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キヤノンEOS 40D【第2回】
使ってみたら超便利!! なライブビュー

Reported by 奥川浩彦


EOS 40Dでライブビュー撮影を行なっているところ
 前回、EOS 20Dへの不満点として、「セルフタイマーの2秒がない」と書いたが、読者の方から「ミラーアップ撮影の設定をすれば2秒のセルフタイマーが可能」とご指摘を受けた。カスタムファンクションの設定を行ない、セルフタイマーで撮ると、確かに2秒での撮影が可能となる。筆者のように、EOS 20Dユーザーで気付いていない方がいれば参考にしていただきたい。ただし、通常の撮影もミラーアップとなるので、カスタムファンクションの設定で毎回戻すのがやや面倒に感じられる。

 さて前回、筆者が興味を感じなかったEOS 40Dの機能の一つとして、ライブビューを挙げた。筆者がライブビューに惹かれなかった理由は、三脚を立てて物撮りとか花の撮影とか接写とかを行なう機会が少ないからだ。サラリーマン時代は新製品の広報用の写真撮影をしたが現在ではそのような撮影もなく、せいぜい原稿用に物撮りをする程度となっている。

 しかもほとんどの原稿がWeb掲載用なので、撮影後にレタッチして、解像度も800×600ピクセル程度にリサイズして納めている。デジタル一眼レフカメラで撮る必要もない写真だが、できるだけ製品の見栄えがよくなるよう、照明がコントロールしやすい一眼レフを使用して撮影を行なっている。

 この手の物撮りは絞り込んで撮ることが多く、ボケを使って演出するような機会がほとんどない。カタログなどで使う写真であれば、凝った照明やボケを活かした演出があると思うのだが、そうした仕事も来ない(腕もない)ので、ライブビューに興味を感じなかったわけだ。

 とは言えEOS 40Dの新機能なので、何か撮る物はないかと思っていたら、「IXY DIGITAL 910 IS」のレビュー依頼が来たので、ライブビューで撮ることにした。はたして従来の撮影と比べてどう違うのか、実際に試してみたい。

 デフォルトの状態でライブビューは動作しない。メニューの「ライブビュー機能設定」の中の「ライブビュー」を「する」に設定する必要がある。設定さえすれば、背面のサブ電子ダイヤル中央のSETボタンを押すと、ライブビューモードになる。せっかくの新機能だし、普段の撮影に支障を感じることもないので、デフォルトで「する」になっていてもよかったのではと思う。


使用するにはまず「ライブビュー機能設定」を行なう必要がある
ライブビュー機能設定。静音撮影の設定もここで行なう

ライブビュー撮影中のAFやライブビュー露出シミュレーションはカスタムファンクションで設定。ライブビュー機能設定にまとめくれた方が操作性はよさそうだ

 ライブビュー機能設定の中で、グリッド表示や静音撮影の選択も可能だ。静音撮影には「モード1」、「モード2」が用意されている。ライブビューをオンにした状態でミラーアップするので、そのままライブビューを解除しなければ基本的に静音撮影となる。実際の動作は、モード1、モード2ともに電子的にスキャンする先幕シャッターと、メカニカルな後幕シャッターにより撮影を行ない、その後シャッターチャージを行なう。

 モード1で撮影する場合は、シャッターボタンを押すとシャッター(後幕)を切る音とシャッターをチャージする音が連続して聞こえる。連写も可能で、通常の連写からミラーのアップダウンを除いた音が聞こえることになる。この状態でも通常の撮影と比べればかなり静かな状態となる。

 モード2では、シャッターボタンを押すとシャッターが切れ、シャッターボタンを戻すとシャッターチャージが行なわれる。シャッターを切る音はプチっと聞こえるだけで無音とは言えないが、普段のシャッター音と比べるとほぼ無音に近い印象だ。電子的にスキャンする先幕シャッターは無音なので、プチッと聞こえるのは後幕シャッターの音だ。よほど静かな場所でない限り、1枚だけの撮影なら気付かれずに撮影をすることも可能であろう。

 今回の筆者のように物撮りを行なう場合、静音に対するこだわりはそれほど生じないだろう。しかし、舞台などの撮影を行なう場合はありがたいのではないだろうか。

 ただし、シンクロ端子に汎用の外部ストロボをつないで撮影する場合は、モード1、モード2ともに発光しない。そこで、静音撮影を「しない」に設定する。この場合はシャッター音は2度聞こえる。レンズを外して動作を見ると、モード1、モード2は撮像素子が見えた状態から後幕シャッターだけ動作するのが確認できるが、「しない」に設定した場合は、シャッター幕が2度動作している。

 いろいろ試してみると、内蔵のストロボを使用すると必ずミラーのアップダウンが行なわれ、静音モードでは動作しない。ストロボ時にミラーダウンするのは、AEセンサーで調光するためだそうだ。また、説明書には「TS-Eレンズを上下にシフトした状態や、エクステンションチューブを使用する場合には『しない』に設定」とあるが、これは電子先幕シャッターの影響で、条件によっては露出に不具合が生じるためという。

 文字だけではわかりにくいので、シャッター音を録音してみた。通常の1枚撮影、高速連写、静音撮影モード1、静音撮影モード2、静音撮影「しない」を比較して聞いて欲しい。モード2はシャッターを押し1秒ほど待ってシャッターから指を離している。連写の音以外は2度シャッターを切っている。

※下記のリンクをクリックすると、シャッター音のダウンロードを開始します(MP3形式)。


1倍ではこんな感じにモニターに映る。視野率100%のフレーミングが可能
5倍でもピント合わせがそこそこ楽になる

10倍にすれば誰でも細かなピント合わせが可能
フォーカスフレームをマルチコントローラで右に移動

同じく左に移動。画面の四隅まで自由に移動できる

 いざ撮影を開始してみると、ライブビューはかなり使える機能だと認識できる。ファインダーでフレーム全体を見てピント合わせをするのと、ライブビューで5倍、10倍に拡大してピント合わせをするのとでは比較にならないほどピントの山が見やすく、液晶モニターに映る映像は別世界だと実感できる。マルチコントローラでモニターに映す位置が四隅まで自由に移動できるので、液晶モニター内の何処でもフォーカスを合わせることが可能だ。最近はすっかり忘れた操作だが、銀塩MF時代にズームレンズを望遠側にしてピントを合わせてから、広角側にズームしてして撮影する方法のデジタル版と言った感じだ。

 筆者の場合、普段の物撮りでは手抜きをして、きっちり水平を出さないで済ますことが多い。レタッチしてリサイズするのが前提だからだ。斜め横のカットを撮ってから、910 ISが縦置きを意識してデザインされていることに気付いた。縦に置き直して撮影をしようとしてから思いっきり傾いていることが気になったが、今回はそのまま続けることにした。被写体の傾きはライブビューとは関係ないのでご容赦いただきたい。

 どちらのカットも絞っているので、ライブビューの検証としては面白くない。そこで納品はしないが、絞りを開けて、レンズ周りの手前の文字にピントを合わせて撮ってみた。奥側の「ZOOM LENS」の文字や、ボディの「Canon」と「IXY」のロゴがボケているので、撮影時のイメージがわかりやすいだろう。筆者にはあまり縁がないが、花の接写などにはライブビューは魅力的な機能だと思われる。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


IXY DIGITAL 910 ISのレビュー用の物撮り。納めるときはレタッチ、リサイズする。ストロボを2灯使用して撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm
このデジカメは縦置きを前提にデザインされている。傾いているのは気にしないで下さい
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm

レンズ周りの手前の文字にピントを合わせて撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm
液晶モニターの明るさが丁度よくなるまでシャッター速度を落として撮影。この手の撮影はデジカメが便利
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 0.3秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm

アクリルキューブに乗せて上面の撮影。レタッチしてアクリルキューブは消して納品する
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 0.3秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm
バッテリーとSDカードのお決まりのカット
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 0.3秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm

 盛り上がってきたので、自宅をあれこれ物色して被写体を探してみた。見つけたのが二眼レフのカメラと発売されたばかりの「キュージョン」という携帯ストラップ、それとウィリアムズF1の1/18のミニカーだ。

 二眼レフは十数年前にもらったもの。一度撮影しただけで、最近は息子の部屋の飾りとなっている。埃がたまっていたのを軽く掃除して撮影してみた。照明は910 ISとほぼ一緒、レンズ周りのギア部分にピントを合わせ、F13に絞って撮影してみた。

 顔がキューピーでキャラクターが目玉おやじとねずみ男の携帯ストラップ「キュージョン」は、筆者が広報を担当する企業、ラナの新製品。広報用にもらったサンプルをライブビューで撮ってみた。目玉おやじは頭が重くて立たなかったので、ねずみ男の後ろに寝かせてみた。ピントはねずみ男のキューピーの目に合わせている。被写界深度が薄い撮影では、ライブビューによるピント合わせの威力が絶大だ。

 ミニカーは、視野率100%のライブビューの特徴を活かすため、画面いっぱいにフレーミングしてみた。最初のカットは左ミラーにピントを、次のカットはヘルメットにピントを合わせている。光学ファインダーでも見分けられないことはないが、ライブビューで拡大すれば誰でもいとも簡単に細かなピント合わせが可能となる。残りのカットは絞りをF13とF20まで絞って撮影してみた。

 なお、カスタムファンクションIVに「ライブビュー露出シミュレーション」があるが、今回は有効ではなかった。地明かりをそのまま再現するため、ストロボ撮影では撮る前が真っ暗になってしまうからだ。シャッター速度と絞りに連動して画像が変化するので、屋外での撮影なら活用できるであろう。


二眼レフもカメラ正面と上部から2灯で撮影。中二の息子はデジカメよりこちらに興味有り
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/10秒 / F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 64mm
携帯ストラップ「キュージョン」のねずみ男と目玉おやじ。ボケを使う撮影にはライブビューは最適
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/8秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm

ミラーにピントを合わせて撮影。視野率100%なのでフレームいっぱいに撮ることも容易
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 47mm
ヘルメットにピントを合わせて撮影。ライブビューを使えば誰でも細かなフォーカシングが可能となる
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 47mm

F13まで絞って撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 47mm
F20まで絞って撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F20.0 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 47mm

 ライブビューを使って不満に感じたのは、5倍、10倍に拡大して撮影しても、シャッターを切った後1倍の状態に戻ってしまうことだ。撮影が終わると一旦撮影した画像が表示され、その後ライブビューに戻る。使い方にもよるだろうが、そのまま拡大表示の状態に復帰してくれた方が、操作性がいいような気がする。

 もう一つ不満を言えばバッテリーの消耗だろう。カタログスペックで撮影枚数が、通常撮影で1,100枚、ライブビュー撮影で170枚となっているように、ライブビューを使っていると、あっという間に電池がなくなってしまう。印象としては枚数というより時間で制限される感じだ。撮影状況にもよると思うがほんの1~2時間の撮影で電池交換の必要がありそうだ。モニターに映しているだけで電池を消耗するなら、コンパクトデジカメは全て電池食いになってしまう。どの部分で消耗してるのかわからないが、この点は今後改善が望まれる。

 それほど興味がなかった機能だが、ライブビューは使ってみるとかなり便利だ。おそらくこれから物撮りするときは、必ずライブビューを使うであろう。静音撮影の面でも可能性を感じる技術だ。他社を見てもライブビュー機能の搭載は増えている。今後のデジタル一眼レフカメラの標準装備になりそうな機能なのでさらなる進歩を期待したい。


外に出てライブビューで撮影してみた
24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 24mm
24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro / 3,888×2,592 / 1/800秒 / F1.8 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 24mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/40d/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS 40D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#eos_40d
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(EOS 40D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#40d



奥川浩彦
(おくがわひろひこ)1961年、名古屋生まれ。パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報担当、2001年イーレッツの設立に参加。2006年、iPR(http://i-pr.jp)を設立し広報代理業とライター業で独立。写真を始めたのは学生時代にモータースポーツを撮りたかったから。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選経験あり。鈴鹿で開催されたF1日本グランプリは87年から20年皆勤賞。http://okugawa.jp/menu/

2007/10/03 00:06
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