブルでカメラとつないで撮影できる機能だ。

 と言っても、現状では対応カメラはキヤノンとニコンしかない上に、できることもシャッターを切ることくらいなので、それほど使い道はないが、撮った画像をダイレクトにApertureに読み込めるので、Macの近くで小物を撮ったりするときには便利だ(もちろん、プロがスタジオで撮影するときにも)。


Aperture→コマンド→デフォルトでキーボードの種類を選択できる

ルーペのショートカットキーは「@」キーだが、英語キーボードでは「Shift+2」で面倒だった。が、英語キーボードに切り替えると「`」キーに変わる


キーボードショートカットを編集できる「コマンドエディタ」。使用頻度の高い機能に好みのショートカットを割り当てられる
以前から検索関連の機能は強力だったが、今回のバージョンアップでスピードもアップ


新機能の「テザー」はケーブルでつないだカメラで撮った画像を直接Apertureに取り込める機能

専用のHUDを表示したところ。今のところ「取り込む」ボタンでシャッターを切るくらいしか機能はない


まとめ

 一番の泣き所は、新機種への対応の問題とハードへの要求の高さ。OSに依存する部分の多いソフトなので、新機種への対応はどうしても遅れがちになってしまう。Ver. 2.0ではニコンのD3やD300、オリンパスE-3に対応した一方、パナソニックLUMIX DMC-L10は見送り。ほかにも、エプソンR-D1やシグマSD14、オリンパスCAMEDIA SP-560UZ、キヤノンPowerShot Pro 90 ISのRAWはエラーが出て読み込めない、または読み込みはするが未対応と表示された。これらはPhotoshop Lightroomは対応してくれている。

 推奨システム構成が、「2GHz以上のIntel Core DuoまたはデュアルPowerPC G5プロセッサを搭載したMac」で「2GBのシステムメモリ(RAM)」だから、ちょっと古い機種だとしんどいことになってしまう。前にも書いたが、iBook G4なんかはインストールの段階で拒否されてしまう。

 そのあたりを考えると微妙な気分になってしまうが、今回のバージョンアップで全体的な処理速度が上がったこともあって、自宅のPowerMac G5(2GHzのデュアルコア。メモリは4.5GB)でもそこそこ使えそうな雰囲気になってきた。評価用にとお借りした最新の17型MacBook Pro(2.5GHzのCore 2Duoと2GBメモリ搭載)はさすがに快適だったけれど、ストレスなしで使えるようにするには、相応の投資が必要なのは頭の痛いところである。

 とは言え、もともとセレクト作業やファイル管理、検索関連の機能は充実しているし、気になっていた処理速度も改善されたし、インターフェイスも変わり、全体的に使い勝手がよくなったと思う。同社のWebサイトから、全機能が30日間試用できるフリートライアル版がダウンロードできるので、システム条件に引っかからないMacユーザーは一度試してみることをおすすめする。


現像結果


 RAWデコードがVer.1.5までの1.1からスペックアップ。ハイライトの白トビが格段に少なくなっているのがわかる


RAWデコード2.0での現像結果(リンク先2,600×3,884ピクセル)

RAWデコード1.1での現像結果(リンク先2,600×3,884ピクセル)


オリジナルのJPEG画像。ピクチャースタイルが「風景」なので、空の青がかなりあざとい(リンク先3,888×2,588ピクセル)

ホワイトバランス以外はノーマル現像した画像。オリジナルのJPEGよりも若干白トビは多めに見える(リンク先3,888×2,588ピクセル)


「復旧」スライダーを「1.0」にして現像した画像。オリジナルのJPEGよりも白トビが減っている(リンク先3,888×2,588ピクセル)


URL
  アップル
  http://www.apple.com/jp/
  製品情報
  http://www.apple.com/jp/aperture/

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北村 智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2008/03/25 00:01
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