デジカメ Watch
最新ニュース

カシオ EXILIM Hi-ZOOM EX-V7【最終回】
羊の皮を被ったテクニカルモデル

Reported by 本誌:折本 幸治


 「EXILIM Hi-ZOOM EX-V7」(以下EX-V7)を使って早2カ月。ポケットにすっぽりと入ることもあり、もはや日常的に手放せないカメラとなっている。

 今思うと7倍ズームもさることながら、マニュアル露出に加え、モードメモリ、オリジナルベストショットなど、カスタマイズ性とシーン対応力の幅広さが自分の嗜好にあっていたようだ。

 おかげで滝や夜景など、コンパクトデジタルカメラではあまり狙わないシチュエーションを堪能できた。大人しい見た目ながら、マニアックなユーザーが使い込めば、相応の奥深さを享受できるカメラだと感じている。

 今週は最終回ということで、これまでとりあげなかった些末な点を挙げて見る。


手ブレ補正

ブレ軽減メニュー。「手ブレ補正」は増感なし、「被写体ブレ」はISO400まで増感で手ブレ補正なし。オートは両者の組み合わせとなる。実感としては、望遠側で撮ろうとすると、比較的増感するプログラムラインのようだ
 EX-V7は、カシオ初の手ブレ補正を搭載している。採用するのは、いわゆるCCDシフト式。さらに細かくいえば、液晶モニターで常に効果がわかるタイプ(常時補正型)ではなく、撮影時のみ補正がかかるタイプだ。カシオではその理由を「この方が精度が出たため」と説明している。どんな風に補正が行なわれているかを知りたければ、「ブレ軽減」から「手ブレDEMO」を選べば良い。ただしDEMOなので撮影は不可能だ。

 屋内における広角~標準域での撮影では、その恩恵を実感することが多い。等倍で確認せず、A4など大きなサイズにプリントしないなら、広角端・1/15分秒でも立派に使える写真になる。1/40秒なら等倍でも問題ない。しかし望遠域だと、自分の手ブレがひどいせいなのだろう。たまに、あまり効果を実感できないときがある。

 以前、三脚使用、手ブレ補正ON(手持ち)、手ブレ補正OFF(同)の3パターンを望遠端でシャッター速度ごとに10枚ずつ撮影し、等倍で確認したことがある。被写体は遠景の海上クレーン。クレーンから垂れ下がる特定のワイヤーにおける横方向のピクセル数(三脚使用時は平均9ピクセル)を数えて、その平均をだしてみた。その結果、手ブレ補正ONは手ブレ補正OFFより、平均して10%ほどワイヤーが細く描写されることがわかった。もっと差が出るかと思ったが、実際の写真にはほとんど差異が見受けられない。手ブレ補正ONでも、ブレているときはしっかりとブレているし、シャッター速度によっては、結果が逆転するケースもあった。

 このときは左右方向だけをカウントしたが、ブレには左右だけでなく、上下、前後、回転方向があることを考えると、この結果から即「手ブレ補正をONにすると、ブレ量が10%減る」とは結論できない。また、撮影している場所では無風でも、ワイヤーが微妙に揺れている可能性がある。そもそも計測方法を見直した方が良いだろう。

 いずれにしても、手ブレ補正はないよりはあるに越したことはない。気づいてないだけで、某延期でもずいぶん助けられているのかもしれない。今後の機種にも搭載を期待したい。なお「補正効果を的確に表す基準がない」との理由から、カシオは手ブレ補正の段数を公開していない。


ズームレバー

モードダイヤル(右)とズームレバー。縦型のズームレバーに慣れるのに時間がかかった。今ではスムーズに操作できる
 シャッターボタンをはじめ操作ボタン類の押し心地は良く、位置も妥当に感じる。特にシャッターボタンのフィーリングは、EXILIMの良き伝統だと思う。再生ボタンに電源ONを割り付け、長押しから再生モードを起動できるのも便利だ。カシオ機になれているせいもあるが、全般的に操作で混乱して困ったことはない。

 ただ1つ、ズームレバーだけは馴染むまでに時間がかかった。EX-V7のズームレバーは最近のデジタルカメラとしては珍しく、縦方向に操作する。さらに、レバーを動かす長さによって、ズーム速度が変わるという凝ったものだ。少しだけずらせばゆっくりとズームし、いっぱいまで動かすと最高速度で一気に画角が変わる。ちょっと高価なビデオカメラのズームボタンに近いが、あそこまでアナログ的な変化ではなく、弱と強の2段階しかないようだ。

 最初は微妙なズーム操作を期待したが、低速で画角を変えるのが意外と難しい。特に、下方向のレバー操作(望遠→広角)が上手くならない。かなり器用に制御できるようになってきたが、練習を重ねてもっと使いこなしたいところだ。


クレードル

 充電とPC接続は、同梱のUSBクレードルで行なう。本体にAC端子はないので、本体のみでの充電は不可能。電池の持ちが心配な場合は、旅行先にUSBクレードルを持ち込む必要がある。EXILIMシリーズではおなじみのパターンだ。

 そこでEXILIMユーザーは、別売の充電器を買うことを考える。例えば、リチウムイオン充電池「NP-40」を採用するEX-Z1200、EX-Z1050、EX-Z700では「BC-30L」(6,300円)、「NP-20」を採用するEX-Z75、EX-S770は「BC11L」(5,250円)といった具合だ。

 しかし、バッテリーの形状がほかのどの現行EXILIMとも違うEX-V7は、別売の充電器が用意されていなかった。EX-V7の撮影可能枚数はCIPA規格基準で約240枚。EXILIMにしては、とりわけスタミナに優れる機種ではないこともあり、2泊以上の旅行先にはクレードルも持参することがある。


右下がクレードル。充電するには、左の充電器と上の電源ケーブルも必要
バッテリーはちょっと懐かしいガム型。ほかのEXILIMとは異なる形状だ

6月下旬には、別売の充電器が発売される。旅行用に欲しい

 クレードルはかさばる上、電源を供給するにはACアダプターも別途必要になる。しかもデジタル一眼レフカメラでの撮影がメインの旅行だと、サブカメラであるEX-V7を充電するまでもないケースがよくある。しかもそれでも出かける前になって「ひょっとしたら」と心配になり、バッグにクレードルを詰め込むことの繰り返しだ。

 しかし、6月下旬にはようやく専用充電器の「BC-40L」が発売される模様。あまり小さくないが、クレードルよりは携帯しやすそうだ。ただ、価格が6,300円なので、5,250円の専用バッテリーをもうひとつ入手した方がベストのような気がする。

 なおPC接続時には、同梱ソフト「Photo Transport」が利用できる。PCで表示した画面の一部をEX-V7に転送するもので、経路探索ソフトの検索結果、ホテルの予約内容、目的地付近の地図など、調べた結果をどんどん転送し、外出先で閲覧できる。使い方次第では有益なソフトだ。同じくPhoto Transportを同梱するEX-S770のレビューで解説しているので、参照いただければと思う。個人的には、EX-S770のもうひとつの添付ソフト「DATA Transport」も利便性が高いので、同梱して欲しかったところだ。


終わりに

 コンパクトな外観と7倍ズームという飛び道具から、一般層をメインターゲットとしたカジュアル系の製品に思われがちだが、筆者的にはマニュル露出が可能なテクニカルコンパクトの一種に分類したい。特にP/A/S/Mの露出モードを装備しているところは、いつのまにか消えた「EXILIM PRO」や、2005年春の「EXILIM ZOOM EX-Z850」に通じるものがあると思う。広角はあれだが、比較的対応シーンが広いので、デジタル一眼レフカメラのサブカメラとしてもお薦めできる。

 特に望遠レンズを含めたシステムのスリム化を考えている場合、EX-V7を望遠レンズ代わりとして使うのも手だと思った。写りはデジタル一眼レフカメラにかなうべくもないが、望遠レンズを「重いから」と持って行かず、せっかくのチャンスに撮れないよりはマシだろう。以前は「COOLPIX S10」をそうした用途に使っていたが、長時間露出など細かい設定に秀でるEX-V7に変更しようかと考えている。

 次機種への要望は、ボディのさらなる薄型化、HD動画記録への対応、最低でも35mm相当からの広角化だろうか。CCDサイズの大きなEX-Z850やEXILIM PROの復活を願う傍ら、新しいサブブランド「Hi-ZOOM」の今後に期待したい。


3,072×2,304 / 1/320秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 44mm
3,072×2,304 / 1/80秒 / F3.7 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 50mm

3,072×2,304 / 1/80秒 / F3.7 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 57mm
3,072×2,304 / 1/200秒 / F3.7 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 50mm

3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.9 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 47mm
3,072×2,304 / 1/100秒 / F4.2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 104mm

3,072×2,304 / 0.4秒 / F13 / +0.67EV / ISO64 / WB:昼光 / 266mm
3,072×2,304 / 1/30秒 / F3.4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 38mm

3,072×2,304 / 1/100秒 / F3.9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 71mm
3,072×2,304 / 1/160秒 / F3.4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 38mm

3,072×2,304 / 1/500秒 / F3.9 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 71mm
ベストショット(夕日)
3,072×2,304 / 1/500秒 / F5.1 / -1EV / ISO64 / WB:昼光 / 57mm


URL
  カシオ
  http://www.casio.co.jp/
  製品情報
  http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_v7/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(EX-V7)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#ex_v7

関連記事
【実写速報】カシオ EXILIM Hi-ZOOM EX-V7(2007/03/26)
カシオ、手ブレ補正付き7倍ズームコンパクト「EXILIM Hi-ZOOM EX-V7」(2007/01/30)


( 本誌:折本 幸治 )
2007/06/04 00:01
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.