デジカメ Watch

【新製品レビュー】カシオ EXILIM CARD EX-S770

〜PDAライクな「データキャリング機能」を試す
Reported by 本誌:折本 幸治

 2002年発売のEX-S1/M1に端を発するカシオのEXILIM CARDシリーズ。その8代目にあたる「EXILIM CARD EX-S770」は、「薄型でスタイリッシュなボディ」という特色を継承しながら、2.8型ワイド液晶モニターを新搭載するなど、久しぶりにボディデザインが変わった意欲作だ。

 さらに、PCのデータをカメラに転送して液晶モニターで閲覧できる「データキャリング機能」を装備。毎日持ち歩く薄型コンパクトデジカメに必要な情報や電子書籍を詰め込み、PDAのように使おうというユニークな提案だ。ここではデータキャリング機能を中心に試してみた。


大きく重くなったが薄さは健在

 EXILIM CARDシリーズといえば、歴代ともシャツの胸ポケットに入る薄さが特徴。しかし液晶モニターが2.2型から2.8型ワイドになったのに伴い、前モデルEX-S600の16.1mmから17.3mmへ奥行きが増加。幅も4mmほど広くなっている。EX-S600までの角張ったスタイリングから一転、丸みを帯びたスタイルを採用。見た目の印象はEXILIM CARDというより、EXILIM ZOOMの最上位モデル、EX-Z1000を彷彿とさせる。

 ただし、最薄部は13.7mmとEX-S600から変わっておらず、実際に触るとこれまで通りの薄さを実感できる。また、つややかなボディ表面の仕上げや重量感により、高級感は明らかにEX-S600を上回る。

 ボタンレイアウトで気になるのは、ダイレクトムービーボタンの位置。動画機能をアピールするEX-Sシリーズでは、伝統的にダイレクトムービーボタンが装備されているが、今回は右手親指のすぐ上となり、より動画の利用を推す形をとっている。しかし、慣れないうちは普通に構えるだけで押してしまいがち。「ポケットから取り出して即動画を撮る」という使い方には向くが、静止画が中心だと今ひとつ使い勝手は良くない。

 ちなみに動画はMPEG-4の640×480ピクセル/30fps。今回から704×384ピクセルのワイド動画も撮れるようになった。動画記録中に静止画を撮れる「スチルインムービー」や、ムービーから1枚の写真を作る「モーションプリント」も引き続き利用できる。


左がEX-S770、右がEX-S600(以下同)



PCとの親和性が高いデータキャリング機能

 注目のデータキャリング機能は、使用ソフトによって3種類にわけられる。PCの画面をJPEGにして転送する「Photo Transport」、PDF化して転送する「Data Transport」、電子ブック用の「T-Time 5.5.7 for Casio」だ。対応OSはWindows 2000/XP。Mac OS XはPhoto Transportが利用できず、Data TransportとT-Timeのみ利用できる。Webで調べた情報をEX-S770に転送し、外出中に閲覧するのが基本的な使い方だろう。

 Photo Transportは、PCで表示中の画面を矩形で範囲選択し、EX-S770に転送するソフト。矩形のアスペト比は4:3のほか、フリースタイルで選択することも可能。解像度も「そのまま」、「固定(320×240)」、「固定(1280×960)」、「固定(640×480)」から選べる。

 EX-S770では撮影画像の一部として扱われ、再生モードで閲覧できる。通常の撮影画像と同じく、回転や拡大が可能だ。拡大後、十字ボタンで表示位置を動かせる。操作性は撮影画像の再生と基本的には変わらない。またPhoto Transportには、ほかのカメラで撮影した写真(ただしJPEGのみ)をリサイズして転送する機能もあるので、外出先で作品を見せるポートフォリオ的な使い方も考えられる。EX-S770が搭載する2.8型ワイド液晶モニターの表示品質は高く、再生や拡大などのレスポンスも悪くない。ビューアとしての活用も面白そうだ。


転送はクレードル経由で行なう Photo Transport。スクリーンショットとJPEGファイルを転送できる

Photo Transportを起動後、転送したい範囲を矩形で選択し、転送ボタンを押す 転送すると液晶モニターで閲覧できる

 一方、Data Transportをインストールすると、プリンタの一覧に「CASIO DATA TRANSPORT」が表示されるようになる。これを選んでプリントすると、EX-S770の内蔵メモリ(約6MB)にページを再現した画像(JPEG形式、拡張子は.JPE)で出力される。基本的にプリントできるものは、HTMLだろうがテキストだろうが何でも送れるので、「この内容を忘れないようにプリントアウトしておこう」というノリでどんどん転送できる。

 転送したファイルをEX-S770側で表示するには、本体上部にある「DATA」ボタンを押す。すると、転送したファイルをアイコンで表示するメニューが現れる(メニューなしで表示することも可能)。こちらも回転や拡大が可能だ。ページが複数ある場合は、十字ボタンで次のページを表示できる。転送時にはファイル名を変更できるほか、計8種類からアイコンを選べるので、内容によってルールを決めて分類するとよいだろう。

 矩形で範囲選択するPhoto Transport、ページ単位で転送するData Transport。どちらが使いやすいかは、転送する内容による。手数の点では、プリント操作で完了するData Transportが楽に感じた。転送後は、EX-S770上面のDATAボタンによるアクセスの良さも光る。内蔵メモリの活用法としてもスマートだ。


Data Transportをインストールすると、プリンタ一覧に「CACIO DATA TRASPORT」が出現 プリントすると、アイコンやファイル名の選択ダイアログが現れる

本体のDATAボタンを押すと「DATA INDEX」画面を表示する DATAボタンは本体上部右端にある

拡大や回転も行なえる

 ただし、EX-S770の液晶モニターは960×240ピクセルとPCディスプレイより解像度が低いため、Webページなどは縮小して表示することになる。PDAや携帯電話などのPDF表示機能と同じく、拡大やスクロールを駆使して閲覧することになる。そのため、Webページの一部だけを持ち歩きたい場合は、矩形で切り取るPhoto Transportの方も利用価値が高い。

 小旅行に出る際、地図、時刻表、ホテルの予約結果など、パソコンで調べて得た情報をすべてEX-S770に入れて出かけてみた。サブカメラとして首から下げつつ、必要なときに情報を確認できるので結構便利。とりわけ地図が有用だった。液晶モニターは1,100cd平方/mと明るく、屋外でのデータ閲覧も十分こなせる。また、拡大やスクロールなど表示関連のレスポンスも良く、解像度以外での不満は生じなかった。

 電池の持ちが少々心配だったが、移動中のスナップ以外にカメラ機能をあまり使わなかったこともあり、充電することなく4日間を乗り切ることができた。ちなみに、CIPA規格準拠での撮影可能枚数は約200枚。最近の基準からいえば物足りないが、日常や小旅行のスナップ用途なら大丈夫だろう。バッテリーはEXILIM CARDシリーズ共通の「NP-20」だ。

 いまや旅先で必要になる情報は、携帯電話があれば現地で見ることができる。カーナビゲーションでも検索は可能だ。しかし、「調べものは基本的にPCで」という人なら、「調べて必要なら転送」というEX-S770の方が、現地での手間もかからず使いやすいと思う。


EXILIMらしいキビキビした動作

 撮像素子は1/2.5型有効720万画素CCD。EX-S600の有効600万から高画素化した。逆に、最高感度はISO1600からISO800にダウン。レンズはEX-S600と同じく、焦点距離38〜114mm(35mm判換算)、F2.7〜5.2。スペック的にはEX-S500(2005年6月発売)から変わりなく、新鮮味は薄い。マクロモードの最短距離15cmも、他社の同クラスと比較すると物足りないかもしれない。また、光学式手ブレ補正を各社がラインナップする中、スペック的な引きが薄いのも確かだ。

 なおEX-Z1000と同じく、液晶モニター右サイドに情報表示をまとめる「操作パネル」機能が利用できる。また、表示画質を「ダイナミック」、「リアル」、「ナイトモード」、「パワーセーブ」から選べるところも、EX-Z1000譲りだ。明るさは約1,100cd平方/m。視認性に問題はなく、順光での使いやすさはトップクラスといえる。

 撮影機能は、最近のEXILIM EX-Z/EX-Sシリーズを踏襲。起動、AF、記録といった各動作がキビキビしており、使っていて気持ちがいい。

 EZ-Z1000からの機能、「HDズーム」も搭載。低記録解像度時に記録画素の中央を切り出して、補間することなく望遠端を伸ばす機能。ただし、広角端から切り出せたEX-Z1000と異なり、EX-S770では望遠端からしか切り出せない。EX-Z1000はレンズの明るさを維持したままHDズームで画角を狭められたので、できればほかの機種にも採用してほしいところだ。

 電源OFF後に設定内容を引き継ぐかどうかを選べる「モードメモリ」は、自分の好みや被写体によって設定をコントロールできる機能。十字ボタンの左右に、測光方式、EVシフト(露出補正)、ホワイトバランス、ISO感度、セルフタイマーを割り当てられる「左右キー設定」も便利だ。いずれも高いカスタマイズ性を提供する。そのほか、最大3回連続でストロボ撮影を行なう「ストロボ連写」や、3回連続で記録する「セルフタイマー×3」など、最近のEXILIMシリーズの機能を網羅している。


SDHCメモリーカードに対応 背面右手側の操作部。少し狭くるしい

まとめ

 大型化・高精細化が進む液晶モニターの利用法として、データキャリング機能は面白い試みだ。実際に使い勝手は良く、常にクレードル経由で充電や転送を行なうユーザーには便利だろう。現在、情報を常に持ち歩きたいという欲求は携帯電話によって満たされた感があるが、毎日持ち歩くスリム系コンパクトデジカメでもありえるアプローチだと思った。

 そういえばかつて、デジタルカメラの黎明期に様々なファイルをJPEGへと変換し、デジタルカメラで閲覧しようと試した時期が個人的にあった。しかし、手間と表示品質を考えると、ほとんど実用的ではなかったことを思い出す。それを考えると、EX-S770のデータキャリング機能は大変有意義で良くできた機能だと思う。欲をいうなら、転送データの保存領域(内蔵メモリ)を強化してもらいたいし、検索機能とはいわないものの、フォルダを作成しての分類機能も欲しいところだ。各社のスタイリッシュコンパクトが機能面で平準化する中、こうした実験的な機能を今後も採り入れてほしい。


作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/ベストショット名/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


◆ISO感度


ISO50
3,072×2,304 / BS:オート / 1/2秒 / F2.7 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 6.2mm
ISO100
3,072×2,304 / BS:オート / 1/2秒 / F2.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.2mm

ISO200
3,072×2,304 / BS:オート / 0.3秒 / F2.7 / 0EV / WB:オート / 6.2mm
ISO400
3,072×2,304 / BS:オート / 1/6秒 / F2.7 / 0EV / WB:オート / 6.2mm

ISO800
3,072×2,304 / BS:オート / 1/15秒 / F2.7 / 0EV / WB:オート / 6.2mm
BS:高感度
3,072×2,304 / 1/13秒 / F2.7 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 6.2mm

◆そのほか


3,072×2,304 / BS:紅葉を写します / 1/80秒 / F2.7 / 0EV / ISO100 / WB:昼光 / 6.2mm 3,072×2,304 / BS:夕日を写します / 1/400秒 / F6.5 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 12.8mm

3,072×2,304 / BS:紅葉を写します / 1/125秒 / F4.8 / -0.67EV / ISO50 / WB:昼光 / 7.6mm 3,072×2,304 / BS:オート / 1/320秒 / F6.5 / -0.67EV / ISO50 / WB:昼光 / 12.8mm

3,072×2,304 / BS:風景を写します / 1/320秒 / F7.4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 15.3mm 3,072×2,304 / BS:オート / 1/400秒 / F5.2 / -0.67EV / ISO50 / WB:昼光 / 18.6mm

3,072×2,304 / BS:オート / 1/200秒 / F4.1 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 12.8mm 3,072×2,304 / BS:紅葉を写します / 1/320秒 / F4.8 / 0EV / ISO50 / WB:昼光 / 7.6mm

3,072×2,304 / BS:オート / 1/250秒 / F7.4 / -0.67EV / ISO50 / WB:昼光 / 15.3mm 3,072×2,304 / BS:オート / 1/125秒 / F2.7 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 6.2mm


URL
  カシオ
  http://www.casio.co.jp/
  製品情報
  http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_s770/

関連記事
カシオ、2.8型ワイド液晶を搭載した「EXILIM CARD EX-S770」(2006/09/28)



本誌:折本 幸治

2006/12/12 00:37
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.