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ニコン COOLPIX S10【第7回】
料理撮影でスイバルが活躍

Reported by 本誌:折本 幸治


 この連載が始まってから、デジタル一眼レフカメラやR-D1のサブとして、一緒に持ち歩いているCOOLPIX S10。しかし、いわゆる薄型コンパクトデジカメよりも大きくてかさばるので、これまで担当した機種に比べ、常時身につけるほど稼働率が高い訳ではない。そのため、日常のスナップやメモ撮りに活用することはあまりなかった。

 しかし最近になって、飲食店での料理が結構きれいに撮れることがわかった。スイバル機構によるハイアングルを使えば、立ち上がったり手を伸ばしたりすることなく、肘をついてカメラを固定したまま料理を上から撮れる。これを利用しない手はない。しかもCCDシフト式の手ブレ補正付きだ。パースが目立ちにくい望遠側でもF3.5という明るさを維持するレンズも、料理写真に使いやすい。というわけで、飲食店で席につき、出てきた食事を日々撮っている。

 ホワイトバランスはオート、またはマニュアル(プリセット)。COOLPIX S10のホワイトバランスオートは、タングステン光の色かぶりを比較的残すタイプ。被写体に寄っては、色かぶりしたままの方がおいしそうに見えることもあれば、汚く見えることもある。なので私の場合、マニュアルホワイトバランスもよく使う。といっても、マニュアル時のホワイトバランスは、おしぼりや紙ナプキンで合わせるといういい加減さだ。


COOLPIX S10のプリセットホワイトバランス設定。小さな枠内に白やグレーを入れるだけなので、取り込む対象が小さかったり遠くても簡単
 あまり話題に上らないが、マニュアルホワイトバランスの設定のしやすさは、機種(というよりメーカーのインターフェイス思想)で異なる。

 設定時に基準となる白色を取り込むのはどれも同じだが、厄介なのが通常の撮影と同じ画角で取り込むタイプ。白の面積が広くないと、白以外の余計な色も取り込んでしまうからだ。さらにこのとき、光学ズームが働かない機種もある。おしぼりなど小さいものだと、レンズをかなり近づけなければならないので、広角寄りのレンズを採用する機種だと、マニュアルホワイトバランス設定前に、望遠端にしておく必要もでてくる。

 というわけで、何度も設定する可能性があるなら、スポット測光のようにごくわずかな面積で取り込むタイプが楽。COOLPIX S10のプリセットホワイトバランス設定はまさにこのタイプなので、料理撮影時に重宝している。

 画質はかなり良い。合焦した箇所はかなりシャープだし、周辺の流れもあるにはあるが、十分許容できる範囲。また白い皿がバックだと、ほかのコンパクトデジタルカメラではプラス補正することが多い。しかし、COOLPIX S10だと普通に明るく、露出補正の必要を感じることはほとんどない。

 ただしキレイなのは低感度で撮れた場合。個人的に我慢できるのはISO400までだろうか。ISO400になると輪郭が崩れて色ノイズが目立ちはじめ、ISO800ではさらに色が薄く濁って、記憶と異なる料理に見えることもある。縮小してみる分にはISO400までが限界だろう。それでも2段分の手ブレ補正があるので、意外とカバーできる店舗が多い印象だ。肘をついて固定しているのが功を奏しているのかもしれない。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/ピクチャーカラー/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


ISO50
2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/5秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / WB:マニュアル / 16.5mm(ミニ三脚使用)
ISO100
2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/11秒 / F3.5 / 0EV / WB:マニュアル / 16.5mm(ミニ三脚使用)

ISO200
2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/23秒 / F3.5 / 0EV / WB:マニュアル / 16.5mm(ミニ三脚使用)
ISO400
2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/45秒 / F3.5 / 0EV / WB:マニュアル / 16.5mm(ミニ三脚使用)

ISO800
2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/45秒 / F3.5 / 0EV / WB:マニュアル / 16.5mm(ミニ三脚使用)

 もうひとつ強力なのが、マクロモードでの最短撮影距離。広角側6.3~約12mm(38~70mm相当)の範囲なら、最短撮影距離の約4cmまで寄れるようだ。望遠側にズームすると、とたんに最短撮影距離が伸びる機種が多い中、70mm相当まで粘るのはうれしい。ちなみにマクロモード中、38~70mm相当まではズームバー表示が緑色になる(それ以上は通常と同じ白)。

 ただし、AFの合いにくさは相変わらずで、暗いシーンだともう少し距離を取った方がいいようだ。また70mm相当を超えると、急に最短撮影距離が長くなる。他社のコンパクトデジタルカメラにも見られる傾向だし、近距離での描写を維持するには仕方がないところだろう。しかし、 せっかくの全域F3.5の10倍ズームが少々もったいなく感じる。

 なお、スイバルで上から撮れるのはいいとして、実際には照明が真上にあると、カメラの影が被写体に落ちがち。ベストは昼間の窓際の席で料理が窓側・自分が店側、逆光気味でレンズを下に向けるというパターンだ。実際には湯気を嫌って少し離れた位置から斜めに狙うことが多い。あと、薄型コンパクトデジカメに比べると本体が大きく、「どうせなら」とミニ三脚を取り出してセッティングすることも。ここまでくるとやり過ぎな感じがしないでもないが、さり気なさ感の薄いCOOLPIX S10らしい撮り方とこじつけたい。

 というわけで、ずいぶん外食メモに使える印象のCOOLPIX S10。VRに加え、BSS(ベストショットセレクター)を併用するとさらに歩留まりが上がるので、隠れた料理撮り向けカメラといえる。あとはもう少し本体が小さければ……。


2,816×2,112 / 標準カラー / 1/31秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 10.5mm 2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/7秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:マニュアル / 7.4mm

2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO150 / WB:マニュアル / 8.8mm 2,816×2,112 / 標準カラー / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO72 / WB:マニュアル / 6.8mm

2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/8秒 / F3.5 / 0EV / ISO268 / WB:マニュアル / 11.7mm 2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/5秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:マニュアル / 11.7mm

2,816×2,112 / 標準カラー / 1/8秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:マニュアル / 6.3mm 2,816×2,112 / ビビッドカラー / 1/4秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO50 / WB:マニュアル / 14.6mm(ミニ三脚使用)


URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/s10/
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( 本誌:折本 幸治 )
2006/12/25 12:08
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