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【新製品レビュー】カシオ EXILIM Hi-ZOOM EX-V7

~手ブレ補正付き小型ボディに7倍ズームレンズを搭載
Reported by 北村 智史

 普通の3倍ズーム機並みのコンパクトボディに光学7倍ズームを搭載した有効720万画素機。カシオでは初となるCCDシフト方式の手ブレ補正機構を内蔵している。画像処理プロセッサも新開発の「EXILIMエンジン2.0」に変更されている。ボディカラーはシルバーとブラックの2色。実売価格は5万2,800円程度だ。


カシオ初のCCD手ブレ補正機構を採用

 今までのEXILIM ZOOMシリーズやEXILIM CARDシリーズのイメージとは違って、少しぽってりしたフォルム。スライド式のレンズバリアに角目のレンズも目新しい。ボディの奥行きは25.5mm、重さも149gあって“カード”感はないものの、一般的な3倍ズーム機と大差ないサイズに収めている。普通の3倍ズーム機の2倍以上の望遠撮影が可能なことを考えれば文句はない。

 レンズは35mmフィルムカメラ換算で38~266mm相当、F3.4~5.3。インナーズーム方式で作動音が静かなため、動画撮影中でも光学ズームの使用が可能だ。開放F値は少々暗めだが、手ブレ補正機構に加えて、高感度によるブレ対策も備えている。メニューの「ブレ軽減」で、「オート」、「手ブレ補正」、「被写体ブレ」が選択できる。「手ブレ補正」は光学式手ブレ補正のみ、「被写体ブレ」は高感度によって被写体ブレを軽減するモード。「オート」は両者の合わせ技だ。

 新しい「EXILIMエンジン2.0」の動体解析技術によって、被写体の“動き”に合わせて感度を上げ下げする機能がとり入れられている。被写体が止まっていれば低感度で低ノイズに、動いていれば感度を上げて被写体ブレを軽減するのは、パナソニックの「インテリジェントISO感度コントロール」と同様で、単純に感度を高めにしてシャッター速度をかせぐだけではないところが新しい。

 ちなみに、レンズ下のAF補助光は白色LEDで、メニューの「撮影ライト」をオンにすると照明として使える。以前、三洋電機のXacti DSC-J4に、新しいところではオリンパスのμ770SWにも搭載されている。真っ暗でも被写体を見ながら撮れるのがメリットだ。

 最短撮影距離は通常時で30cm(広角端)~140cm(望遠端)、マクロ時は10cm(広角端)~100cm(望遠端)。ズーミングでものすごく最短撮影距離が変わるのは高倍率機にありがちだが、ズーム操作時にズーム倍率と最短撮影距離が併せて表示されるところは親切だ。また、被写体に近寄りすぎてピントが合わないときは自動的にマクロモードに切り替わる「オートマクロ」も備えており、いちいち切り替え操作をしなくてすむのも便利な点だ。

 電源は久しぶりに見るガム型で、容量は950mAh。ニコンと同じようなホログラムシールが貼り付けてあるのは模造品対策かもしれない。電池寿命はCIPA準拠で240枚。EXILIMにしては持ちはイマイチだが、普通レベルは十分クリアしている。実写では、ストロボをあまり使わなかったこともあって、323枚撮って余力が残っていた。

 記録メディアは11.6MBの内蔵メモリとSDメモリーカード。SDHCメモリーカードやMMC、MMC plusにも対応している。2GBのカードだと400~500枚ぐらい撮れるだろう。


レンズは7倍の折り曲げレンズ。スライド式のレンズバリアが電源を兼ねている。レンズの下が白色LED。その横はステレオマイク 撮影設定メニューの「ブレ軽減」。画質優先なら「手ブレ補正」、ブレを防ぎたいなら「オート」がおすすめだ

撮影設定メニューの「撮影ライト」。オンにするとレンズ下部の白色LEDが点灯して照明になる

バッテリーは950mAhのリチウムイオン。記録メディアはSDカード系(実際は裏向きに装填する)。11.6MBの内蔵メモリーもある 写真ではわかりづらいがロゴ入りのホログラムシールが貼られている。CIPA準拠で約240枚撮れる

マニュアル露出も可能。本体内画像処理も

 カシオらしく機能は満載で、上級者向けには、絞り優先AE(A)、シャッター速度優先AE(S)、マニュアル露出(M)も装備。といっても、絞りが3段階しかないうえに、NDフィルター併用タイプなので(広角端ではF3.4とF4.6の2段階。さらに明るい条件ではNDフィルターでF9.2相当になる)、積極的に使いたいと思えるものではない。

 ただし、1段絞ったところの絞りの形がひし形なので、望遠域やマクロ時にボケが不自然になることがあり、それを避けるのに絞り優先AEを使う手はある。後ろ向きな発想だと思うが。

 デジタル系では人肌のノイズを重点的に除去する「美肌処理」や、擬似的にダイナミックレンジを拡張する「ダイナミックレンジ」がある。

 後者はシャドウを持ち上げる処理を行なっているようで、ハイライトを飛ばさない露出にしたときにシャドーがツブレにくくなるもの。ニコンの「D-ライティング」、ソニーの「Dレンジオプティマイザー」と同じと考えていい。

 また、撮影済みの画像に対してもさまざまな処理が可能で、再生メニューには「ダイナミックレンジ」、「ホワイトバランス」、「明るさ編集」などがある。

 一方、初心者向けには、新しく「easyモード」を装備。カメラ慣れした人には「こんなに簡単にしちゃっていいの?」と突っ込みが入りそうなぐらい機能が絞り込まれる。メニュー項目は、ストロボの発光モード、セルフタイマーのオン・オフ、画像サイズ(画質モードは「標準-N」に固定される)の3項目と、「メニュー終了」だけになる。機械ものがまったくダメな人でも、これなら不安は感じないかもしれない。まあ、こういう思い切りのよさもカシオならではといえる。


シャッター速度優先AEでシャッターボタンを半押しした状態の画面。絞りがF13にセットされて、足りない分は感度をアップしてコントロールしている 画質設定メニューの「美肌処理」。ノイズ消去の度合いは2段階

画質設定メニューの「ダイナミックレンジ」。シャドウの持ち上げ具合が2段階で選べる こちらは再生メニューの「ダイナミックレンジ」。撮影済みの画像に対して効果が適用できる

再生メニューの「ホワイトバランス」。カメラ単体で簡単な補正作業ができてしまうのは便利
同じく再生メニューの「明るさ編集」

モードダイヤルを四つ葉のクローバーマークに合わせると「easyモード」になる
液晶モニターにも同じマークが表示される

「easyモード」時のメニュー画面。切り替えられる機能はたったの3つ。極めつけのシンプルさである
機能を切り替える際にはこんな説明文が表示される

まとめ

 実写での画質はちょっとアマめで、「EXILIM ZOOM EX-Z1000」あたりのシャープ感の高い画面をお好みの方には、少々物足りなく思えるかもしれない。このサイズで7倍ズームなのだから、性能面で多少無理が出てくるのは仕方のないところだ。が、ピクセル等倍で、ほかの機種の画像と見比べたりするから気になるだけで、普通に撮っている分には不満は感じないと思う。

 どちらかというと、画質云々よりも、このコンパクトサイズのボディで普通の3倍ズーム機の2倍以上の望遠撮影が楽しめるところがいちばんの魅力。ポケットやバッグに気軽に放り込める小ささに加えて、光学式手ブレ補正も遅ればせながら搭載している。

 これまでのEXILIM同様、レスポンスよく小気味よく撮れるし、動く被写体にピントを合わせつづけてくれる動体追尾AFも備えていて、コンパクト機の中では子どもやペットの撮影には比較的強い。

 初心者も安心の「easyモード」がある一方、上級者向けには遊べる機能がてんこ盛り。写りにうるさくいいさえしなければ、誰にとっても楽しめる、カシオらしいカメラに仕上がっているといえる。


作例

◆感度


画質設定メニューの「ISO感度」。最近の機種としてはISO800までというのはちょっと物足りない
 感度の設定範囲は、マニュアルではISO64相当からISO800相当まで。オート時はISO200まで自動で上がるが、「ブレ軽減」を「オート」または「被写体ブレ」に設定していると、ISO800相当まで上がるようになる。ベストショットの「高感度」ではISO1600相当までの範囲となる。

 感度を変えながら撮り比べてみると、感度を上げるにつれてディテールがアマくなり、シャドー部のノイズも多くなっていく。が、ISO800相当以外は、ノイズはうまく丸められていて、それなりに見られる画面である。ISO800相当でも従来機種よりはカラーノイズが少ない。新しい「EXILIMエンジン2.0」の威力だろう。

 ISO100でもディテール再現は若干アマくなる。画質を最優先にするならISO64相当固定しかないという感じ。ただ、ISO800相当でも目も当てられないような状態にはならないから、被写体ブレ防止目的ならそれなりに使える画質といえる。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離(カッコ内35mm判換算)を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


ISO64
3,072×2,304 / 1/320秒 / F3.6 / -0.67EV / WB:昼光 / 7.9mm(47mm相当)
ISO100
3,072×2,304 / 1/320秒 / F4.9 / -0.67EV / WB:昼光 / 7.9mm(47mm相当)

ISO200
3,072×2,304 / 1/800秒 / F4.9 / -0.67EV / WB:昼光 / 7.9mm(47mm相当)
ISO400
3,072×2,304 / 1/320秒 / F9.8 / -0.67EV / WB:昼光 / 7.9mm(47mm相当)

ISO800
3,072×2,304 / 1/640秒 / F9.8 / -0.67EV / WB:昼光 / 7.9mm(47mm相当)

◆一般作例


広角端の絞り開放となる条件。中心部の解像感は、まあまあのレベル。四隅の画質低下があまり大きくないのはいいところ
3,072×2,304 / 1/400秒 / F3.4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 6.3mm(38mm相当)
3倍ズーム機なら望遠端ぐらいの画角で撮ったカット。どことなくユルい感じ
3,072×2,304 / 1/80秒 / F4.3 / -0.33EV / ISO64 / WB:オート / 18.9mm(114mm相当)

暖冬の影響もあるのか、ほぼ満開のカンザクラ。望遠端でめいっぱいの1m
3,072×2,304 / 1/250秒 / F5.3 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 44.1mm(266mm相当)
こちらは広角端で10cm。背景のボケがキレイじゃないのは絞りの形の影響だろう。絞り優先AEにして開放で撮る方がいいかもしれない
3,072×2,304 / 1/400秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 6.3mm(38mm相当)

逆光に透ける花びらは白トビしやすいが、きちんとトーンが残っている。露出がいいせいもあるだろう。
3,072×2,304 / 1/500秒 / F5.2 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 10.2mm(61mm相当)
テレ端のマクロ域。コンパクト機でもこのぐらいの望遠になると、そこそこ背景もボケてくれる
3,072×2,304 / 1/160秒 / F5.3 / -2EV / ISO64 / WB:昼光 / 44.1mm(266mm相当)

青空の発色がいいのは従来通り。1/2.5型の700万画素の機種は空がざらつくのが多いように思うが、本機はわりといい。その分アマさが出ているのかもしれないが
3,072×2,304 / 1/640秒 / F4.6 / -0.33EV / ISO64 / WB:昼光 / 6.3mm(38mm相当)
「ダイナミックレンジ」拡大で撮ったカット。拡大なしでも撮り比べているが、思ったほどの差は出なかった
3,072×2,304 / 1/400秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 6.3mm(38mm相当)

背景のボケがひし形っぽくなっている。もう少しボケに対する気づかいが欲しい
3,072×2,304 / 1/250秒 / F6.5 / -0.67EV / ISO64 / WB:昼光 / 44.1mm(266mm相当)
こういうシチュエーションだとマイナス2段の露出補正をかけることになる。これ以上の補正をしたいとき(あまりないと思うけど)は、マニュアル露出があると便利だ
3,072×2,304 / 1/400秒 / F4.3 / -2EV / ISO64 / WB:昼光 / 20.50mm(124mm相当)

太陽を画面に入れるとこんな光芒が出る。もちろん、ゴーストもひし形
3,072×2,304 / 1/800秒 / F9.2 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 6.3mm(38mm相当)
いつも不思議に思うが、EXILIMは露出補正中は強制的に中央重点測光に切り替わる。マルチパターン測光のままのほうが補正量は少なくてすむと思うのだが
3,072×2,304 / 1/100秒 / F4.1 / -1EV / ISO64 / WB:昼光 / 14.7mm(89mm相当)

広角端で1/8秒の条件。温室内なので三脚は禁止である。なので、手ブレ補正がおおいに役だってくれる
3,072×2,304 / 1/8秒 / F3.4 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 6.3mm(38mm相当)
望遠端のマクロ域。絞り開放ではボケも悪くない
3,072×2,304 / 1/60秒 / F5.3 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 44.1mm(266mm相当)

これも望遠端のマクロ。コンパクト機でも背景をボカせるので高倍率ズームは使いやすい
3,072×2,304 / 1/80秒 / F5.3 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 44.1mm(266mm相当)
オオオニバスの花(だと思う)。アップで見るとちょっとグロい
3,072×2,304 / 1/160秒 / F4.4 / -1EV / ISO64 / WB:昼光 / 25.2mm(152mm相当)

こういう条件だと、ほとんど液晶モニターが見えなくなってしまう機種が多いが、EXILIMのは高輝度なので、なんとか画面を見ながら撮れる
3,072×2,304 / 1/200秒 / F5.3 / -0.67EV / ISO64 / WB:昼光 / 44.1mm(266mm相当)
まだ咲きかけの白梅。画面の右側やや上に写っているのは、たぶん鳥
3,072×2,304 / 1/320秒 / F5.7 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 17.3mm(104mm相当)

暗い場所で感度を変えながら20コマほど撮った中の1コマ。こういう被写体だと、ISO800相当でもそこそこ見られる画面になる。さすがにピクセル等倍でシャドウ部を見ると、ノイズが出ているのがわかる
3,072×2,304 / 1/60秒 / F4.1 / 0EV / ISO800 / WB:昼光 / 15.8mm(95mm相当)


URL
  カシオ
  http://www.casio.co.jp/
  製品情報
  http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_v7/

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カシオ、手ブレ補正付き7倍ズームコンパクト「EXILIM Hi-ZOOM EX-V7」(2007/01/30)



北村 智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2007/02/23 01:38
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