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【新製品レビュー】京セラ「CONTAX i4R」【画質編】

~テッサーの実力、素直な写り
Reported by 根本 泰人

 京セラCONTAX i4Rのハードウェア紹介に続き、画質の評価をお届けする。


レンズ性能と一般的な撮影結果

 様々なシーンを撮影した画像をピクセル等倍で観察したが、絞り開放から周辺部までとてもシャープである。ただし、樹木の葉などかなり細かいところまで解像しているが、画像処理の影響で細部がつぶれてしまうのは残念である。これは後ほど述べるが、プリントの仕上がりにも影響している。

 歪曲はとても少ないがほんのわずか、たる型。一般的な撮影ではまず気になることはないだろう。絞り開放でも周辺光量の低下も認められず、画面全体にとても安定した画質である。F5.6に絞ればさらに良い。ボケも素直である。さすがテッサーというところか。

 標準設定で撮影した画像はいずれも素直な印象で、ホワイトバランスがオートのままでたいていのシーンは自然な感じに撮れる。コントラストは適度な印象、シャープネスと彩度は標準設定ではやや高めのようで見栄えがする。以上のようにこのi4Rで撮影した画像は標準設定のままで、まとまりが良いと言える。そのまま手を加えなくても満足できるという人が多いのではないだろうか。もちろんカメラの初期設定を変更して、より自分の好みに近づければより満足度は高くなるだろう。


※以降、作例のリンク先は特に記載がない限り、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※キャプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル)/絞り値/露出時間/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランスです。


メリハリのきいた美しい画像。しかし拡大するとビル壁面のタイルのパータンがきれいに分離しておらず、A4サイズにプリントするとそれが気になる
2,272×1,704 / F5.6 / 1/500 / 0 / 50 / AWB
2mほどの距離の撮影。絞りF2.8開放だが、背景までシャープに見える。被写界深度は深めのようだ
2,272×1,704 / F2.8 / 1/700 / 0 / 50 / AWB

シャープな印象の画面
2,272×1,704 / F5.6 / 1/350 / 0 / 50 / AWB
鮮やかな色彩を再現しているが、白や黄色の花はディテールが飛んでしまっている。また拡大して観察すると、画像圧縮のためか花の微妙な立体感が失われている部分がある。A4サイズでプリントすると、そうした箇所が目立つ
2,272×1,704 / F5.6 / 1/500 / 0 / ISO50 / AWB

この写真はなぜか全体にわずかに黄色にかぶっているようだ。オートホワイトバランスの狂いだろうか
2,272×1,704 / F5.6 / 1/500 / 0 / 50 / AWB
金のブタのハイライト部分が飛んでいる。このカメラは先ほどの花の画像でも同様であったが、ハイライト部分が飛びやすいように思う。見栄えがするように、コントラストが高めに設定されているためではないだろうか。なおこのカメラはコントラストの変更はできない
2,272×1,704 / F5.6 / 1/350 / 0 / 50 / AWB

中心部にピントが合っている。F2.8開放なので、背景の建物はわずかにピントが甘くなっている
2,272×1,704 / F2.8 / 1/500 / 0 / 50 / AWB
きれいに撮れているが、暗部がつぶれ気味である。日陰でも発色は良い
2,272×1,704 / F2.8 / 1/60 / 0 / 50 / AWB

正月気分の浅草寺境内
1,704×2,272 / F2.8 / 1/350 / 0 / ISO50 / AWB
近寄りたいシーンで近寄れない場合、単焦点レンズではどうしようもない
2,272×1,704 / F2.8 / 1/350 / 0 / 50 / AWB

慎重に撮影すれば、1/8秒程度の手持ち撮影も可能。実際よりもかなり遠近感が誇張されてみえる。ホワイトバランスの調整は良好
2,272×1,704 / F2.8 / 1/8 / 0 / 50 / AWB
空気の透明度が悪い時には、近くから撮っているのに鮮明さが劣ることがある。カメラのせいではない
1,704×2,272 / F5.6 / 1/500 / 0 / 50 / AWB

 マクロ撮影の結果も、非常にシャープであった。かなり被写体に接近することができるが、拡大率が上がると手ぶれの影響が現れやすくなる。このカメラには手ぶれ補正機能はないし、三脚にも固定できないため、撮影は難しかった。


サザンカの花。これくらいの近接撮影は簡単である。
2,272×1,704 / F2.8 / 1/90 / 0 / 50 / AWB
さらに中心部をクローズアップ。最近接撮影である。ピントがあったところはシャープ。撮影の際には手プレに注意が必要
2,272×1,704 / F2.8 / 1/90 / 0 / 50 / AWB

ウツボカズラの瓶子体。逆光気味だが露出が良く合っている。またとてもシャープだ。だがピントがきちんとあった写真を得るために、かなりのコマ数を撮影して選抜した
1,704×2,272 / F2.8 / 1/500 / 0 / 50 / AWB

 ストロボ撮影は横位置撮影では影が真横にできるので、被写体によってはかなり気になる。縦位置撮影では影が真下に出るので、特に人物ポートレートでは影が目立たずきれいに撮れる。


ストロボは周辺部ではわずかに光量が少ない印象がある
2,272×1,704 / F2.8 / 1/30 / 0 / 50 / AWB
横位置で撮影すると影が右側にでるのが目立つ場合がある
2,272×1,704 / F2.8 / 1/30 / 0 / 50 / AWB

縦位置では影が下に出るので、人物撮影などには適している
1,704×2,272 / F2.8 / 1/30 / 0 / 50 / AWB

画素数変化

 設定可能な画素数は約400万(2,272×1,704ピクセル)、約200万(1,600×1,200ピクセル)、約130万(1,280×960ピクセル)、約30万(640×480ピクセル)の4種類。圧縮率の設定はない。画像サイズであるが、撮影データを実測すると順に約1.1MB、約600KB、約300KB、約70KBである。この数値を見る限り、JPEGでの圧縮率はやや高めであるようだ。


【2,272×1,704】2,272×1,704 / F5.6 / 1/300秒 / 0 / 50 / AWB 【1,600×1,200】1,600×1,200 / F5.6 / 1/300秒 / 0 / 50 / AWB

【1,280×960】1,280×960 / F5.6 / 1/300秒 / 0 / 50 / AWB 【640×480】640×480 / F5.6 / 1/300秒 / 0 / 50 / AWB

ISO感度変化

 撮像感度はISO50から400まで4段階の設定が可能である。もっとも低感度のISO50の画像は全体に美しいが、空のようなトーンが均質な部分をよく観察するとJPEG圧縮に関係するらしい不規則なノイズがわずかに現れている。

 ISO100ではピクセル等倍で観察すると、コントラストがわずかに悪くなったように感じられる。ノイズも条件によって少し多くなるようだ。しかしISO50との差はわずかなので、手ぶれの心配があるなら、ISO100で撮影したほうが結果がよい場合があるだろう。

 ISO200になると画面全体にノイズが乗ってきて、荒れてくるのがはっきりわかる。ISO100以下との違いは大きい。

 ISO400では画面全体にノイズがひどくなり、画像に鮮明さがない。これではきれいなプリントは無理である。

 以上の結果から、このカメラはISO200以上での使用はできる限り避け、最良の画質を得るためにはISO50に固定する必要がある。


【ISO50】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB 【ISO100】2,272×1,704 / F5.6 / 1/500秒 / 0 / 100 / AWB

【ISO200】2,272×1,704 / F5.6 / 1/1,000秒 / 0 / 200 / AWB 【ISO400】2,272×1,704 / F5.6 / 1/2,000秒 / 0 / 400 / AWB

画質調整

 このi4Rは、彩度は-1、0、+1の3段階の設定が可能である。


【彩度-1】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB 【彩度0】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB 【彩度+1】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB

 またシャープネスは-1~+3の5段階の設定が可能である。


【シャープネス-1】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB 【シャープネス0】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB

【シャープネス+1】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB 【シャープネス+3】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB

ホワイトバランスの変化

 ホワイトバランスのマニュアル設定は太陽光、白熱電球、曇天、蛍光灯である。自分で設定可能なプリセットモードもある。これらの設定で晴天下で撮影し、色がどのように変わるか見てみた。このカメラは通常の撮影はオートでも良好な色再現が得られるが、色再現をできるだけ正確にしたい場合にはプリセットモードも活用したい。


【太陽光】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB 【白熱電球】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB

【曇天】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB 【蛍光灯】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB

シーンモード

 このカメラは通常の撮影はプログラムモードのみとなるため、シーンモードを活用する必要がある。シーンモードでは8種類の設定が可能で、カメラまかせで最適な撮影ができるという。例えば1秒F2.8より暗い条件でのプログラム撮影はできないため、より暗いシーンの撮影は、夜景モードに設定する必要がある。


【通常モード】2,272×1,704 / F2.8 / 1秒 / 0 / 50 / AWB 【夜景モード】2,272×1,704 / F2.8 / 2秒 / 0 / 50 / AWB

 通常モードと夜景モードを比べると夜景モードは全体に明るく比較的きれいに写っているが、これらの写真は三脚の上に置いただけのため固定に失敗してぶれてしまっている。またピントも甘いようだ。


【白黒】2,272×1,704 / F5.6 / 1/500秒 / 0 / 50 / AWB 【セピア】2,272×1,704 / F5.6 / 1/350秒 / 0 / 50 / AWB

逆光時

 逆光で撮影した結果は、多分割測光の効果はあるが露出補正量が十分ではなく、露出不足気味になる。このような条件のときにはスポット測光を使用するか、撮影結果を確認してプラスに露出補正したい。


完全な逆光ではないが、空の部分が多く入ったために露出不足になったと考えられる
2,272×1,704 / F5.6 / 1/1,400秒 / 0 / 50 / AWB
太陽が画面に入っているが、多分割測光による自動露出補正の効果が現れている。なお右下部にゴーストが現れている
2,272×1,704 / F5.6 / 1/1,000秒 / 0 / 50 / AWB

プリント時の画質評価

 続いてプリントの結果を検討した。専用ソフトは添付されていないので、いつものように手元で可能なもっとも簡便な方法としてエプソンPX-G900プリンターと、印刷ソフトとしてプリンター付属のエプソン・フォトクイッカー3.5を使用した。Print Image Matching IIとEXIF PRINTを指定し、カメラで撮影した結果に手を加えることなくそのまま印刷した。印刷用紙はエプソンの純正写真用紙を使用した。フォトクイッカーの印刷モードは高精細である。

 まずL判~2L判であるが、とてもシャープで発色もきれいな見栄えのするプリントが得られた。400万画素では当然であるが、200万画素でも同等である。またL判なら130万画素でもそれ以上の画素のプリントと差がまったくといってよいほどわからなかった。

 それならA4サイズも素晴らしいプリントが得られるはずだと期待して、400万画素で撮影したいろいろな画像を印刷したのだが、残念なことに細部に不満が出た。まず細かな模様がつぶれてしまうのである。例えばタイル外装の建物の細かな線が消えてしまったり、植物の花の本来ならきれいな模様が出るところがべたっとした一色の表現になってしまう。また、被写体のもつ微妙な立体感が失われてしまう。これらはJPEGの圧縮を強くかけて保存した画像を印刷した時に現れる問題に非常によく似ている。どうもi4Rのカメラ側の画像処理が今ひとつという感じである。

 A4サイズであるから、30cm以上離して鑑賞すればそこそこ見られるのであるが、発色やコントラストなどはとても良い感じなので、いっそう残念に感じた。


動画

 動画はよく撮れる。320×240ピクセルでも640×480ピクセルでも画質は鮮明であり、30fpsなら動きもなめらかである。音声録音も周囲の音を良く拾うようだ。室内の蛍光灯下でも発色はよかった。ただし640×480ピクセル30fpsでは1秒あたり約2Mバイト、1分で約120Mバイトのデータ量であった。256Mのメモリーカードでは記録可能時間は約2分ということなる。


説明書、付属ソフトウェア

 冊子で付属するのは基本操作ガイドで105ページある。比較的機能が少ない機種でもあり、このマニュアルは文字が大きくて読みやすい。しかし、さらに詳しい説明が必要な場合には、同梱されているCD-ROM版の取扱説明書を参照する必要がある。この説明書はPDFファイル形式である。パソコンがないと詳しい取扱説明書が読めないことは、ユーザー層を考えた場合問題はないのだろうか。

 なお、ブラウザソフトなどの付属ソフトはない。


総評

 デジタルカメラとしては、単焦点レンズ搭載ということに代表されるように非常に機能的に割り切ったカメラである。操作も比較的単純であるから、カメラやパソコンに詳しくない層にも使いやすいと言うことができると思う。プリンターへの印刷もパソコンがなくても可能だ。しかしPDFファイル形式の取扱説明書を読むには、パソコンが必要なのはちぐはぐな印象がある。

 常時携帯してメモ代わりに使うといった用途には十分対応できる性能を持っているし、ビデオカメラとしても実用になる。A4サイズでのプリント結果は今ひとつであるが、2L以下ならきれいであるから、それで十分というユーザー層には適している。

 しかし実売で4万円前後という価格は、400万画素級デジタルカメラとしては比較的高価格であると言えよう。ズーム付きのより高性能な400万画素級デジカメが2万円台で買える時代である。ということは、このカメラを買い求める人は、やはりこのカメラの特異なデザインに強く惹かれるものがあったということであろう。それならば、私から何も言うことはない。

 これだけ多種類のデジカメが世にあふれている今、デザインでカメラを選ぶのもアリだと思うからである。コストパフォーマンスなんて無粋なことを考えない人向きのカメラであると言えよう。



URL
  京セラ
  http://www.kyocera.co.jp/
  製品情報
  http://www.kyocera.co.jp/prdct/optical/contax/cx_camera/i4r/

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根本 泰人
(ねもと やすひと)クラシックカメラの収集が高じて有限会社ハヤタ・カメララボを設立。天体写真の冷却CCD撮影とデジタル画像処理は約10年前から、デジカメはニコンE2/E900から。趣味は写真撮影、天体観測、ラン栽培、オーディオ(アンプ作り)等。著書「メシエ天体アルバム」アストロアーツ刊ほか。カメラ雑誌、オーディオ雑誌等に寄稿中。 http://www.otomen.net
http://www.hayatacamera.co.jp

2005/02/08 01:19
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