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カシオ EXILIM Hi-ZOOM EX-V7【第5回】
滝撮りでダイナミックレンジ拡大を試す

Reported by 本誌:折本 幸治


 マニュアルモードでの撮影、とりわけ長時間露光での使い勝手に優れることがわかった「EXILIM Hi-ZOOM EX-V7」(以下EX-V7)。「スローシャッターを使おう」というわけで、今回は栃木県日光方面での滝撮影に持参してみた。実は、人生初の滝撮影になる。

 滝といえば、ファンの多いネイチャーフォトでも人気のジャンルだ。がっしりした三脚の使用が前提で、NDフィルターやPLフィルターを駆使するテクニカルな撮影が思い浮かぶ。水の流れを1秒前後のスローシャッターで表現するのが定番らしいが、NDフィルターやPLフィルターが装着できないEX-V7で大丈夫だろか。現地到着まで不安が収まることはなかった。

 到着した日光は天気が抜群に良く、初夏の風が気持ちよい。イメージしていた「新緑を周りに従え、清々と流れ落ちる滝」が撮れそうな気がして心がはやる。しかし滝を目の前にしてみると、意外にも緑が少ない。本格的な新緑シーンズにはまだ早かったようだ。

 EX-V7のマニュアル露出モードは、デジタル一眼レフカメラなどと同じく、シャッター速度と絞り値を任意で組み合わせて、露出を決めるモードだ。スタイリッシュコンパクト系でよくある、プログラムオート+α(簡単モードなどで設定できないホワイトバランスやISO感度などを設定可能)ではない。シャッター速度は最長60秒から最短1/800秒、絞り値は3段階から選べる。絞り値のうち、3段階目はNDフィルターによる減光なので、絞ったことによる描写の変化は皆無だ。

 ここでシャッター速度優先AEを使う手もあったが、感度が強制的にISOオートになってしまう。しかも、手ブレを軽減するためか、簡単にISO200になるのであきらめた。一方、マニュアル露出は感度がISO64に固定される。これはこれで困る局面もあろうが、今回の場合、やはりマニュアル露出モードの方が安心だと判断した。


マニュアルモードでは薄型コンパクトとして異例となる最長60秒の露光が可能。絞りは3段階のみ。感度はISO64固定になる ダイナミックレンジを3段階に拡大できる。ハイライトを圧縮するのではなく、シャドウを持ち上げるタイプのようだ

 実際に撮ってみると、日中で1秒以上のスローシャッターにすると、露出オーバーになるのでなかなか設定できない。ISO64とはいえ、絞りが3段階しかなく、最小F13(望遠端)というのが足を引っ張る。NDフィルターやPLフィルターが必須なのがよくわかった。滝の周囲が黒い岩肌なのも影響しているのだろう。そこで、一眼レフカメラ用のPLフィルターをレンズの前にかざして撮ることに。1~2段分は稼げるようだ(それでも1秒いかないことも)。というわけで、今回の作例のいくつかは、PLフィルターを併用した。ちゃんと平行にかざせているか自信がないので、EX-V7本来の画質とは異なることは留意いただきたい。

 また、滝と岩肌の明暗差が激しいので、「撮影設定」の中にある「ダイナミックレンジ」を試してみた。「ダイナミックレンジ切」(デフォルト)、「ダイナミックレンジ拡大+1」、「ダイナミックレンジ+2」から選択できる機能で、試してみると、ハイライト側を伸ばすというより、シャドウ側を持ち上げる機能であることが判明した。類似の機能として、ニコンの「Dライティング」を思い出す。

 結果は、ハイライトはそのままに、岩肌や周囲の緑が明るくなった。ピーカンの空の下、明暗差に苦労しながら撮ったとは思えない。今回の目的にはぴったり合致したと思う。もちろん黒側が締まらないので、コントラスト的には物足りないケースもあったが……。

 本来は天候や時間帯を見極めながら、ベストの明暗差のときを見極めて撮るのが筋だろう。しかしそこはサンデーアマチュアカメラマンの悲しさ。短い行程でたくさんの滝を巡るため、デジタル機能でごまかし、次の場所に移動する。ついでに、新緑の物足りなさをカバーする意味で、「彩度」もプラスしてみたが、そのままでも良かったかもしれない。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/撮影モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


ダイナミックレンジ+1
3,072×2,304 / マニュアル露出 / 1/5秒 / F9.6 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 44mm
ダイナミックレンジ+1
3,072×2,304 / マニュアル露出 / 1/5秒 / F9.6 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 44mm
ダイナミックレンジ+2
3,072×2,304 / マニュアル露出 / 1/5秒 / F9.6 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 44mm

 ところでEX-V7のズームレンズは、広角側の焦点距離が38mm相当(35mm判換算)。撮る前は「滝」=「大きい」というイメージから、「広角側が足りないかも」と危惧していた。しかし、一般的な観光コースに含まれる滝の多くは、少し離れた観瀑台から鑑賞する。そのため、ほとんどのケースで問題なかった。むしろ、望遠側の方が活躍したぐらい。ただし、間近まで寄れる滝もいくつかあり、やはり広角が欲しくなったのも事実だ。

 絞りはすべて2段階目、または3段階目に設定した。これまでの経験上、開放よりぐっとシャープになることがわかっていたからだ。また、絞るほどにスローシャッターになるので、日中はほとんど3段階目まで絞っている。ただし3段階とおおざっぱなので、夕方になると2段階目でも必要以上に露光が長いケースも出てきた。素直に開放にすれば良かったが、解像感が失われるのがおしい。三脚を信じて、絞ったままにした。18時を過ぎると日が沈み、周りはぐっと暗くなる。そのため、20秒や50秒の露光も体験した。多くのスタイリッシュコンパクトでは不可能な領域だろう。

 自宅に戻って写真を確認してみると、滝の水は滑らかに流れ、かつ岩肌はシャープで大変満足。一方、一緒に撮ったデジタル一眼レフカメラでは、明るい中で露光1秒を実現するため、F22近辺まで絞っている。そのため、回折による小絞りボケが出たようで、すべてのエッジが丸くなっている。NDフィルターでの絞り機構には否定的な意見もあるが、こういうケースだと威力を発揮するようだ。また、デジタル一眼レフカメラの方は最低感度がISO100なので、ISO64のEX-V7より絞る必要があったのも原因だろう。今度はND4くらいは持って行った方が良いかもしれない。

 静かな自然の中で大きな滝と向き合うのは気持ちが良い。また、たいていの観瀑台は観光道路のすぐ脇、あるいは5~10分ほどでたどり着くので、それほど歩く訳ではない(ただし、アップダウンが激しいところもある)。もちろん、道なき道を分け入り、ようやく到着するような幻の秘瀑もあるが、我々でも簡単に撮れる滝は意外に多い。今度は気に入った滝の前で終日ボーっと時間をつぶしながら、さまざまな時間帯の光で撮ってみたいと感じた。


3,072×2,304 / マニュアル露出 / 1/2秒 / F10.8 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 76mm 3,072×2,304 / マニュアル露出 / 1/6秒 / F11.2 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 89mm

3,072×2,304 / マニュアル露出 / 1/4秒 / F10.8 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 76mm
3,072×2,304 / マニュアル露出 / 1.6秒 / F9.2 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 38mm

3,072×2,304 / マニュアル露出 / 1/4秒 / F9.2 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 38mm 3,072×2,304 / マニュアル露出 / 1/10秒 / F9.2 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 38mm

3,072×2,304 / マニュアル露出 / 50秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 44mm(カラーフィルター:青) 3,072×2,304 / マニュアル露出 / 15秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 38mm


URL
  カシオ
  http://www.casio.co.jp/
  製品情報
  http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_v7/
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( 本誌:折本 幸治 )
2007/05/14 00:00
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