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【新製品レビュー】松下電器 LUMIX DMC-LZ5

低価格なのに6倍ズーム、手ブレ補正&高感度の実力派
Reported by 北村 智史

 光学6倍ズームを搭載したDMC-LZ2(2005年2月発売)の後継モデル。高級感のあまりない見た目どおり、実勢価格約35,000円の低価格モデルだが、光学式手ブレ補正機構はきちんと内蔵している。CCDの有効画素数が500万から600万画素にアップ。液晶モニターも2型から2.5型に変更されているほか、最高ISO1600相当の高感度撮影が可能など、さまざまな改良がほどこされている。ボディカラーはシルバーのみ。


ライカレンズじゃない? でも写りは十分

 低価格モデルだけあって、レンズはライカではなく「LUMIX DC VARIO」の光学6倍ズーム。35mmフィルム換算で37~222mm相当の画角で、開放F値はF2.8~4.5。望遠端の明るさはF5.6前後になりつつある最近では、平均よりやや明るい部類に入る。しかし、同社のウェブサイト上にはあいかわらず「F2.8の明るいレンズ」と書かれていて、それが広角端だけであることや望遠端がF4.5であることについては触れられていない。デジカメWatchの読者なら鼻で笑うだけかもしれないが、カメラに詳しくない一般ユーザーが勘違いする可能性は十分にある。

 実写では、広角端、望遠端ともに絞り開放の画面周辺部でややアマくはなるものの、全体的には悪くない。ただ、CCDの素性の問題なのかはわからないが、LZ2のほうが若干シャープ感が高いように思える。とはいえ、価格から考えれば十分以上の写りだし、普通の3倍ズーム機とはまったく違う望遠撮影が楽しめる魅力は大きい。

 3M(315万画素記録)以下の画素数で撮影する場合、光学ズームの倍率が最大8.3倍となるEX光学ズームももちろん装備。コンパクト機で35mmフィルムカメラの約300mmに相当する望遠撮影が可能なのも楽しめるスペック。もっとも、光学式手ブレ補正機構がなかったら気軽にチャレンジできる画角ではない。手ブレ補正さまさまである。





 電源は入手しやすい単三形電池×2本で、購入時には同社のオキシライド乾電池が付属している。CIPA準拠の撮影可能コマ数はオキシライドで約235コマ、アルカリで約140コマ、ニッケル水素(同社製HHR-3XPS。実力容量2600mAh)で約400コマとなっている。オキシライド乾電池は初期電圧が高いため、使用する電池の種類をメニューで設定しておく必要がある。電池を交換してから電源を入れると、設定されている電池の種類が表示され、設定ミスを防ぐようになっている。

 記録メディアはSDメモリーカードに加えて、静止画のみの対応となるがMMCも使用できる。また、14MBの内蔵メモリも備えている。その関係でSDメモリーカードは付属していないが、16MBとかのカードが付いていても使い道がないし、新品のカードをごみ箱行きにする後ろめたさを感じずにすむので、個人的にはこのほうがありがたい。


レンズは自社ブランドの「LUMIX DC VARIO」光学6倍ズーム。35mmフィルム換算で37~222mmに相当する。一般的な3倍ズームの2倍のアップが楽しめる 記録メディアはSDメモリーカード(MMCだと動画は撮れない)。また、14MBのフラッシュメモリも内蔵している

記録画素数を3M(315万画素)以下に設定すると、EX光学ズームが使用可能になる EX光学ズーム作動中の画面。光学ズームの幅が最大8.3×にまで拡張される

低価格機とはいっても、LUMIXらしくきちんと光学式手ブレ補正は搭載 手ブレ補正モードの選択。常時補正を行なう「MODE 1」と、より手ブレ軽減効果が高い「MODE 2」が選べる

電源は単三形電池×2本。新品のオキシライド乾電池ではCIPA準拠で約235コマの撮影が可能。ニッケル水素充電池なら約400コマ撮れる 使用する電池の設定をメニューで切り替える必要がある。違う種類の電池に交換したときは忘れないように

ISO800相当まで増感する「高感度モード」

 ISO感度はマニュアルではISO80相当からISO400相当まで。オート時はISO200相当止まりなのは上位モデルのFX01などと同じだ。シーンモードに「高感度」が追加され、ISO800相当からISO1600相当までの範囲で自動的に設定される。

 感度を上げていくと、ISO400相当までは順当にノイズが増えていく感じ。途中から赤の発色が沈んでしまうところは、前回レビューしたDMC-FX01と同じ傾向だ。ただ、FX01がISO400相当で発色の変化が見られたのに対して、LZ5はISO200相当で赤が沈む。同じ被写体で撮り比べていないので厳密にはいえないが、ISO400相当のノイズの量もFX01より多いように思える。

 筆者個人の感覚では、問題ない画質で撮れるのはISO100相当まで、A4サイズ程度にプリントするならISO200相当はちょっとノイズとディテール再現の低下が気になるかも、という感じである。

 シーンモードの「高感度」に設定すると、明るい状態でISO800相当、暗い場所ではISO1600相当までアップする。やはり画素混合+補間処理をやっているようで、若干被写体のサイズが変わる(FX01と異なり、左右だけでなく上下にも膨らむ)。

 ノイズによるザラツキはないが、ディテールはつぶれ、輪郭強調の線も太くなって動画的な写りになる。デジタル一眼レフカメラや、富士フイルムのコンパクト機の高感度とは大違いで、非常用もしくはL判プリント専用と割り切るべきだろう。が、割り切ってしまえばザラツキが少ない分、きれいに見えるので、十分に実用的だ。


ISO感度はオートではISO80~200相当の範囲で自動設定(ストロボ撮影時はISO400相当まで)。マニュアルではISO400相当まで設定可能 シーンモードの「高感度」ではISO800~1600相当のオートになる。もちろん、画質は低下するが、撮れないよりはずっといい

シーンメニューで十字キーの右を押すと表示されるインフォメーション。こういう親切設計は初心者にはうれしい

電池消耗を防ぐエコモードも装備

 コストダウンの影響が出やすいのが液晶モニター。サイズは2.5型と、2006年の春モデルとしては標準サイズだが、画素数は2型だったLZ2と同じ8.5万画素のまま。20.7万画素のFX01に比べると、画像の見えも、メニューの文字の見やすさも格段に落ちる。まあ、こういうのは低価格機には付きものであって、仕方のないところだと思う。

 これもコストダウンのためだろう、液晶モニターのバックライトの輝度をアップして晴天の野外などでの視認性をよくする「パワーLCD」機能が省かれている。が、「ハイアングル」機能は装備。腕を上に伸ばして撮るときなどにも液晶モニターが見づらくならない工夫がなされている。ただし、これも上位モデルのFX01のほうが見え具合はよかったように感じる。

 FX01などにない機能が、電池を節約できる「エコモード」。液晶モニターのバックライトの輝度をやや暗めにしたうえで、撮影後、何も操作しない場合に液晶モニターを自動で消灯して省電力化。電池寿命をさらに伸ばすことができる。液晶モニター消灯までの時間が15秒の「LEVEL 1」、5秒にして省電力効果をさらに高くできる「LEVEL 2」が選択できる。もっとも、液晶モニターが暗くなって野外では見づらくなってしまうため、できればお世話になりたくない機能でもある。

 また、LZ2と同様にシーンポジションが2つあるのも上位モデルにはないところ。よく使うシーンモードをあらかじめセットしておくと切り替える手間を少なくできて便利だ。


十字キーの下の「DISPLAY」ボタン(表示切替ボタン)を1秒間押しつづけると、「ハイアングル」モードに切り替わる ハイアングルモードのメニュー。カメラを頭上に掲げて人垣越しに撮りたいときなどに便利だ

単三形電池仕様らしい節電用エコモード(Eのアイコン)。シーンモードが2つあるのも上級機にはないところ。使用頻度の高いモードをあらかじめセットしておくと使い分けがらくちんになる エコモードは「LEVEL 1」と、より省電力効果の高い「LEVEL 2」から選べる

1コマ再生時の画面。ヒストグラムは撮影時にも再生時にも出る(もちろん、表示させないことも可能) マルチ表示は9画面から25画面まで可能だが、液晶モニターの画素数が少ないので、それほど便利ではないような気もする

まとめ

 低価格モデルという性格上、外観に高級感がなかったり、液晶モニターの表示が粗っぽかったりといったマイナスポイントが目に付くのはしかたのないところ。もっとも、メニューの文字が美しくないからといって写りが悪くなるわけでもないから、我慢できなくはないだろう。

 個人的にはFX01に比べてシャッターボタンのタッチが若干固いような感じがしたのが気になった。コストダウンのために安価な部品を使っているからなのかもしれないが、シャッターボタンのタッチが固いと、ボタンを押すときに無駄な力が入りやすく、その分手ブレを起こしやすくなってしまう。光学式手ブレ補正機構が入っているとはいえ、夕景や夜景などの低速シャッターでの撮影では神経を使うことになる。

 とはいえ、基本的な機能は上位モデルに引けは取らないし、レンズがライカブランドではないものの、写りに不満があるわけでもない。さすがにワイシャツの胸ポケットにすんなりと入ってくれはしないが、10~12倍ズーム機のようなごついボディではないので、それなりに気軽に持ち歩ける。それでいて、3倍ズームではイマイチ物足りない望遠側の迫力がぐっと出てくれるので、撮る楽しさがけっこう楽しめるシナモノだと思う。ただし、あと1万円ほど出せば10倍ズームのDMC-TZ1が買えるので、そのあたりは微妙なところかもしれない。


作例

※作例のリンク先ファイルは、撮影画像をコピーおよびリネームしたJPEGファイルです。
※作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算の焦点距離を表します。


◆画角の違い

 6倍ズームの望遠端は、乱暴にいうと、3倍ズームの2倍の迫力。もちろん、10倍ズームとかのほうが迫力は上だが、コンパクトサイズで本格的な望遠撮影が楽しめるのがLZ5の魅力である。


2,816×2,112 / 1/250秒 / F5.6 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 37mm 2,816×2,112 / 1/400秒 / F4.5 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 222mm

◆ISO感度

 ISO400相当まではごく普通に、感度が上がっていくにしたがってノイズが増えていき、細部の描写もアマくなっていく。ISO200相当で赤の発色が変わり、ISO400相当ではちょっと大判プリントはきついかなぁという画面になる。「高感度」のISO800相当以上になると、細部の描写は一気に悪くなる反面、ノイズによるザラツキは目立たなくなる。


2,816×2,112 / 1/5秒 / F3.7 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 118mm 2,816×2,112 / 1/5秒 / F3.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 118mm

2,816×2,112 / 1/10秒 / F3.7 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 118mm 2,816×2,112 / 1/20秒 / F3.7 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 118mm

2,816×2,112 / 1/40秒 / F3.7 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 118mm 2,816×2,112 / 1/30秒 / F3.7 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 118mm

◆EX光学ズーム

 EX光学ズームは、約1.4倍のテレコンバーターを内蔵しているようなもの。画素数は減ってしまうが、ズーム倍率を上げられるので、近づけない被写体をアップで撮れる。


【6Mモード】2,816×2,112 / 1/15秒 / F4.5 / -1.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 222mm 【3Mモード】2,048×1,536 / 1/15秒 / F4.5 / -1.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 305mm

EX光学ズームの望遠端で撮影。35mm判換算で300mmぐらいになると、太陽がそれなりの大きさに写る
2,048×1,536 / 1/1,600秒 / F9 / -1EV / ISO80 / WB:晴天 / 305mm
EX光学ズームを使ってめいっぱいに望遠にすると35mm判換算307mm相当になる。これでも1/30秒でブレずに撮れるのだから手ブレ補正は偉大だ
2,048×1,536 / 1/30秒 / F4.5 / -1.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 305m

◆一般作例


駅構内の花屋さんで撮ったカット。蛍光灯と白熱灯が混在する条件で、ホワイトバランスがズレやすい黄&オレンジ色の被写体だが、オートでかなりいい発色になった
2,816×2,112 / 1/40秒 / F2.8 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 37mm
シャッター速度1/6秒という、手ブレ補正機構がないと撮る気になれない条件だが、LUMIXだと「撮ってみよう」という気になる。もちろん、ちゃんと両手で構えないと成功率は低くなるが
2,816×2,112 / 1/6秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 37mm

こちらは同じ駅のパン屋さんのウィンドウ越しに撮ったカット。ここも蛍光灯と白熱灯のミックス光だったが、ちゃんとおいしそうな色に写ってくれた
2,816×2,112 / 1/20秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 37mm

広角端の絞り開放になる条件。四隅で解像力がアマくなり、若干だが色ニジミも見られるものの、全体的には悪くないレベル。タル型の歪曲収差は少なめで、ズーム倍率から考えればかなり優秀だ
2,816×2,112 / 1/80秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 37mm
なんでハンプティなんだろうと思いながら撮ったけど、今になって、“大きな卵”からの連想なのかと気がついた。東京ドームシティにて
2,816×2,112 / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 37mm

広角端で絞りF5.6の条件だと、四隅がわずかに暗く落ちているのがわかる。目くじらを立てるほどではないが
2,816×2,112 / 1/640秒 / F5.6 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 37mm
手ブレ補正機構内蔵といっても、お気楽な片手撮りではやっぱりブレる。両手できちんと構えて、そうっとシャッターボタンを押すのが基本だ
2,816×2,112 / 1/6秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 37mm

広角単に比べると、望遠側はちょっぴり描写がアマい気がする。そのあたりがライカレンズとの違いなのかもしれない
2,816×2,112 / 1/320秒 / F4.4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 197mm
平日なのでウォータースライダーは人が乗ってないことが多かった。水しぶきがほとんど白飛びせずに描写されているのはいい
2,816×2,112 / 1/320秒 / F4.5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 222mm

晴れてる日に傘売っててもなぁって思ったけれど、青と赤の色のコントラストがきれい
2,816×2,112 / 1/40秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 157mm
望遠端で1/13秒にもなると、さすがに手ブレ補正機構内蔵でもブレるので、岩に手を押し付けて安定させて撮ったカット。水の流れがそれなりにいい感じになった
2,816×2,112 / 1/13秒 / F4.5 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 222mm

こういうのを何と呼ぶのかは浅学にして知らないが、横長の被写体には16:9の画面比がちょうどいい
2,816×1,584 / 1/60秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 40mm
ベンチに座って立てたひざの上にカメラを乗せて撮ったカット。シャッターボタンのタッチがやや固めな気がして、ブレへの影響を避けるために2秒セルフタイマーも併用した。それでも三脚なしで1/3秒が切れるのは手ブレ補正機構のおかげだ
2,816×2,112 / 1/3秒 / F2.8 / -2EV / ISO80 / WB:晴天 / 37mm


URL
  松下電器
  http://panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/lz5/

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松下、ISO1600での撮影に対応した「DMC-LZ5」(2006/01/23)



北村 智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2006/03/23 01:18
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