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【プリンタ特集2006冬】レビュー[日本HP Photosmart C6175]
[2007/01/10]
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2006年
コロッとした外観にHDDを内蔵したコンパクトフォトプリンタが日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の「Photosmart A716」。プリンタなのにフォトストレージにもなるのが特徴だ。
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小型で場所を取らない筐体
A716の外観は、丸みを帯びたドーム型で、本体サイズは252×118×126mm(幅×奥行き×高さ)、1.57kg。パナソニックのKX-PX20にはかなわないが、十分小型で軽量。また、PX20とは異なりペーパーカセットが不要なため、使用時はPX20よりも場所を取らない、扱いやすいサイズだ。
前面を排紙トレイが覆うシンプルな外観
背面の片側にインタフェースを集約
左右はすっきりとしたデザイン
本体上部には2.5型の液晶を搭載しており、左右の視野角はなかなか広い。色乗りはやや薄めだが、とりあえずの画像確認には十分だろう。
利用時は、本体前面の排紙トレイを開く。このとき、液晶モニタと背面の給紙トレイが連動して同時に開く仕組みで、ちょっとおもしろいギミックだ。排紙トレイはそれなりのサイズがあるが、給紙トレイはほとんど開かないので、後部にはスペースがほとんどいらない。
ハンドルは細身だが、本体が軽いので持ち運びは楽だ
排紙トレイを開くと、それにあわせて液晶が跳ね上がり、給紙トレイがちょっとだけ開く。給紙トレイのスペースが少ないので大量の用紙を挿入することはできない。ただ、後部のスペースはかなり省スペース
排紙トレイを開くとメモリカードスロットと赤外線ポート、PictBridge用のUSBポートが現れる。カードスロットはCF/SDメモリーカード/メモリースティック/xDピクチャーカードに対応。miniSDカード、メモリースティックDuoにはアダプタが必要だ。
パナソニックのKX-PX20と同様に、リモコンが付属する。電源のオン・オフから画像の閲覧、スライドショウなどのほとんどの操作をリモコンから行なえる。付属のAV出力ケーブルでテレビでスライドショウを映し、そのままリモコンで印刷する、といったことも可能だ。ややリモコンの反応が鈍い点と、リモコンのボタンがアイコンだけでちょっと機能がわかりづらい点が気になったが、慣れればそれほど気にならないレベルだ。
インクカートリッジは本体前面に収める。A4プリンタの1色分ぐらいのサイズで、CMY各色200ノズルを備えるインクジェット方式で、プリント解像度は最高4,800×1,200dpiとなっている。
カードリーダーと赤外線ポートはすべて前面。インクカートリッジもここから入れる
付属のリモコン。アイコンだけなのでわかりにくいボタンもあるが、テレビに映す場合だけでなく、普段でも便利に使える
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フォトストレージにもなるHDD内蔵
本体上部のボタン。メモリカードを入れて「保存する」ボタンを押すとHDDに保存できる
最大の特徴ともいえるのがHDDを搭載した点。前モデルのPhotosmart 475と同様の特徴だが、HDD容量は4GBに拡大。より多くの画像を保存できるようになった。
HDDを内蔵することで、メモリカード内の画像をHDDに保存していけば、フォトストレージとしても活用できる。テレビに常時つないでおいて、撮影後はどんどん画像を保存、時間のあるときにスライドショウを楽しみ、気に入ったものだけを印刷する、しかもソファーにくつろいで、といった、いわば「フォトサーバー」としての使い方ができるのはHDDを内蔵するからこそだ。
HDDに保存するためには、本体の「保存する」ボタンを押す。するとメモリカード内のデータが一括してHDDに保存される。HDDへの保存はちょっと時間がかかるが、保存中もメモリカード内のデータの閲覧や印刷などは行なえる。液晶モニターには、メモリカードを挿入している場合はメモリカード内の画像が、メモリカードを抜くとHDD内の画像が表示される仕組みだ。
HDDに画像を保存してPCに接続すると、リムーバブルドライブとして扱われるので、HDDに貯めて、画像がいっぱいになったらPCに移すことも手軽にできる。
サムネイル画面。最初の2枚が白くなっているのは、カーソルのある画像と異なる日付だから。日付自体は表示されないが、それでもわかりやすく表示してくれる
なおHDDに保存したからといって、特に画像表示などが速くなるわけではない。サムネイル表示も、じわっと表示される1画面表示も、メモリカードからの読み込みとそれほど差があるわけではないようだ。ただ、サムネイル表示も1画面表示も、読み込み速度はなかなか速い。特に先読みはないようだが、それでもパラパラッと素早くサムネイルが読み込まれるので快適に画像を探せる。
撮影月ごとにタブでサムネイル表示画面が区切られるのもわかりやすい。カーソルを一番上に移動させると月ごとの移動ができ、特にHDDに大量の画像を保存している場合に画像を探しやすい。ほかのコンパクトフォトプリンタでは検索する日付をいちいち指定する必要があるものが多いが、メモリカードから読み込んだ時点で月別に区分けされて画像が表示されるのは便利だ。
サムネイル表示からさらにマイナスボタンを押すと日付ごとにまとまったアルバム表示になる
サムネイル画面からプラスボタンを押すと1枚表示になる
検索に関しては、HDD内の画像に限ってはキーワードの付与と検索に対応。キーワードはあらかじめ用意されたお気に入りや休暇、誕生日、友人などがあり、これらを画像に設定できる。特定のキーワードがつけられた画像だけを表示するということも可能で、単体で大量の画像管理が行なえる。このあたりは非常によく考えられている。メニューの表示やカーソルの移動など、もう少しテンポ良く動けばさらに快適だっただろう。
また、キーワードの設定やキーワード検索は、本体だとメニューボタンを押してメニューから選ばなければならないが、リモコンだと1ボタンでキーワード用メニューが表示されるので、リモコンから操作した方がやりやすい。このあたりも画像閲覧に配慮した点だろう。
キーワード設定画面。ちょっと設定の手間はかかるが、あとから特定の画像を抜き出すのが楽になる
キーワードの候補があらかじめ用意されている
スライドショウ設定画面
画像閲覧機能の1つであるスライドショウも、本体はメニューから設定するが、リモコンだと1ボタンでいきなりスライドショウが始められる。テレビにつないで使うときに便利だろう。画像を選んでスライドショウを行なった場合、そのスライドショウを保存することもできる。
メモリカードを挿入すると、まずメモリカード内の最後の画像が1画面表示される。ズームボタンのマイナス側を押すと1画面9コマのサムネイル表示になり、さらにマイナスを押すと日付別のアルバム表示になる。撮影日は表示されないが、その日に撮った画像をひとまとめにしたアイコンになるので、デジカメやPCの画像管理ソフトで良くあるカレンダー形式に近い管理ができる。これもHDDに大量の画像がある場合を想定した工夫だろう。
1画面表示からズームボタンのプラス側を押すと拡大表示になる。押すたびに拡大倍率が上がり、上下左右ボタンで拡大位置を移動することもできる。この拡大表示はトリミングも兼ねており、OKボタンを押すと拡大した画像を別画像として保存できる。
拡大倍率3倍までは画像の拡大が追随するが、それ以降は画像が拡大せず、トリミング領域だけが5倍までズームする。画像を拡大してピントやブレのチェックをする場合は3倍まで、トリミングは5倍拡大まで行える、ということになる。
各種操作はメニューボタンを押す。メニューには写真の編集/スライドショー/印刷オプション/整理と保存/ツール/ヘルプの各項目があり、「写真の編集」からはフレーム付き、クリップアート付きの印刷ができたり、モノクロ/セピア/アンティークといったカラー効果を適用できる。
1枚表示からさらにプラスボタンを押すとフル画面表示になる
さらにプラスボタンを押すと拡大表示。次々にボタンを押すと順次画像が拡大され、3倍までは拡大表示される
3倍以上拡大させると拡大は追従しない
メニューボタンで表示されるメニュー画面。ヘルプの下には「基本設定」がある
また、自動補正、切り取り、写真の明るさ補正といった画像の修正機能も搭載する。自動補正では、推奨/オプション1/オプション2とパラメータの異なる3種類の補正が選べる。補正した場合、補正結果を別ファイルに保存するため1分近く時間がかかる。もうちょっと短いと良かったのだが。
写真の編集メニュー。画像の補正をしたい場合はここから
写真の調整を選ぶと、3種類の中から補正候補を選べる。これは「推奨」。コントラストが上がる
オプション1と2は、コントラストに加えて色の補正も行なうようだ
上記の補正機能とは異なる印刷時の自動補正機能は、本体の「フォトフィックス」ボタンを押すことで適用される。こちらは液晶で補正結果を確認できず、印刷時にのみ補正を行うため、印刷するまで結果が分からないというのが難点だが、別画像を保存する画像の調整機能より手軽に使える。
整理と保存メニュー画面。ここで保存ボタンを押すと、メモリカードからプリンタ、外部ドライブなどに保存できる
保存先の例
これ以外に拡張性の高さもA716の特徴で、オプションのBluetoothユニットを利用したワイヤレス印刷に加え、オプションのバッテリー、自動車用DCアダプタを使えば外出先でも印刷が可能。
また、外付けのCD/DVDドライブを接続してデータを書き出すことができる。おもしろいところでは、写真対応のiPodを接続し、iPod内のデータを印刷することも可能だ。ただし、第5世代iPod(2006年版)、第2世代iPod nanoはこの機能に対応しない。
実際にiPod nanoの第1世代をUSBケーブルでつないでみたところ、すぐさま保存された画像の読み込みが始まり、あとは通常の印刷手順で印刷ができた。
ツール画面ではBluetoothの設定などができる。
こちらは基本設定の画面。色空間の設定ではAdobe RGBも設定できる
クリエイティブな印刷からはフレームやクリップアートの追加などが行なえる
フレーム
ヘルプ機能も搭載
かなり詳細なヘルプの内容
ソフトウェアとしては、HDDやメモリカード内の画像を転送するなどが可能な「HP Photosmart Express」や画像の管理・編集・印刷ソフト「HP Photosmart Premierが付属する。また、年賀状ソフトの「宛名職人」が付属する。
Photosmart Premierは、ややクセのあるインタフェースだが、日付ごとに画像を並べて表示してくれるので管理しやすい。タブごとに段階を追って印刷設定を行なう仕組みで、画像共有やバックアップ作業も行なえ、なかなか高機能だ。
日付ごとに管理できるPhotosmart Premier。なかなか使いやすい
編集画面。基本的な補正はこの画面で行なえる
印刷画面
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印刷結果
印刷に使った画像は、「インクジェットプリンタ2005年 冬モデル レビュー」(
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/ijp2005index/2005/12/01/2699.html
)で使用した4点。それをパナソニックの1GB SDメモリーカード(PRO HIGH SPEED)に保存し、メモリカードスロットに直接挿入した場合、キヤノン PowerShot G7とUSBでつないだ場合、PCとUSB接続した場合のそれぞれで計測した。印刷時間は、4枚を1度に印刷したときの最後の1枚が排紙されるまでの時間を計測。5回計測して平均を求めている。なお、特に表記がない限り、すべて各プリンタの自動補正機能をオンにしている。
印刷時間(カードリーダー):6分57秒08
印刷時間(PC経由):5分22秒34
印刷時間(カメラダイレクト):6分21秒96
印刷時間(iPod):6分40秒15
印刷時間としては決して高速ではない、というよりも遅い方だが、前述の印刷時間の目安では7分と出ていたので、ほぼ予定通りということになり、印刷時間のめどが立ちやすい。
ちょっと粒状間を感じるのと、フォトフィックスボタンによる自動調整が弱めの補正のため、暗部の補正が足りない点が気になったが、目くじらを立てるほどのレベルではない印象だ。
印刷をする場合は、サムネイルの画像選択中、または1画面表示中にOKボタンを押すと画像が選択されるので、その上で印刷ボタンを押す。おもしろいのは印刷ボタンを押すと印刷時間の目安が表示される点。分単位でしか出ないようだが、それでも目安になっていい。
印刷ボタンを押しても印刷設定を行なう画面は出ず、いきなり印刷が始まってしまうのでちょっと心配になる。印刷品質やフチのありなし、用紙の種類、画像の補正はあらかじめ印刷の前に設定しておくというポリシーのようで、その分、画像を選んだら印刷ボタンを押すだけで印刷が始まる手軽さがある。
珍しいところではパノラマ写真やパスポート写真の印刷も可能な点が挙げられる。また、L版だけでなく2L版の印刷にも対応しているのはほかにない機能だといえるだろう。興味深いところでは色空間で通常のsRGBだけでなくAdobe RGBにも対応しているのも本格的だ。
色空間は自動判別も可能
特殊な印刷からはパスポート写真も選べる。CDタトゥという表現はちょっと不思議だが、CDラベルのことだ
同様に動画の表示、印刷に対応している点も珍しい。対応するのはMotion JPEGとMPEG-1で、1フレームずつゆっくり再生されるので、印刷したいシーンでOKボタンを押せばいい。
とにかくA716は、コンパクトサイズに似合わない高機能が特徴だ。リモコン、Bluetooth、外部ドライブ対応、iPod対応などなど、ほかのプリンタが持つ多くの機能をカバーしつつ、さらにHDDや2L判対応などのほかにはない機能も搭載。
独特のインタフェースが取っつきにくいかもしれないが、デフォルトで日付ベースの管理ができるなど、コンパクト性と機能性に使いやすさも配慮されたプリンタに仕上がっている。
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URL
日本HP
http://www.hp.com/jp/
製品情報
http://h50146.www5.hp.com/products/printers/inkjet/ps_a716/index.html
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日本HP、4GB HDDを搭載したコンパクトフォトプリンタなど(2006/10/03)
小山 安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。
2006/12/14 16:26
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