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【新製品レビュー】ニコン COOLPIX S500

〜コンパクトなボディに手ブレ補正レンズを採用
Reported by 北村 智史

 世界最小ボディに世界最速のレスポンス性能が謳い文句の新型COOLPIX。CCDは有効710万画素の1/2.5型。レンズは手ブレ補正機構付きの光学3倍ズームを搭載している。

 外装にステンレス素材を採用。シンプルで飽きのこないデザインに仕上げている。ボディカラーは写真のシルバーとアーバンブラックの2色が選べる。大手量販店の店頭価格は3万8,000円前後。


コンパクトなボディに光学式手ブレ補正機構を搭載

 ボディサイズは88×22×51mm(幅×奥行き×高さ)、重さは125g。「光学式手ブレ補正搭載のコンパクトデジタルカメラにおいて」と但し書き付きではあるが(同社のWebサイトによる)、世界最小となる。光学式手ブレ補正を搭載すれば、部品点数も増えるわけだから小型軽量化が難しくなるのはわかる。

 が、ユーザーから見れば、光学式手ブレ補正搭載だから、というのは理由にならないのではないかと思う。それに、パナソニックLUMIX DMC-FX30(28〜100mm相当の光学式手ブレ補正機構内蔵レンズで奥行き22mmである)のほうが、技術的な難易度は上だ。





 レンズは焦点距離5.7〜17.1mm、F2.8〜4.7。35mmフィルムカメラ換算で35-105mmに相当する光学3倍ズームで、VR(レンズシフト方式の手ブレ補正機構)を内蔵している。補正効果はシャッター速度で約3段分相当だ。

 鏡筒に対してレンズが下にシフトしていて、ペンタックスのようにレンズの一部をスライドさせる仕掛けなのかとも思ったが、5群5枚構成でスライド式もなさそうだ。同社のWebサイトに掲載されている図を見たところでは、手ブレ補正ユニットのサイズの都合のように思われる。

 絞りは電磁駆動によるNDフィルター選択方式。メカニカルな絞り機構は持っていないらしい。が、以前試用した「COOLPIX S7」と違って、周辺光量の低下はほとんど気にならない。

 最短撮影距離はズーム全域でレンズ前50cm。マクロ時はズーム操作時に表示されるバーの△マークより望遠側で15cmまで。従来のCOOLPIXは△マークより広角側で寄れる方式で、望遠側のほうが寄れるというのはけっこうめずらしい。

 電源は740mAhのリチウムイオン充電池。例によってホログラムシール付きである。CIPA準拠の撮影可能枚数は180枚。けして多いとは言えないが、ボディのコンパクトさを考えればまずまずの数字だと思う。記録メディアは26MBの内蔵メモリとSDカード、SDHCメモリーカード。


35〜105mm相当の光学3倍ズーム。鏡筒に対してレンズが偏心しているのは、おそらくVR機構をおさめるスペースを確保するため。開放F値はF2.8〜4.7と標準的だ マクロ時にはズームのバー表示の△マークより望遠側で15cmまで寄れる。表示色が白から青緑に変化するので見分けられるが、それよりもマクロモードに切り替えたらズームレンジに制限がかかる方式のほうが失敗しにくいのではないかと思う

電源のリチウムイオン充電池は薄型ながら740mAhの容量を確保。CIPA準拠で180枚撮れる。記録メディアは内蔵26MBとSDカード、SDHCメモリーカード

「光学式手ブレ補正」で世界最速

 起動時間は、これも「光学式手ブレ補正搭載のコンパクトデジタルカメラにおいて」という注釈付きで世界最速の0.6秒。ただし、セットアップメニューの「高速起動」をオンに設定しておく必要がある。

 電源スイッチを押すと、シュンとレンズが出てくる。この速さは小気味よい。が、公称値の0.6秒は「電源を入れてから液晶モニターが点灯するまでの時間」であり、0.6秒でシャッターが切れる状態になるわけではないので注意が必要だ。ちなみに、筆者の手もとにあるデータ上の起動時間のトップは、コニカミノルタ「DiMAGE X50」(2004年8月発売、手ブレ0EV)の0.5秒である。

 もうひとつの「世界最速」のレリーズタイムラグ0.005秒については、少々納得できない部分がある。こちらも「光学式手ブレ補正搭載」云々の但し書き付きで、セットアップメニューの「手ブレ補正」を初期設定のオンではなく、「レスポンス優先」に切り替える必要がある。

 納得できないのは、まず0.005秒という数字が、誇らしげに書くほどのものに思えないこと。手もとのデータではカシオの「EXILIM ZOOM EX-Z60」(2006年4月)の公称0.002秒が最速で、0.005秒は歴代6位タイにすぎない。現行機種ではカシオ「EXILIM ZOOM EX-Z75」(4月発売、手ブレ補正なし)が0.004秒、パナソニック「LUMIX DMC-FX50」(2006年8月発売、手ブレ補正あり)が0.005秒だ。また、この手の数字を公表していないメーカーも少なくないため、あくまでわかっている範囲内での6位タイである。

 それから、同社のWebサイトに書かれている「突然のシャッターチャンスを逃がしません」という文言に誇張が感じられる。

 ご存知のように、CCDに映った像がカメラ内部で処理されて液晶モニターに表示されるまでには、思いのほか長い時間がかかる。お手もとにデジタルコンパクトカメラがあれば、レンズの前で手を振ってみれば、実際の手の動きよりも液晶モニターの表示がかなり遅れているのがおわかりいただけるはずだ。

 液晶モニターを見ながら「今だ」と思ってシャッターボタンを押したら、絶対に狙った瞬間は撮れない。シャッターのタイムラグがどれだけ短かろうと、液晶モニターにタイムラグがある以上、タイムラグのある写真しか撮れないのである。

 同社のWebサイトにある「S500最速体験コンテンツ」を見ると、液晶モニターを見ながら撮れるかのような印象を受けるが、これは“消費者に誤解を与えかねない”表現でしかないと思う。もちろん、歯に衣着せての感想である。


シャッターボタンのすぐそばにある電源スイッチ。起動時間は公称0.6秒だ 0.6秒起動にするには、セットアップメニューの「高速起動」をオンにする必要がある

セットアップメニューの「手ブレ補正」を「レスポンス優先」に切り替えるとレリーズタイムラグを最速化できる。半押しからのライムラグは最短0.005秒だ

押しやすくなったロータリーマルチセレクター

 上面左手側の顔マークのボタンを押すと「フェイスクリアーモード」となる。人物の顔にピントを合わせる「顔認識AF」と、内蔵ストロボが赤目軽減モードになる「アドバンスと赤目軽減」がはたらく。が、人物の顔を認識した印のフレームが表示されるまでのタイムラグは長め。富士フイルムのようにパッとは決まらない。以前よりは高速化しているものの、もうふた頑張りぐらいは欲しいところだ。

 顔マークの隣の手ブレマークのボタンは、手ブレ補正のオン/オフではなく、「ブレ軽減モード」への切り替え。手ブレ補正とベストショットセレクタ(BSS)がオンになり、感度は最高ISO1600までとなる。

 BSSは最大10枚まで連写した中からもっとも鮮明に写っている1枚だけを保存してくれるもの。連写した中から1枚を選ぶ方式であるため、狙いどおりの瞬間を撮るのは原理的に不可能だが、暗い場所で望遠撮影をするようなシーンで役に立ってくれるだろう。

 メニューなどの操作は、十字キーの機能を併せ持つロータリーマルチセレクターで行なう。以前に試用したS7は、ホイールの外周部のリングが十字キー機能を受け持つ独立式だったが、本機は一体型で押したときの違和感がなくていいと思う。

 十字キー式のほうが慣れている分、便利そうな気がするが、再生時の画像送りはホイール式のほうが快適なこともある。特に、たくさんの画像の中から見たい画像を探すようなときや、全体をざっと見たいときなどには使いやすいと思う。


上面左手肩の顔マークのボタンは「フェイスクリアーボタン」。撮影時には「顔認識AF」が働く。もうひとつは「ブレ軽減ボタン」。感度が最高ISO1600まで上がり、BSSがオンになる 「フェイスクリアーモード」にすると、人物の顔を認識してピントを合わせてくれる。ただし、顔を認識するまでの時間はやや長め

「ブレ軽減モード」時の画面。左上に「BSS」が表示される。シャッターボタンを押しっぱなしにすると最大10枚の連写を行なって、もっとも鮮明な枚だけが記録される こちらは撮影メニュー内の「BSS」。感度設定はマニュアルでも可能なので、低感度での撮影でも使える

「ロータリーマルチセレクター」。右側を押すと露出補正になるが、マークは側面に印刷されている。スペースの関係もあるだろうが、見落としやすいので要注意だ 「MODE」ボタンを押したときの画面。「ロータリーマルチセレクター」の回転に連動して動く

まとめ

 露出補正時の表示が大きくて邪魔だと感じるし、OKボタンを押し忘れると補正操作が無効になってしまう仕様は改善してもらいたいところ。

 筆者個人としては、AFエリア(測距点)を99点から選べるのは気に入っている点。それほどめずらしい機能ではないが、三脚使用時に空を大きくフレーミングして撮りたいときや、わずかなピントのズレも気になりやすいマクロ撮影時には便利だ。

 また、直射日光が当たる状態でもそれなりに画像が見える液晶モニターもいい。顔などの映り込みがほとんど気にならない反射防止処理も優秀。説明文の内容には若干首をかしげざるを得ない部分はあるにしても、ヘルプ機能が充実しているのも評価したい。

 手ブレ補正の効きもいいし、実写での画質にも不満はない。条件付きの世界最小をどう受け止めるかは人によるだろうが、このコンパクトさは十分に魅力だ。


撮影メニューの「AFエリア(測距点)選択」。「オート」は9点自動選択、「中央」は中央のみの1点、「マニュアル」は99点からの任意選択となる 「AFエリア」を「マニュアル」に設定したときの画面。測距点の移動可能な範囲はカギカッコの内側。十字キー式に上下左右に、またはホイール式操作で左右に移動させられる

露出補正時の画面。表示がでかくて被写体が見られないのが難点。また、補正値を変えただけ(写真の状態)では補正値はセットされておらず、OKボタンを押して初めて確定となる。OKボタンを押す前にシャッターボタンを押してしまうと、補正されないまま撮影することになるので要注意だ ヘルプ画面。感度の高低が写りにどういう影響を与えるかを教えてくれないと、あまり役に立たない気がしますが、どうなんでしょうか

作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/焦点距離(35mm判の実撮影画角に相当する値)を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


●感度


感度設定画面。マニュアルでISO2000まで設定できる。「オート」時は最高ISO800まで
 ベース感度はISO50と、最近のコンパクト機としては低い。が、ISO200相当までは良好な画質が保たれる。ISO400になると細部の描写が若干アマくなるが、ノイズはよく抑えられているし、A4サイズのプリントなら不満は感じないだろう。

 ISO800になると一気にノイズが増え、低感度でよく出ていた立体感が損なわれてくる。ISO1600以上はザラツキがかなり目立ち、暗部のシマリが悪くなってくるためにコントラストが低下するものの、ディテールは比較的残っているほうなので、シーンによっては十分実用になる。


ISO50
3,072×2,304 / 1/60秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:晴天 / 35mm
ISO100
3,072×2,304 / 1/112秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:晴天 / 35mm

ISO200
3,072×2,304 / 1/230秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:晴天 / 35mm
ISO400
3,072×2,304 / 1/433秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:晴天 / 35mm

ISO800
3,072×2,304 / 1/226秒 / F5.7 / -0.3EV / WB:晴天 / 35mm
ISO1600
3,072×2,304 / 1/434秒 / F5.7 / -0.3EV / WB:晴天 / 35mm

ISO2000
3,072×2,304 / 1/550秒 / F5.7 / -0.3EV / WB:晴天 / 35mm

●一般作例


ニコンらしく写りはしっかり。空の部分は滑らかだし、ハイライトもきれい。優秀なレンズだと思う
3,072×2,304 / 1/386秒 / F4.7 / 0EV / ISO50 / WB:晴天 / 105mm
シャドウ部のノイズもほとんど目立たない。白トビ部分も嫌な感じはしない
3,072×2,304 / 1/14秒 / F2.8 / 0EV / ISO50 / WB:晴天 / 35mm

オートホワイトバランスはときどき「?」な発色になる。このカットはややグリーンが強い
3,072×2,304 / 1/179秒 / F5.7 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 35mm
こちらはホワイトバランスを「晴天」モードで。手持ちなので、若干フレーミングがズレているのはお許しを
3,072×2,304 / 1/176秒 / F5.7 / 0EV / ISO50 / WB:晴天 / 35mm

「ピクチャーカラー」を「ビビッドカラー」にすると、色ノリがぐっとよくなる。桜などの淡い色合いの被写体には便利
3,072×2,304 / 1/382秒 / F4.7 / 0EV / ISO50 / WB:晴天 / 105mm
ピクセル等倍で見るとちょっとアマい感じ。手ブレ補正光学系の位置の問題かもしれない
3,072×2,304 / 1/64秒 / F3.5 / -1EV / ISO50 / WB:晴天 / 61mm

表示上の絞り値はF5.7だが、NDフィルター方式なので、実質上は絞り開放。でも、周辺光量の低下はほとんどない。これは立派
3,072×2,304 / 1/256秒 / F5.7 / -0.3EV / ISO50 / WB:晴天 / 35mm
これも「ビビッドカラー」で撮ったカット。ハデめモードにすると、ギトギトの発色になる機種も少なくないが、本機のは節度のある鮮やかさで好ましい。
3,072×2,304 / 1/127秒 / F7.3 / -0.7EV / ISO50 / WB:晴天 / 68mm

CCDサイズが小さいので背景はそれほどボケるわけではないが、ボケ方は自然でいい
3,072×2,304 / 1/167秒 / F3.7 / -0.3EV / ISO50 / WB:晴天 / 68mm
こういうごちゃごちゃした画面だと、デジタルくさくなるカメラもあるが、本機は不自然な感じにはならない。たぶん、シャープネスのかけ方がうまいからだろう
3,072×2,304 / 1/82秒 / F2.8 / -1EV / ISO50 / WB:晴天 / 35mm

広角端で低いアングルから。こういうときは液晶モニターの視野角が広いのがありがたい
3,072×2,304 / 1/232秒 / F2.8 / -1EV / ISO50 / WB:晴天 / 35mm
立体感は割ときれいに出るほうだと思う。50%ぐらいに縮小して見るとすごくいい
3,072×2,304 / 1/23秒 / F3.7 / 0EV / ISO50 / WB:晴天 / 68mm


URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/s500/

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ニコン、光学式手ブレ補正搭載で世界最小の「COOLPIX S500」(2007/02/20)



北村 智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2007/04/26 01:44
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