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キヤノン PowerShot G7【第3回】
G3とG7を比較する

Reported by 小山 安博


 これまでと同じ話を繰り返すようだが、PowerShot Gシリーズはキヤノンのコンパクトデジカメのハイエンドシリーズだ。ニコンや(今はなき)ミノルタ、ソニーなども以前はこのジャンルで製品を展開していたのだが、今や”ハイエンド”と呼べるような製品は少なくなってしまった。

 G7も2年ぶりという久々の登場。キヤノンの悩みも伺えるところだが、今回キヤノンはG7でGシリーズのイメージをがらりと変える大幅な変更を加えてきた。

 それが(これも繰り返しになるが)薄型・コンパクト化を図った、という点だ。大きなコンパクトデジカメを買うぐらいだったらデジタル一眼レフを買う人もいるだろうし、そもそもポケットや小さなバッグに収まらないコンパクトカメラは受け入れられない、という判断があったのかもしれない。

 また、G7は従来よりも価格を抑えて登場したのもポイント。一時は10万円近い価格の製品もあったハイエンドコンパクトデジカメ市場だが、デジタル一眼レフの価格が下がっている今、コンパクトデジカメがそれを上回るのは難しいはずで、G7も価格を下げざるを得なかったのだろうと思う。

 これはG7に限った話ではなく、コンパクトデジカメを作ろうとしたら、「サイズ」と「価格」の制約が以前よりも厳しくなっている。もっとも、これは営業サイドの縛りだろうし、多少の価格、サイズは気にしないユーザーもいるはずだが、まあ、このあたりの線引きは難しい部分ではある。

 さて、そうした縛りの中で作られた(に違いない)G7だが、低価格化・薄型軽量化を図るにあたってネックになったのが大口径レンズとバリアングル液晶であったことは想像に難くない。

 先代のG6と比べてみると、本体サイズはG6が104.9×72.8×73.1(幅×奥行き×高さ)mm、約380gだったが、G7は106.4×42.5×71.9mm、約320gになっている。70mmを超える高さはGシリーズ通して同じだが、特筆すべきは奥行き。初代G1の63.8mmからG6の72.8mmまで(70mmを超えるのはG6だけ)、ぼってりとした感じの分厚い筐体だったGシリーズが一気にスマートになった。

 実際にG7を持った感じの印象は、少し大げさに言えば厚みが半分になったように感じる。それぐらいに薄くなった。重量も軽くなっているのだが、たとえばG3と比較してみると、G7の方が凝縮感があってずっしりと感じる。


G7(左)とG3。高さと幅の差はそれほどでもないが、それでもG7の方が横幅は小さい。デザイン自体は、カメラに詳しくない人からも「格好いい」と言われ、けっこう注目される
特に厚みは大きな違い。形状がフラットになったので、バッグへの収まりがいい。このあたりも「撮影のしやすさ」より「持ち運びのしやすさ」を重視しているような印象

 Gシリーズの特徴だったバリアングル液晶は、ハイアングルでもローアングルでも液晶を正面に見ることができて撮影がしやすく、非常にデジカメらしい撮影方法で快適に使えた。

 しかし、特にGシリーズのような構造だと、「液晶を開いて回転させる」という機構が必要になるため、ヒンジが大きくなりがちだ。最近の携帯電話の2軸ヒンジを見るとけっこう薄型にできそうな気もするが、それでも、ヒンジを使わない方が薄型化できるのは間違いない。製造もより容易になるだろう。


バリアングル液晶は、こうして液晶を開き、回転させることで幅広いアングルでの撮影を可能にしてくれる
液晶と本体をつなぐヒンジの部分がやはり場所を取る、のではないかと思うのだが

ちなみに正面から見るとこんな感じ
 バリアングル液晶を廃止した代わりにキヤノンは、液晶の視野角を改善することでその代替としようとしているようだ。G7の液晶モニタは高輝度・広視野角のものが採用されており、液晶自体の見やすさは確かに格段に向上している。

 画素数も20万画素を超え、上下左右とも、かなりの視野角を達成している。バリアングル液晶のように色んな体勢でも真正面から液晶を見る、ということはできないが、意外に何とかなりそう、というのが使ってみての感想。ただ、三脚を使う場合にはバリアングル液晶の方がはるかに見やすいので、やはり惜しいところではある。

 それでも、バリアングル液晶の構造分、薄くできたのだと考えるとガマンできないほどでもない、という感じはする。個人的には今回、持ち運びを重視しているのでそう感じたが、これはユーザーによって感想が異なるだろう。


ハイアングル時の見え方。正確な色味のチェックまでは難しいが、きちんと被写体は把握できる ローアングル時も同様だ


 もう一つの縛りだった大口径レンズの廃止だが、Gシリーズでは当初F2通し、G3からはF2~F3という明るい開放F値のレンズを採用していた。本体が大ぶりな分、レンズも大きく、設計にも余裕があったのか映りに関しても定評があった。

 しかし、G7の厚みでF2のレンズを搭載するのは無理があったのか、G7では採用が見送られてしまった。これは惜しい。


G7のレンズは沈胴式でレンズバリアがあるのでより一層気軽に使える

F2スタートの大口径レンズを搭載したG3。レンズも大きく、起動時の繰り出しも大きい

 Gシリーズ(G3以降)の光学4倍ズームにF2~F3のレンズに対し、G7の光学6倍ズームにF2.8~F4.8で光学式手ブレ補正付きのレンズ、という対比になるのわけだが、そもそも、G7の厚みに収めるためにはF2のレンズだと大きくなりすぎ、その代償として6倍ズーム+手ブレ補正になったのなら理解できる。もう少し広角寄りだとうれしかったが、それでも6倍ズームというのは使い勝手がいいし、手ブレ補正もぜひ欲しい機能ではある。

 もし、まずF2を検討して、やむなく断念したということであれば、F2レンズがGシリーズに帰ってくる可能性もあるわけで、キヤノンには、今後も検討課題として欲しいところ。

 いずれにしても、結果としてコンパクトに収まっているわけで、個人的には普段使っているヒップバッグにすっぽりと入るところがありがたい。腰につけたバッグからサッと気軽に取り出せるし、普段は持っていることを忘れるぐらいで、常に高機能なG7を携帯できるようになった。気分としては携帯電話を取り出すぐらいの気軽さで、ケータイカメラを使う必要がなくなった。

 この観点で考えると、グリップのほとんどないフラットなデザインもいい。確かに撮影時の安定性という意味では疑問だが、バッグに収めやすく取り出しやすいので、これはこれでいいかも、と思っているところだ。


普段腰につけているバッグ。G7を買うまではタバコを入れていた
もうあと1mmでも大きくなったら入らないかも、というぐらいピッタリ。なので、このG7のサイズはベストマッチなのだ。非常に個人的な理由で恐縮ではあるが

 また、フラットさに貢献していて、しかもたいていの人に恩恵がありそうなのがレンズバリアの採用だ。今までGシリーズにはレンズキャップが付属していたが、撮影時の処理に困るし、なくしやすい。G7ではレンズが沈胴式になり、レンズバリアが自動で開閉するので、キャップがいらなくなった。沈胴式だからボディもフラットになるし、これは単純に便利。

 ちなみに、G7からバッテリーがEOS Kiss Digital XやPowerShot S80などと同じNB-2LHになり、メモリカードもSDHC/SDメモリーカードに変更になっている。

 ところで、従来のGシリーズとG7の大きな違いでは、G7でRAW非対応になった点も挙げられる。デジカメは、(単純に言えば)レンズから撮像素子に入った光をデジタル変換し、さらにJPEGに変換して出力している。RAW画像はそのJPEG変換前の画像で、撮像素子から得られた情報がすべて含まれ、JPEG変換による画質劣化もない。G6まではRAWに対応していたのだから、あえて外す理由がわからない。

 G7は1,000万画素オーバーの撮像素子で画像の容量も大きくなるので、これまでのGシリーズのように「使い物になる」レベルでRAWを扱うためには、バッファメモリなりでそれなりにハードウェアスペックを積み増しする必要があり、そのコストを嫌ったのかもしれない。

 ただ、RAWは撮像素子が得たすべての情報を保持しているので、後処理としてPCで画像編集をするユーザーには重要な機能だし、ハイエンドデジカメを買うようなユーザーの中にはこうした意向はけっこう強いはずだ。しかも最近は、SILKYPIX Developer StudioやAperture、Photoshop Lightroomといった優秀なRAW現像のできるソフトも増えたので、RAW画像がより扱いやすくなった。個人的には本体サイズはともかく多少のコストアップは許容できるので、この点はけっこう惜しいところ。

 そういうわけで、大口径レンズ、バリアングル液晶、さらにRAW対応に関してG3とG7を比較してみた。サイズとコストの兼ね合いを考えると一定の理解はできるのだが、個人的にはレンズとRAWは特に惜しい。ただ、自分のカメラの使い方を考えると、実は高倍率化+手ブレ補正は願ったりかなったりでもあるので、総じて満足のいくカメラだと考えている。


G3とG7では操作体系も大幅に変更されている。G7の方がボタンが集約されていてより洗練されて使いやすいと思う

G3とG7の画質比較

 G3とG7を比較すると、G3の方がだいぶ色味がこってりしているのがわかる。実際の色に近いのはG7の方で、G3の方はJPEGをそのまま使う場合に見栄えがいいが、G7の方が素材重視という感じだ


  • 作例のリンク先のファイルは撮影した画像です。

  • 作例下の撮影データは、画像サイズ/露出時間/絞り値/感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。



【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/8秒 / F3.2/ ISO50 / WB:オート / 10.2m
【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1/10秒 / F3.2/ ISO80 / WB:オート / 10.7mm

 G7とG3の、絞り値ごとの画質の変化を比較。G7は開放からクリアでシャープ。高輝度部分に少し出ている偽色は、絞ると目立たなくなる。F8まで絞ると画質は若干低下するようだ。G3は、中心部から周辺までクリアなのはF2.8以降。F8まで絞っても十分高画質。


【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/200秒 / F2/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm

【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1/500秒 / F2.8/ ISO80 / WB:オート / 7.4mm
【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/800秒 / F2.8/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm

【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1/160秒 / F6.3/ ISO80 / WB:オート / 7.4mm
【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/200秒 / F6.3/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm

【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1/60秒 / F8/ ISO80 / WB:オート / 7.4mm
【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/100秒 / F8/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm

NDフィルター

【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1/2秒 / F4.8/ ISO80 / WB:オート / 44.4m
内蔵NDフィルターを使って水の流れを表現してみた。G3ではメニュー内にあったNDフィルターのオン/オフが、G7ではファンクションメニューに移動したので、気軽にNDフィルターを使えるようになった
【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/2秒 / F8/ ISO50 / WB:オート / 28.8mm
水の流れを優先したため派手な白飛びとなってしまっているが、カメラ単体でこうした表現ができるのはGシリーズならでは。設定画面がメニュー内にあるため、いったん設定すると設定をし直すのを忘れがちなのが玉にキズ

暗部

 暗部の階調は同等だろうか。空の色は、G3の方が見栄えはいいが、やはり色として正しいのはG7の方。G3のこってりした色が気に入らなければ、RAWで撮影して、PCで現像すればいい。


【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1/1250秒 / F2.8/ ISO80 / WB:オート / 7.4mm
【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/250秒 / F2.8/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm

オートホワイトバランス比較

 G3は日陰で青みがかってしまった。オートホワイトバランス性能はG7の方が高い。


【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1/100秒 / F4.8/ ISO80 / WB:オート / 44.4mm
【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/400秒 / F3.2/ ISO50 / WB:オート / 28.8mm

ホワイトバランス比較

【G7 オート】
3,648×2,736ピクセル / 1/100秒 / F2.8/ ISO80 / WB:オート / 7.4mm
【G3 オート】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/160秒 / F2.8/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm

【G7 太陽光】
3,648×2,736ピクセル / 1/100秒 / F2.8/ ISO80 / WB:太陽光 / 7.4mm
【G3 太陽光】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/160秒 / F2.8/ ISO50 / WB:太陽光 / 7.2mm

【G7 曇り】
3,648×2,736ピクセル / 1/100秒 / F2.8/ ISO80 / WB:曇り / 7.4m
【G3 曇り】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/160秒 / F2.8/ ISO50 / WB:曇り / 7.2mm

【G7 電球】
3,648×2,736ピクセル / 1/100秒 / F2.8/ ISO80 / WB:電球 / 7.4mm
【G3 電球】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/160秒 / F2.8/ ISO50 / WB:電球 / 7.2mm

【G7 蛍光灯】
3,648×2,736ピクセル / 1/100秒 / F2.8/ ISO80 / WB:蛍光灯 / 7.4mm
【G3 蛍光灯】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/160秒 / F2.8/ ISO50 / WB:蛍光灯 / 7.2mm

【G7 蛍光灯H】
3,648×2,736ピクセル / 1/100秒 / F2.8/ ISO80 / WB:蛍光灯H / 7.4mm
【G3 蛍光灯H】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/160秒 / F2.8/ ISO50 / WB:蛍光灯H / 7.2mm

【G7 ストロボ】
3,648×2,736ピクセル / 1/100秒 / F2.8/ ISO80 / WB:ストロボ / 7.4mm
【G3 ストロボ】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/160秒 / F2.8/ ISO50 / WB:ストロボ / 7.2mm

【G7 水中】
3,648×2,736ピクセル / 1/100秒 / F2.8/ ISO80 / WB:水中 / 7.4mm

ISO感度別比較

【G7 ISO50】
3,648×2,736ピクセル / 1/2秒 / F3.2/ ISO80 / WB:オート / 7.4mm
【G3 ISO50】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/4秒 / F3.2/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm

【G7 ISO100】
3,648×2,736ピクセル / 1/3秒 / F3.2/ ISO100 / WB:オート / 7.4mm
【G3 ISO100】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/6秒 / F3.2/ ISO100 / WB:オート / 7.2mm

【G7 ISO200】
3,648×2,736ピクセル / 1/6秒 / F3.2/ ISO200 / WB:オート / 7.4mm
【G3 ISO200】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/13秒 / F3.2/ ISO200 / WB:オート / 7.2mm

【G7 ISO400】
3,648×2,736ピクセル / 1/13秒 / F3.2/ ISO400 / WB:オート / 7.4mm
【G3 ISO400】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/30秒 / F3.2/ ISO400 / WB:オート / 7.2mm

【G7 ISO800】
3,648×2,736ピクセル / 1/25秒 / F3.2/ ISO800 / WB:オート / 7.4mm
【G7 ISO1600】
3,648×2,736ピクセル / 1/50秒 / F3.2/ ISO1600 / WB:オート / 7.4m

作例

【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1.3秒 / F3.2/ ISO80 / WB:オート / 12.7mm
【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1.3秒 / F4.8/ ISO80 / WB:オート / 44.4mm

【G7】
3,648×2,736ピクセル / 6秒 / F4.8/ ISO80 / WB:オート / 44.4mm
【G7】
3,648×2,736ピクセル / 1.3秒 / F2.8/ ISO80 / WB:太陽光 / 7.4mm

【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 0.8秒 / F2.8/ ISO50 / WB:オート / 12.7mm
【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 0.8秒 / F2/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm

【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1/80秒 / F2.2/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm
【G3】
2,272 ×1,704ピクセル / 1秒 / F2/ ISO50 / WB:オート / 7.2mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/powershot/g7/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm

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( 小山 安博 )
2007/02/08 01:13
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