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【新製品レビュー】キヤノン IXY DIGITAL 900 IS

〜手ブレ補正、高感度、広角28mm、顔認識を凝縮
Reported by 中村 文夫

 IXY DIGITAL 900 ISは、IXY DIGITALシリーズで初めて、広角側の焦点距離を28mm(35mm判換算)に広げたワイドズーム搭載機だ。このクラスのコンパクト機の場合、一般消費者の関心は望遠側の焦点距離に集まりがちだ。そのため、どのカメラメーカーも広角側を軽視する傾向が強く、現在発売中のコンパクト機は、広角側が35mmくらいから始まる機種がほとんどである。だが28mmと35mmでは、得られる視覚的効果は雲泥の差だ。

 ただしこのことを一般に理解してもらうことは非常に難しく、銀塩カメラの時代からカメラメーカーは苦労してきた。だが最近はパナソニックがLUMIXシリーズで広角28mmを前面に押し出したコマーシャルを展開するなど、徐々に理解も深まっているようだ。果たして広角28mmは、今後コンパクト機に定着することができるだろうか。


小型ボディと広角化を両立

 搭載されているレンズは、焦点距離4.6mm〜17.3mm、開放F値F2.8〜F5.8。実撮影画角を35mm判に換算すると、焦点距離28〜105mmに相当する。春モデルの手ブレ補正搭載機「IXY DIGITAL 800 IS」の実撮影画角が焦点距離35〜140mm相当だったことに比べると、全体に広角側へシフトしている。望遠撮影を重視するユーザーは不満を感じるかも知れないが、105mmと140mmの差は意外と少なく、撮影距離がそれほど遠くなければ被写体に数歩近づくだけで解消できる。また、いざとなればデジタルズームを利用する手もある。これに対し広角28mmと35mmでは、得られる遠近感が全然違う。特にコンパクトカメラが得意とするスナップ撮影に広角レンズは必需品だ。

 ただし、性能の良い広角レンズを小さなボディに組み込むには、それなりの技術が要求される。IXY DIGITAL 900 ISの場合、コンパクトさと描写性を両立。スイッチをオフにするとレンズが完全に収納されるなど、IXYのスタイリッシュさを損なわないデザインを実現した。

 このほか特徴として、手ブレ補正機能と顔認識AFが挙げられる。イメージスタビライザー(略称はIS)と名付けられた手ブレ補正機構は、ボディ内のセンサーが1秒間に4,000回もの頻度で手ブレ信号を検出。手ブレを打ち消す方向へレンズをシフトさせ、補正を行なう方式だ。

 カタログの数値によると、補正効果はシャッタースピード3段分。一般的に手ブレ補正機能は望遠側で顕著な効果が現れるが、実は広角側でもシャープな像を得るには大切な機能だ。特にコンパクトカメラの場合、片手でカメラを構えるという、手ブレを助長するような使い方が主流。さらに画素数が増えることによって大きくプリントする機会が増え、以前に比べると手ブレは目立ちやすくなっている。

 とにかく、これからのコンパクトデジカメにとって手ブレ補正は必須機能だ。またIXY DIGITAL 900 ISでは、ISO感度を自動的にISO1600相当まで上げる高感度オート機能を装備。ISとの相乗効果が得られるだけでなく、被写体ブレも防いでくれる。





レンズ光学系には独自の超高屈折率ガラスモールド非球面レンズを採用。電源をオフにすると完全にフラットに収納される 電源は専用リチウムイオン電池。記録媒体はSDHCメモリーカードにも対応している

いたれりつくせりの液晶モニター周り

 顔認識AFを世界で初めて採用したデジタルカメラは、ニコンが2005年に発売したCOOLPIX 5900と7900だ。ニコンの資料によれば、空港などで使われるセキュリティシステムの応用であるという。いずれにしても、1年足らずの間に顔認識AFを採用するデジカメが続出。スナップをはじめ人物を撮影する機会の多いコンパクトデジカメにはぴったりだったようで、もはやこの機能はコンパクトデジカメの定番機能になりつつある。今回の撮影では活躍する場面がそれほどなかったが、人物を画面内に入れてシャッターボタンを半押しし、人物の顔にピントを合わせると、カメラを動かしてもAFフレームが追従。実際にカメラを操作してみると便利さが実感できる。最大9人までの顔を認識することが可能である。

 記録画素数は710万。従来からあるIXY DIGITAL 800 ISが600万画素であったのに対し、画素数のアップが図られている。同時に発売された上位機のIXY DIGITAL 1000の1,000万画素には及ばないが、手ブレ補正機構を搭載するなど、高い実用性を備えている。また映像エンジンには新開発のDIGIC IIIを採用。顔認識AFの搭載とともに、最高感度が800から1600に上がり超高感度撮影が可能になった。

 液晶モニターのサイズは2.5型。画素数は20.7万と高精細な上、広視野角タイプなので見やすい。また撮影後のレビュー画面において撮影画像全体と合焦部分を並列表示するフォーカスチェッカーや、合焦部分の表示倍率を変更する機能も備えている。このほか、明るい戸外でモニターの輝度を上げるLCDブースターや、暗い場所で輝度を自動的に下げるナイトビュー機能など、液晶モニターに関しては至れり尽くせりだ。

 ただし小さなボディに大型モニターを搭載しているので、ボディ背面のほとんどを液晶モニターが占有。このため液晶モニター右側にある操作部のスペースが狭くなっている。十字キーなどは直径が大きく、キー自体の操作感は決して悪くないのだが、メニューやディスプレーボタンなどとが接近しすぎていて操作がしにくい。また回転式のモードダイヤルは、操作がしやすいようレバー状の突起が設けられているが、レバーの形が曲面なので滑りやすい。これはズームレバーにもいえることで、ちょっとデザイン優先の傾向がある。


背面の液晶モニターは2.5型で画素数は20.7万。広視野角タイプなので、斜めからでも良く見える 液晶モニターが大きくなった分、右側の操作部が狭くなった。各操作部の間に余裕がなく、特に親指操作がやりにくい

実像式光学ファインダーを装備。カメラメーカーらしさを強く感じる部分だ 緑色に光っているのが、パイロットランプを兼ねた電源スイッチ

ズームレバーの突起が小さく操作がしにくい。背面のモードダイヤルともに、デザインを優先しすぎた傾向が強い 側面のカバー内にあるA/V OUT(映像/音声出力)端子とUSB 2.0端子

まとめ

 いつもキヤノンの製品で感心するのは、光学ファインダーを重視していることだ。、光学ファインダーを使えば必然的にカメラを自分の顔で固定することになり、カメラブレ防止に高い効果を発揮する。さらに液晶モニターを使わないので電池の寿命も伸びる。とにかくカメラにとっては良いことずくめなのだ。だが最近のユーザーは、光学ファインダーをほとんど使わない。そさらに光学ファインダーを省けば、カメラの小型化やコストダウンが図れるので、最近では非搭載の製品が増えている。しかしキヤノンの場合、今のところ3型液晶搭載モデルを除き、上級機では光学ファインダーを死守。このあたりに家電メーカーとは一線を画すカメラメーカーの意地が強く感じられる。

 IXY DIGITAL 900 ISの実勢価格は4万円台後半。このクラスとしてはやや高めだが、すでに量販店ではトップクラスにランク入りするなど、売れ行きは好調である。このレポートの始めに、広角28mmの魅力を一般ユーザーに伝えることは難しいと述べたが、市場動向を見る限り心配ないようだ。これを機にコンパクトデジカメの広角化が進むと良いのだが……


作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


◆ISO感度

 ISO400まではそれほどでもないが、ISO800になると暗部のノイズが目立ち始める。ISO1600だと画面全体にノイズが出る。6カットともWBオートで撮影したが、1600のカットだけWBが崩れ、黄色っぽくなった。


ISO80
3,072×2,304 / 1/8秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 7.56mm
ISO100
3,072×2,304 / 1/10秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 7.56mm

ISO200
3,072×2,304 / 1/20秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 7.56mm
ISO400
3,072×2,304 / 1/40秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 7.56mm

ISO800
3,072×2,304 / 1/80秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 7.56mm
ISO1600
3,072×2,304 / 1/160秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 7.56mm

ISO200で撮影
3,072×2,304 / 1/4秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:曇天 / 10.83mm
ISO400で撮影
3,072×2,304 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.6mm

高感度オートONで撮影。ISO感度が自動的に上がり手ブレが防げたが、感度が上がったためにノイズが増えている(Exifに感度情報は未記録)。だが手ブレするよりは、はるかに良い
3,072×2,304 / 1/30秒 / F5.8 / 0EV / 高感度オート / WB:オート / 17.3mm

◆画角変化


広角端(28mm相当)
3,072×2,304 / 1/400秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 4.6mm
望遠端(105mm相当)
3,072×2,304 / 1/100秒 / F5.8 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 17.3mm

◆そのほか


最広角側で思い切り被写体に近づくと、遠近感を強調した表現も可能
3,072×2,304 / 1/320秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.6mm
広角側の画角が広いので、引きのない場所でも広い範囲が画面に収まる
3,072×2,304 / 1/60秒 / F2.8 / 0EV / ISOオート / WB:オート / 4.6mm

金色のベルの質感が見事に再現された
3,072×2,304 / 1/20秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:曇天 / 4.6mm
シャッター速度は1/5秒。ISの効果が発揮され、ブレずに済んだ
3,072×2,304 / 1/5秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 12.67mm

通常の最短撮影距離の約45cmで撮影
3,072×2,304 / 1/15秒 / F2.8 / -1.33EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.6mm
デジタルマクロで撮影。デジタルズームが4倍になり撮影倍率が高くなった。画質の荒れは、まったく気にならないレベルだ
3,072×2,304 / 1/160秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:電球 / 4.6mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/900is/

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中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2006/12/14 14:58
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