前回に引き続き筆者の地元、名古屋の観光地をご紹介したい。今や動物園といえば北海道の旭山動物園が話題だが、開園70周年を迎えた名古屋の東山動物園も「目指せ旭山」を合い言葉に、「体感王国東山」と名付けられた記念事業を始めている。
代表的なところを紹介すると「ワ~オチューブ」と名付けられたライオンが間近で見られる施設、キリンと同じ目線から見られる「キリンの展望デッキ!」、ビーバーの水中の様子を見るための水中潜望鏡「ビーバーのお家拝見!」、コアラの間近に設置された「コアラの森のさんぽ道」などとなっている。
6月3日までの限定となっているが週末やゴールデンウィークには長蛇の列ができるほど好評だったので、動物へのストレスなどがなければそのまま延長される可能性は高い。
LUMIX DMC-TZ3(以下TZ3)は10倍ズーム機ということで、動物園は是非撮ってみたい場所だと思っていた。EX光学ズームを使用すれば15倍の420mm(35mmフィルム換算、以下同様)となるので、3倍ズーム機とは一味違う絵が撮れそうだ。反面動く被写体なので、どれくらい追従できるか不安もある。改革の始まった東山動物園で、ファミリー旅カメラの実力を試してみたい。
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「ワ~オチューブ」からこんな風にライオンが見える
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改装以前はこのように柵の外からしか撮影できなかった
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従来はこの距離からキリンを見た。遠くに見えるのが「キリンの展望デッキ!」
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「キリンの展望デッキ!」からはこんな風に見える
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この日はコンティニュアスAF(AF連続動作)を常時設定して撮影してみた。コンティニュアスAFは、シャッターボタンに触れなくても常にオートフォーカスが働き、ピントを合わせ続ける機能だ。フレーミングをすると同時にフォーカシングを始めるので、液晶モニタ―に映る像は見やすく感じる。反面、電池消耗は多くなる。ただでさえ駆動時間の短いTZ3だけに常用するのは不安であったが、実際にはそれほど影響を感じなかった。
実際に設定するとジワー、ジワーとピントを合わせるのが確認できる。望遠端で近距離と遠距離をフレーミングしてみると、1~2秒でピントが合う。コンティニュアスAFをオフにしたとき、手動でシャッターボタンを半押しする場合と同じくらいの速度で動作している。ただ、ピントが合っている状態でシャッターボタンを半押しすると、自動的に再度フォーカシングの動作を行なうのは少々間抜けに感じる。とはいえピントの遠い位置から合わせるよりは比較的近くでのフォーカシングになるので、多少はフォーカス時間の短縮にはなりそうだ。
今回は混雑する週末を避け、平日の天気の良い日に出かけた。正面ゲートを入って少し歩くと象のお出ましだ。ほぼ同じ経路を行ったり来たりしていたので、進んでくる正面から撮影してみた。象の歩く速度は人間と同じ程度、加えて被写体が大きなこともあり、焦点距離は147mmと中望遠で撮れる。距離はそこそこあるが、相対的なピント移動は少ない。オートブラケットを使用して3枚ずつ何度か撮影したが、どの画像もピントは合っていた。
次はペンギンが泳ぐところを撮ってみた。被写体が小さくなり焦点距離は228mm。距離が近くなり移動速度は象より遅いが、ピント移動は多くなる。さらに象は真っ直ぐ歩いてきてくれたが、ペンギンは動きが一定ではない。TZ3に限ったことではないが、コンパクトデジカメは連写時にモニターに映る画像を見ながら被写体を追っかけることが難しい。何枚か撮ったがピンボケが半分以上、フレームアウトもかなり多くなった。
- 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
- 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算の焦点距離を表します。
- 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。
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象がカメラに向かって真っ直ぐ歩いてくる位置から撮影。AFは追従できた
3,072×2,304 / 1/320秒 / F4.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 147mm
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ペンギンはピンボケとフレームアウトが多かった
3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.9 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 228mm
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皇帝ペンギンは微動だにしない。白黒で露出が難しいのでブラケット撮影がお薦め
3,072×2,304 / 1/640秒 / F4.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 280mm
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動き回るペンギンが止まった瞬間に撮影。飛び込むのかと思ったがまた歩き回り始めた
3,072×2,304 / 1/320秒 / F4.9 / 0.33EV / ISO100 / WB:オート / 280mm
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視線をくれたゴマアザラシ。泳いでいるときはほとんど撮れなかった
3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 141mm
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気持ち良さそうにのけ反っていたので、気持ちよく撮らせてもらった
3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 280mm
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いよいよ本日の目玉のひとつ、「ワ~オチューブ」でガラス越しのライオンの撮影だ。週末はかなりの列になるらしいが、平日の午前中なので待ちは時間ゼロ。以前、ライオンは堀の手前から見るしかなかったが、堀に架けられた橋を渡り、ガラス越しに近距離から見られるようになった。ライオンはオス1頭、メス2頭。説明員によると、1頭のメスがほかのライオンと仲が悪く、午前中はそのメスが屋外に出ていて、13時半頃残りのオスとメスと交代するらしい。
その屋外にいるメスのライオンは、ガラスから一番遠いところにいた。観客側の部屋は暗めなので、ガラスの反射は比較的少ない。しかし、自分の衣類などが反射しているようなので、ガラスにレンズを押しつける様にして撮影した。
望遠端(280mm)で丁度いい距離となり、10倍ズームの威力を感じるシーンだ。同じライオンを掘の手前から撮影すると、EX光学ズームを使用して15倍(420mm)になったので「ワ~オチューブ」のおかげでかなり近くなった感じだ。
次はフラミンゴを金網の隙間にレンズを入れて撮影してみた。こんな時はレンズ径の大きな一眼レフよりも、コンパクトデジカメの方が有利だ。アスペクト比を16:9にして7羽のフラミンゴを広角28mmでフレームに収めた。意外なことに、片足で立っているフラミンゴは1羽しかいなかった。「フラミンゴみたいチョイと1本足で~」とオッサンっぽく頭でピンクレディーのフレーズを歌いながら1本足の1羽をズームして撮影。照明下ではホワイトバランスがイマイチなTZ3だが、昼間は問題ない発色だ。
キリンも新たに近くから見られる場所が用意された。斜面の地形を利用して、従来と反対側からキリンの目線の高さで見ることができる。そのすぐそばにエサが置かれ、手の届きそうな距離までキリンが近づいてくることもある。近すぎて小さな子どもは逃げ出すほどの距離だ。伸ばした舌の長さや色の黒さに驚かされるし、それを広角端でもアップで撮ることが可能だ。
TZ3は広角も28mmと魅力的だが、EX光学ズームを利用すれば420mmの望遠でも撮ることができる。従来の柵の手前からでも充分アップで撮ることができた。キリンの場合被写体が大きいので全身を撮るなら3倍ズームでも不都合はないが、望遠に強いデジカメなら絵作りの幅は広がる。
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ガラス越しに撮影。10倍ズームの威力が出るシーンだ
3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 280mm
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柵の外からEX光学ズームを使って撮影
2,048×1,536 / 1/320秒 / F4.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 420mm
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金網の隙間にレンズを入れて16:9で撮影。1本足で立っているのは1羽だけ
3,328×1,872 / 1/320秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
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1本足で立つフラミンゴを撮影。日中の発色は悪くない
3,072×2,304 / 1/200秒 / F4.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 189mm
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すぐそばに来たキリンを撮影。手前に子どもの頭も入れてみた。子連れなら子どもとキリンのツーショットが撮れるかも
3,072×2,304 / 1/80秒 / F3.3 / 0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
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「キリンの展望デッキ!」からはキリンの目線の高さで撮影できる
3,072×2,304 / 1/500秒 / F4.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 103mm
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EX光学ズームで420mmで撮影すれば、柵の手前からでもアップで撮影可能
2,048×1,536 / 1/250秒 / F4.9 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 420mm(EX光学ズーム)
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同じくEX光学ズームで撮影。望遠レンズがあれば動物園の撮影は楽しい
2,048×1,536 / 1/200秒 / F4.9 / -1EV / ISO100 / WB:オート / 420mm(EX光学ズーム)
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体が大きいので、全身の撮影なら柵からでも3倍ズームで充分撮影できそうだ
3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 89mm
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コアラもすぐそばで見られる「コアラの森のさんぽ道」が用意されたが、土日だけなので今回は従来通り屋内で撮影した。以前は「撮影禁止」となっていたと記憶しているが、現在は「ストロボ撮影禁止」になっている。屋内とはいえ外光を取り込んでいるので比較的明るめだが、コアラのいる位置が遠いので、撮影にはかなり厳しい条件となる。
幸い被写体は動かない。息してるのか? というほど微動だにしないので、問題となるのは手ブレだけだ。高感度ノイズが優秀とは言い難いTZ3なので、ISO400に設定してひたすら連写してみた。最初は焦点距離280mmでシャッター速度は1/15秒。手ブレ補正がなければおそらく全滅だろう。30枚ほど撮ってそこそこの写真が3枚くらい撮れた。さらに同じコアラを角度を変えて、EX光学ズームで420mm、シャッター速度1/25秒で撮影した。こちらも確率は1割程度。デジカメだからできる撮り方だ。
1頭だけ元気にエサを食べているコアラがいたが、被写体ブレに加え、さらに距離が遠い。撮影条件が悪かったので動画で撮影してみた。以前、水族館で撮影したとき、静止画が全く撮れない条件でも動画だとそれなりに許せる絵が録れたことがあった。動画には静止画と違う魅力があり、コアラの可愛らしい動きが微笑ましい。
その後も園内を歩き回り撮影を続けた。水中のオットセイやアザラシは動きがペンギン以上に速く、TZ3のオートフォーカスでは追従するのは難しい。13時半を過ぎたので最後にオスのライオンを撮りに行った。今度はガラスのすぐ前に、たてがみが勇ましいオスのライオンがいた。焦点距離100mm程度で充分撮れる距離で、目の動きまでハッキリ見え、ほかの客もそうだが筆者もその近さに驚いた。これからも東山動物園の改革が楽しみになってきた。
数年振りに動物園を訪れたが、TZ3の10倍ズームは予想通り実力を発揮してくれた。素早く動く動物の撮影は難しいものの、充分満足感のある撮影となった。動物園は全国にあるので、読者も望遠の魅力を堪能していただきたい。
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コアラをひたすら連写。「数打ちゃ当たる」方式で撮影
3,072×2,304 / 1/15秒 / F4.9 / -0.66EV / ISO400 / WB:オート / 280mm
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焦点距離420mm相当、1/25秒でも10枚に1枚くらいはそこそこ撮れる
2,048×1,536 / 1/25秒 / F4.9 / -0.66EV / ISO400 / WB:オート / 420mm(EX光学ズーム)
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オスライオンの登場を待って撮影。焦点距離100mm程度でここまでアップで撮れる
3,072×2,304 / 1/100秒 / F4.7 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 112mm
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この2頭は仲良し。この距離でライオンを見られるだけで行く価値ありか
3,072×2,304 / 1/160秒 / F4.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 89mm
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カメラを意識したのか目線をくれた。10倍ズームで柵のパイプがフレームに入らない様に撮影
3,072×2,304 / 1/320秒 / F4.9 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 280mm
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動かないカバは簡単に撮影できた
2,560×1,920 / 1/250秒 / F4.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 336mm
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アフリカ像の耳が開く瞬間を狙って撮影。大きな被写体は10倍ズームでなくても撮れる
3,072×2,304 / 1/320秒 / F4.2 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
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ジャンプして暴れていた2頭のカバ。水しぶきがかかるほどだった。その後、休憩中に撮影
3,072×2,304 / 1/400秒 / F4.9 / -1EV / ISO100 / WB:オート / 280mm
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■ 動画サンプル
- MOVファイル(20.1MB/640×480ピクセル/15秒)
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.MOVファイル:20.1MB(画像をクリックするとダウンロードが始まります) |
- 編集部では動画再生についての問い合わせにお答えできかねます。ご了承ください。
■ URL
パナソニック
http://panasonic.co.jp/
製品情報
http://panasonic.jp/dc/tz3/
気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm
東山動植物園
http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/
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( 奥川 浩彦 )
2007/05/09 01:14
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