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【新製品レビュー】パナソニック「LUMIX DMC-FZ18」

~「おまかせiA」と光学18倍ズームの相乗効果は?
Reported by 飯塚直

 パナソニックの「LUMIX DMC-FZ18」(以下、FZ18)は、35mm判換算で広角28mmから望遠504mmの手ブレ補正付き光学18倍ズームをレンズを搭載するコンパクトデジタルカメラだ。発売は8月25日、実勢価格は4万8,000円前後。

 前モデル「LUMIX DMC-FZ8」(以下FZ8)の36~432mm相当を広角・望遠側ともに拡張。特に広角側が流行の28mm相当に達したのが大きい。さらに顔認識機能を含む「おまかせiA」を搭載するなど、機能強化が図られている。

 ボディデザインはFZ8と同等。分類としては「コンパクト」なのだが、幅117.5mm、奥行き88.2mm、高さ75.3mmともなると、ややゴツい印象を受ける。持ち運びやすさも購入の目安となるだけに、この大きさを受け入れられるかがポイントとなりそうだ。





28mmからの18倍ズームレンズを搭載

 1,000万画素オーバーの製品が各社から続々と発売されている中、FZ18の有効画素は810万画素。前モデル「LUMIX DMC-FZ8」の有効720万画素から考えるとスペックアップしているものの、他メーカーの同ジャンルの製品を考慮すると、少々見劣りするかもしれない。とはいえ、トリミングせずA4プリントにするなら必要十分。用途にもよるが、ことさら高画素である必要はないだろう。

 高画素化にもメリットはある。特に、望遠側の性能が求められがちなFZ18のような高倍率ズーム機だと、デジタルズームやEX光学ズームの使い勝手が良くなる点が挙げられる。デジタルズームはご存知の通り、画像の中央を切り出し、画素を水増しして出力する機能。どれだけ画角を狭めるか、どれだけ水増しするかはメーカーや機種にもよって違うが、一般的には元の画素数が多いほど荒れが少なくなる。FZ18の場合、最大で4倍(2倍で1/4程度に画素数が低下)までズーム比を伸ばせる。


レンズは8群11枚構成。EDレンズ2枚、非球面レンズ4面3枚を採用 記録画素数に応じてEX光学ズームが利用できる

 EX光学ズームは、本来使われる画素数を減らす代わりに撮像素子の中央部分を切り出すことで、焦点距離を望遠側にシフトする機能。デジタルズームのような劣化を伴うことなく、画角を狭めてズーム比を伸ばせることから、最近は各社とも高画素化の副産物として採り入れている(機能の名称は各社で異なる)。FZ18のEX光学ズームは3段階にまとめられ、設定解像度が600万~800万画素が18倍、350万~500万画素が23倍、VGA~300万画素が最大の28.7倍となる。

 EX光学ズームとデジタルズームを組み合わせれば、最大で約115倍のズーム性能を得ることができる。115倍ともなるとなかなか想像できないが、月を撮るとその実力がわかる。肉眼では「餅をついているウサギ」の模様にしか見えない月の表面が、実はクレーターでデコボコしているというのがハッキリと写せるのだ。

 レンズの歪曲収差は少なく、画像処理エンジン「ヴィーナスエンジンIII」との相乗効果で、画質も良好。晴れた日は比較的コントラストが強めに出るものの、全体的には記憶色に沿った色作りをしているように感じられた。


顔認識を含む「おまかせiA」が強力

 春モデルまでパナソニックは、「光学式手ブレ補正」、「高感度」、「動き認識」の3つからなる「トリプルブレ補正」を推し進めてきた。FZ18はこの「トリプルブレ補正」に「顔認識」と「クイックAF」、「自動シーン判別」を包括した機能が「おまかせiA」(インテリジェントオート)なのだ。位置付け的には、従来あったフルオートの「かんたんモード」を置き換えたものになる。

 すでにコンパクトカメラの主流機能になっている顔認識は、逆光時の顔の明るさを左右する「顔認識AE」、顔に重点を置いたAF「顔認識AF」の2つを搭載する。最大で15人までの顔を同時に検出できるほか、顔と認識された被写体が動いても認識枠をあわせ続けることが可能だ。

 カメラを構えると同時にAFが駆動するのが「クイックAF」。自動的にピントが合い続けるので、従来機ではシャッターボタンを半押ししてピントを合わせてからシャッターを切る必要があったのだが、ピントを合わせるための半押し作業を省いてボタンを全押しし、すばやく撮影することができるようになった。


モードダイヤルの「iA」がおまかせiA(インテリジェントオート)
モードダイヤルを回すと、選択したモードを液晶モニターに表示する

おまかせiAモードに設定して撮影すると、画面左上に「i」がついたアイコンが表示される。ブルーのアイコンは測距を状態
赤と白のアイコンになると確定。今回は接写が選ばれた

 加えて強力なのが「自動シーン判別」だ。被写体を捉えるとカメラが自動でシーンを認識する機能で、計5つのシーンを判別。具体的には、人の顔を検知すれば「顔認識」を作動。被写体の距離が近ければ「接写認識」、遠ければ「風景認識」に。被写体が動いていれば「動き認識」でISO感度を上げる。さらに「顔&夜景認識」が作動すると、顔認識にプラスして、内蔵ストロボのスローシンクロ発光を自動で行なう(ストロボ発光禁止時は「夜景」になる)。マクロモードへの切替など面倒な操作をすることなく、被写体にレンズを向けるだけカンタンに撮影できるわけだ。

 とはいっても実際に使ってみると、シーンによってはなかなか思い通りにピントが合ってくれないこともある。例えば花にとまった蝶にピントを合わせ、後ろの花々をボカしたいとする。すると後ろの花にピントが合ったり、蝶にピントが合ったりと不安定な状況になった。つまり、「風景認識」と「接写認識」の両方でカメラが迷うらしい。解決するにはシーンモードを固定する必要があり、パナソニックが既存の豊富なシーンモードを残した意図もそこにあるのだろう。

 なお今回から「人物」、「スポーツ」、「風景」、「夜景&人物」の5モードは、さらに詳細な設定が行なえるようになった。パナソニックでは「アドバンスシーンモード」と呼んでおり、例えば「人物」なら「美白」、「屋内人物」、「屋外人物」などが選択できる。


手堅い諸機能と操作系

 おまかせiAやシーンモードのほかに、プログラムAE、絞り優先AE、シャッター優先AE、マニュアル露出が可能。このあたりもFZ系の良いところで、状況に応じて臨機応変に撮影できるポテンシャルを備える。

 ジョイスティックによる露出補正やAFエリア選択など、素早い操作系もFZ7やFZ8から引き継ぎ、撮影時の操作性に大きな問題を感じない。FZ8と異なり、比較的良く使う「マクロ/ワンプッシュAF」ボタンと「AF/MF」ボタンををシャッターボタン付近に配置したのも妥当に感じる。AF性能も悪くなく、高倍率ズーム機にありがちな望遠側のレスポンス(液晶画面の追従性)の悪さもなく、撮りたいときにすぐにAFが追いついてくれる印象だ。

 液晶モニターは約20.7万画素の2.5型。FZ8からあった「パワーLCD機能」を使えば、明るさを最大で40%アップさせ、晴れた屋外など液晶モニターが見難い状態でも高い視認性が得られる。また「オートパワーLCD」に設定しておけば、環境の明るさを判別して自動的に液晶モニターの明るさが調節される。

 撮影枚数はCIPA規格で約400枚。FZ8から約20枚増えており、機種によっては減少傾向にある最近の水準からして、十分な記録可能枚数といえる。仕事で撮影というのでなければ、十分なバッテリー性能だろう。


バッテリーはFZ8と同じDMW-BMA7を使用。撮影可能枚数は約400枚と若干増えた 内蔵ストロボはポップアップ式を採用。広角側で約0.3~約6m、望遠側で約1~4mの範囲をカバーする

「オートパワーLCD」に設定しておけば自動で調光されるので便利。「ハイアングル」も健在だ
モードダイヤルにあるシーンモードのうち5モードは、さらに「アドバンストシーンモード」で細かい設定が可能

ISO感度はAUTOのほか100~1600までを固定できる。ISO1250も指定可能
被写体の動きにISO感度が変わる「インテリジェントISO」

ISOやホワイトバランスなど、撮影シーンのカスタム設定も可能
「カスタム」には自分のよく使う設定を3つまで登録できる

まとめ

 コンパクトデジタルカメラとして考えると、普段の持ち歩きには気合が必要かもしれない。しかし、旅行などのお出かけ用カメラと割り切ってしまえば、これほど便利なカメラはないだろう。このジャンルは最近小型化が進むデジタル一眼レフカメラと比べられがちだが、デジタル一眼レフカメラで28mm~504mm相当をカバーするとなると、最低でも高倍率ズームレンズと望遠レンズが必要となる。一方FZ18は本体だけなら約360g、バッテリーとメディアを入れても約407gと軽量だ。

 広角側が28mm相当からになったのもありがたく、1台でさまざまなシーンに対応できる高倍率ズームモデルの面白さを存分に味わえる。しかも、気軽なスナップはおまかせiAに文字通りまかせておけば、わずらわしい設定をすることなく撮影に集中できるし、それでいてマニュアル露出でじっくりと撮ることも可能。EVFの見え具合、動きものへの対応、ボケ表現などはデジタル一眼レフカメラに敵わないものの、幅広い用途やシーンに1台で対応できる柔軟性の高いカメラだ。


作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/撮影モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算での焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


●画角


広角端
3,264×2,448 / シャッター速度優先AE / 1/100秒 / F8 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
望遠端
3,264×2,448 / シャッター速度優先AE / 1/100秒 / F6.3 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 504mm

広角端
3,264×2,448 / シャッター速度優先AE / 1/100秒 / F8 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
望遠端
3,264×2,448 / シャッター速度優先AE / 1/30秒 / F8 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 504mm

EX光学ズーム(5M)
2,560×1,920 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 642mm
EX光学ズーム(3M)
2,048×1,536 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 803mm

●歪曲収差


3,264×2,448 / マニュアル露出 / 13秒 / F8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 28mm
3,264×2,448 / マニュアル露出 / 13秒 / F8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 504mm

●ISO感度


ISO100
3,264×2,448 / 絞り優先AE / 1/250秒 / F8 / -0.33EV / WB:オート / 28mm
ISO200
3,264×2,448 / 絞り優先AE / 1/500秒 / F8 / -0.33EV / WB:オート / 28mm

ISO400
3,264×2,448 / 絞り優先AE / 1/1,000秒 / F8 / -0.33EV / WB:オート / 28mm
ISO800
3,264×2,448 / 絞り優先AE / 1/2,000秒 / F8 / -0.33EV / WB:オート / 28mm

ISO1250
3,264×2,448 / 絞り優先AE / 1/2,000秒 / F8 / -0.33EV / WB:オート / 28mm
ISO1600
3,264×2,448 / 絞り優先AE / 1/2,000秒 / F8 / -0.33EV / WB:オート / 28mm

●カラーモード


OFF
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/100秒 / F3.6 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 109mm
白黒
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/100秒 / F3.6 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 109mm

セピア
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/100秒 / F3.6 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 109mm
クール
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/100秒 / F3.6 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 109mm

ウォーム
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/100秒 / F3.6 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 109mm

●一般作例


3,264×2,448 / 風景 / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm 3,264×2,448 / 風景 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 504mm

3,264×2,448 / 風景 / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 144mm
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/80秒 / F2.8 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

3,264×2,448 / プログラムAE / 1/15秒 / F3.6 / -0.33EV / ISO400 / WB:オート / 144mm
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/25秒 / F2.8 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 37mm

3,264×2,448 / プログラムAE / 1/125秒 / F4 / -1EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/200秒 / F4 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 67mm

3,264×2,448 / 花火 / 1.6秒 / F8 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 135mm
3,264×2,448 / 花火 / 1.6秒 / F8 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 135mm


URL
  パナソニック
  http://panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/fz18/

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飯塚直
(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。

2007/10/11 00:02
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