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【新製品レビュー】キヤノンIXY DIGITAL 910 IS

〜四隅の流れが改善、まとまりの良い28mmコンパクト機
Reported by 奥川浩彦

 キヤノンから9月6日に発売された「IXY DIGITAL 910 IS」は、2006年10月発売の大ヒットモデル「IXY DIGITAL 900 IS」(以下900 IS)の後継機にあたり、引き続きIXY DIGITALシリーズで唯一広角28mm相当(35mm判換算)からのズームレンズを搭載している。

 900 ISからの主な変更点は、有効画素数が710万画素から800万画素になり、液晶モニターが2.5型から3型に大型化されたこと。そのほか、細かい強化点が見られる。

 筆者は昨年、900 ISに飛びついて購入した。ポイントは広角28mmからのズームレンズ。「IXY DIGITAL 800 IS」で手ブレ補正の効果は確認していたし、従来からIXY DIGITALシリーズの俊敏な動作、安定した発色、無難な操作性、高感度ノイズ処理なども評価していた。

 だが実際に使用してみると、画面周辺の解像度不足にガッカリした経緯がある。ところが「そろそろ品質が安定しているだろう」と、先日サービスセンターに評価資料をつけて修理に出したところ、大幅に改善されて戻ってきた。おかげで購入以来あまり使う気の起きなかった900 ISが、やっとまともに使える画質になったと思っている。

 機能、画質、デザインなど、新機種である910 ISがどこまで強化されたのか。900 ISとの比較を中心にお伝えしたい。


見やすい3型液晶モニター

 本体のサイズは900 ISの89.5×25.1×58mm(幅×奥行き×高さ)から92.6×25.9×58.8mmに変更されている。若干大きくなっているが、見た感じは丸味が減ったせいか、スリムにも感じられる。

 最近のIXY DIGITALのうち、筆者が気になったのは「IXY DIGITAL 10」だ。手ブレ補正も広角28mmもないので購入にはいたらなかったが、四角いボディとイージーダイレクトボタンに機能割り付けができる点が気に入った。一方、本機は丸みを帯びているものの、妙に惹かれる。黒の配色がいいのだろうか。最近の太って見えるIXY DIGITALシリーズの中では、魅力的に見えたのが第一印象だった。


ロゴなどの文字は縦に置いたときを意識してデザインされている
背面の3型液晶モニターは大きくて見やすいが、操作系はやや小さめ

電源ON/OFFボタンは900 ISより押しやすくなった
電池、SDカード室は従来と同じ。三脚に固定したままカードが抜けないので、側面の方が便利だと思う

右は900 IS。比べると大差ないが、単独で見ると910 ISの方が個人的にはスリムに見える
液晶モニターは格段に見易くなった。光学ファインダーがなくなったのは気にならない

 外観で大きく目立つのは、2.5型から大型化した3型液晶モニターだろう。IXY DIGITALについては、光学ファインダーの存在を評価する声を聞くが、筆者はほとんど使うことがない。そのため光学ファインダーをなくし、代わりに3型液晶モニターを搭載したところが気に入っている。反面、操作ボタン類がやや小さくなり、扱いにくくなった。900 ISではモードスイッチに親指がフィットし、ホールド性が高いと感じたが、910 ISはしっくりこない。なおクリアライブ液晶は、太陽光下で900 ISより見易くなっている。

 レンズ周りのスペックは900 ISから変更はなく、35mm判換算の焦点距離は28〜105mm、F2.8〜5.8の光学3.8倍ズームレンズだ。光学ズームのステップは4.60 / 6.14 / 7.56 / 9.11 / 10.83 / 12.6 7 /14.69 / 17.30mm(35mmフィルム換算では28 / 37 / 46 / 55 / 66 / 77 / 89 / 105mm)の3.8倍、8段階となっている。光学ズームのステップに関してはもう少し細かくなるとフレーミングしやすくなるだろう。

 その先のデジタルズームは6ステップ最大15倍と変更はないが、ステップの刻みが900 ISの4.5 / 5.7 / 7.3 / 9.1 / 11 / 15倍から若干変わり、4.8 / 6.1 / 7.8 / 9.7 / 12 / 15倍となっている。記録解像度を落として撮像面の中央を切り出すセーフティーズームも、基本的なところは変わっていない。

 顔検出機能の「フェイスキャッチテクノロジー」も変化している。従来のAF+AEに加えて、ストロボ発光時に人物の顔に露出を合わせる「顔優先FE」や再生時の赤目補正機能が利用できるようになった。また、AF枠を従来の1/4に変更する機能が設けられ、より細かなポイントにピント合わせができるようになっている。


イージーダイレクトボタンへの機能登録が便利

ホールド感はイマイチ。モニターが汚れるのは手が汚いから……でも少々不満
 操作面では、4方向ボタンが「タッチホイール」になった。4方向いずれにも押し込むことなく、軽く触れたまま指を回すと、電子ダイヤル的な操作となる。撮影時にはモードダイヤル、再生時には画像のスクロールなどとして機能する。機能としては悪くないが、ボタンを押し込まないように軽く触れるのが意外に難しい。慣れの問題かもしれないが次機種ではもう一工夫を期待したい。

 また、2007年春からのほかのキヤノン製モデルと同様、イージーダイレクトボタンに機能登録ができるようになった。これも900 ISにない機能で、筆者の場合、迷わず露出補正を登録した。

 最近のIXY DIGITALシリーズを使っていて、ファンクションボタンメニューで頻繁に変更するのは露出補正だけだった。これがショートカットとしてボタンに割り付けられれば、筆者の撮影スタイルとしてはほぼ完璧だと思っている。強いて望むなら、オートブラケット機能の搭載だろう。イージーダイレクトボタンに登録できるほかの機能はホワイトバランス、マニュアルホワイトバランス、デジタルテレコン、グリッド表示、動画、ディスプレイオフ、効果音となっている。


イージーダイレクトボタンに機能割付な機能。迷わず露出補正を選択した
右上から2つ下がイージーダイレクトボタン

 そのほか撮影中の細かな点としては、900 ISの場合シャッター速度、絞りが手ブレしそうな場合だけ表示されたが、910 ISではシャッターボタンを半押しすると常に表示されるようになった。他社では当たり前の機能だが、IXY DIGITALユーザーには朗報だろう。

 撮影後の再生はモードダイヤルから独立した再生ボタンで行なう。再生中、とっさに撮影したいときにシャッターボタンを半押しすればすぐに撮影スタンバイに戻れるので、モードダイヤルから選んでいた910 ISよりも好ましい。再生時に用意されたフォーカスチェッカーも便利な機能だ。撮影時にピントが合った部分が表示され拡大してピントのチェックが確認できる。フェイスキャッチテクノロジーを使用した場合は、自動的に顔がアップになる。そのままフレームの位置を任意に移動して確認することも可能だ。


フォーカスチェッカーの表示。ピントを合わせた位置が拡大される
ズームレバーを操作すると拡大表示される

そのまま拡大位置を移動することも可能

 動画は新たにLPモードが用意された。同じ640×480ピクセル、30fpsだが圧縮率で容量を半分にできる機能だ。実際に撮影して鑑賞すると、それほどの画質の劣化はない。筆者としては積極的に使いたい機能だ。その代わりLPモードの搭載により、従来設定できた30fps、または15fpsの選択設定がなくなっている。従来なら320×240ピクセル、15fpsで長時間録画が可能だったが、910 ISではスタンダードの場合320×240ピクセル、30fpsが最長録画となる。

 付属品は従来と特に変更はなく、バッテリー、充電器、USBケーブル、AVケーブル、CD-ROM、ストラップ、32MBのSDメモリーカード、取説類だ。バッテリーは「IXY DIGITAL 800 IS」や900 ISと同じものが使用できる。充電器も従来通り、コンセントに直接させるコンパクトなデザインだ。不満なのはいつも通り、32MBのSDメモリーカードが付属すること。内蔵メモリーがないのであれば、付属品を実用的な容量にするか、いっそなくして微々たる金額でも安くしてくれた方がいい。


改善された周辺画質と高感度ノイズ

 次に、気になる周辺解像力と高感度ノイズを900 ISと比較しながら確認してみたい。撮影したのは筆者がいつも撮っている名古屋のオアシス21。900 ISに関しては修理後の本体で、昨年「長期リアルタイムレポート」に掲載したものと比較すると、大幅に改善されている。

 ノイズに関しては、一般的な1/2.5型CCDのコンパクトデジカメとしては優秀な方であろう。ISO200までは気にせず使うことが可能だ。ISO400から若干ノイズが目立ち始め、ISO800がギリギリ許容範囲、ISO1600は特別な場合の使用にとどめたい印象だ。900 ISと比較すると、ISO200でも暗部で若干ノイズが目立つ。画素数が増えた弊害なのか、わずかながらノイズが増えた感じがするが、実用的にはそれほど大差はない。解像感は逆に、少しアップしたようだ。

 気になる四隅の流れはまだ若干残っているものの、900 ISより改善されている。900 ISユーザーの経験からすると、この部分は個体差の可能性もある。

  • 表中の画像をクリックすると、3,264×2,448ピクセル(910 IS)、または3,072×2,304ピクセル(900 IS)の撮影画像を表示します。

 IXY DIGITAL 910 ISIXY DIGITAL 900 IS
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600


 高感度に関連した新機能には、春モデルから搭載が始まった「ISOブースター」がある。手ブレしそうなシャッター速度になると、ISO感度を上げて手ブレを防ぐ機能だ。イージーダイレクトボタンを押してISO感度を上げるか、自動的に上げるかを選択できる。イージーダイレクトボタンに露出補正を割り付けた場合、普段は露出補正ボタンとして機能し、シャッターボタンを半押ししたときにISOブースターとして機能する。ISOブースターをイージーダイレクトボタンに設定した場合、シャッター速度が遅くなる条件でシャッターボタンを半押しすると、イージーダイレクトボタンが青く点灯する。ここでイージーダイレクトボタンを親指で押すと、ISO感度が上がる仕組みだ。

 自分で感度アップするかを選択できるメリットがある代わりに、シャッターボタンを半押ししながら親指でイージーダイレクトボタンを押すのは難しい。人差し指に力が入り、ついシャッターを切ってしまうことが多かった。この機能を使うのであれば、自動に設定した方が操作性はいいと思う。ISOブースター動作時の上限感度はISO800までで、上限を任意に設定することはできない。なお、ISO感度設定を「ISO HI」にした場合も、ISO感度は800まで自動的に上がる。ただしアルゴリズムが違うようで。ISO HIの方が積極的に高い感度を選択する傾向がある。


ISOブースターはイージーダイレクトボタンに設定できるが、実際には操作しにくい
自動にした方が操作性は良いだろう

まとめ

 そのほか900 ISで不満だった点は、あざやかブルーに設定すると、青空が見事に青くなる反面、青と水色の境界線部分がざらつく傾向があった。この点は910 ISでも同じで、パッと見は綺麗だが積極的に使いたいとは思えない。また900 ISは逆光時に液晶モニターの表示が破綻することがあったが、これは改善されている。ただし修理から帰ってきた900 ISも改善されていたので、初期ロットの問題だったのであろう。

 全般を通してIXY DIGITALらしく動きは軽快で、AFも気持ちよく合焦し精度も高い。ホワイトバランスもほとんどオートで問題ない発色だ。光学式手ブレ補正も効果は高くチョットした夜景や食の撮影なら手持ちで充分撮影可能だろう。

 気になる画像四隅の流れもそこそこ改善され、大型液晶モニター、操作性の向上等魅力的な部分も増えた。デザインも筆者としては気に入っており、コンパクトデジカメとしては満足できる1台だと思う。


作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


●画角


広角端
3,264×2,448 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm
望遠端
3,264×2,448 / 1/640秒 / F5.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 17.3mm

セーフティーズーム(1,600×1,200)
1,600×1,200 / 1/640秒 / F5.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 17.3mm

●連写

    共通データ:3,264×2,448 / 1/400秒 / F5.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 17.3mm




●一般作例


いつも撮ってるガストのシーフードサラダ。ホワイトバランスオートにて撮影。照明の雰囲気を残しつつまずますの色で撮れる。メーカーによってはかなり赤くなる場合もある
3,264×2,448 / 1/13秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm
ホワイトバランス電球に設定して撮影。色は正しいが少々雰囲気が足りない感じがする。手ブレ補正の効きは良い
3,264×2,448 / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 電球 / 4.6mm

逆光でポストの上部にゴーストが出ている
3,264×2,448 / 1/160秒 / F3.2 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 6.14mm
左手でハレギリして右手だけで撮影。こんな時ホールド感の悪さを感じる
3,264×2,448 / 1/160秒 / F3.2 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 6.14mm

あざやかブルーで撮影。900 ISと同じく不自然さを感じる
3,264×2,448 / 1/400秒 / F8 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm
同じくあざやかブルー。このシーンでは特に不自然にならなかった
3,264×2,448 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm

名古屋港トリトン。ワイヤー部分がイマイチ
3,264×2,448 / 1/320秒 / F10 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 7.56mm
名古屋港ポートタワー。四隅は900 ISより改善された
3,264×2,448 / 1/320秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.14mm

露出補正を-0.3EVにして空の青さを強調。金属の質感も悪くない
3,264×2,448 / 1/250秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm
逆光で露出補正を+0.67EVに設定。イージーダイレクトボタンへの設定で操作性は向上した
3,264×2,448 / 1/320秒 / F8 / +0.67EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm

名古屋港イタリア村の入口。この手のスナップには充分な画質だろう
3,264×2,448 / 1/250秒 / F10 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 7.56mm
観覧車を手持ち撮影。手ブレ補正の効果は高い
3,264×2,448 / 1/15秒 / F3.2 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 6.14mm

テレビ塔を手持ち撮影。ISO100ではかなりブレたが、ISO200ではほとんどのコマがOKだった
3,264×2,448 / 1/13秒 / F2.8 / -2EV / ISO200 / WB:オート / 4.6mm
東山動植物園。ライオンが間近で見られる
3,264×2,448 / 1/60秒 / F5.8 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 17.3mm

解像度をM2(2,048×1,536ピクセル)にしてセーフティズームを使用
2,048×1,536 / 1/640秒 / F5.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 17.3mm
同じくセーフティズームを使用
2,048×1,536 / 1/400秒 / F5.8 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 17.3mm

有松の街並みを28mmで撮影。広角28mmはやはり魅力的
3,264×2,448 / 1/320秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm
シャッター速度が落とせると、噴水の雰囲気がもっと出せるのだが……
3,264×2,448 / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.6mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/910is/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(IXY DIGITAL 900 IS)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2006.htm#900_is

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奥川浩彦
(おくがわひろひこ)1961年、名古屋生まれ。パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報担当、2001年イーレッツの設立に参加。2006年、iPR(http://i-pr.jp)を設立し広報代理業とライター業で独立。写真を始めたのは学生時代にモータースポーツを撮りたかったから。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選経験あり。鈴鹿で開催されたF1日本グランプリは87年から20年皆勤賞。http://okugawa.jp/menu/

2007/10/04 01:50
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