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パナソニック LUMIX DMC-TZ3【第4回】
10倍ズームで桜を撮り歩く

Reported by 奥川 浩彦


 今回の連載は3月から5月までの2カ月だ。この時期の被写体として外せないのは桜だろう。今回は名古屋近郊の桜を撮ってみた。東京は早々に咲いてすでに散っていたが、名古屋の桜は4月になってから満開を迎えた。場所は名古屋から電車に乗って30分ほどの岡崎公園と、名古屋市内の山崎川だ。

 岡崎公園は名古屋の南東、岡崎市の中心部にあり、園内には岡崎城が建っている。公園の南側を乙川が流れ、川の反対岸にも桜の木が並んでいる。筆者は北側の国道1号線は何度も通過したことがあるが、岡崎公園内に入るのは初めてだ。

 インターネットで満開の情報を確認して撮影に出かけた。公園に近付くと、平日の昼間とは思えないほど人出は多い。川岸が広いこともあり、宴会用のブルーシートを広げるには最高の立地となっている。逆に撮影者にとっては、撮影し辛いことになる。

 まずは岡崎城の天守閣に登って撮影ポイント探すことにした。岡崎公園は南側を流れる乙川と西側を流れる伊賀川に挟まれている。桜の木の配置、太陽の方角を確認。西側の伊賀川の岸から撮影を開始し、園内を抜けて南側の乙川の対岸まで回ることにした。

 伊賀川に掛かる橋を渡り、最初の撮影ポイントに着いていきなりガッカリ。天守閣から見えたポイントで城をバックに桜を撮ろうと思ったが、天守閣の背後に建設中のクレーンがそびえていた。すぐそばあった鉄道の陸橋が古ぼけて味があったので、気を取り直して名古屋鉄道(通称:名鉄)を最初の被写体とした。

 川の両岸に咲く桜と陸橋をバランスさせアスペクト比を16:9に設定し電車を待つ。名鉄にはステンレスボディの車両もあるが、ここは橋脚と同様、古ぼけた感のある赤い車両がベストだろう。通過する車両を何本か待ち、赤い電車が来たところでシャッターを押した。上流に小さな人道橋と、その先に車も通れる大きな橋が見えるが、両岸の桜はそれらの上流も艶やかに咲いていた。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


矢作川の支流、乙川を渡る名鉄を16:9で撮影。川の両岸は上流まで桜並木が続く
3,328×1,872 / 1/1,000秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 32mm

望遠端で花びらを撮影。ストロボを使用し露出補正をマイナスにして光量を調整
3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.9 / EV-1.66 / ISO100 / WB:ストロボ / 280mm
広角端でマクロモードを使用して撮影
3,072×2,304 / 1/320秒 / F3.3 / 0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

 天守閣をバックに撮る構想が崩れたので、桜をアップで撮ってみた。最初は望遠端で撮影。そのまま撮るとやや暗めだったのでストロボを発光した。液晶モニターで確認すると花びらが明るすぎたので露出補正をマイナスにしてみた。背景のボケ具合はまあまあだろう。次は低いところにあった花びらを広角端でグッとよって撮影。背景に空の青や土手の緑を配置、ブルーシートは愛嬌ってとこだろう。どちらも悪いというほどではないが、解像感がイマイチな印象だ。

 人も多くブルーシートがフレームに入らないポイントを探しつつ撮影を続ける。園内で赤い橋と噴水を撮影。アスペクト比を4:3のままだとバックのホテルがフレームに入るので16:9に変更。もう少しシャッター速度を落とした方が噴水の雰囲気がでると思うが、DMC-TZ3(以下TZ3)はシャッター速度を設定できない。

 園内を抜けて南側の川にかかる橋を渡って対岸へ。方角が変わったので邪魔だったお城の背後のクレーンは、フレームの右側に移動した。目の前の桜でクレーンを少し隠し、天守閣と桜をセットで撮影。日も落ちてきたので2時間ほどホテルのラウンジでお茶にして、夜桜を待つことにした。


全体の感じは悪くないが解像感は少々物足りない。対岸はブルーシートだらけ
3,072×2,304 / 1/320秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 55mm
AFをスポットに設定して撮影。スポットAFはかなり使える
3,072×2,304 / 1/80秒 / F4.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 89mm

ここでも名鉄の赤い車両を待って撮影。左側フレームの外はすぐにブルーシート
3,072×2,304 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 43mm
園内に渡る橋の上から、左岸の宴会風景を入れずに撮影
3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.7 / 0.33EV / ISO100 / WB:オート / 84mm

園内の橋と噴水。ここでも赤をワンポイントに。シャッター速度が落とせると噴水の雰囲気は変わる
3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.7 / 0.33EV / ISO100 / WB:オート / 84mm

川の対岸から天守閣を撮影。右側のクレーンが目立たない様に目の前の桜で隠す
3,328×1,872 / 1/640秒 / F4.7 / -0.33EV / ISO200 / WB:ストロボ / 103mm

 日が落ちてライトアップが始まる。残念ながら岡崎公園のライトアップは白熱灯を吊っただけで照明は暗め。光学式手ブレ補正を搭載しているTZ3だが、夜桜の撮影は三脚が必須だ。宴会客が多いこともあり、屋台のお店は豊富。こちらは照明も明るく、手持ちで撮影ができそうだ。

 昨年、IXY DIGITAL 800 ISの連載の際にも縁日で撮ったが、水流で回転するスーパーボールは手ブレ補正機能の効果が発揮される絶好の被写体だ。ズームは28mm広角端、ISO200、シャッター速度1/8秒で何枚か撮影した。これまで使ってきた印象では、広角端でもシャッター速度1/8秒ではブレることも多い。複数枚の撮影をして選択した方がいいだろう。

 夜桜はビール片手に観賞するにはいいが、撮ろうとするとシャッター速度は1~5秒になってしまったので、三脚を使用した。標準の撮影モードでは、設定によりシャッター速度は最長1秒となる。シーンモードの夜景を選択すると最大8秒まで露光可能だ。夜景モードで長時間露光した場合、同じ時間だけ液晶モニターにカウントダウン表示が出てノイズリダクションが行なわれる。夜景モードは自動的にISO100に感度設定される。三脚を使用するので、標準モードもISO100で撮影している。オートブラケットを使用しながら、西側を流れる伊賀川の岸と南側の乙川まで撮影を行なった。


屋台の照明は明るめ。シャッター速度が1/15秒なら手持ちでそこそこ撮れる
3,072×2,304 / 1/15秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
手ブレ補正の効果がハッキリわかる被写体。高感度で速いシャッターを切ると、スーパーボールの動きも止まる
3,072×2,304 / 1/8秒 / F3.3 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 28mm

シーンモードの夜景を選択。シャッター速度は最長8秒
3,328×1,872 / 4秒 / F4.3 / 1EV / ISO100 / WB:オート / 55mm

夜桜も川の反対岸まで回って撮影。昼間と夜では構図はガラッと変わる
3,328×1,872 / 2秒 / F3.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

 翌日の晩、名古屋市内の南東、瑞穂競技場の脇を流れる山崎川の撮影に向かった。こちらは宴会用のスペースはなく、観賞中心の桜名所だ。我が家から車で10分程度のところなので毎年撮影している。夜9時過ぎだったが、人はあふれていた。ここの照明は高輝度放電ランプが使用されていて明るい。ライトアップの中心に木の橋が架かり絵になる。隣の橋から木の橋を入れて撮影する。目の前に張り出した桜は暗いので、ストロボを使用して遠景の桜とバランスをとって撮影した。

 翌朝は5時起きして6時に山崎川へと到着。散歩する人はいるが、昨晩と比べれば人出は100分の1くらいだろうか。木の橋も少し待てば人の流れが切れる。早朝で光線の状態はよくない反面、人が少ないので構図も選びやすいし、三脚を立てても迷惑にならず撮影はしやすい。

 昨晩と同じく、桜の隙間からやや望遠で木の橋を中心に撮影。AFモードをスポットにすると、橋にピントを合わせることができるが、ほかのモードに設定すると目の前の桜にピントが合ってしまう。どちらも絵としてはありだと思うが、スポットAFのお陰で作画意図を反映することが可能だ。

 人出がまばらなので、筆者が好きなパノラマ撮影も行なった。TZ3は広角端でも歪曲収差が少なく、パノラマ合成しやすそうだ。アスペクト比16:9なら3枚撮れば左右180度が撮影できる。雲台で調整せずに三脚自体の水平を出して撮影するのが綺麗に合成するコツだ。露出は3枚のシャッター速度が同じになるように露出補正をしながら撮影した。

 TZ3にはArcSoftの「PanoramaMaker3」が添付されているが、筆者は最も優秀なパノラマ合成ソフトだと思っている。特に調整することもなく綺麗に合成され、このソフトの最大出力である約7,200×1,500ピクセルの画像が完成した。今回は3,595×778ピクセルの画像を掲載しよう。

 桜の撮影はそれほどカメラを選ばないと思うが、TZ3は10倍ズームを搭載してるので絵作りの幅は広がる。夜桜の撮影ではISO100に設定すればノイズは目立たない。シーンモードを夜景にすれば自動的にISO100に設定される。解像感はあまり高くないが、全体的には充分な画質が得られると思う。


山崎川は9時過ぎでも人があふれていた
3,328×1,872 / 1/4秒 / F4.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 77mm

焦点距離228mmでストロボもマイナス補正して使用。絵作りの幅が広いデジカメだと感じる
3,072×2,304 / 1秒 / F4.9 / -2EV / ISO100 / WB:ストロボ / 228mm

AFをスポットにして橋に合焦させた。朝6時は人もまばら
3,072×2,304 / 1/80秒 / F4.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 103mm
スポット以外のAFモードでは手前の桜にピントが合う
3,072×2,304 / 1/80秒 / F4.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 103mm

16:9の画像を3枚つなげば左右180度のパノラマ写真が完成(リンク先は3,595×778ピクセル)

1本だけ絵になる木の橋が架かっている。三脚を立てても人が歩くと橋ごと揺れる
3,328×1,872 / 1/200秒 / F3.3 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

朝日のあたる桜を望遠端で圧縮して撮影。やはり撮影の幅が広い
3,072×2,304 / 1/400秒 / F4.9 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 280mm

川に反射した桜にフォーカスを合わせて撮影。等倍で見るとモザイクタイルのようだ
3,072×2,304 / 1/250秒 / F4.9 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 280mm
同じ場所で手前の桜にフォーカス。川底に向かってレンズを向けたら縦画面と誤認識した
3,072×2,304 / 1/160秒 / F4.9 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 280mm


URL
  パナソニック
  http://panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/tz3/
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( 奥川 浩彦 )
2007/04/18 01:00
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