| キヤノン「IXY DIGITAL 600」は、コンパクトタイプの薄型カメラ「IXY DIGITALシリーズ」のフラッグシップ機として誕生した製品である。
 
 画素数は有効710万で、デジタル一眼レフ「EOS Digital」シリーズの現行機種と同じ高性能映像エンジン「DiGIC II」を搭載。さらにボディ外装には、高級感あふれる特殊ステンレス素材を採用するなど、スペック、デザインともに高い完成度を誇っている。
 
 ■ 縦型を意識したデザインこの製品のデザイン決定には自動車のボディデザインに用いられる「Curvature Design(カバーチャーデザイン)」という手法が用いられている。この手法により、従来数値化が難しかった「連続した曲面」が可能になったという。凹凸をできるだけ排除し、手に馴染みやすく、使い心地の良いフォルムを実現した。またキヤノンのロゴやレンズ名の表記は、ボディを縦にしたときに正立する。これは、ネックストラップでカメラをぶら下げた時のスタイルを優先したためだ。さらに従来機種に対し奥行きで1.3mm、体積比で15%、そして15gの小型・軽量化を図っている。 
 このほか特筆すべきスペックとして、光学式ファインダーの採用が挙げられる。最近のコンパクトデジタルカメラは、コンパクト化を優先した結果、光学式ファインダーを省略する機種がほとんどだが、このカメラは実像式ズームファインダーを内蔵。オーソドックスな銀塩カメラのように、カメラを顔に当てて、きちんと構えることができる。光学式ファインダーは省電力ばかりが強調されがちだが、手ブレ防止に絶大な効果がある。さらに、このカメラの場合、対物窓が撮影用レンズの真上にあるのでパララックスもわずか。カメラメーカーとしてのこだわりが強く感じられる部分だ。
 
 
 
 
 
|   |  
| 最近では珍しく光学式ファインダーを搭載。撮影レンズの真上に対物窓があるので、パララックスも少ない |  
 ■ 薄型高性能レンズを採用CCDは1/1.8型で有効画素数は710万。記録画素数はラージ、ミドル1、ミドル2、ミドル3、スモールの5種類で、圧縮率はスーパーファイン、ファイン、ノーマルの3通り。このほか、L判プリントモードを選べば、ポストカードサイズ以下のプリントに適した1,600×1,200ピクセル/ファインで撮影できる。 
 撮影用レンズは新設計の沈胴式光学3倍ズームを採用。高屈折率ガラスモールド非球面レンズと接合レンズの組み合わせにより高解像度を実現したというレンズで、焦点距離は35mm判に換算すると37~111mmになる。さらにレンズそのものを薄くすることで、レンズを収納した際の厚みも従来比で2.1mm薄くなり、ボディのスリム化に大きく貢献している。また、広角、望遠側ともディストーションはよく補正されている。
 
 通常のモードにおける最短撮影距離は、50cmだが、マクロモード時はワイド側で5cm、テレ側で30cmまで近づくことができる。さらにデジタルマクロを使用すれば画面の中央部を電子的に拡大。高倍率の接写ができる。
 
 
|   |   |  
| 撮影用レンズには2枚の非球面レンズを採用 | 記録メディアがCFからSDメモリーカードになった |  
 
|   |  
| ボディ左側面にある出力端子 |  
 ■ 高性能映像エンジン「DiGIC II」を搭載DiGIC IIは、デジタル一眼レフの最高級機「EOS-1Ds Mark II」にも採用されている高性能映像エンジンである。特にホワイトバランスの追従性に優れ、いちいちマニュアルで切替えなくても、ある程度なら安心してAWBで撮影し続けることも可能だ。 
 またAEの高速化(従来比55%短縮)や約0.9秒という高速起動をはじめ、あらゆる部分で高性能化が図られている。さらにSDメモリーカードがいっぱになるまで連写ができるスムーズ連写機能を備え、撮影が中断されることもない。
 
 ■ 視認性の高い液晶モニターと使いやすい独立ボタン液晶モニターは2型とサイズが大きいだけでなく、背面のDISPボタンを1秒以上押し続けると輝度が最大になり、明るい場所での視認性がアップ。また暗い場所で撮影するとき、暗く表示される被写体を明るく表示するナイトビュー機能を装備。あらゆる撮影環境において、最適な画像が液晶モニターに表示される。 
 またモニターに表示される文字やアイコンも大きく、測光方式、連続撮影、セルフタイマー、マクロ、望遠、ストロボなど使用頻度の高い機能については、独立したボタンを割り当て高い操作性を実現している。
 
 
|   |   |  
| ボディ背面の右側にまとめられた主要操作部。使用頻度の高い機能は独立したボタンに割り振られている | メインスイッチとズームレバーはボディ上面にある |  
 
 
 ■ 撮影時に色調整ができるマイカラー機能マイカラー機能を使えば、PCを使わなくても画面全体の色調を調整したり、特定色の強調や変換ができる。「ポジフィルムカラー」は、画面全体をナチュラルで鮮やかな画像に仕上げるモードで、名前の通り銀塩のポジフィルムで撮影したようなイメージに仕上がる。 
 また空の色をより青くする「あざやかブルー」、新緑の緑を強調する「あざやかグリーン」、花などの赤を強調する「あざやかレッド」のほか、人物の肌を色白にする「色白肌」、褐色にする「褐色肌モード」。さらに赤、緑、青、肌色のバランスを自由に設定できる「カスタムカラー」や、指定色以外を白黒に変換する「ワンポイントカラー」、指定色の色を変える「スイッチカラー」など、色調整に関する機能はバリエーションに富み、応用範囲が広い。
 
 なかでもスイッチカラーは、肉眼で見るイメージとはまったく違った世界が体験が可能。使って楽しい遊び心に溢れた機能といえるだろう。
 
 
|   |   |   |  
| ワンポイントカラー | スイッチカラー | カスタムカラー |  
 
|   |   |  
| 【ノーマル】 | 【スイッチカラー】 |  
 
|   |   |   |  
| 【ノーマル】 | 【スイッチカラー】 | 【ワンポイントカラー】 |  
 ■ 作例※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみリネームしています)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックするとオリジナル画像が別ウィンドウで表示されます。 
 ※キャプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値(F)/露出補正値(EV)/ISO感度/焦点距離(mm)です。
 
 
 ●画角
 
 
|   |   |   |  
| 【7.7mm】3,072×2,304 / 1/400秒 / 2.8 / 0 / オート / 7.7 | 【15mm】3,072×2,304 / 1/200秒 / 4 / 0 / オート / 15.59 | 【23mm】3,072×2,304 / 1/125秒 / 4.9 / 0 / オート / 23.10 |  
 ●歪曲収差
 
 
|   |   |  
| 【7.7mm】3,072×2,304 / 1/200秒 / 2.8 / 0 / オート / 7.7 | 【23mm】3,072×2,304 / 1/40秒 / 4.9 / 0 / オート / 23.1 |  ●あざやかブルー
 
 
|   |   |  
| 【ノーマル】3,072×2,304 / 1/200秒 / 4.9 / 0 / オート / 23.1 | 【あざやかブルー】3,072×2,304 / 1/200秒 / 4.9 / 0 / オート / 23.1 |  
 ●あざやかグリーン
 
 公衆電話の緑はそれほどでもないが、背景の芝生が鮮やかになっている。
 
 
|   |   |  
| 【ノーマル】3,072×2,304 / 1/500秒 / 4 / 0 / オート / 15.59 | 【あざやかグリーン】3,072×2,304 / 1/500秒 / 4 / 0 / オート / 15.59 |  
 ●一般作例
 
 
|   |   |  
| 金属面の質感もよく再現されている。 3,072×2,304 / 1/200秒 / 2.8 / 0 / オート / 7.7
 | 暗部のディテールの再現性も良い。 3,072×2,304 / 1/20秒 / 3.2 / 0 / オート / 9.02
 |  
 
|   |   |  
| 輝度差の激しい条件で撮影。ハイライト部は白飛びしているが、全体の雰囲気は良い。 3,072×2,304 / 1/30秒 / 2.8 / 0 / オート / 7.7
 | 鳥居の朱色が色飽和ぎみで、平板的な描写になった。 3,072×2,304 / 1/60秒 / 3.5 / 0 / オート / 12.52
 |  
 
|   |   |  
| デジタルマクロ機能でオオイヌノフグリを接写。画像の劣化はほとんどない。 3,072×2,304 / 1/640秒 / 2.8 / 0 / オート / 7.7
 | デジタルマクロを使用しない場合の最短撮影距離(約5cm)で撮影。 3,072×2,304 / 1/400秒 / 7.1 / 0 / 50 / 7.7
 |  
 
|   |  
| 発色が鮮やかでボケ味も自然。 3,072×2,304 / 1/400秒 / 4.9 / 0 / オート / 23.1
 |  ※掲載当初、「あざやかブルー」と「あざやかレッド」の作例を誤って掲載していました。お詫びして訂正いたします
 
 ■ URL
 キヤノン
 http://canon.jp
 製品情報
 http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/600/
 
 ■ 関連記事
 ・ 【実写速報】キヤノン IXY DIGITAL 600(2005/03/07)
 ・ キヤノン、曲面デザイン採用の「IXY DIGITAL 600」(2005/02/18)
 
 
 
 
 
2005/04/12 00:40
|  | 中村 文夫 (なかむら ふみお)
1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。
 |  
  
 
| 
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
 ・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。
 
 |  
 |