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【新製品レビュー】エプソン R-D1s

〜細かな変更で磨きをかけたレンジファインダーデジカメ
Reported by 中村 文夫

 エプソン「R-D1」は世界初のレンズ交換式レンジファインダー式デジカメとして2004年に誕生。「R-D1s」はこの春に登場した後継機だ。

 R-D1sの変更点はボディ側と付属ソフトに分けることができる。ボディ側の変更点は全部で6点。箇条書きにすると以下の通りになる。


  1. RAWとJPEGの同時記録が可能
  2. 撮影シーンに合わせたフィルム設定が可能
  3. Adobe RGB対応
  4. 撮影画像を16倍まで拡大表示
  5. クイックビュー機能の追加
  6. 長時間露光ノイズ低減モード追加


 ソフト側の変更点は、RAWで撮影した600万画素のデータから1,354万画素の出力が可能になったこと。これはカメラ本体に付属する専用RAW現像ソフトPhotolier(フォトリエ)のバージョン1.21で初めて採用された機能だ。

 今回のレポートでは、以上の変更点を中心に解説することにしたい。





RAWとJPEGの同時記録

RはRAWの意味だが、RAWだけなのか、RAW+JPEGなのか見分けが付かない
 この機能を利用するためには、機能設定モードでRAW設定画面を呼び出し、RAWだけにするかRAW+JPEGにするかを最初に選んでおく必要がある。つまり、背面右上の品質/ホワイトバランス設定レバーをQ側に倒し、JOGダイヤルで設定するという通常の画質変更の操作では選べない。どちらかというとカスタムファンクションに近い設定方法だ。

 さらにボディ上面の指針表示はR、H、Nの3種類だけ。表示を見ただけでは、RAWだけなのかRAW+JPEGの両方を記録するのか分からない。指針の目盛りをもう一つ増やせば、もっと使いやすくなったはずだが、今回はボディ内のソフトウェアの変更がメイン。ここまでは手が回らなかったようだ。


撮影シーンに合わせたフィルム設定

 R-D1のフィルム設定は、標準以外に自分で設定を変えたデータを3種類まで保存できる。R-D1sのフィルム設定も基本的にR-D1と同じだが、それぞれにあらかじめ被写体に合わせた設定が保存してある点が大きく異なる。また、この設定は自由に変更することができ、オリジナルのフィルム設定も保存可能だ。

 設定1が人物、設定2が風景、設定3が夜景。液晶モニター画面を見ればわかる通り、エッジ強調、彩度、色合い、コントラスト、ノイズ低減の5項目が、被写体に合わせて最初から設定してある。ただし、この設定画面には、人物、風景、夜景の文字がどこにも見当たらない。したがってメモを書いたシールなどをカメラに貼っておかないと、どの設定がどの被写体に対応するのかが分からず、表示としては不親切だ。

 このカメラの液晶モニターを裏返すと、レンズの焦点距離と画角を示す換算表が表示されているが、それよりもフィルム設定の内容をここに表記すべきだろう。ついでに言わせてもらうと、ホワイトバランス表示も天気図のマークのようでいつまでたっても憶えられない。この点についてもマークの対応表が必要ではないだろうか。


フィルム設定は標準のほか3種類の設定が保存可能。あらかじめ3種類が調整済み 設定1(人物)

設定2(風景) 設定8(夜景)

Adobe RGB対応

 一般にはあまり使う機会のないモードだが、最近ではAdobe RGBの色空間に対応したプリンタも増えており、これからの高級機には不可欠の機能だ。


撮影画像を16倍まで拡大表示

液晶モニター裏のレンズ換算表。ここにフィルム設定とホワイトバランスの説明が欲しい
 従来はJPEG=9.4倍、RAW=2倍だった撮影画像の最大拡大率が、JPEG、RAWともに16倍まで引き上げられた。ただし画面の移動はJOGダイヤルを使って行なう方式なので、移動方向を切り替えるためには、その都度エンターボタンを押さなければならず、ちょっとまどろっこしい。

 もちろんこのカメラの場合、フィルムカメラに似たカタチを追求した結果、こうなったわけだが、デジタルカメラとしての操作性が犠牲になっていることは否定できない。


クイックビュー機能の追加

 これまで付いていなかったことが不思議に思えたが、実際に使ってみて、付いていなかった理由がよくわかった。

 というのは、内蔵しているビューファインダーの視野率が想像以上に低く、撮ってすぐにモニターで画像を確認すると、ファインダー画角設定を間違えたかと思えるほど余計なものが写っているからだ。R-D1sのファインダー視野率は85%(2m時)。レンジファインダー機としては平均的な値だが、モニターをファインダー代わりに使うデジカメに比べるとかなり低い。つまり100%と85%の差が如実に現れてしまったのだ。

 このような問題はM型ライカの時代から起こっていたはずだ。だがフィルムカメラの場合、撮影してから現像後のフィルムを見るまで、最速でも数時間かかるので、これに気付かなかっただけの話。クイックビュー機能がなかったR-D1の場合も同様で、撮ってから画像を確認するまでの間に自分がどんなフレーミングで撮影したかを忘れてしまい、気にならなかったのだ。これを恐れたためR-D1では敢えてクイックビュー機能を省いたのではないだろうか。

 あくまで私見だが、ライカと同じような感覚でR-D1sを使いたのなら、クイックビュー機能はOFFにした方がよい。


長時間露光ノイズ低減モード

 エプソンのホームページには、ノイズについて以下のように書かれている。「画像にはある程度ノイズが残っているほうが、印刷時の階調性が高まります。しかし、極端なノイズやデジタルカメラならではのノイズはやはり気になるのも当然です。そこで、極暗部の暗電流ノイズや高感度撮影時特有のノイズ、また長時間露光時特有の長時間露光ノイズなど、デジタル特有のノイズを抑え込むことに、エプソンは徹底的にこだわりました」。

 これを拡大解釈すると「ノイズを排除しすぎると印刷時の階調が失われ不自然に見える」ということ。プリンタメーカーらしい言い分だ。だからR-D1にノイズ低減機能を入れなかったというのは考えすぎかも知れないが、とにかくR-D1sには長時間露光ノイズ低減モードが追加された。もちろん不要であればOFFにすることも可能。いずれにしても暗い場所でもストロボを使わずに撮影することが多いレンジファインダー機にとって、歓迎すべき改良といえるだろう。

 ノイズ低減モードを持たないR-D1とノイズ低減モードをオンにしたR-D1sで比較したところ、ISO200ではそれほど差は感じなかったが、ISO400以上で差が現れ始める。さらにR-D1sでもノイズ低減モードのON/OFF、あるいは夜景モードで撮り比べてみたところ、ISO400以上でノイズ低減モードをONにしたほうが暗部のノイズが目立たなくなった。また、フィルム設定標準+ノイズ低減モードONの場合、夜景モードとの実質的な違いはノイズ低減の強弱だけのようだ。

 撮影結果の差は、ほんのわずかだが、プリントで比較すると夜景モードの方が少しざらついた印象を受ける。恐らくこれがエプソンのいう「ノイズを排除しすぎると印刷時の階調が失われ不自然に見える」ということなのだろう。いずれにしても甲乙を付けるのは難しく、最終的な判断は使用者の好みに委ねるしかない。


1,354万画素の出力が可能になった新しい「Photolier」

 R-D1sに付属する新バージョンのPhotolierの最大の特徴は、「Epson Print Image Control Technology」によって、600万画素で撮影したRAWデータから1,354万画素の出力が可能になったこと。使用方法は簡単で、RAW現像したデータを保存する際に、出力パラメータ設定画面で1,354万画素の出力サイズを選ぶだけだ。なお旧製品のR-D1で撮影したRAWデータで試してみたところ、1,354万画素の出力が可能だった。ただしバージョン1.21のPhotolierは、今のところR-D1s付属のCDに収められているだけ。旧製品ユーザーのために、1日も早くダウンロードできる体制を整えてほしい。

 600万画素と1,354万画素で出力したデータは、モニター上で200%以上に拡大して初めて差がわかるといったレベルだ。それだけ600万画素の画質が高いということだが、よく見ると1,354万画素の方が、画像の輪郭がなめらかで階調も豊かだ。またA4判でプリントした場合、1,354万画素のほうが立体感が豊かに見える。恐らくA3以上にプリントすれば、両者の差はさらに顕著になるだろう。


Photolier1.21(Mac用)のメイン画面。左にファイル内の画像サムネイルを表示。現像する画像を選び、中央のプレビューで詳細を設定する。その後右側の現像候補ペインに入れ、現像ボタンを押すと一括で現像処理される 保存のときに出力パラメータ設定画面が現れるので、ここで出力サイズを選ぶ。カラースペースや保存形式なども細かく設定できる

多彩な撮影スタイルが楽しめるオプションも充実

 8月24日までにR-D1sを買うと、オリジナルのソフトレリーズボタンがプレゼントされる。これはシャッターボタンのレリーズ穴にねじ込み、レリーズの感触をソフトにするためもので、M型ライカでは定番アクセサリーだ。指にあたる面には「R」の文字が埋め込まれ、高級感のある仕上げだ。

 このほか専用アクセサリーとして、本革のカメラケースも用意された。レンズとカメラ上面を被うカバーと、カメラ本体を保護する2ピースタイプのケースで、いわゆる速写ケースと呼ばれる製品である。

 ケースに入れたまま液晶モニターが確認できるほか、SDメモリーカードの出し入れができるよう形状にも工夫が凝らされている。カバーがボディ全体をくるむ構造のため、右手でグリップする部分が太くなりホールディング感はやや失われるが、ファッションとしてクラシカルな撮影スタイルを楽しみたいユーザーには必携のアクセサリーといえるだろう。


購入者プレゼントのソフトレリーズボタン。赤文字とシルバー文字の1セットが進呈される 取り付けると、シャッターボタンの背がかなり高くなる。押しやすさという点では好みが別れるだろう

別売の本革ケースを装着したところ。本革ケースは量販店では13,000円弱で販売中

往年の速写ケースといった趣 液晶モニターも利用できる

最後にひとこと

 「後継機ではない完成形である」――これがR-D1sのキャッチフレーズだ。確かに今回の改良により、デジタルカメラとしての完成度はずいぶん高まった。しかし、クイックビューの搭載によりファインダー視野率の問題が表に出るなど、レンジファインダー機の弱点を露呈することにもなってしまった。またメインスイッチがONになっていても、カメラがスリープ状態だと、いきなりシャッターを押してもレリーズできないなど、レンジファインダー機として改善すべき点も未解決のままだ。

 そんな意味でR-D2ではなく、R-D1sという名前にしたのだろう。次にR-D2が出るときは、ぜひレンジファインダー機としての完成形を目指してほしいものだ。


作例

左からズミクロン 50mm F2、同35mm F2、Mロッコール 28mm F2.8
※作例のリンク先ファイルは、JPEGまたはRAWで撮影した画像を使用しています。
※写真下の作例データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランスを表します。


◆ノイズ低減モードとフィルム設定

 撮影に使用したボディには輝点画素(特定の画素が常時明るい点として写る現象)があり、これに気付かないまま撮影してしまった。そのためノイズ低減モードOFFの画像には輝点画素がしっかり写っている。またノイズ低減モードONの場合、ISO200と400では輝点画素きれいに消えているが、ISO800を越えると補正しきれず残っている。

 ノイズ低減モードオンと夜景モードの画像をモニターで比較した場合、夜景モードのほうが空の部分のノイズが少なく見える。だが実際にプリントしてみるとノイズ低減モードONの方がザラツキが少なく自然な感じに仕上がった。この辺りの差はかなり微妙なので、自分で実験してベストの設定を見つけることをお勧めしたい。

○フィルム設定「標準」


ノイズ低減ON
カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:昼光
ノイズ低減OFF
カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:昼光

ノイズ低減ON
カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:昼光
ノイズ低減OFF
カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:昼光

ノイズ低減ON
カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1/3秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / WB:昼光
ノイズ低減OFF
カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1/3秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / WB:昼光

ノイズ低減ON
カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1/6秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / WB:昼光
ノイズ低減OFF
カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1/5秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / WB:昼光

○フィルム設定「夜景」


カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:昼光 カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:昼光

カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1/3秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / WB:昼光 カラースコパー 50mm F2.5 / 3,008×2,000 / 1/6秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / WB:昼光

◆ISO感度(R-D1との比較)


R-D1s(ノイズ低減ON)
Mロッコール 28mm F2.8 / 3,008×2,000 / 2秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO200 / WB:昼光
R-D1
Mロッコール 28mm F2.8 / 3,008×2,000 / 5秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO200 / WB:昼光

R-D1s(ノイズ低減ON)
Mロッコール 28mm F2.8 / 3,008×2,000 / 2秒 / F11 / -0.7EV / ISO1600 / WB:昼光
R-D1
Mロッコール 28mm F2.8 / 3,008×2,000 / 2秒 / F11 / -0.7EV / ISO1600 / WB:昼光

◆Adobe RGBとsRGB


Adobe RGB
3,008×2,000 / 1/274秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:曇天
sRGB
3,008×2,000 / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:曇天

◆Epson Print Image Control Technology

 左が600万画素(撮影時の解像度)、右が1,350万画素。モニター上だと、かなり高い倍率に拡大しないと差が分からない。実際にA4にプリントしたところ、1,350万画素の方が少しだけ立体感が強く見えた。絵柄にもよるが、1,350万画素の真価はA3以上にプリントしたときに発揮されるだろう。


Mロッコール 28mm F2.8 / 3,008×2,000 / 1/294秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート Mロッコール 28mm F2.8 / 4,512×3,000 / 1/294秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート

ズミクロン 50mm F2 / 3,008×2,000 / 1/84秒 / F5.6 / 0.7EV / ISO200 / WB:オート ズミクロン 50mm F2 / 4,512×3,000 / 1/84秒 / F5.6 / 0.7EV / ISO200 / WB:オート

◆そのほか


ズミクロン 35mm F2 / 3,008×2,000 / 1/147秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート ズミクロン 50mm F2 / 3,008×2,000 / 1/2,000秒 / F8 / 0.7EV / ISO200 / WB:オート

Mロッコール 28mm F2.8 / 3,008×2,000 / 1/338秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート 夜景モード
ズミクロン 35mm F2 / 3,008×2,000 / 1/17秒 / F2 / 0EV / ISO200 / WB:昼光

Mロッコール 28mm F2.8 / 3,008×2,000 / 1/11秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート Mロッコール 28mm F2.8 / 3,008×2,000 / 1/6秒 / F2.8 / 0EV / ISO800 / WB:オート

Mロッコール 28mm F2.8 / 3,008×2,000 / 1/4秒 / F2.8 / 0EV / ISO1600 / WB:オート


URL
  エプソン
  http://www.epson.jp/
  製品情報
  http://www.i-love-epson.co.jp/products/rd1s/

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中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2006/05/16 14:42
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