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パナソニック LUMIX DMC-TZ3【最終回】
二代目旅カメラ、香港へ

Reported by 奥川 浩彦


 3月から始まったLUMIX DMC-TZ3(以下TZ3)の連載も、今回で最終回となる。筆者自身この連載は今回で4機種目となるが、TZ3は撮っていて楽しいカメラだった。楽しかった理由は10倍ズームによるところが大きく、絵作りの範囲が広がることで、写欲が湧いたような気がする。

 最終回は、旧DMC-TZ1で謳っていた「旅カメラ」のイメージそのままに、海外旅行に出かけた際の撮影を中心としてみた。また、これまで撮った作例の紹介と、TZ3についての感想をまとめたいと思う。

 旅行の行き先は香港。愛知万博に合わせて2年前に開港した中部国際空港、通称セントレアが名古屋の空の玄関口となっている。開港当時は混雑したが、現在はごく普通に利用者が通過する空港だ。

 出発前にデッキで撮影をしてみた。セントレアができるまで、この地方は名古屋空港がメインだった。名古屋空港は内陸の空港で、着陸する航空機を目の前で見ることができた。ここは海上空港なので、離着陸する旅客機を真下から撮るようなことはできない。

 もちろんデッキの先端まで行けば、焦点距離200mm程度(35mm判換算、以下同)の望遠があれば撮影できる。が、それはデッキから一番近い滑走路の話で、着陸する瞬間と撮ろうとすると、EXズームに設定して420mm相当でも足りないくらいだ。撮れないことはないが、液晶モニターで左右に移動する被写体を追っかけるのは難しい。フレームアウトするケースが多かった。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


セントレアを離陸するJAL機。デッキ先端から280mm相当で撮影
3,072×2,304 / 1/1,000秒 / F4.9 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 280mm
着陸する瞬間を撮るには420mm相当でも足りないくらいだ
2,048×1,536 / 1/800秒 / F4.9 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 420mm(EX光学ズーム)

 離陸して4時間ほどで、香港に到着する。空港内の移動用として、無料の地下鉄が用意されるほどの巨大な空港だ。筆者はここ5年ほど毎年香港を訪れている。いろいろな意味で個人的に大好きな街である。

 今回一番撮影したかったのは高層ビルだ。香港は何度も訪れている割に天候に恵まれない。100万ドルの夜景といわれるビクトリアピークからの景色も、前回は小雨だった。九龍半島から香港島のビル群を撮ろうと早起きしたときも小雨。今回こそリベンジといった想いだ。

 晴れた初日の夜、香港島を見下ろすビクトリアピークに上がってみた。香港名物のケーブルカー、ピークトラムは1本のワイヤーで2両の車両を結び、頂上から動力で動かすユニークな構造だ。停車するとワイヤーが伸び縮みし、しばらく車両が前後に揺れるのが微笑ましい。もの凄い角度で登って行くのだが、写真で表現するのが難しいと感じる。

 この日も晴れてるとはいえ、空気の透明度は低い。湿度80~90%が普通なので、運がよくないとクリアな遠景を見ることはできないのだろう。屋上の展望台に上がり、大勢の観光客の隙間から高層ビルを見下ろす……といっても、一番高いIFC2ビルはほぼ目線の高さだ。

 今回持参した三脚はベルボンの「ULTRAMAXi F」。コンパクトデジカメでの三脚撮影は、ほぼすべてこの製品を使用している。収縮時は40cm以下とコンパクトなのと、自由度が高いのが理由だ。混雑した展望台では三脚を広げて立てるのは迷惑だし、カメラ位置が手すりから離れるので、画角によっては手すりが写り込んでしまう。今回は1本だけ脚を伸ばし、残りの2本は収縮したまま角度を広げ、手すりに載せて撮影した。この状態なら、1人が観賞する場所で三脚を利用することができる。ただしこの三脚は、剛性も不足しているし、脚の長さの調整がしにくいなど不満もある。この日は天候がイマイチだったこともあり、100万ドルというより60万ドルくらいか。

 そのままビクトリアピークで食事をした。せっかくなので中華の店に入り、食の撮影だ。観光スポットなので値段は高め。客は西欧人が中心で、照明はかなり暗い。

 TZ3は開放F値が3.3と暗めで高感度ノイズも多く、オートホワイトバランスが良くないので、こういった場所での食の撮影には不向きだ。ISO400にしてもシャッター速度が1/10秒以下で、手ブレ補正の限界を超えている。ホワイトバランスをオートと白熱灯に替えながら、ストロボオンで撮影してみた。ストロボ撮影は白トビするので、露出補正を-2.0EVとしている。現場の雰囲気は出ないが、無難なのはストロボを使用した画像となった。


ビクトリアピークの展望台から香港島の構造ビル群を夜景モードで撮影。大気の透明度がイマイチ
3,328×1,872 / 2 秒 / F3.6 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 34mm

暗い室内で撮影。ホワイトバランスはオート
3,072×2,304 / 0.3秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO400 / WB:オート / 28mm
ホワイトバランスを白熱灯にすると色が若干改善される
3,072×2,304 / 0.3秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO400 / WB:白熱灯 / 28mm
雰囲気は出ないが、この状況ではストロボを使用した方が無難だった
3,072×2,304 / 1/30秒 / F3.3 / -2EV / ISO100 / WB:ストロボ / 28mm

 九龍半島の最南端、香港の映画スターの手形が並ぶAvenue of Starsの主役はブルース・リーだ。対岸の香港島のビル群をバックにブルース・リーの銅像を撮影してみた。銅像に露出を合わせるとバックが飛んでしまうので、ストロボを使用した。が、あまり改善されなかった。前回のトヨタ博物館でも感じたが、TZ3のストロボは今ひとつ活躍できない印象だ。

 映画通でない筆者にとって、香港の映画スターで思いつくのはブルース・リーとジャッキー・チェンだけだ。2人の手形プレートを探すことにした。香港は中国語と英語が入り交じっている。近くのグッズショップでブルース・リー=李小龍、ジャッキー・チェン=成龍であることを確認してプレートにたどり着くと……李小龍=BRUCE LEE、成龍=JACKIE CHANとそのままだった(笑)。ブルース・リーのプレートには手形がない。そう、Avenue of Starsができたのは3年前で、当然故人のプレートには手形がない。

 この場所は香港島のビル群を撮影する最適の場所だ。広角28mmでは太刀打ちできない景色が広がっている。パノラマ好きな筆者は以前からこの景色をパノラマ撮影したいと思っていた。実は数年前にチャレンジしたことがあった。その時は間抜けなことに、小型のロッド式の三脚を持ってきた。現地で気付いたのだが、自由雲台だったので水平にパーンすることができなかった。正直いって自分の間抜けさに呆れた経験がある。

 今回は満を持してのパノラマ撮影だ。TZ3はパノラマ撮影には最適のデジカメだ。16:9の画角は広く、3枚で180度をカバーできる。また、補正のおかげで広角端の歪曲収差が少なくつなぎ目のズレも少ない。ここはアジアを代表する港とあって、船の往来が激しい。船がいないタイミングを狙って撮影した。雲と海面も動くが、対応策がないのでそこは諦めよう。

 製品に付属された「PanoramaMaker」は、自動的に露出補正をする機能を持っている。しかし、筆者は撮影時に露出補正で調整している。前日よりは空気に透明感があるがスカッとしているとはいえない。それでも数年来の思いを果たせた気分にはなった。


Avenue of Starsは九龍半島の最南端。香港島の高層ビル群を撮影するには絶好の場所だ
3,072×2,304 / 1/250秒 / F8 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
ブルース・リーの銅像。ストロボを使ったがうまく撮れなかった
3,072×2,304 / 1/800秒 / F3.3 / 0EV / ISO100 / WB:ストロボ / 28mm

ブルース・リーのパネルには手形がない
3,072×2,304 / 1/1,300秒 / F3.9 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 40mm
ジャッキー・チェンはしっかりと手形がある
3,072×2,304 / 1/1,300秒 / F3.7 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 36mm

16:9、28mmで撮った画像3枚をパノラマ合成。右の方の高いビルがIFC2だ(3,184×710ピクセル)

 船で香港島の中環に渡ると、目の前に香港国際金融中心(Hong Kong International Finance Centre=IFC)がそびえている。香港を象徴する高層ビルの中で、一番高いのがこのTWO IFC(IFC第2ビル)だ。現在世界1位は台湾の台北101(509m)。IFCは世界5位で高さ415m、88階建てとなっている。世界100位までに香港のビルは10棟も入っていて、高層ビル街としては世界一と言えるだろう。

 アスペクト比を16:9に設定して広角端で縦位置で撮ってみた。広角端が38mmくらいのデジカメではこの位置からは入らないであろう。たかがビルだが有無を言わせぬ迫力で満足した1枚が撮れた。

 夜、再びAvenue of Starsに向かった。毎晩8時から行なわれるシンフォニー・オブ・ライツ(Symphony of Lights)を撮影するためだ。高層ビル群がイルミネーションとレーザー光、サーチライトなどで照らされる催しで、音楽に合わせた演出しとなっている。無料で観られるイベントなので、昼間の10倍以上の人が集まっていた。ここは足元が海に向かって緩やかに傾斜していて、手すりの向こう側の壁が45度くらいにせり上がっている。レーザー光やサーチライトは刻々と動く。

 香港へはTZ3と一眼レフを持って行ったが、途中で一眼レフはホテルに置きっぱなしにしてしまった。一眼レフと比較すると画質の差は明らかだが、その軽さと10倍ズームの便利さは圧倒的で旅カメラとしては理想的な1台だと実感した。


中環に船で渡るとすぐ目の前にIFCがそびえている。世界第5位の高さは迫力満点
3,328×1,872 / 1/400秒 / F8 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
IFC2の隣の似た形で低いのがIFC1、その隣は中環中心(The Centre)、世界第14位
3,072×2,304 / 1.3秒 / F4.7 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 96mm

シンフォニー・オブ・ライツを夜景モードで撮影。写真では表現し辛い被写体だ
3,328×1,872 / 2秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

昼間とほぼ同じ場所から夜景もパノラマ撮影。前日より天候はまし(3,072×720ピクセル)

ホテル内の廊下。照明が印象的だったので端まで異動して撮影。ホワイトバランスがイマイチ
3,072×2,304 / 1/8秒 / F3.3 / 0EV / ISO400 / WB:白熱灯 / 28mm
スターフェリー乗り場の横のクロックタワー。大勢撮影してたので参加して撮影
3,072×2,304 / 1/800秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

IFCを通り抜けたところ先のビル。もっと広角で撮りたかったが28mmがなければ撮れないアングルだ
3,072×2,304 / 1/640秒 / F8 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
香港名物トラム(路面電車)。多くの車両がラッピング広告されている。パナソニックを見かけなかったのでサイバーショット
3,072×2,304 / 1/160秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

旺角駅の裏通り、電気街である西洋菜街(Sai Yeung Choi Street)。EXILIMの看板を見つけてパチリ
3,072×2,304 / 1/20秒 / F3.3 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
同じ場所でK10Dの看板。よる10時を過ぎても電器屋は営業中。とにかく香港は夜更かしの好きな街だ
3,072×2,304 / 1/30秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 28mm

総括

 さて、2カ月間TZ3を使った感想をまとめてみたい。

●外観

 スタイリッシュなコンパクト機と比較すれば一回り大きいが、10倍ズーム機としては許せる範囲だ。常時持ち歩くにはやや大きい。しかし、旅行なら我慢できる。3型の液晶モニターは大きく、日中でも見やすい。

 少々気になったのは一体型となったレンズバリアだ。サイズが大きいためウッカリすると指を突っ込みそうになる。カバンや横長のカメラケースに入れる場合は注意が必要だ。縦長のカメラケースを用意してグリップ部を上にするように収納すれば、取り出すときも安心できる。構造的に弱い部分なので注意したい。


●画質

 解像度は優れているとは言えないし、ホワイトバランスもイマイチだ。だが広角28mmからの10倍ズームだと思えば悪いとは言えない。ガッカリすることは少ないだろう。高感度時の画質は優秀とはいえない。ISO800になるとかなりためらう感じだ。もう一頑張りして欲しいと思う。


●機能

 レンズの暗さは気になるが、10倍ズームは魅力的だ。3倍ズーム機とは比較にならないくらい絵作りの幅が広がる。EXズームで15倍まで撮影できるのも嬉しい機能だ。光学式手ブレ補正の効果はやや弱め。画角にもよるが、シャッター速度が1/10秒以下になると不安を覚える。もちろん手ブレ補正そのものの効果は絶大だが、効力はトップクラスとは言い難い。

 オートフォーカスはやや遅い。全体的に動きにキビキビした感じはない。インテリジェントISO感度は機能としては面白いが、筆者は不安が先に立ち使いこなせなかった。最高感度を設定できるのはいいが、実際の撮影時に表示されるのは絞り値だけで、ISO感度の値やシャッター速度は表示されない。手ブレの限界を超えると、絞り値が赤色に変わるができれば表示してくれるとありがたい。筆者としては、それほど顔認識機能を重要視していない。だが、これからは定番の機能となりそうなので、パナソニックの機種でも対応が待たれるところだろう。

 可能ならシーンモードの1つとして、シャッター速度を遅くするモードを追加して欲しい。元々絞りが2段しかないが、絞り込んだ状態でISO感度を50とか25まで落として、昼間でも1/125秒とか1/60秒が切れると滝や噴水の撮影にも使えるはずだ。手ブレ補正もあるので、絵作りの幅が広がるだろう。


●操作性

 ファンクションボタンが付いたことで、操作性は格段に向上した。他社の真似とも言えるが、いいものはどんどん真似して欲しい。逆に手ブレ補正のボタンは必要だろうか。手ブレ補正の搭載をアピールするためにあると勘ぐってしまうのだが、そろそろその役目も必要ないであろう。その空いたスペースに再生ボタンを割り付け、現在の再生ボタンにISO感度あたりを用意してくれた方が嬉しい。

 TZ3は写真を撮ることの楽しさが味わえるカメラだ。一眼レフほど気合いを入れなくても持ち運べるのも魅力的だ。細かな不満はあるが、トータルで考えると素晴らしいカメラだと思う。

 第3回の掲載でサーキットの写真を掲載したところ、「運動会なら楽勝? 一眼レフはいらない?」と聞かれたが、動きの予想できない子どもの撮影は一眼レフが桁違いに楽だと答えておいた。動く被写体に関しては、ほかのコンパクト機と同様、多くを望まない方が良い。あまりライバル機がいないゾーンの製品なので、今後の発展を期待したい。


全日本モトクロス近畿大会を撮影。モトクロスは被写体の距離が近く、撮影にはお薦めのイベントだ
3,072×2,304 / 1/800秒 / F4.9 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 228mm
シャッター速度が1/200秒に落ちる風景を探してフォーカスロック。そのまま流し撮りした
3,072×2,304 / 1/200秒 / F8 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 28mm

山中湖から富士スピードウェイに抜ける三国峠の途中で撮影。撮影ポイントは路上駐車であふれていた
3,328×1,872 / 1/1,300秒 / F3.5 / -0.66EV / ISO100 / WB:オート / 32mm

諏訪大社春宮。コントラストが大きな被写体で白トビ、黒ツブレが心配だったがギリギリ許せる範囲か
3,072×2,304 / 1/250秒 / F3.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
樹木から落ちる水滴で穴の出来た敷石を撮影。参道を背景にしたがもう少し奥までピントが欲しかった
3,072×2,304 / 1/500秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

名古屋港に沈む夕日を16:9で撮影。冬は橋脚の間に沈むが、春を過ぎると広角でないとフレームに入らない
3,328×1,872 / 1/500秒 / F3.6 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 34mm


URL
  パナソニック
  http://panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/tz3/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm

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( 奥川 浩彦 )
2007/05/23 01:10
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