デジカメ Watch

【那和秀峻の最新デジカメレビュー】キヤノン EOS Kiss Digital N

〜初代から大きく変身をとげた2代目Kiss Digital
Reported by 那和 秀峻

 キヤノンNew EOS Kiss Digital(正式名称はEOS Kiss Digital N)が3月17日に発売される。このカメラは初代のEOS Kiss Digitalの後継機種となるわけだが、初代の142×72.9×99mm(幅×奥行き×高さ、以下同)、560gから、126.5×64×94.2mm、485gと大幅にコンパクト化された。そして、撮像素子は6.3メガから8メガと高画素化されている。そのほか、細部にわたって全面的な見直しがかけられている。実際に手にして見ると、最小最軽量の8メガデジタル一眼レフというのが実感できる。

 今回は標準ズームセットとして売られる「EF-S18-55mm F3.5-5.6 II USM」を使用した。なお、このセットで実勢価格12万円。「EF55-200mm F4.5-5.6 II USM」もセットになったダブルズームセットで約143,000円となっている。

 なお、初代EOS Kiss DigitalのレビューはPC Watchで行なった。下記を参照されたい。

【2003年10月6日】【那和秀峻の最新デジカメレビュー】「キヤノンEOS Kiss Digital」(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1006/dcr003.htm


初代の操作系を引き継いだ使い勝手の良さ

 大幅に小型軽量化されたとはいえ、EOS Kiss Digital Nの操作系はなるべく初代のKiss Digitalに近いものにして、違和感をなくしている。6面写真にあるように、ほとんどの操作系は初代と同じだ。





 ボディー上面右手側には大型のモードダイアルがあり、露出モードを簡単に設定できる。その右にやはり大きな電源のON/OFFスイッチがあるのも初代と同じである。モードダイアルには全自動モードを含めイメージプログラムが7つある。これはKiss Digitalシリーズの性格を表している。欲を言うなら、イメージプログラムの設定時には液晶モニターにもわかりやすい説明が出るとさらに良かっただろう。

 その後方、つまり背面右上にはAEロックボタンと測距点選択ボタンがある。そして、このボタンは再生時に縮小再生と拡大再生を兼ねている。この操作系はわかりやすいし、手さぐりでもすぐに操作できる。

 液晶の右側には十字キーがある。これは初代から採用されたもので、EOSの象徴であるサブ電子ダイアルのかわりになるものだ。この十字キー、EOS使いには最初はややとまどうものだったが、2代目となって慣れてきた。そして、このキーには左に測光モード、右にAFモードと新たな機能が割り付けられた。また、十字キーの左側にはダイレクトプリントボタン(PictBridge対応)、記録メディアへのアクセスランプがある。また、その上方にはドライブモードボタンとAV(絞り値)/露出補正ボタンもある。なお、ダイレクトプリントボタンは新設、ドライブモードボタンは上面から移されたものである。


露出モードダイアルの右には電源スイッチがある 背面右上にはAEロックボタンと測距点選択ボタンがあり、縮小と拡大再生も兼用している 背面には十字キーがあり、測光モードとAFモードが新たに割り付けられた。また、ダイレクトプリントボタンも新設された

 液晶モニターの上には液晶パネルがあり、最低限必要な情報はすべて表示される。やはり、このように液晶パネルのほかに表示があるのはありがたい。ただし、電源スイッチオフだと、すべての情報が消えてしまう。せめて、撮影残数ぐらいは常時表示して欲しいところだ。

 左側には上からMENU、INFO、JUMP、再生、削除ボタンがある。これは初代Kiss Digitalと同じでわかりやすい。液晶モニターに大きな変化はない。

 マウントは従来どおりのキヤノンEFマウント。普及機にもかかわらず、マウントの座金はステンレスである。また、通常の赤いレンズ取り付け指標のほかに、EF-Sレンズを取り付けるための白い指標もある。

 記録メディアは従来どおりにCFカードである。もしかすると、SDメモリーカードを搭載してくるのではないかという予想もあったが、このあたりはきわめてオーソドックスである。


液晶モニタの上には液晶パネル、左には各機能のボタンが並んでいる マウントはフィルム時代から継承されているキヤノンEFマウント 記録メディアは定石どおりのCFメモリーカード。SDカードは採用されなかった

 内蔵ストロボの発光部はかなり高くまでポップアップする。このため、レンズ鏡胴によるケラレや赤目現象は少ないと想像される(写真左下)。

 変わったのは電源である。いままではEOS 10D、20Dと同じだったが、こんどはコンパクトデジカメのPower Shoto S70/S60と同じ。小型の充電式リチウムイオン電池になった。これはカメラの小型化にかなり貢献しているものと思われる(写真右下)。


内蔵ストロボの発光部はかなり高い位置にあがるから、レンズ鏡胴によるケラレを防ぐことができる 電源はコンパクトデジカメ用の小型のリチウムイオン電池に変わった

 液晶パネルの表示は従来と大きな差はない。再生時にINFOボタンを1回押すと、撮影情報が表示される(写真左下)。もう一度INFOボタンを押すと、サムネイル画像とともに、ヒストグラムや詳細な撮影情報が表示される(写真右下)。


再生画面でINFOを1回押すと、撮影情報が表示される もう一度INFOボタンを押すと、サムネイル画面、ヒストグラム、詳細な撮影情報が表示される

 メニューは5ページに分かれていて、非常にわかりやすい。なお、カスタムファンクションが新たに加わっている。この中に長時間露出ノイズ対策のオンオフもある。

 このあたりの操作系は初代のKiss Digitalと互換性が高く、初代からの移行ユーザーにもとっつきやすい。


メニュー 再生メニュー カスタム機能が新設された

まったく破綻がない写り具合

 実写テストはいつものように、ビルの定点観測からだ。18-55mmレンズの18mm側ではほんのわずかに前ピン気味だったが、実用上問題にならない程度だ。そして、開放から2段絞り込むと非常にいい描写になる。ただ、左上の白い看板は肉眼で見るよりも白とびしてしまっている。だからと言ってダイナミックレンジが狭いというわけではなく、この白看板を再現できるデジタルカメラはいまのところ存在しないのである。


※以降に掲載する作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみリネームしています)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。特に記載がない限り、クリックするとオリジナル画像が別ウィンドウで表示されます。


18mm側での絞り開放(F3.5)撮影。絞り開放ではほんのわずかに前ピン気味だが実用上はまったく問題がない。また、左上の白い看板は完全に白とび
絞りF3.5、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
絞りをF6.3まで絞り込むと、非常にいい画質になる
絞りF6.3、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

 55mm側では絞りF5.6開放から優秀な描写である。絞り開放から2段絞り込むと、さらにいい画質になる。偽色が出やすいビルの細かい模様でも、偽色は出ていない。このビル定点観測の結果は非常にいいものだったが、レンズの18mm側の画面周辺ではやや不満がある。光学系、メカ系ともに初代の18-55mmと変わらず、デザインが変わっただけである。このため、8メガという高画素化には、もう1段キレのいいレンズが欲しいところである。


標準ズームの望遠側55mmで撮影。絞りF5.6開放からいい画質である
絞りF5.6、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
絞りをF11まで絞ると、さらにいい画質になる。ビルの細かい模様にも偽色は出ていない
絞りF11、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

【お詫びと訂正】記事初出時、初代Kiss Digitalとの比較画像を掲載しておりましたが、撮影時に一部不適当な設定があり、厳密な比較になっておりませんでした。初代Kiss Digitalの画像、および関連する記述を削除させていただきますとともに、後日、稿を改めて初代との比較を掲載させていただきます。大変ご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。

 いつもの人物撮影にも18-55mmズームの55mm側を使用している。この近距離だと、AFの測距精度がわずかに甘くなる。しかし、AWBは非常に良好であり、色再現性もいい。


18-55mmズームの55mm側で撮影。合焦精度はわずかに甘いが、質感はいい。AWBがよく効いていて、肌色の再現がいい
New Kiss Digital、絞りF5.6、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

 撮影場所を変えて4分の3身を撮ってみた。どちらかというとややマゼンタが強いのだが、それが肌色をきれいに見せてくれる。


やはり18-55mmレンズの望遠側を使ったが、オートホワイトの効果が高い
New Kiss Digital、絞りF5.6、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

【お詫びと訂正】記事初出時、Kiss Digital Nと初代Kiss Digitalの画像データが入れ替わっておりました。お詫びして該当部分を削除させていただきます。

 また、いつもの色温度約4,400Kの蛍光灯でも、New Kiss Digitalはかなり自然な色再現になった。AWBでこれぐらいになれば十分である。


約4,400Kの蛍光灯だが、AWBでこのようにきれいに補正された
New Kiss Digital、絞りF5.6、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

 次の定点観測は夜景の長時間露出である。これで長時間ノイズの出方をチェックするわけだ。初期設定はノイズリダクションがオンになっていて、そのまま写すと撮影に2倍の時間がかかるが、ノイズはまったく目立たない。カスタムファンクションでノイズリダクションをオフにして撮影してみたが、拡大してもほとんどノイズは目立たない。ただ、全体にコントラストがやや低い。


長時間露出ノイズを調べるため、30秒の露出をした。ノイズリダクションONではまったくノイズは目立たない
絞りF20、30秒、AWB、ISO100
やや露出が違うが、ほとんど同じ明るさにした。ノイズリダクションはOFF
絞りF18、30秒、AWB、ISO100

 次の定点撮影は特急列車の通過。以前とは撮影する駅が変わってしまったので、多少条件がちがうが、いままでとそれほど大きな差はないはずである。このNew Kiss Digitalの大きな改良点は、最大連続撮影枚数が初代の4コマから最大19コマ(JPEGの場合)になったことだ。このため、特急列車の通過もギリギリまで追うことができた。また、各コマともピントがよく合っている。10コマ連写したうちの最後の5コマを掲載するが、これだけの能力があれば運動会はもちろん、ほかの動体撮影も大丈夫だ。


18〜55mmの望遠側で特急列車の通過を撮影。いつもより少し焦点距離が短いが、最後の5コマすべてにピントが合っている
絞りF5.6、絞り優先AE、AWB、ISO400
絞りF5.6、絞り優先AE、AWB、ISO400 絞りF5.6、絞り優先AE、AWB、ISO400

絞りF5.6、絞り優先AE、AWB、ISO400 絞りF5.6、絞り優先AE、AWB、ISO400

 CMOSセンサーが従来の6.3メガから8メガへ高画素化されたということで、画素ひとつひとつの大きさが小さくなり、ノイズが心配されるところだ。そこで、感度ノイズをチェックするために、ISO100/200/400/800/1600と変えて、同一被写体を撮ってみた。ISO1600では中間部から暗部にかけてわずかに高感度ノイズが出ているが、これぐらいなら実用上の問題はない。


【ISO100】絞りF8、絞り優先AE、AWB 【ISO200】絞りF8、絞り優先AE、AWB 【ISO400】絞りF8、絞り優先AE、AWB

【ISO800】絞りF8、絞り優先AE、AWB 【ISO1600】絞りF8、絞り優先AE、AWB

ISO1600でいつもどおりの被写体を撮影してみた。中間部から暗部にかけてわずかに高感度ノイズがあるが、気にはならない程度だ
絞りF3.5、絞り優先AE、ISO1600
 ISO1600ではいつもどおりの被写体も撮影してみたが、ノイズは目立たない。あえてISO3200までは無理をしていないのが成功しているのだろう。


 18-55mmレンズの焦点距離両端で歪曲収差(ディストーション)のチェックもしてみた。18mm側では樽型の歪曲が目立つ(写真左下)。しかし、55mm側では歪曲がよく補正されていて、目立たない(写真右下)。ほんのわずかに糸巻き型歪曲があるが、実用上の問題はない程度である。


18-55mmの18mm側で歪曲収差を調べた。樽型の歪曲が目立つ
絞りF3.5、絞り優先AE、AWB、ISO100
18-55mmの55mm側。糸巻き型の歪曲がほんのわずかにあるが、問題になるほどではない
絞りF5.6、絞り優先AE、AWB、ISO100

 New EOS Kiss Digitalの彩度は高く、きれいな描写をしてくれる。マフラーを写してみたら、非常にいい色に再現された(写真左下)。

 後ボケの感じは、さらにはっきりわかる被写体でチェックしてみた。ややボケが崩れ気味で、非点収差が残っている感じだが、全体としてのボケ味は悪くない(写真右下)。


タテ位置の写真だが、マフラーを写してみたら、彩度が高いために、非常にいい色再現を示した
絞りF5.6、絞り優先AE、AWB、ISO100
ボケ味を見るために、55mm側の絞り開放で撮影。ややボケ味が崩れ気味で、非点収差の影響があるようだ
絞りF5.6、絞り優先AE、AWB、ISO100

 このカメラには上位機種のEOS 20Dと同様のモノクロモードが新たに追加された。そこで、モノクロモードで遊んでみた(写真左下)。コントラストやシャープネスのほかに、フィルター効果や調色効果も変えられるので、時間があればかなり遊べそうである。最後に内蔵ストロボの配光特性もチェックしてみた。距離約1.5mで、18mmで撮影した。四隅は光量が落ちるが、まずまずの照明特性と言えるだろう(写真右下)。


EOS 20Dと同様にモノクロモードが搭載されたので、試してみた。そのままノーマルで撮っているが、フィルターや調色など、いろいろと遊べそうだ
絞りF5.6、絞り優先AE、AWB、ISO100
内蔵ストロボの配光特性を調べるため、約1.5メートルの距離で、焦点距離18mmで撮影。さすがに四隅は光量が不足しているがまずまずである
絞りF8、1/125秒、AWB、ISO400

 Canon EOS Kiss Digital N(New EOS Kiss Digital)は大幅に小型軽量化されたばかりではなく、8メガと高画素化して、さらにAWBの精度を高めている。どの部分をとっても破綻のないデジタル一眼レフで、初心者だけではなく、すでにデジタル一眼レフを使っているユーザーのサブカメラとしても薦められる。



URL
  キヤノン
  http://canon.jp
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/kissdn/

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那和 秀峻
(なわ ひでたか)写真家およびテクニカルライター。1976年以来、カメラ雑誌を中心に活動。現在はほとんどデジカメ関係の仕事が多い。PC Watchに「那和秀峻の最新デジカメレビュー」を2003年より不定期連載。PCは自作Pentium 4機が主力だが、Mac G4もときどき使用。モバイルはInterlinkだが、そろそろ電池がだめになってきた。1989年よりMS-DOS 3.3CでPC入門。趣味のウェブサイトもあります( http://www.nawa-jp.com )。

2005/03/15 00:04
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