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“旅カメラ”「LUMIX DMC-TZ1」でオランダ旅日記

Reported by 若林 直樹

2,560×1,920 / 1/1,000秒 / F5 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 38mm

 友人から「デジタルカメラコンパクト機のお勧めは?」と訊かれると、「気楽に撮るなら手ブレ補正が優秀なLUMIXはどう?」って答えることが多い。そんなLUMIXシリーズに「旅カメラ」を名乗る「DMC-TZ1」が発売され、ちょっと気になっていた。光学10倍ズームで世界最小なのだから旅にはもってこいなのかもしれない。

 そんなこと思っていたらオランダの友人から結婚するから式に出ろという。もちろん写真を撮ってもらいたいのだ(笑)。オランダは行ったことがないし、式やパーティーは古城を借り切ってやるという。それなら気になっていたDMC-TZ1を使ってみた~い! とデジカメWatch編集部にお願いしたところ、出発前日に借してもらえたので、撮りまくってくることを約束して旅立ったのである。

 実際手に取ってみると最近の薄型モデルに目が慣れてしまったせいか、本体はちょっと大きく感じる。が、ぎりぎりポケットに入る大きさだ。DMC-TZ1とともに専用革ケースも借りたが、これが幸いしたのだ。その話は最後に……


※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


持参したDMC-TZ1。本体色はシャンペンゴールド 向かって左に付けているのが専用革ケース。同色のストラップも付属する




1日目――成田からアムステルダムへ

 飛行機はJAL便で成田を12時45分発である。離陸寸前に気を失ったように寝てしまい、ふと気が付いたら空の上。外は雲一面。食事して、映画見て、また寝て――しばらくすると窓から見える眼下の世界は雲一面と思いきや、シベリアの大雪原に変わっていた。そうかソビエト連邦時代は上空を飛べなかったから、すっごく大回りしていたんだっけな……と思いつつまた外を見たら絶景である。

 シーンモードに「空撮」がある。飛行機の窓から見る景色を撮るのにうってつけのセッティングらしい。つまり無限遠に焦点距離が固定され、間違えて窓に合わない設定なのだ。ただし欠点があった。持参したカメラ本体が黒くない。

 飛行機は二重窓なので外側のガラスにカメラが写ってしまうのだ。写真を見てもらうとわかる様に、空にうっすらとレンズ周辺の円が映っている。


 
シベリヤの雪原。凍った川がよくわかる。シーンモード「空撮」で撮影した。

撮影データ:2,560×1,920 / 1/800秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm



 現地時間17時30分。オランダのアムステルダム・スキポール空港に到着! 昼に出発して夕方着なのである。と言っても時差が7時間あるので12時間のフライトである。

 DMC-TZ1にはトラベル日付とワールドタイムが登録できるのだ。早速オランダに設定したが、サマータイムだったので1時間ずれて記録されてしまった。座っているだけでも疲れたが、荷物をホテルに置き、すぐに新郎フィリップに連れられて夜の散歩。そして一杯。


 
シーンモード「夜景」。左手前は知る人ぞ知るオランダならではの怪しいコーヒーカフェ。液晶モニターを見て明るすぎると思い、-1に露出補正した。予想よりに暗く写ってしまったが、雰囲気は出ている。

さすがに1/1.6秒ではブレてしまうし、感度は上げたくなかったので三脚を使用した。

撮影データ:2,560×1,920 / 1/1.6秒 / F2.8 / -1EV / ISO80 / WB:オート / 35mm





2日目――ザーンセ・スカンスの風車

 予定では結婚式前の2日間で撮りまくりの予定だが、ノンビリした雰囲気に包まれて、こちらもすっかりノンビリ。重い腰を持ち上げて向かったのがザーンセ・スカンスである。風車のある農村だ。オランダには世界遺産の「キンデルダイクの風車」もあるがちょっと遠い。次回にすることにした。


 
車から降りると新旧3基の風車が! まさにオランダだ。

レンズは35mm判換算で35~350mm相当と広角が弱い。このような広々した所ならいいが、せめて28mmはないと建物が入らないことも。

撮影データ:2,560×1,920 / 1/800秒 / F5 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 35mm


 
上の写真と同じ位置から望遠端にズーム。35mm判換算で350mm相当なのだ。風車が切れてしまうぐらい寄れるのだから、好き放題アップの写真が撮れる。

撮影データ:2,560×1,920 / 1/640秒 / F7.1 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 350mm


 
風車内の窓から隣の風車を撮る。シーンモードは使わず通常撮影で撮ったが、窓の外の風車にピントを合わせるのに苦労した。風景モードや空撮モードなら遠くに合いやすいのだろう。

撮影データ:2,560×1,920 / 1/400秒 / F5 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 35mm


 
一部は観光水車&牧場になっているが、周辺には小さな家もある。

深みのある色を出したかったので露出補正を-0.3にしての撮影だ。

作例データ:2,560×1,920 / 1/640秒 / F5 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 35mm


 
付近で働いている人の家なのか、入り口は可愛らしく飾ってある。補正やモードは使わずすべてオートでの撮影。

VIVIDモードでの撮影も考えたが、派手にならない方が雰囲気があるとの判断だ。

2,560×1,920 / 1/200秒 / F3.4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 52mm




 ザーンセ・スカンスの後は市内に戻り、夜景を撮るため歩き回る。トラム(路面電車)は夜中まで走るし、人は多いので安心感はある。しかしひったくりや置き引きに気を付けて、カメラは常に腰のホルダーの中である。


 
夜景モード。ダム広場にある王宮である。17世紀に立てられた物で現在は迎賓館になっている。

幻想的にライトアップされている建物の裏の広場では移動式遊園地になっていて人が賑わい対照的だ。周辺工事の影響でライトアップが少なく三脚立てての撮影。

2,560×1,920 / 1.3秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 35mm




 オランダは日没が遅く夜の9時になってようやく暗くなる。すっかり時間の感覚がなくなり0時を回ってから慌ててホテルに戻った。おかげで撮った写真はノートPCにバックアップしただけで、ホテルでは何もできずじまいだ。





3日目―チューリップで名高いキューケンホフへ

 早起きして今日は精力的に撮るぞ! もう余裕がないぞ! そして天気もいい! 明日挙式をあげる新郎が午前中案内してくれるからありがたい。

 旅したら必ず寄りたいのが漁港である(私の趣味)。オランダから車で1時間(朝のラッシュ付き)の所にあるフォーレンダムという小さな漁村だ。といっても観光地にもなってお土産屋もある。


 
港にある漁船。ここでは小エビ漁が盛んだ。

このシーンは通常撮影と「風景」モードで撮影したが、普通モードの方が自然に感じたのでこれを選んだ。

作例データ:2,560×1,920 / 1/1,600秒 / F5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 35mm


 
ヨットの横にあるフィンのような物は、普通ヨットの中央にあるキール(センターボード)の代わりになるものだ。舷側の両側にあり、浅い海でバランスを取る。

通常撮影で補正なしだが、白飛びせずに船体の質感が出た。

作例データ:2,560×1,920 / 1/1,000秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm


 
友人が駐車場のチケットを買っているのを急いで撮る。起動時間0.95秒、実質1.5秒ぐらいで撮れるので「撮りたい!」という時に素早い撮影が可能だ。

作例データ:2,560×1,920 / 1/500秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm




 次に向かったのはチューリップで有名なキューケンホフだ。


 
キューケンホフ周辺の畑はチューリップが咲いている。素晴らしい色の絨毯だ。

通常撮影で露出補正を-2/3にして色に深みを出している。

作例データ:2,560×1,920 / 1/640秒 / F5 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 35mm


 
4月から5月にかけてしか見られないチューリップなど、沢山の花が咲いている。公園中チューリップなので、一生分のチューリップを撮った気分。

右からの光だがベタな感じになり、特に奥のオレンジなどは派手な色の出方をしている。

作例データ:2,560×1,920 / 1/800秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 35mm


 
公園からは自力で帰らなくてはならない。しかしそれも旅の醍醐味。バスと電車を乗り継いでアムステルダム駅まで帰ってきた。

この写真もとっさに撮った物だが、電車を中央にしたのが幸いしたのか、いい露出になった。

作例データ:2,560×1,920 / 1/400秒 / F3.9 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 118mm


 
アムステルダム駅に夕方6時30分に着いたがまだ明るい。駅から歩くこと10分、旧教会がそびえ立っている。

さすがにこれだけ大きな建造物を画角に収めるのは難しい。露出が建物に引きずられ、青空が飛ぶのを警戒して露出補正を-0.3にしている。

作例データ:2,560×1,920 / 1/800秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 35mm


 
オランダは町も畑もどこに行っても水路がある。町中の水路には水上バスも走り、重要な交通手段になる。

ここでの撮影も日のあたる建物が飛ばない様に露出補正を-0.7にしている。

作例データ:2,560×1,920 / 1/640秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 35mm


 
レストランのメニューはオランダ語と英語が書いてあるので、指さし注文できる。

料理モードで撮ってみるが店内はが暗く、感度をISO200にして1/8秒に挑戦である。多少甘い感じがするが私的にはこれでOK。

作例データ:2,560×1,920 / 1/8秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 35mm





4日目――デ・ハール城での結婚式

 さー結婚式だ! 天気は曇り時々雨時々晴れという微妙な状態。昨日とまでとはうってかわって寒い日だ。


 
古城「デ・ハール城」。一時廃墟と化したものを、今のオーナーが買い取り修復したという。ここを借り切っての結婚式だから、ワクワクしてしまう。太陽が隠れているためにより古びた感がある。

空が飛ばないように-0.7に露出補正しているが、コントラストももう少し上げるために風景モードにした方がよかったかもしれない。

作例データ:2,560×1,920 / 1/800秒 / F5 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 35mm


 
城のオーナーは年に1週間だけここに住むという。城の内部はコレクションが多数あり、普段は観光客に開放している。

ズームで撮りたい画角にして撮影。露出補正は-0.3だ。

作例データ:2,560×1,920 / 1/400秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 47mm


 
式は城に隣接した教会で行なわれた。日本とは違い、式の前に市役所に届ける書類にサインをする儀式がある。挙式は男女の素晴らしい歌があり神父の長い話があるが、飽きさせずいい感じの式だった。

このシーンは5枚中、ブレなかったのが2枚。手ブレ補正付きでも1/15秒以下の時はきちんと構えないとダメである。

作例データ:2,560×1,920 / 1/13秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 35mm


 
式が終わると近親者たちのディナーパーティー。その後大勢が集まった城のホールで盛大なパーティーが夜中の0時まで繰り広げられる。

陽気なお嬢さんがポーズを撮ってくれたが、カメラの縦位置を間違えストロボがレンズの下になってしまい腕などの影が上に出てしまった。

作例データ:2,560×1,920 / 1/30秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / WB:ストロボ / 35mm


 
パーティーは新郎新婦のダンスで始まり、ダンスホールと化した。もちろん私も花嫁と踊ったのだ。

写真はストロボONだが、ISO200のためか予想以上にノイズがのった。

2,560×1,920 / 1/30秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO200 / WB:ストロボ / 35mm





5日目――最終日

 この日はクイーンズデー。女王さまを祝うオランダで一番大きな祭日である。それを見てから夕方の飛行機で帰る予定だ。


 
世話になったホテルの部屋。他の客は小さな部屋だが、クイーンズデーと言うことで客が多く、特別にオーナーの母親の部屋を貸してくれた。

ISO感度を200にしての撮影だがここでもノイズが顕著に出ている。ISO80で撮れば良かったと後悔。

作例データ:2,560×1,920 / 1/60秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 35mm


 
町中にはこのようなポスト? がある。いやポストでなく犬の糞入れなのだ。犬を飼うのは登録が必要で、「犬税」もある国なのだ。それだけに犬福祉? もちゃんとしている。

海外旅行は思わぬ物を見かける。それをサクッと撮るにはコンパクトデジカメで起動の速いDMC-TZ1がちょうどいいのだ。

作例データ:2,560×1,920 / 1/800秒 / F5 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 35mm


 
町中がオレンジの物を着たり持ったり乗せたり……水路も道も人でいっぱいである。

感度をISO80に戻しての画はノイズが無くキレイである。

作例データ:2,560×1,920 / 1/500秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 61mm





 結局DMC-TZ1の設定は、ISO80、露出補正-0.3、シーンモードはあまり使わない、というのが私的によい写真だった。もちろんシーンモードが有効に働くシチュエーションもあるから、カメラのダイヤル2つにシーンモードを登録してサクッと切り替えて使えばよい写真が撮れるだろう。

 また極力ISO80がいい。下手に高い感度に頼ると泣きを見る。どうしてもと言う時だけにしたい。10倍ズームはそれほど使わないが、あればそれだけ撮影の幅が広がりいい思い出作りができるだろう。



 さて、この旅の終わり頃、カメラバックを盗まれてしまった。バッグの中にはレンズやら航空券やら……警察に行ったり航空券の再発行して何とか帰国できた。これから旅行保険の携帯品保険の手続きをしなきゃならない。

 DMC-TZ1は腰に付けたカメラホルダーに入れていたので助かった。貴重品を持って歩く時は体から離さないように。旅慣れているつもりでドジな私。皆様はくれぐれも気をつけて旅を楽しんでほしい。



URL
  松下電器
  http://panasonic.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/tz1/

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若林 直樹
雑誌、広告等の仕事の傍ら、ライフワークとして自然や 癒される空間を求めて国内外を旅している。撮影対象はICチップからアフリカ象まで幅広い。デジタルカメラは1995年からコンパクトからプロ機までテストレビューに携わる。自宅ではフェレットをこよなく愛し、我が家で生まれた5匹と暮らす。いつかフェレットの写真集を出そうと企み中。HPはhttp://homepage2.nifty.com/nao-w/

2006/05/15 14:06
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