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パナソニック LUMIX DMC-TZ3【第7回】
手ブレ補正でトヨタ博物館を撮る

Reported by 奥川 浩彦


 筆者の地元名古屋は景気が良いといわれているが、残念ながら筆者には恩恵も実感もない。名古屋経済に大きく影響しているのはトヨタ自動車であろう。先週発表された2006年度の連結決算は、営業利益が2兆2,386億円と初めて2兆円の大台を突破し、売上高は23兆9,480億円と大幅増収となったらしい。

 名古屋周辺にはトヨタが運営する博物館や記念館がいくつかある。筆者のお薦めは産業技術記念館と、今回紹介するトヨタ博物館だ。1989年に開館したトヨタ博物館は一昨年開催された愛知万博会場のすぐそばにある。1800年代からの歴史的な名車120台が展示され、トヨタ自動車だけでなく国内外のメーカーの車が置かれているのはトヨタ自動車の懐の広さを感じさせる。

 旅行で観光地を訪れると博物館など、室内で撮影する機会があるだろう。室内の撮影で問題になるのは照明の暗さで、それに起因するノイズや低速シャッターによる手ブレだ。三脚を立てれば問題は完結するが、持っていくのも邪魔だし、三脚禁止の施設もある。今回は手持ち撮影を中心に撮ってみた。LUMIX DMC-TZ3(以下TZ3)のノイズはISO200まではそこそこ少なめだが、ISO400になると明らかに目立ち始める。できればISO200までで撮影したい。厳しい条件となるが何枚も撮影すれば手ブレ補正の効果もあり、ブレのない絵も撮れるだろう。

 入館すると最初に迎えてくれるのが、1936年にトヨタが初めて発表した乗用車「トヨダAA型」の復元車だ(当時はトヨタではなくトヨダ)。トヨタ博物館は建物の真ん中が吹き抜けになっており、外光が取り込まれていてる。「トヨダAA型」が展示された場所は明るめで比較的撮影条件は悪くない。焦点距離は28mm(35mmフィルム換算、以下同)、ISO200でブラケットを使い露出補正を変えながら撮影した。シャッター速度1/8秒は苦しく、最終的に1/13秒の画像を選択した。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算での焦点距離を表します。


トヨダAA型の復元車。黒光りしたボディが美しい
3,072×2,304 / 1/13秒 / F3.3 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 28mm

漢字の豊田をデザインしたマスコット。ISO800で撮影した
3,072×2,304 / 1/25秒 / F4.8 / -0.66EV / ISO800 / WB:オート / 170mm
別の展示車で再度撮影。今度はISO200で画質が向上
3,072×2,304 / 1/40秒 / F4.8 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 170mm

 このトヨダAA型で目を引くのがボンネットのマスコットだ。ボンネットのマスコットで有名なのはベンツだと思うが、この時代は多くの車にマスコットが取り付けられている。漢字の豊田をそのままデザインしたマスコットはレトロ感たっぷりで印象的だ。ボディの左側から撮影すると正しく読める方向だが、バックの壁が明るくマスコットが引き立たないので逆文字となる右側から撮ってみた。ボディに反射した文字は正しい方向となっている。

 170mmの中望遠にズームして撮影したがISO400ではシャッター速度が遅すぎたのでISO800まで上げて1/25秒で撮ってみた。等倍にするとさすがにノイズが目立つが、Lサイズにプリントする程度なら我慢できるだろう。

 2階には1980年代から90年代前半の欧米車が展示されている。展示場所により照明状態は異なるがやや暗めとなっている。1910年製のロールスロイス シルバーゴーストを設定を変えながら撮り比べてみた。感度はISO200としストロボオフ、強制発光、赤目軽減スローシンクロと変更してみた。ストロボオフではシャッター速度が1/8秒とかなり厳しい条件となった。前タイヤが黒くツブれ、タイヤ側面にあるDUNLOPの文字もほとんど読み取れない。

 ストロボを強制発光するとシャッター速度は1/30秒となり前タイヤの側面はやや明るくなったが全体はかなりアンダーとなった。赤目軽減スローシンクロに設定するとシャッター速度は1/8秒となり全体に明るくなり、DUNLOPの文字も読み取れる。反面、ホワイトバランスをオートにしてストロボを使用すると、自動的に色温度が白熱灯から晴天に上がるようでかなり赤っぽい感じとなった。TZ3の取説にはホワイトバランスの微調整ができ、ストロボ使用時も有効と書いてあるが、その後いろいろテストをしてみたが上手く調整することはできなかった。


1910年製ロールスロイスをストロボオフで撮影
3,072×2,304 / 1/8秒 / F3.3 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 28mm
ストロボ強制発光で撮影。かなりアンダー
3,072×2,304 / 1/30秒 / F3.3 / 0EV / ISO200 / WB:ストロボ / 28mm
スローシンクロで撮影。明るさはいいがホワイトバランスがイマイチ
3,072×2,304 / 1/8秒 / F3.3 / 0EV / ISO200 / WB:ストロボ / 28mm

 トヨタ博物館で筆者が一番好きな展示車がブガッティ タイプ35Bだ。レース界に輝かしい歴史を刻んだ名車である。この車だけは三脚を使用して撮影した。床に座り込んで三脚を低めにセットし、広角28mmで撮影した。28mmでグッと近付いて撮った絵は決まると実に美しい。

 3階には1930年代から70年代の国産車が展示されている。3階建ての最上階で、建物中心の吹き抜け部分からの採光により撮影条件は良くなった。エスカレータを上がると最初にまたトヨダAA型が置かれている。1階は黒だったが3階はベージュ色。観音開きのドアが開放されていて、車内の様子を見ることができる。全体の印象は黒い方が格好良く見えたが、照明の条件がよかったので再度ボンネットのマスコットを撮影することにした。今度は豊田と読める左側からの撮影だ。ISO200にしてもシャッター速度は1/40秒で画質は向上した。

 冒頭でも書いた通り展示されているのはトヨタ車だけではない。スカイラインや117クーペ、コスモ、ミゼットなど国内メーカーの歴史に残る名車が並んでいる。後半に近付くと40代の筆者が子どもの頃に見た車も展示されている。

 三菱ギャランGTOは後部に明るい外光が当たり、前部はやや暗めになっている。アスペクト比を16:9に設定し最初はストロボオフで撮影してみた。顔がやや暗めだが許せる範囲だと思いつつ、ストロボをスローシンクロで発光した画像も撮ってみた。顔全体も明るくなったが、ヘッドライトにストロボ光がアクセントを付けてくれた。元々外光が強かったせいか、ストロボを使ってもホワイトバランスの変化は少なかった。


ブガッティ タイプ35B。綺麗に撮りたかったので三脚を使用
3,328×1,872 / 1/2秒 / F3.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

ストロボをスローシンクロさせて撮影。こちらの方がバランスが良い
3,328×1,872 / 1/20秒 / F4.2 / 0EV / ISO100 / WB:ストロボ / 48mm

1971年製三菱ギャランGTOをストロボオフで撮影
3,328×1,872 / 1/15秒 / F4.2 / 0.33EV / ISO100 / WB:オート / 48mm

 モータースポーツ好きの筆者として気になる1台がトヨタ7だ。ヤマハ発動機が開発した5リッター、V8ターボ、800馬力のエンジンパワーを路面に伝える巨大なリアタイヤが印象的だ。実際にレースに投入されることはなかったが、日本のモーターレース史に残る1台だろう。トヨタ7の開発では1969年に福沢幸雄(福沢諭吉のひ孫)をヤマハのテストコースで喪い、70年には鈴鹿サーキットでこのターボ車のテスト中に川合稔が亡くなった悲しい歴史もある。

 巨大なリアタイヤを強調するために背後から広角28mmで撮影してみた。マシン後方側から外光が当たっていてリヤウイングが白トビしているが全体のバランスからすると仕方ないであろう。TZ3は露出補正、オートブラケットの操作性がいいので判断に迷うシーンでは撮影が楽になる。

 トヨタ博物館へは過去に何度か足を運んだが、展示車の入れ替えが少ないのが残念だ。バックヤードにはメルセデス・ベンツ300SLや映画で有名になったタッカーなどが所蔵され定期的にバックヤードツアーも開催されている。この辺りの名車も常設展示に加えてくれると嬉しいと思う。現在はT型フォードの特別展を開催中で、5月27日にはクラシックカー・フェスティバルが開催され、パレードや試乗会も行なわれる。詳しい情報はホームページに掲載されているので、興味のある方はご覧いただきたい。


トヨタ7をリアタイヤを強調して撮影
3,072×2,304 / 1/40秒 / F4.8 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 170mm




そのほかの名車たち

パナール ルヴァッソール B2(1901年)。FR方式を採用した最初の車。史上初のレースなどで活躍
3,072×2,304 / 1/13秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO400 / WB:オート / 28mm
シボレー マスタシリーズDA(1934)。メッキ部品や流線型ボディが印象的
3,072×2,304 / 1/10秒 / F3.3 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 28mm

日産70型フェートン(1938年)のマスコット。当時は多くの車のボンネットにマスコットが付いていた
3,072×2,304 / 1/40秒 / F4.7 / -0.66EV / ISO400 / WB:オート / 89mm
クラウン初代モデル(1955年)。いつかはクラウン……筆者には無縁か
3,072×2,304 / 1/13秒 / F4.2 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 48mm

トヨタ2000GT(1968年)。日本の自動車史に残る名車。実際の開発、製造はヤマハ発動機によるもの
3,328×1,872 / 1/13秒 / F4 / 0.33EV / ISO100 / WB:オート / 43mm

2000GTのエンブレムとバックミラーを中望遠で切り取ってみた。焦点距離141mmで1/25秒で撮影。手ブレ補正の効果は大きい
3,072×2,304 / 1/25秒 / F4.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 141mm
ダイハツミゼット(1959年)。後部に外光が当たり前部は室内照明だがそこそこの色で撮れた
3,072×2,304 / 1/13秒 / F4.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 45mm

マツダ コスモスポーツ(1969年)。日本初のロータリーエンジン車。今見ても美しい
3,328×1,872 / 1/20秒 / F3.8 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 38mm

プリンスR380(1966年)。日本初のミッドシップレーシングカー。初代スカイラインGT-Rはこのエンジンをディチューンして搭載した
3,328×1,872 / 1/6秒 / F3.3 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート / 28mm

新館に展示されているセリカリフトバック(1973年)。とにかく格好良かった。筆者が免許を取った頃まだ現役で走っていて憧れた1台
3,328×1,872 / 1/10秒 / F4 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 43mm
(動画)試乗会が終了し撤収されるフォード(tz3_07_023.mov:10.1MB / 640×480 / 30fps / 22秒)
※画像をクリックするとダウンロードが始まります

※動画ファイルの再生環境はお使いのPCによって異なります。編集部では再生についての問い合わせにお答えできかねます。ご了承ください。


取材協力:トヨタ博物館
http://www.toyota.co.jp/Museum/index-j.html>



URL
  パナソニック
  http://panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/tz3/
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  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm

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( 奥川 浩彦 )
2007/05/16 01:54
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